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メン限的な見たい人だけギャグなし話

特別第八回(第五十八.六回)『感じ方の違い・続々』

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「前回の続きでさらにさらに掘り下げていきます」
(ほいきた)
「……ぐぅ」
 ミカがiPhoneのカメラを付け直す傍ら、マギはもううつらうつらと船を漕ぎ始めていた。
「今回も男性脳女性脳という分け方をしていくけど、あくまで脳の性質に依った話に付加された個人の偏見だからね。結論がバランスなのは言うまでもなく」
(うん。フォローは入れるけど、実際こういうフォローをフォローとして噛み砕けてる方や、きちんと読んでくださってる方ってのは言わずもがな承知済みで、噛み付いてくんのって読めてない人だったりするんだろうけどね……)
「置き論破?」
(置いててもアレな人は通過してくるというか、だから気遣いなんて必要であって必要でないものっていうか、挨拶で、無敵な人はそれゆえの無敵というか……)
「置きに対処する必要がなく、ガン責めするだけって禁止級だな、実装されたその数時間のうちに晒されて炎上しそう」
(炎上しても失うものなくてノーダメだから。ほんと無敵の人って無敵)
「しかし、ゆえに誰からも相手にされなくなると……前置きはこの辺にして。前回は今は女性脳が優位になって共感を押し付ける社会になってね? だからめんどいんだよ。気遣うし、疲れるしって進めて、女性進出の危険性まで含めたところでした。だからこそのバランス感が大事なのに、フェミがややこしくしたと。で、コイツをさらに掘り下げていく」
「……ぐぅ」
「そいつらの特徴から挙げてこう。合う、合わないが基準の人です。いるじゃん。そういう人。しかし私は思う。彼らは幼稚なだけであると」
(いきなり売ってくねー。世間の風潮的にも、そんなに悪いイメージじゃないとこに)
「それこそが最悪の悪だからだよ。分かりやすい悪は言うまでもないじゃん。わかりにくい悪のことこそ語る意義がある」
「……すぅ」
(よし。マギはねんねの時間だから、私がマギ役をやろう。え、でもそんな悪いことじゃなくないですか? 合う、合わないって基準として普通だし、むしろ明確で)
「個人主義みたいな風にも言われるよね。これも個人主義とかって言い換えてるけど、要は単なるワガママだから。それを都合よく伏せつつ代用できる言葉が……顕れたなんて言い方はおかしいけど、顕れたから使うようになっただけ。ワガママですとは言い難いじゃん。でも個人主義だからっつーと、なんか一つの在り方として許されるみたいなクソみたいな考え方。自立との違いはこのすぐ後に語りますけど、正当化の一種なんだよね」
(そもそもが不勉強の為せる業だよな、その辺は)
「うん。レゾンデートルとかノブリスオブリージュとかアナフィラキシーとか。初めて漫画やゲームで知る分にはいいけど、大人になってから知りましたは話にならねー。本読まないだけ、そいつが」
「……すぴぃ」
「で、話を戻すと、合う合わない人間の何がめんどくせえかって、そいつの言う、『合う合わない』って『合う合わない』じゃないんだよ。自分に『合わせろ』っつってんの。で、そいつに周りが『合わせてやってる』のを、『合う』って解釈するわけ」
(あー……私はミカ派だからな。もう、ほんとそれ、としか言えないし、ミカじゃないからはっきり言うと配信者にありがちー!)
「…………」
「趣味とかを論じるときに、理解できない、って評する人いるけど、私あれも嫌いで、理解って言葉の意味もわかってない学のないアホほどこういう言葉の使い方するのね。前回も言ったように、他人の宇宙なんか理解できるもんじゃありません。おこがましい。だからそもそもコミュニケーションってのは、多かれ少なかれ合わせるって部分が生まれるのが当たり前の話で、その上で合う合わないなんてのは、この人は私に合わせてくれないーって駄々こねてるガキの言い分に過ぎないっつーことなんだよ」
(前回言った、お子ちゃまのお飯事ってのはそういうことだね)
「そうそう。合わないのが普通。だから、これはこういうことなんだよね? って確認しあっていく意思疎通ってのが大切なんであって。そうして段々打ち解けていくのが関係を育むってことでしょ。それでも理解には程遠いのに。蛙化なんて流行った時期が去年あったけど、言語道断なんだよあんなん。人間としてのレベルが低すぎる」
(あー、あったあった。そもそも蛙化って、相手側の問題じゃなく、未熟な自分が予測できない言動に対応できないから避ける、ところに由来する言葉で、彼ピッピの言動で冷めるって解釈からして自分本位かつ短絡的で違ってんだよな……同じ女に見られたくないレベルの人たち……)
「うん。で、その背景にも共感性の社会、のいわばバランスの取れてなさが起因してると思ってる。共感=優しさ、ヌクモリティみたいな勘違いから、その良い面だけをピックアップし続けた結果がこの歪んだ現状。もしこのままクソフェミの言う男女同権、一括実力主義の社会になったとしよう。一番痛い目みるのは女だよ。だって、男性脳の解決性に比べて、女の共感性って発展や機転には向かないもの。日本はどんどん競争力が落ちて転覆するだろうね。性的搾取とか言うけど、皮肉なことにそれがあるから許されてもいるのが女。どうしても男には勝てない。生かされざるを得ない悔しさがあるの。だから負けたくないって頑張る人は格好いいよ。でも、それはそれとして、だから、大概のために、それぞれの得手不得手を踏まえて棲み分けとか役割分担してたのに、うちのゴキジェットクソフェミときたら……」
