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第五章

【閑話】マイコの物語

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 真っ白な空間で気付いた⋯⋯。
 あれっ?  体のどこも痛くないな。ビックリして身体中を触ってみたけど、怪我してないっぽいし。

 ヒデ君を助けるために車の前に飛び出して、飛び出して⋯⋯。飛び出して⋯⋯。
 それからは思い出せない。

 私はひかれたはずだよね⋯⋯。

 そんな状態の私の前に、急に目の前に金髪で真っ白なローブを身に纏った少女が現れた。

『こんにちわ~!  元気かな?』

「⋯⋯えっ?  誰?」

『私の事はまたの機械ね。あんまり時間も無いから要点だけ言うからよく聞いてね。貴女は車にひかれて死んでしまったの。
 その時に貴女の望んだ願いを叶えてあげたから、その代償に、そして試練を受けてもらうために転生してもらの』

 望んだ願い?  ⋯⋯あ、あれのことかな?

『思い出したようだね。転生した世界には百階建ての塔があるからそこまで登れれば、貴女を生き返らせてあげる。そこで条件と特典があるの』

「⋯⋯条件と特典ってなに?」

『条件はね、仲間を誰も死なせてはダメって事。特典はね、目をつぶってステータスって念じるとスキルを手に入れる事が出来るって事。あ、もう時間だ。じゃ頑張ってね~!』

 えっ?  待ってよ!  まだ聞きたいこといっぱいあるのに~⋯⋯

 ⋯
 ⋯⋯
 ⋯⋯⋯

 次に気付いた時には町から程近い湖のほとり。

 両親、友達、そしてヒデ君に会いたい。
 会ったら「助けてあげたんだから感謝してよね!」ってお姉さんぽく言いたいな⋯⋯。

 暫くは膝を抱えて泣くことしか出かなかった。
 運動が得意ってだけの女子高生に何が出来るって言うの?

 でも、泣いていても何も始まらないって事はわかってるつもり⋯⋯。やるしかないんだ!

 まずは、言われた通りにステータス、と念じてみたら、アニメやゲームでお馴染みの物が見えて、最初はビックリした。
 分かりやすいものから、全く想像も出来ないものまでいっぱいあった。

 私は冒険はしない!  コンテニューが無いなら慎重にいかなくちゃ!

 分かりやすいスキルだけを手に入れて、自分の顔をパチッて叩いて、気合いは入れた。


 ――――――――――。


 それからは《大変》って言葉では言い表せないくらい大変だった。

 周りになめられないように、言葉遣いを変えて、皆に認められるようにモンスターといっぱい戦って――

 戦って。戦って。戦って⋯⋯。

 そんな私を慕ってくれる冒険者も出来て一緒に旅をするようになって。更に二人増えて本当に楽しかった。

 ビックリさせてやろ~。って軽い気持ちで日本のアニメを元ネタに喋ったら、想像以上にビックリしてくれたから、どんどん話しは大きくなっちゃった⋯⋯。まぁ、バレないからいっか。


 暫くして、やっぱりこの《ステータス》って言うのはチートだって実感した。この世界の人達と、私の大きな違いだよね。⋯⋯能力の差がとんでもなかった。

 私は元の世界に戻りたい。でも誰も死なしちゃダメだし、死なせたく無いって思って、夜こっそりと一人で塔を上り始めた。

 80階を越えてからは、私一人なら何とかなるレベルだったけど、あの三人をカバーしながらは絶対に無理だとわかっちゃった⋯⋯。モンスターが今までと比べ物にならないくらい強かったから。
 あの三人には自分達に合ったスピードで成長して欲しかった。でもそれを言えば絶対に無茶してついてくる⋯⋯。

 だから、何も言えず私は姿を消した⋯⋯。

 でも塔の中で何ヵ月も一人でいて。⋯⋯時間がたつにつれて耐えられなくなっていく自分に気づいちゃった。
 どんなことでも良いから話したい!  一人はツラいよ。だからといって今さら何て言って三人の前に顔を出したらいいの?  ⋯⋯無理だよ。

 だから、私は願ってしまった。自分勝手な願い。助けたヒデ君ならって⋯⋯。私は最低だよ。

 呼べたかどうかはわからない⋯⋯。でも、もし本当に呼べてしまったら?

 私は、何かしらの手掛かりを残そうと手紙を書いた。呼べてなければそれでいい。でも、何も分からずにこの、世界に呼んでしまったらと考えた結果だった。ヒデ君なら気付くと思うし。


 それからどれだけの時間がたったかは、もうわからないけど。やっと100階にたどり着いた!  本当に私頑張ったよ。

 でも、そこで待っていたのは、絶望でしかなかった―――――

『肉体と魂が離れてしまっている汝を、そのまま戻すことは出来ぬ。記憶を抹消し、一から新たなる生命としてやり直すか。今の記憶のまま、転移するか。どちらか片方を選ぶがよい』

 頭が真っ白になった。自分が自分じゃなくなる。
 私には耐えられない。それは死ぬ事と何が違うの?

 でも、転移してまた一からやり直すのは⋯⋯。
 もう私はダメになったしまっているよ。

 この世界で強がって生きてきたけど限界だった。

 私は選ぶことが出来ず泣きじゃくった。
 そして、私は願ってはいけない事を願ってしまった―――

「お願いします!  私の願いを聞いてください!」

 そうして、ヒデ君を転移する事。そして手紙を残すこと。ここにたどり着いた時の為に伝言を伝えて貰うこと。


 その代償として⋯⋯。


 今までの世界とは違い、この新しい世界の太陽は、日本の太陽によく似たものだった。

 私はあの世界に来たときと同じ様に、膝をかかえてただただ泣きじゃくった。

 ごめんなさい。ごめんなさい⋯⋯。
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