魔王と! 私と! ※!

白雛

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第四章『血染めの花嫁と敗北の遺伝子』

イントロ

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十二月

ーーーーーー

「国王裁判所へ。私が判決発見人になります」

 犯罪が発覚した時、選択できる方法として、フェーデ・和解・裁判の3種類がある。
 フェーデは、実力行使で復讐を果たす事をいい、今ではあまり行われていない。

 今回は裁判を行い、犯罪者を断罪するのはごく当然の流れだ。しかし、

ストックトン侯爵が、雪冤宣誓せつえんせんせいを行ったら、どうなるかご存知なのですか?」

 雪冤宣誓は、被告が罪を否認する事を言う。ストックトン侯爵は、罪を認めたくないならば、自身の人格を肯定してくれる宣誓補助者を探さなくてはならない。

「勿論知っているわ。だけど、彼が12人もの宣誓補助者を見つけられるわけがない。宣誓補助者は、彼が嘘をつく様な人じゃないって、宣言しなくちゃいけないのよ。
彼が正しい人物だって、最後まで言い切れる人が12人もいる訳ないわ」

「決闘裁判に持ち込まれたら、アイラ様では勝てません」
「その時は、決闘裁判の前に神明裁判しんめいさいばんを希望するわ」

「それでもし、ストックトン侯爵が神を騙し抜いたら?」

「そんな事絶対にありえない。神も集まった方々にも真実は必ず伝わるわ」


「もし決闘裁判になったら、私を代闘士に指名すると約束して頂けますか?」

「・・いいわ、その時はウィルソンに代闘士をお願いする」
「嘘吐き、アイラ様の嘘は直ぐにわかる」

「判決発見人は、貴族や奴隷以外の自由人がなると、通例で定められております。平民の私なら、資格があります」

「アイラもウィルソンも、落ち着きなさい。国王裁判所に訴え出るのは、私も賛成だ。判決発見人にはウィルソン、補助をアイラと言うのはどうかな?」

「それがいいと私も思います。恐らく裁判官は、陛下が為されるでしょう。ストックトン侯爵はそれなりに人脈もあるので、宣誓補助者を見つけてくる可能性はありますね。
神明裁判、神判の結果は神のみぞ知ると言うところですが、恐らく彼は拒否するでしょう。いずれにしろ、決闘裁判だけは避けられる様に手を打ちましょう」

「雪冤宣誓するのは、ストックトン侯爵だけだろうが、自分の手を汚すのは嫌いな彼の事だ。神判で熱湯や火に手を突っ込むとか、水に投げ込まれるとか。絶対にやらんだろう」

「でも逃げればそこで、罪を認めた事になります」
「神判直前まで持ち込んで、逃げた所を捕まえるのが一番安全そうだ」


 裁判は、思った以上にあっさりと完結した。

 裁判は公開で行われた。裁判集会場には、社交界で評判のエジャートン伯爵が、判決発見人の一人だと知った多くの貴族が集まった。

 被告は5人。ストックトン侯爵とデイビッド、胴元のジェイソンとビクターそしてウォルター。
 アイラ達から全ての証拠が提出され、罪状報告がなされた。証人としてシンディとバイオレット、メリッサが召喚されている。

 予想通り、ストックトン侯爵だけは雪冤宣誓を行った。彼が集めていた宣誓補助者の一部は、宣誓の後、ストックトン侯爵が誠実な人物であると証言したが、殆どの人が拒否してしまった。
 ストックトン侯爵は、決闘裁判を望んだが陛下から、
「ならば、神明裁判を行った後に決闘裁判を行うのはどうかな? 勿論代闘士は認めん」
の一言で、ストックトン侯爵は崩れ落ち、全ての罪を認めた。

 ストックトン侯爵は、爵位剥奪の上で終身の鉱山奴隷に。デイビッドは10年間の鉱山奴隷となり、その後解放される。
 胴元とビクターは、一週間の鞭打ち100回の後公開処刑。ウォルターは、北方開拓団で5年間の無償労働となった。


「アイラ様、漸く終わりましたね」
 ソフィアが声をかけるが、アイラとウィルソンは浮かない顔をしている。

「そうね、トマス様やアルフレッド様にご挨拶をして、領地に帰りましょう。陛下にもお礼のお手紙をお出ししなくては。
メリッサ達の保護をしていてくれてありがとう」

「4人纏めて、ロンメルの保養地で保護していたので、世話をしていたトスティが一番苦労したみたいです」
 ウィルソンが、トスティからの報告を思い出して、苦笑いしている。

「メリッサの事は分からないけど、後の3人が勢揃いしてるなんて、トスティの苦労が想像出来るわね」
「トスティはリリアの実家で長い間楽しんでいたので、釣り合いは取れてると思います」

 領地に帰る事をあれ程望んでいたのに、領地には最後の一人が残っている。

 ビクターが言っていたのは・・。

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