陽性変異 Vol.2

白雛

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第二変『代償と千変の一角・前』

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「……本年もまた大変暑さが厳しい年になると言われています。生徒の皆さん、並びに先生方も、くれぐれも熱中症に注意して、外出の際には塩分と水分を持ち……」
 教室にあるテレビから校長先生の声が流れていた。
 私は他のクラスメイトと同じように黙ってそれを聴いていた。けれど、まるで内容は入ってこない。
 こんな時間に、何の意味があるんだろう。
 これなら社会科の先生の小噺一つ聞いているほうがまだ面白い。校長先生っていったい何者なのだ? 毎日学校に来て、いったい何をしている人なのだ? それは学生全員が一度は考えたことのある違和感だと思う。それだけに当の校長先生からすると、生徒との距離感が実に悩ましいところなんだろうけれど。
 一番触れてはいけないのは教頭かもしれない。
 まだ校長はそれでも出番があり、この学校のまさしく長なのだと言われればその立場は明快だ。
 けれども、教頭はもっとよくわからない。
 教師たちの陣頭指揮なのはわかる。けれど、校長がそれもやればよくない?
 営業やら何かをやりに校長先生が動くとしても、やっぱり一人では心細いのだろうか。そのための、なんかもう一人ついてきてほしいな……? っていう存在だとしたら、ちょっと可愛いかもしれないな。
 校長 × 教頭。……いやいや、流石に歳が……。
 しかし、例えばこれがもし三十代くらいの年頃の男性二人だったとしたら、きっと女生徒の大半はそんなもっといけないことを想ってしまう。
 だからたぶん、おじいさんが適任なのだ。
 ……って私は、×なんて普段使わないのに、むしろ初めて使ったのに、いったい何を……。
 そんなことをつらつらと考えて、頭を抱えていた。いたって、何事もなかったように。
 皐月も同じだった。
 その後ろ姿を視界の隅に捉えると、彼女はおそらく目を開けたまま寝ているのだった。もちろん半透明のモヤなんかじゃない。今はきっちりと肉体に収まって、教室の端の席でぼーっと宙を見上げている。
 でも、このままではぽけっと空いたその口から魂が、何かの拍子に出てしまうんじゃ……そんなこともあるんじゃないかと笑いかけて、やめた。
 笑えなかった。
 弊害はすでに起きていた。
 それを私は、この身に染みて理解していたからだ。

