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02 遊びに行こう 前編
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末「ねえ、お姉ちゃんたち!」
朝食を食べ終えて今日の予定を考えていた3人の姉たちに、末の妹は呼びかけた。長女と三女は顔を上げたが、次女は小説から目を離さなかった。
末「ちょっとツイ姉?聞いてるの?」
次「聞いてるわ」
末子は次女が聞いていると信じることにして、2人の姉に話した。
末「今日予定空いてる?」
長(久しぶりに姉妹で遊びに行けるかもしれないのよ?ちょっとは授業休んでもいいよね!←)
「………今日はフリーかな?」
三(やっと遊びに行ける!ヒャッホー!)
「あるっちゃあるけど明日に回せるよ」
次「………私にはアニメを見るという予定が」
末「じゃ全員ないね!」
自分の声を遮った妹を睨んだが末子はどこ吹く風といった体だった。無駄に打たれ強くなってしまったと少し後悔の念を覚える次女である。
長「ヒカリ、行きたいところでもあるの?」
末「最近オープンしたっていう人気のア・ソ・コ」
4姉妹の中で最も世俗に詳しいのは三女である。長女は王太女業務に忙しく、次女は言うまでもなく興味がなく、末子は聞いてはいても記憶力が悪い。各人の側仕えの使い方が分かる一場面だ。
ということで、三女が思い当たる場所はないかと唸った。すると思い当たったのか、あっと声を上げた。
三「もしかして………ミジシマ?」
末「せ~かい。流石ナツ姉!」
ミシジマとは、先月オープンした総合遊園地のことだ。アトラクションにはジェットコースターなどの恐怖系だけでなく、子どもも楽しめる易しい乗り物もあるらしい。更にプールや温泉もついているそうで一日中誰とでも満喫できるという。メディアでも連日取り上げられている。
三「でもあそこは予約必須でしょ?当日じゃ無理無理」
末(だって行きたいんだもん)
「いやそこは奥の手といいますか………、なんといいますか………」
長「お忍びで行くんだから王女特権は認めないよ?」
末「ユイ姉そこをなんとか!」
三(私も行きたい!ミジシマってすごく高評価なんだよ!?)
「ユイ姉、私からも何卒よろしくお願いしますっ!ほらヒカリも!」
末「お願いしますっ!バイト代1割横流しするから!」
次「ヒカリのバイト代少ないでしょう。新たに稼ぐの?」
末子にとっては爆弾発言だったが他の姉たちはあまり驚いていなかった。顔色をコロコロ変えながら彼女は理由を問う。
末「え、なんで知ってるの!?」
次「誰でも分かります」
青ざめた末子は長女と三女に慰めてほしいで無言で訴えた。彼女らは互いに目を見合わせて仕方なさそうに言葉を紡いだ。
長「ほら、ヒカリ。あなたってよく遊んでいるじゃない?」
三「まあそうだよね。たかだかバイトのわりには遊ぶのに使うお金が多いもん」
末「………分かりました。これからは遊ぶのを控えてお姉ちゃんたちに恩返しできるよう努めます………」
長(もしかしてやっと親孝行ならぬ姉孝行に目覚めたのかしら?嬉しい!)
三(そうは言ってないけど………)
2人が心で思っていることの差がそのまま彼女たちの性格を表している。
次「私たちに恩返しする前にお母様やお父様にしなさい」
話が進まないと感じた次女は自身の側仕えを呼び出した。
次「ヒカリが今からミシジマに行きたいと言っています。………王女特権を使わずに遊べるか責任者に問い合わせなさい。可及的速やかに。分かってるわね?」
側仕え「はっ。かしこまりました」
末(え?)
「ツイ姉、いいの?」
次「いいのよ」
三「分かった!口では反対しておいて本当は行きたかったんでしょ?隠してもしょうがないよぅ」
確信に満ちた三女の言葉は癪に触ったが次女は肯定も否定もしなかった。
長「ツイナ、王女特権が必要だったらどうする気?」
(あなたなら私に従うはず。たまには反対するべきだと思うけれど)
次「姉さんはダメと言うでしょう?」
長「私は王太女なんだから止めなきゃいけない」
次「だから王女特権が必要な場合は行きません。ナツもヒカリも分かった?」
三・末「は~い」
そのとき、ドアがノックされた。控えていた長女の側仕えがドアを開けると次女の側仕えが戻ってきた。自身の主に跪き報告した。
側仕え「報告に上がりました、姫様。王女特権は必要ないそうです。いま私人に扮した王女を護衛する準備を始めています」
次「いつごろにその準備は終わるのかしら」
側仕え「2時間後だそうです。目的地であるミジシマまでおよそ1時間半で到着できます」
次「ご苦労様。30分で準備を終わらせるから表玄関に車を用意しなさい」
側仕え「はっ、かしこまりました」
側仕えを下がらせて次女は長女に問うた。
次「姉さん、どんな服がいいのでしょうか」
長(そうだったね………ツイナの服ほぼないんだった………)
「………深刻だね」
末「ツイ姉はもっと美容とかファッションに気を使うべきだよ~」
三「何を偉そうに。ヒカリはいつも私にチェックを求めてくるじゃない」
次「じゃあ他人のこと言えないわね」
末「何があってもツイ姉と同じにされるのはちょっと………」
三「同意………」
次「失礼な妹たちね」
長「まあまあ。全員で服を決めようか。側仕えに遊園地に着ていける私服を全て持って来させて」
3人「了解」
最後までお読みいただきありがとうございます
次の後編もお楽しみください
朝食を食べ終えて今日の予定を考えていた3人の姉たちに、末の妹は呼びかけた。長女と三女は顔を上げたが、次女は小説から目を離さなかった。
末「ちょっとツイ姉?聞いてるの?」
次「聞いてるわ」
末子は次女が聞いていると信じることにして、2人の姉に話した。
末「今日予定空いてる?」
長(久しぶりに姉妹で遊びに行けるかもしれないのよ?ちょっとは授業休んでもいいよね!←)
「………今日はフリーかな?」
三(やっと遊びに行ける!ヒャッホー!)
