上 下
93 / 96
第五章

決断

しおりを挟む
 手紙を見つけなれば、素直に元の世界に戻っただろう⋯⋯。もしも話しをするならば、何かの拍子でこの世界の。この物語を思い出したとして―――

 俺はきっと誰にも話さず。時々は一人で思い出して。それでニヤニヤするんだろ⋯⋯。

 勿論、この世界で俺TUEEEしながら一生を過ごすのだって良いかもしれない。ベックさん夫婦に全てを話して、「ただいま!」って、笑顔で挨拶が出来るだろう⋯⋯。

 しかし⋯⋯ユキのおかげで俺は手紙を読む事が出来た。タカコさんを思い出せた。タカコさんが助けを求めてるのを知れた。

 ならば道は一つしかない!  わかってはいる。
 ⋯⋯でも。
 俺で本当に助けになれるのか心配だった。昔のように守ってもらう立場になるだけの⋯⋯、足手まといにしかならない可能性だってあるんだ。

 それでも!  ユキは背中を叩いてくれた。俺に語りかけてくれた。

 ⋯。
 ⋯⋯。
 ⋯⋯⋯。

「俺、助けに行ってくる!  何が出来るかは会ってから考える!」

 ユキを、そして皆を見て俺は伝えた。

「なら、私も行かなきゃですね!」

「⋯⋯えっ?何で?」

 バチンッ!
 ここでもビンタするの?  はぁ~。とため息つくユキを皆が飽きれ顔で見ている。その顔するなら誰か止めてくれよ⋯⋯。

「い  い  で  す  か?  ヒデさんの暴走を止めるのも、ヒデさんのフォローするのも私がします」

 このユキの顔は抵抗するだけ無駄だと、経験でわかる。

「って、事なので私とヒデさんを新たなる道へお願いします」

『承知した』

 俺とユキの体が光始める。これ喋る時間ほぼないな⋯⋯。

「皆さん今までありがとうございました!  マイコは任せて下さい。またいつの日か、この世界で会いましょう!」

「苦労は目に見えてますが、私は頑張りますね!」

 俺とユキが最後の挨拶をすると、三人は笑顔で、

「そうだな!  その時は今と違った環境を見せてやるさ」

「マイコさんを連れてきてくれる日を楽しみにしてるよ!」

「ユキちゃん、大変だと思うけど頑張ってね!」

 俺達が消えるその瞬間まで、皆で手を合わせ笑顔でその時を待った。

 皆の顔を見ながら俺は、
 ここに来た時の事を⋯⋯。そして、今までの事を思い出していた⋯⋯。

 ゆっくりと視界が消え、三人の姿が見えなくなっていった―――

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ―――――。気が付くと、俺とユキは真っ白な空間にいた。ここはどこだ?  と、思うより早く。
 金髪で、白のローブを身に纏った無邪気な顔をした少女が急に現れた。

『やぁ!二人とも元気かな?  これからの世界では今まで培ったスキルはそのまま引き継がれるよ!  レベルを上げて魔王をやっつけてね!  詳しい話しは時間が無いから省いちゃうけど、頑張ってね~!』

 そう言うと、さっきと同様にゆっくりと視界が消える。

「ちょ、ちょっとまっ⋯⋯」

 全然わからねーよ。魔王ってなんだよ。ちゃんと説明しろよ。


 薄れいく意識の中で、隣にいたユキと目が合い、なぜだかわからないがこんな状況ですら面白くなって二人して笑ってしまった――――

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...