 ◇

「見ててね?」
 薄透明になった皐月はそう前置くと、文字通りにふわふわと宙に漂ったまま、これまたふわふわの脚を器用に組んだ上で、神妙な顔つきになって言い放った。
「私、化けの者だけど。……なんつって!」
「だっはっはっ! 皐月、もうやめて——」
「部屋でスマホ見てる人んとこにさー、いきなり……魂! どしたん? 話きこかー! っつって壁抜けてったら驚くかなぁ。帰りにやってみようかなぁ」
「やだ。絶対あれだよ。変な騒ぎになるから……」
 ゾンビやらオバケになったその夜、というか、昨夜。私たちは浮かれていた。今、冷静になって思い返してみれば自分でも信じられないくらいの陽気さだったが、私たちは一生分の後悔と喪失感を味わった直後で、その反動に脳の為せる業だったのかもしれない。
 霊体を死体に重ねると、皐月の死体の損傷もじょじょに回復していった。そこで、ようやく私は人心地がついた思いがした。
「どう?」
「うん……平気。なんともないよ」
「本当?」
「本当」
「本当に本当?」
 私がしつこく聞くので、皐月はジョーカーを切った。
「みよちんの顔可愛かったなぁ」
「それはやめよ……」
 私たちはここに来た時と同じように、なんと言うこともない自然さで、その後、帰路についた。
 大通りを走る自動車のライトや街灯、ビルの灯りに照らされながら、皐月はさらに今度は神妙というよりは、深刻な顔つきになった。
「今、気付いたんだけどさ……これ……」
「え?」
「もしだよ? もしこのオバケが、私じゃなくて、同い年の男の子だったら——」
 私は思わず身を引いて呻いた。
「うわ」
 素で引いた。低い本音を漏らしてしまう。
 皐月も額を拭いながら女同士だけで聞かせるドスの効いた声で続けた。
「っぶねー……能力ガチャ引いたんコレ私でよかったわー……それだけは今、本当に心の底から安心してるよ、私……」
「ほんとそれ。てか、能力ガチャって……」
「で、今日のみよちんの……」
 皐月がくっくっくっといやらしい笑い方をして言った。その目線は私の下腹部に注目している。私はとっさに制服のスカートを隠す真似をする。他愛のないことだったが、物質的な阻害なく動き回れるオバケになれば、こんなことも実に容易いことだろう。
「やめなさい」
「私だけの秘密にしとこう、ひっひっひっ」
「本当に皐月でよかったのか?」
「たぶん。みよちん以外の大多数にとっては」
 私はため息をこぼした。皐月に呆れたのではなかった。
 改めて自分の腕を眺める。つい数分前にちょん切れて、くっついた自慢の右腕だ。
「いいな、皐月……そんなの、絶対楽しいじゃん」
「みよちんだって、なんか芽生えたでしょ? こうして生きてるってことはー」
「……うん」
「なに? どんなん?」
「……ゾンビ」
「はぇ?」
「ゾンビ」
「ゾンビ?」
「ゾンビ……」
「ゾンビ?」
「……ゾンビ」
「あの、ホラーゲームとかに出てくる腐乱死体がうーうー言って追いかけてくる、墓の下から出てきて眼窩からうじとか……」
 私はたまらず両手で目元を覆った。
「あ、うそうそ。あれだよね。つまり……あー、不死ってことじゃん! すごいじゃん、みよちん! あ、でもそれって、つまり……」
 私もそこではたと気がついて、顔をあげ、隣の皐月を見た。
 そうか——。
「私、二度と死ねない……ってこと?」
 それはきっと皐月にも言えるのかもしれない。
 私たちは一度足を止め、道路の真ん中で、顔を見合わせる。
 全容が知れない気味の悪い感じがして、知らず、私は唾を呑んでいた。
 これは何だろう。
 罰? ……なのかもしれない。
 命とはそもそも預かり物だという話を聞いたことがある。
 親からではない、自然からだ。
 死はそれを自然に還すこと。
 断じて命は自分のものじゃねぇよと。
「…………」
 私たちのしたことは、その命を冒涜する行為だった。
 命を軽んじた私たちに、捨てた命の代わりに与えられた神——いや。
 白い——綿毛。
 私は、ふっと、白い何かを深層で思い浮かべていた。
 なぜか屋上で手にした綿毛のことを思い出した。
 それを考慮すれば、こう言い直すべきだろう。
 命を軽んじた私たちに与えられた——天使からのお仕置きだと。
 帰宅して、そのさらに深夜。
 いやその夜から。と言うほうが正しくなるだろう。
 私は眠れなかった。
 何食わぬ顔で玄関をあがり、部屋で着替えて、いつものようにシャワーを浴び、読書。プレイはしていないゲームのログインだけを済ませて宿題をし、時計を見て、床についたときに、やっと判明した。
 それ以前から、うすうすと感じていたことではあったが、危惧は的中した。
 目をつむり、待てども待てども眠気が降りてこない。しかし、これまでもそんな時はあった。コツは、ひたすら何も考えないこと。あるいは反対に、何か次々に思い浮かべること。連想すること。そんな聞きかじったような睡眠療法を頭の中で試していって、気がつけば午前三時を回っていた。
 私は暗闇の中にむくりと起きて、
(死んだものに眠りはもう必要ない、ということか)
 こう納得して、受け入れたのだった。

