魔王と! 私と! ※!

白雛

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第一章:『歌う丘』

エピローグ

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 酒場の親父の話はここまでで一区切りついた。
 話の間中、屋内おくないでも屋外でもひっきりなしに村民の歌声が邪魔してきているが、とにかく楽しげな雰囲気ふんいきが止む様子はなかった。
「……それ以来、この村ではな。何はなくとも歌うことにしているのさ。いつでもどこでも、何があっても、歌えば自然と誰でも友達になれちまう」
「へぇ、魔族と人が友達だなんて珍しいこともあるもんだと思ったら、そんなことがねぇ」
 腰に仰々ぎょうぎょうしい直剣をぶら下げている以外はきわめて平凡な見た目の女剣士の一方、隣で小さなフードがギクリと肩をこわばらせた。
「で、そのハルピュイアたちは今も渓谷に?」
「実は何人かはその後に海に渡って、羽根を尾ヒレに変え、今度は海の男たちをなやませるセイレーンと呼ばれるようになった。だが残ってるのもいるよ。人間と気が合って、村にそんまま住んじまってるのもいる。かのハルピュイアの娘と同じようにな。耳をすませば……ほら、今も聞こえるだろ、渓谷の向こうからも、美しいハルピュイアの歌声が」
 今、その屋敷は村を代表する宿になり、老竜のいた丘には新たに小さな石碑が、元の大きな石碑にえられるように三つ、建てられていて、今日も、鳥人と村人のハーモニーが、青い空に響きつづけている。
 盲ろうの名領主とハルピュイアの娘の恋物語と共に、聖地としてあがめられている。

 されどもう一人。
 少年に献身的に尽くした女中がいたことは、あまり知られていない。
 これを見ている私たちだけの秘密である。





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