やる気ない天使ちゃんニュース

白雛

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第二十七回『自分の芝生のが青く見えて仕方がない人たちのために』

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「あら、パイセンが少女漫画雑誌って珍しいですね」
「……別冊マーギャオットってやつ」
「なにそのマーガレットのパチモン。魔界ではそんなん売ってんの?」
「ぴき」
 ミカの青筋が走ったそのときだった!
 突然リツが持っているミカのソルヴァイスが震えだし、光の柱を天高く登らせた。
 ギュイギュイギュイィィーーーーンッ!
「ミカモン、アンリミテッド進、化ァァーーーー…………ドグサレビッチモンンンッ!」
 より際どく薄い衣装に身を包んだ六枚羽根の天使がスタジオに降臨した。
 解説:ドグサレビッチモン。完全(にアウト)体!
 ミカモンが、自分だけは難を逃れて加差別側にまわりつつ、チー牛やそれらの信奉するコンテンツを世間の動向に合わせて叩こうとするオタ女子どもにブチ切れて目覚めた完全に闇堕ちした姿。なのになんで天使かって? お高く止まって加差別するクソアマより、分け隔てなくヤラせてくれるビッチのがよっぽど天使だろうが! だからママが人気あんだよボゲッ!
「うわっ、失敗だ! ウィルス種だ!」
 ドグサレビッチモンの出現でスタジオは騒然とした。
 スタッフはドグサレビッチモンの放つ瘴気から逃げ惑い、どたばたと騒然とするのだった!
 ミカモンのパートナーであるマギは変貌したドグサレビッチモンに追いすがりながら、虚しく名前を呼んだ。
「ミカモン……ミカモーンっ!」
「ギャオオオーーーーンッ! 中身がわかんねぇのによくやるだ……? はぁ? おめえらの小せえ脳から捉えた狭量で矮小な世界ほど、男は女を見た目で判断してねーーーーってことだろうが! ルッキズムですか? ルッキズムですかぁっ? むしろVのガチ恋勢の存在は、顔面崩壊系女子には朗報だろうがよっ! 中身を推せて『尊い……』とかって言ってやれねーでなんですぐマウントにはしんだよっ! このクサレ世の中はぁぁーーーっ!」
「ミカモーンっ! もう司会、やめてくれーっ! 私の声が聞こえないのかっ、ミカモーンっ……! この仕事やめてくれーっ! お前、もうこの船降りてくれよーっ! 謝罪じゃなかったぞ?! 置いていこう! そのとおりだ! 出航ーーっ! ミカモーンっ!」
「アイドルっていうより福祉……? お前、福祉の仕事なめてんのかっ! めちゃくちゃ大変だからなっ……私も正直よく知らないけど……さておき、それ言ったら、アイドルそのものがもう私ら変質偶像崇拝者の福祉だろうがぁぁああーーーーっ! 『自分の応援するジャ◯ーズやバン◯ンや歌い手だけは神聖』とか思って『それを応援する自分たち』は棚に上げて、健気なイメージで取り上げるくせに、他方は差別を助長するような漫画で、手前勝手な異性像持ち出して、他所様の庭、正義面で荒らしてんじゃあねぇえああーーーっ!」
「つかめっ、え、がいーたゆーめを……まもれっ、だ、いーじなとーもを……」
 この名曲だけはさすがに替え歌で汚せない……。
 その足元でリツは懐かしさに涙しながら熱唱することしかできないのだった……!
 マギはリツの顔面にツバを吐き捨てるように言った。
「いつも肝心なとこでクソの役にも立たないやつっ! ミカモーンっ! そうだ、笛! 誰か、笛もってない? ノリのいいパイセンなら笛の音で、止まってくれるはず……!」
「いや見ろ!」
 スタッフの一人ミカのマネージャー小鳥遊がスタジオの高い天井を指差した——。
「いやぁぁっ! どさくさに紛れて痴漢する気だなぁっ! てめえっ! ゴキブヒィィィーーーーっ!」
 しかし——マギはリアルの男がどうしても無理な性質だったので、小鳥遊は即座にぶん殴られた。
 一方で涙を流しながら、ここぞとばかり気持ちよさそうに歌いつづけるリツ。もう一方で、スタッフにマウントをとって気持ちよさそうに殴り続けるマギ。
 そしてたかだか少女漫画の一セリフが思いのほか効いてしまい、ギャオって暴れるミカ。
 大混乱の末に舞い降りた女神はレイだった。
「あらあら。ミカちゃん……クリスマスが待てないなんて悪い子——暗黒の世界に消し去らねばならんっ!」
「ねーね……!」
 レイは金色のロッドを闘気にかえ拳に溜めると、ミカに向けて容赦なく撃ち放った。
「ヘヴンズゥゥーー……ナックルッ!」
 クリーム色の闘気がドグサレビッチモンを撃ち抜くとそのまま周囲を光が包み込んだ。
 気がつくと、スタジオの中央。
 力を使い果たして幼児化したミカがねーねの膝下で抱かされていた。
 マギとリツ、その他スタッフが駆け寄ると、
「ごめんね……? マギチぃ……」
「マギチって誰だよ」
 小さな白い羽根をぱたぱたしながら、ミカは一生懸命に言った。
「みんなに仲良くなってほしかったの……しょせん、みんな、同じキモオタなのに。なんでにくしみあうの。チー牛がなにをしたっていうの? 藤井くんだって大概チー牛顔なのに、将棋かぷよぷよかってだけで扱われ方が全然違うのはおかしいじゃない……」
「それは正直思ってたけど」
「腐女子だって、ちょっと同じクラスの男子でホモォしてしまっただけ。夢女子はキャラにガチ恋してるってことでしょ。でも、それを悪く言う人はいないのに。チー牛はそれらと同じようなことをするたび、こんな風に吊るしあげられて……あれ元のタイトル『自画像』だぞ。調子こくのもいい加減にしろよ……ルッキズムそっちじゃねえか……何ならアデノイド顔貌や小顎症っていう病気で本気で悩んでる女だって普通にいるんだからな……そういう人を嘲笑う人って顔に出るからな、顔に。見る人が見たら一瞬でわかる、醜いその笑い顔によ……」
「パイセン……そういう人、大っ嫌いですもんね……」
「プーチンだってゼレンスキーと肩組んで指差しながら鼻で笑うレベルのことをしてんじゃん……本当に恥ずかしいのはプーチンか、ハマスか、被害者ぶって今や加差別の中心になってる国産フェミか……そろそろまたジョーカーが現れかねないぞ……まだ単独犯だからいいけど、集団ジョーカーが国内にガチで現れたらどうすんの……やり返されないと思って、平和ボケもいい加減にしろ。ねぇ、そうは思わない……? マギチおねーちゃん……」
「ロリ化してなおこれか……アデノイドや小顎症のくだりはともかく、再起は難しそうですね!」
「大丈夫だよ、マギおねーちゃん」
 ミカは短い手足でぴょんっと飛び起きると、続けた。
「ロリと天使が合わさったら? そう、最強ってこと!」
「混じっちゃいけないビッチって属性忘れてんぞ」
「私はチー牛もガチ恋もおっさんも、腐女子も夢女子もアデノイドも小顎症の人も、その辺理解ある誰でもこい系女子だから! 差別主義者だけは何をどうされても、全然カワイソーとは思わん」
「もうネタに詰まったからって、まとめサイトは二度と見ちゃダメよ? ミカ。あれは現代の掃き溜めだから。まだSNSのがマシだから」とレイ。
「うんっ!」
 ミカは元気よく答えた。
「ジョーカーはまとめに出たら……」
 カットが入った。





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