「あるっちゃあるけど明日に回せるよ」
次「………私にはアニメを見るという予定が」
末「じゃ全員ないね!」
自分の声を遮った妹を睨んだが末子はどこ吹く風といった体だった。無駄に打たれ強くなってしまったと少し後悔の念を覚える次女である。
長「ヒカリ、行きたいところでもあるの?」
末「最近オープンしたっていう人気のア・ソ・コ」
4姉妹の中で最も世俗に詳しいのは三女である。長女は王太女業務に忙しく、次女は言うまでもなく興味がなく、末子は聞いてはいても記憶力が悪い。各人の側仕えの使い方が分かる一場面だ。
ということで、三女が思い当たる場所はないかと唸った。すると思い当たったのか、あっと声を上げた。
三「もしかして………ミジシマ?」
末「せ~かい。流石ナツ姉!」
ミシジマとは、先月オープンした総合遊園地のことだ。アトラクションにはジェットコースターなどの恐怖系だけでなく、子どもも楽しめる易しい乗り物もあるらしい。更にプールや温泉もついているそうで一日中誰とでも満喫できるという。メディアでも連日取り上げられている。
三「でもあそこは予約必須でしょ?当日じゃ無理無理」
末(だって行きたいんだもん)
「いやそこは奥の手といいますか………、なんといいますか………」
長「お忍びで行くんだから王女特権は認めないよ?」
末「ユイ姉そこをなんとか!」
三(私も行きたい!ミジシマってすごく高評価なんだよ!?)
「ユイ姉、私からも何卒よろしくお願いしますっ!ほらヒカリも!」
末「お願いしますっ!バイト代1割横流しするから!」
次「ヒカリのバイト代少ないでしょう。新たに稼ぐの?」
末子にとっては爆弾発言だったが他の姉たちはあまり驚いていなかった。顔色をコロコロ変えながら彼女は理由を問う。
末「え、なんで知ってるの!?」
次「誰でも分かります」
青ざめた末子は長女と三女に慰めてほしいで無言で訴えた。彼女らは互いに目を見合わせて仕方なさそうに言葉を紡いだ。
長「ほら、ヒカリ。あなたってよく遊んでいるじゃない?」
三「まあそうだよね。たかだかバイトのわりには遊ぶのに使うお金が多いもん」
末「………分かりました。これからは遊ぶのを控えてお姉ちゃんたちに恩返しできるよう努めます………」
長(もしかしてやっと親孝行ならぬ姉孝行に目覚めたのかしら?嬉しい!)
三(そうは言ってないけど………)
2人が心で思っていることの差がそのまま彼女たちの性格を表している。
次「私たちに恩返しする前にお母様やお父様にしなさい」
話が進まないと感じた次女は自身の側仕えを呼び出した。
次「ヒカリが今からミシジマに行きたいと言っています。………王女特権を使わずに遊べるか責任者に問い合わせなさい。可及的速やかに。分かってるわね?」
側仕え「はっ。かしこまりました」
末(え?)
「ツイ姉、いいの?」
次「いいのよ」
三「分かった!口では反対しておいて本当は行きたかったんでしょ?隠してもしょうがないよぅ」
確信に満ちた三女の言葉は癪に触ったが次女は肯定も否定もしなかった。
長「ツイナ、王女特権が必要だったらどうする気?」
(あなたなら私に従うはず。たまには反対するべきだと思うけれど)
次「姉さんはダメと言うでしょう?」
長「私は王太女なんだから止めなきゃいけない」
次「だから王女特権が必要な場合は行きません。ナツもヒカリも分かった?」
三・末「は~い」
そのとき、ドアがノックされた。控えていた長女の側仕えがドアを開けると次女の側仕えが戻ってきた。自身の主に跪き報告した。
側仕え「報告に上がりました、姫様。王女特権は必要ないそうです。いま私人に扮した王女を護衛する準備を始めています」
次「いつごろにその準備は終わるのかしら」
側仕え「2時間後だそうです。目的地であるミジシマまでおよそ1時間半で到着できます」
次「ご苦労様。30分で準備を終わらせるから表玄関に車を用意しなさい」
側仕え「はっ、かしこまりました」
側仕えを下がらせて次女は長女に問うた。
次「姉さん、どんな服がいいのでしょうか」
長(そうだったね………ツイナの服ほぼないんだった………)
「………深刻だね」
末「ツイ姉はもっと美容とかファッションに気を使うべきだよ~」
三「何を偉そうに。ヒカリはいつも私にチェックを求めてくるじゃない」
次「じゃあ他人のこと言えないわね」
末「何があってもツイ姉と同じにされるのはちょっと………」
三「同意………」
次「失礼な妹たちね」
長「まあまあ。全員で服を決めようか。側仕えに遊園地に着ていける私服を全て持って来させて」
3人「了解」
最後までお読みいただきありがとうございます
次の後編もお楽しみください
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