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1章 召喚先でも仲良く

014 体育祭⑤ 〜騎馬戦〜

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 騎馬戦は英華とサクラが出場する。

 僕が通った学校では一度も騎馬戦をやらなかったからルールはよく分からない。
 でも確かパンフレットに書いてあったような………あ、あった。


『出場者は事前に2つのグループに分かれています。
 残った騎馬数の多かったほうのグループの勝利です。
 騎馬の上に乗る人が帽子を被りそれを互いに奪い合って、
 片方のチームの騎馬が全滅した場合には残ったほうのチームの勝利、
 両チームともに騎馬が残った場合には残った組数の多いチームの勝利になります。
 ただし、この競技は危ないので、陣形が崩れた生徒にはわが国の囚人が風魔法を使います』

 そういえば、万象が王国側に騎馬戦を受け入れさせるのに一悶着あったと言っていた。
 もしかして魔法を使わせる点で交渉がまとまらなかったのでは。十分あり得る。


「じゃあ行ってくる」
「いってらー」

 彼女らが去って行った後、アナウンスが入る。

〈みなさん、花形リレーと騎馬戦を残すこととなりました。どんどん盛り上げていきましょう!〉

「あの、コウスケさん」

 のりおせんべいくんが僕を呼びに来ていた。

「あ、はい」
「うちの主があなたを呼んでいます。“ぼっちじゃ寂しいでしょ?”だそうです」
「分かりました」
 

「2人は騎馬なんだっけ、騎手なんだっけ」

 念のために言うと、この場合の騎馬とは下で支える人たちで、騎手は上に乗っている人のことだ。

「2人とも騎手だったよね?」
「ああ」
「見やすい位置でよかったよ」

〈皆さん、ただいまより騎馬戦を始めさせていただきます!〉

「のりおせんべいくんおいで」

 暇柱がAから奪う。

「ちょっとこの子はボクのなんだけど」
「なんで所有物みたいなこと言うの」
「違うってば。のりおせんべいくんはボクのほうがいいもんね」
「えーうーあー」

 迷っているのがよく分かる反応だ。

「お前らが喧嘩するならオレがいただくさ」
「「え?」」
「勝手に他人のを奪うんじゃないわよ」

 と嗜めたかと思えば、1人で愛で始めた。

「おい」
「何よ。可愛いは正義っていうでしょ。文句ある?」
「文句しかないが?」
「夜久、返してあげてよ」
「Anneちゃんが言うなら………」

 受け取ったAnneは宣浩に手渡す。
 困惑したようで助けを求めるかのように視線が揺れている。

「触ったことないでしょう?」
「………ない、けど」
「撫でないとこの人たち喧嘩になるからさ、人出すけだと思って」
「コウスケくんの言う通りです。どうぞお好きなように撫でてください」
「………分かりました」

 緊張と不安が混ぜあうカクカクした動きで頭頂部を触った。
 心地よさに少し彼の目が緩んで思いっきり撫で回す。
 その後は微かな嗚咽を漏らしながら抱きしめた。

 なにが琴線に触れたのか分からずAnneに流し目をした。
 彼女も分からないようだったが、体育祭でうるさいのだから他人に泣いているのがバレる心配はない。
 吐き出せるものは全て出してしまえ。
 僕たちに影響を与えるよりはいい。

〈では後半戦を始めます!〉



 英華とサクラは同じチームだったので応援しやすかった。
 結果としては2人の勝ちだったよ。


 その頃には宣浩は復活していた。
 何もなかったですよと言わんばかりの表情だったが、まあ本人が言い出すまでは放っておくべきだろう。
 そんなことより大事なことがある。………次が最後のリレーだ。





☆?side☆


 あれはいつからだったんだろう。


 私はシングルマザーの家庭で育った。母と姉と3人暮らしだった。
 小学生中学年のころまでは順当に愛されていたと思う。母は姉も私も平等に愛していた。

 それが崩れたのはいつだったか。


 私は、自分で言うのもなんだが、成績がよかった。小学生のときは100点ばかり取っていた。
 いつも忙しく働いている母を喜ばせたい、最初はそんな純粋な思いだった。
 母はとても喜んでくれた。だから次も頑張った。

 友達より勉強を優先した私を姉は嗜めたが、みんな褒めるから問題ないと突っぱねた。
 そんな姉は中上位の成績を持っていた。
 悪くないが、母にとっては私より格下という認識になっていった。


 夕食はいつも姉が作ってくれた。私ははっきり言って料理は苦手だったからだ。
 幼少期は姉の料理をちゃんと褒めていたはずなのに、いつしか母は褒めなくなっていた。

 きっとそれと関係があったのだろう、穏やかで優しかった姉が荒んでいくのが目に見えて分かった。
 彼女が中学に入ってからタバコを吸おうとしたことがあった。結局吸わなかったけど大喧嘩に発展した。
 今から思えば、あれが姉妹関係に亀裂を入れたのだろう。

 姉が中2のとき、私が小5のとき、学校でいじめにあい始めた。
 家で母にも姉にも遠慮していた私は、同年代の子に比べて穏やかな性格だったこともあり、先生に褒められていたのが気に食わなかったのだろう。
 そんなことをすれば怒られるのは分かりきったことなのに馬鹿なことをしたものだ。
 このときから、私はだんだん冷めた考え方をするようになった。

 中学に入ってからは、学校ではいじめられ、家では姉が料理を作らなくなりだし、母は朝帰りする日もあった。
 冷めていたので、愛情がほしいと思わなかったがお腹が膨れなかったのは痛かった。
 食欲は大きいのである。
 誕生日は流石の姉もちゃんと作ってくれた。
 しかし、それも1年で終わってしまった。


 人間の三大欲求のうち1つが欠けてから、冷めた考え方だけではストレスを抑えきれなくなった。
 とても、辛かった。
 比例するように人生を賭けていた成績がだんだんと落ち始めて、母からの愛情すらもなくなった。

 中2の誕生日は寒かった。
 家に帰りづらくなっていたが、今日だけはどっちかと普通の家族をできるんじゃないかって期待していた。

 でも裏切られた。


 私の存在価値ってなんなんだろうね?

 そう思ったから、んだ~。
 よ!

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