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白雛

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第五十回『カクヨムいってきた特別編』

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 ちりんちりんっ。
 そんな鈴の音とともにミカは自転車でスタジオ入りすると、リツ、レイと並んで一カメに拳を掲げてみせた。
「カクヨムいってきた」
「はいはい。チャリでな」
 タイトルアップ。
 スタジオは冬季限定座敷セットが設けられて、キャストの天使四人はコタツにぬくぬくとしながらの収録が続いている。
 ミカが切り出した。
「というのもさ。新年一発目の回(第四十四回)を見てもらえたらわかる通り、スタッフの方で少々手違いがございまして……」
「手違いで済むか。あれ、こうしてネタで消化できたから良かったものの、私たちからしたら普通に死活問題だからね。新年一日目にして早くも起きた人災!」とマギ。
「生きるってことは日々ネタと出会うってことだよ、マギ。見つけようと目を凝らせば無限に湧いてくるもんだ」
「……なんか普通に良さげなこと言ってごまかすな、ビッチのくせに……」
「で、かいつまんで言うと、元々アルファポリスの方で賞に応募しようとしてたところエントリーされてなかったっていうケアレスミス。けど、ぶっちゃけると元々カクヨムコンにも出すつもりだったし、新天地に飛び込む良いきっかけになったからいいかみたいなノリ」とミカ。
「あんま細かいことは気にしないんですよね。ほんと、他人にとってはどうでもいいような些細なことで番組に影響きたすくらい落ち込むくせに……神からして厄介なんだから。で、あと、そろそろ新シーズンも始まりますしね」
 とリツが何気なく漏らし、マギが食いついた。
「え、新シーズンって? え、なにそれ」
「え。我々天使じゃないですか。したらやっぱ悪魔も必要でしょ? ツノの生えた、ナルメアさんみたいな感じの」
「おい、禁句じゃない? それ。神の造形的NGワードでは? 大丈夫なん?」と続けてマギ。
「知らん。で、それでライバル社が出てきて、幽白ばりの方向転換図るみたいですよ」
「そうそう。悪魔の報道結社との臓物飛び散らしまくり、ハンニバルやソウくらい容赦のないサバイバルが……楽しみねー」
「当事者がソウとかハンニバルを楽しみにすんな。……で、ちょっと待ってくださいよ。私、何も……」
「しかも敵の悪魔は家族連れなんだってさ。ダメな姉、しっかり者の妹、バカ(未定)、アホ(未定)の四人だって」
「後の二人適当すぎんだろ……で、待ってください。私……」
「ぷっ……ダメな姉だって。頭がそんなじゃ先が知れてるわな。そんなんで報道界隈やってけると思ってるのかねぇ、こいつら……」
「ギャハハハ!」
「…………」
 マギは瞬間的にミカのまつ毛を引きちぎった。
「……あっ! あっ……」
「なんで私だけ話来てねーーーのっ!」
 マギは憤慨しながら言った。
 ミカのまつ毛は左目の真ん中のとこだけ綺麗に抜け落ち、その勢いでちょっと血が滲んでいる。ミカは手で押さえると、血のついた手のひらを確認して、また押さえながらマギの慟哭を見守った。
「一回からパイセンを支えて、リッちゃんが来たときも笑顔で迎えて、パイセンがクソみたいな理由で休んだときもカバーして、パイセンがクソみたいな理由で暴れたときもフォローして、パイセンが今の姿になってからも世話して、自分で言うのもなんだけど、正直、この番組のために一番神経削ってきたの私だろっ!」
 解説しよう。マギは今の姿といったが、ミカは諸事情(第二十七回参照)により見た目八歳児のロリ天使になつてしまっているぞ! しかし、頭は元のまま。見た目は子供、頭脳はメンヘラ。それが今のミカなのだ!
 マギの悲痛な叫びはスタジオに響き渡った。
 しかし、非の打ち所がない正論だったから誰も何も言い返せなかった。
 正論は伸びないのだ。
 やがてリツが遠慮しがちに切り出した。
「まぁ、あの……なんかあれですよ。スタッフのポカとか入れ違いとか、あとはドッキリとか、はたまたミカ先輩の悪戯とかですよ」
「どれでも許せねーよ、私……」
「そうね。私たちもちょっとおふざけが過ぎたわ。ごめんなさい、マギ」
「レイさん……」
「じゃあ、これから私たちの知り得た裏話を裏でまとめときますか。マギ先輩加えて」
「リッちゃん、珍しく良いキャラしてる」
「珍しくは余計ですよ、もう……」
 談笑しながらスタジオを抜け、控え室に向かう三人だったが、ミカは何もしていないのにいきなり後輩にまつ毛を抜かれ、今も血の滲む手のひらを時折見ては三人の後を追うのだった。
 そんな四人の番組です。
 よろしくお願いします、とミカのマネージャー小鳥遊がぺこりとお辞儀し、
 カットが入った。





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