「男が女化したように、女が男化するって線はどうですか。たまにいますよね、おっかない女上司。キャリアがすごくて、口で言ってるだけじゃない、本物のサバサバ系の人」
 マギが目を覚ましていた。
「お、起きた? うるさかった?」
「それはいいんですけど、どうしても聞き捨てならない箇所が」
「そっか。よしよししてやろう。今日の私は男前ミカだから」
 ミカは容易くマギの頭を撫でながら言った。
「うーん。たぶんね、バブルの頃とか一瞬なりかけた時もあったんじゃ? と思うよ。それこそあの時期は聞くだにセクハラ程度何のそのじゃなきゃやってられなかったみたいに言うじゃん?」
「あー、確かに。そうですね。皮肉……いや、嫌な話ですけど、ある意味では修羅場で鍛えられたと」
「うん……だから、適応するとか、苦手だけど負けたくないって根性で喰らい付いていったり、それを否定はしてないし。その先に男化もあるのかもしんない。けど、現状、世の中が順当にディストピアに向かってるのを鑑みると、まず男と女の立ち位置をそれぞれ取り戻したほうがよくない? と思うけど」
「世界的には、もう女化って珍しいことではないそうですよ」
「それこそジャパニーズファーストをするしかない。アメリカもトランプが返り咲いたらどうなるか分からんよ? その時安倍さん時みたく並び立てる日本でいられるか、今はそれすら分からないような状況でしょ。で、海外では、って言うけど、海外の処方箋が日本に効くとは限らないし、むしろそれをやり続けて、日本はこうなったって思ってるから。私は。戦後の資本主義経済ってのがまさにそれ」
(やべぇ……めちゃくちゃ難しい話になってきたね)
「だいぶ本分ともズレてきたしね。海外ではー、なんて言う奴には、お前日本人だろ?笑 ってのは言いたいわ。日本独自のやり方を見出さなきゃいけないんじゃないの? って」
(日本って元々孤軍奮闘というか、色々世界の基軸から外れた秘境みたいな文化だったのにな……。今や海外……というか、キムチ臭くなってしょうがないけど……)
「お侍さんの国がいいよな。明治あたりが最高だったよ。たぶん。海外からもそれを望まれてると思うんだけど、なぜかお隣を崇拝し、真似したがる人が絶えなくて最悪」
(和洋折衷しながらも紳士とはいからさんと袴着が違和感なしに同じところを歩いてんだもんな……で、みんなガチでオシャレだし、綺麗だし、格好いいし)
「SNSの影響ばかりを追ってくと、こういう自分の色が薄れていけない。向こうはそんな今の共感性文化を利用する連中かもしれないってことを忘れちゃいけないよね」
「……それは、そうかもしれませんね」
 マギは言った。
「でも、さっきの合わせるとか何だのって話は、まさしくメンヘラのやることじゃないですか? パイセンとか、ポル子とか、どうなんです?」
「そうだね。男女を入れ替えれば、それがオラオラ系だよ。あるいはパワハラ上司。メンヘラを神格化はしてないよ。けど、私はメンヘラであってメンヘラにあらず」
(その心は!)
「元ギャル天使だから! なんかこう、バファリンだとかビッチだとかその辺から(神自身も)最近錯覚してたけど、私、そっち系ビッチだからさー」
(私はメンヘラであってるけど……)
「メンヘラ系ビッチではなかったわ。ダッハッハ!」
「笑えるか。タイトルにもしちゃったじゃないですか。どうすんすか」
「メンヘラってのも、考えてみたら多様というか、色々なメンヘラいるじゃん。単なる怠け者から、太宰治みたいなのまで。代表格は太宰治だと思うけど」
「太宰治って典型的な怠け者ってか、サイコパスってか、そんなところじゃないですかね。苦しいですよ」
「創作家なんてみんなメンヘラだよ。だからやれるんだ」
 ミカは開き直って言うのだった。
「あと宇多田ヒカルさんがこの、人の気持ちのわかる、わからないに関して、すごく良いことをXで呟いてたんだけど、見つからなかったので、好きな人は探して。人の気持ちなんて、わからないから、わかろうとする、そこに感情が産まれるんだ的な感じの。で、私もそれがいいと思う。合わせるなんてのはね、とにかく良い関係の築き方じゃないんだよ。心当たりあんなら今すぐやめろ、そうじゃない自然体の関係の築き方を目指せ。終わり。遊ばせて」
「いつも遊んでません? 言葉やそれら全般で」
「なんかゲーム欲が半端ない。配信観ててもそうだけど、私、観たらやりたくなる派だから。観るだけで満足なんて絶対ない」
「あ、そのネタでまた一つ論じられそうですね」
「やめろー、本当に遊びたいんじゃ。ピクリマとかウィザードリィみたいなシンプルなRPGをじっくり思う存分没頭して時間を忘れてやりたい……やりたいよー……うえええん……」
「そんなにか。泣くなよ……」
 泣きながらミカはiPhoneのカメラを切るのだった。





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