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本編
第壱話 人民警察
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午前六時半、私はMADE IN USSRのスマホで設定した目覚まし時計の音で起床する。
前日は、お気に入りの小説を夜遅くまで読んでいたせいで、いつもよりも体の調整が万全ではなさそうだ。
全身に気だるさがあり、瞼まぶたが重くてしょうがない。
自分の生活バランスの悪さを理由に、遅刻するのは申し訳ない。
私は、鉛が埋め込まれたように重たい体を最大限の気力をもって起き上がらせ、両腕を上に伸ばしてストレッチする。
そのまま手をカーテンの前まで移動させ、両手で掴んでえいや、と一気に開く。
すると、窓越しから太陽の光が私の部屋へと降り注ぎ、暗かった部屋を一気に明るくさせてきた。
眩しく両目を塞いでしまうほどに強く照りつける太陽は、寝ぼけた私の脳を一瞬で覚醒させるのには十分なほどだ。
「身支度しないと…」
私は小さく呟きながら、ゆっくりとベットを降りて、纏うパジャマをするすると脱ぎ始めた。下着のままトイレへ向かい、大小便を足し終わったら制服に着替える。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
曳舟の彩り鮮やかな築数年のジュガーノフカで目を覚ました少女の名は「五十嵐希実」。旧姓「加藤」
両親の死で五十嵐姓をもらってこの家の末っ子になった希実は、半年差の兄であり幼馴染の智樹に好意を寄せていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リビングへ寝起きのまま直行し、自分の椅子へ座る。今日の朝ごはんは、白米、目玉焼きに醤油、味噌汁。
「早く食えよ、俺が作ったんだし。」
兄が、そう急かしてくる。確かに、私が加藤だった頃、家庭科の調理実習ではいつも強面の"あの"茂登美谷先生が、智樹の作った料理や刺繍の作品を褒めていたし、他の家族も美味しそうに食べているのもわかる。
試しに目玉焼き、一口食べてみる。
~~~~~~~~~~~~(味わいタイム)~~~~~~~~~~~~~~~~~
クッッッッッッッッッソうめぇぇぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それじゃあ、行ってきま~す!」
「気を付けて~」
家を出ていつもの十字路を左に曲がろうとすると、普段見ない奇妙な光景を見た。
腕に日本語とロシア語の白い文字で『人民警察(Народная Полиция)』と書かれた赤い肩章を付けた2人のスーツ姿の男が、大学生ぐらいの女性に向かって頭にマカロフを突きつけ、
「亡命幇助したのは貴様か?『はい』か『そうです!』か『Да』で答えろ!」
と怒鳴りかけている。
女性は震えているが、私は陰から見ているだけで何も出来なかった。
コブーラに、いくつも銃が入っているのを見た。命の危険を感じて、慌てて十字路の少し手前に戻る。旋毛から爪先まで全身を寒気が襲い、体のあちこちから冷や汗が湧き出る。7月だというのに、真冬の様な寒さを感じている。
あまりの寒さに、トイレに行きたくなり、近くにあった公園のトイレに駆け込んで便器にしゃがみ込むが、恐怖が強すぎて、出る物も出そうにない。仕方なく、下着を再び穿いてさっきの十字路へ戻るが、そこにはさっきの女性の姿は無く、そこには規制線が張られ、事故を起こした2台の車と救急車があった。
近くにいた一般の警官に聞いてみる。
「何があったんですか?」
そう言われると、警官はロシア訛りの日本語でこう答えた。
「この道で事故が起きて…」
喋っている途中に、背中に何かが刺さった様な気がした。しかもナイフとかではない。注射針の様な細いものが…
私はそのまま倒れこんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
前日は、お気に入りの小説を夜遅くまで読んでいたせいで、いつもよりも体の調整が万全ではなさそうだ。
全身に気だるさがあり、瞼まぶたが重くてしょうがない。
自分の生活バランスの悪さを理由に、遅刻するのは申し訳ない。
私は、鉛が埋め込まれたように重たい体を最大限の気力をもって起き上がらせ、両腕を上に伸ばしてストレッチする。
そのまま手をカーテンの前まで移動させ、両手で掴んでえいや、と一気に開く。
すると、窓越しから太陽の光が私の部屋へと降り注ぎ、暗かった部屋を一気に明るくさせてきた。
眩しく両目を塞いでしまうほどに強く照りつける太陽は、寝ぼけた私の脳を一瞬で覚醒させるのには十分なほどだ。
「身支度しないと…」
私は小さく呟きながら、ゆっくりとベットを降りて、纏うパジャマをするすると脱ぎ始めた。下着のままトイレへ向かい、大小便を足し終わったら制服に着替える。
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曳舟の彩り鮮やかな築数年のジュガーノフカで目を覚ました少女の名は「五十嵐希実」。旧姓「加藤」
両親の死で五十嵐姓をもらってこの家の末っ子になった希実は、半年差の兄であり幼馴染の智樹に好意を寄せていた。
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リビングへ寝起きのまま直行し、自分の椅子へ座る。今日の朝ごはんは、白米、目玉焼きに醤油、味噌汁。
「早く食えよ、俺が作ったんだし。」
兄が、そう急かしてくる。確かに、私が加藤だった頃、家庭科の調理実習ではいつも強面の"あの"茂登美谷先生が、智樹の作った料理や刺繍の作品を褒めていたし、他の家族も美味しそうに食べているのもわかる。
試しに目玉焼き、一口食べてみる。
~~~~~~~~~~~~(味わいタイム)~~~~~~~~~~~~~~~~~
クッッッッッッッッッソうめぇぇぇぇぇぇぇ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
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「それじゃあ、行ってきま~す!」
「気を付けて~」
家を出ていつもの十字路を左に曲がろうとすると、普段見ない奇妙な光景を見た。
腕に日本語とロシア語の白い文字で『人民警察(Народная Полиция)』と書かれた赤い肩章を付けた2人のスーツ姿の男が、大学生ぐらいの女性に向かって頭にマカロフを突きつけ、
「亡命幇助したのは貴様か?『はい』か『そうです!』か『Да』で答えろ!」
と怒鳴りかけている。
女性は震えているが、私は陰から見ているだけで何も出来なかった。
コブーラに、いくつも銃が入っているのを見た。命の危険を感じて、慌てて十字路の少し手前に戻る。旋毛から爪先まで全身を寒気が襲い、体のあちこちから冷や汗が湧き出る。7月だというのに、真冬の様な寒さを感じている。
あまりの寒さに、トイレに行きたくなり、近くにあった公園のトイレに駆け込んで便器にしゃがみ込むが、恐怖が強すぎて、出る物も出そうにない。仕方なく、下着を再び穿いてさっきの十字路へ戻るが、そこにはさっきの女性の姿は無く、そこには規制線が張られ、事故を起こした2台の車と救急車があった。
近くにいた一般の警官に聞いてみる。
「何があったんですか?」
そう言われると、警官はロシア訛りの日本語でこう答えた。
「この道で事故が起きて…」
喋っている途中に、背中に何かが刺さった様な気がした。しかもナイフとかではない。注射針の様な細いものが…
私はそのまま倒れこんだ。
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