 ◇

「なんだかさ」
「うん」
 私はいつもみたいに愛想なく答えた。
「私たち、密会してる恋人みたい、くくく」
「皐月、密会って意味わかって言ってる?」
「セパタクロー」
「なにそれ」
「バレーのサッカー版みたいなやつ」
「ますますなにそれ」
 ラクロスと言うのはつまらないから、斜め上に逸らしたのだった。
 皐月の考えていることは……大抵お見通しだ。
 そこは窓が小さくて、秘密基地に抜ける木々の間を進むように昼でも暗い踊り場だった。
 私たちはHRが終わると、お花を摘みに連れ立つクラスメイトたちのように廊下を抜けて、屋上へと続く階段を登っていた。
 ペントハウスを出ると、むわっと湿度の高い熱気が一気に全身に水分をくっつけ、身体からも汗をかく。
 地球も汗をかくのだろうか。それがたぶん、この湿気なのかもしれない。私はブラウスの胸元を存分にぱたぱたしながら思った。
 日差しは高く、時折緩やかに風が抜けていく。日射は強くても、地べたに近い地上よりはまだマシだった。澄み切った夏の風が制服の隙間を貫いて、全身に行き届く。
 ペントハウスの側面に、二人腰掛けて、目の保養にでもするように雲のない青い空を眺めた。
 夏休みだった。
 まさに今さっき、始まったところだ。
 だのに、私たちはなんとなく気持ちの悪さを抱えている。"たち"と言ってしまったけれど、こればかりは皐月も同様かはわからない。少なくとも私は。
 起きた出来事も含めて、昨日の夜に感じた気味の悪い感覚まで、まるで拭えていなかった。
 耳鳴りのように。
 ついて離れない。
 当たり前の日常が。それを送っている自分と友人の姿が。何事もなかった今日。今。さっきまでの時間。
 全ては昨日、終わっていたはずだったから。
 それなのに、
 なのに、続いた。
 今もこうして続いている。
 私は死してなお動き続けるゾンビになり、
 皐月は霊体だけで動き回れるオバケになって。
 まるで現実味が湧かないのは、今日があまりにも平凡すぎているからだろう。今でもまだなにか、夢でも見ていたんじゃないかと思うときがある。
 現実味? 現実味とはなんだ。
 そもそも現実ってなんだ。
 私は自分で思ったその言葉を改めて噛みしめるように追求した。
 私たちの見ている今、この、目の前にあるものが現実?
 どこかの物凄いPCが再現したバーチャルリアリティでない証拠は? ……と、それは発想が飛びすぎているとは思えど、現実、という言葉にふと強烈な違和感を覚えたのだ。
 だって、それはどこにあるの?
 現実ではこうはいかない、とか。
 現実を見なよ、だとか。
 そんなことを言う人はいるけれど、その人たちの言う現実って具体的にいったい何? どんな条件のこと? そしてそれがどんな場合にも当てはまるという証明は?
 私たちが見ているものが現実だとするなら、その前にあるモニターに映った光景も、iPhoneに映る映像も、それらを映すに至った画面には映らない経緯から、映ったものに感動する心。それから、自殺したはずが、こうして今日まで生きているということまで、すべてが現実だ。
 だけれど、以前の私を含めたこういう人たちの言う現実って、そう言うわりに非常に限定された条件に囚われていて、ひどく狭い気がする。
 だから、この二つの人種間は話にならない。言葉の定義がそもそも違うからだ。
「あー、それ、ミーンワールド症候群だよ」
「ミーンワールド症候群?」
 ここまでの考えを話してみると、皐月はふわふわとした口調ながら、常識を説明するような自然さで答えた。
「所詮この世はこんなもん。因果なんてクソ喰らえ、そんなもんないんじゃーってひねて突っぱねちゃう思い込みのこと。公正世界仮説の逆だね」
「こうせい……?」
「公正世界仮説はー、逆に因果絶対主義とでも言えばいいよー。ほら、よくあるのが、努力は必ず報われるんだよって言うアレ。でも、そうじゃないことも全然あるじゃん? 努力すれば誰でも叶うなら、誰もが優勝で、誰もが最強になれちゃうじゃんね。理不尽も不条理もある、誰にでも平等に起こりうる。それを認められなくなると、公正世界仮説。平和ボケの親戚みたいな?」
「……へぇ」
 私は素直に感心していた。
 皐月は常日頃ふわふわとして生きてきたがために、学校で習わないようなこんなことばかりをよく知っている。
「これがねー、酷いと被害者非難になるんだよ。なんかの事件がありましたー。被害者にも落ち度があったんじゃね? って言うやつ」
「あーいる。よくいるわ、すっごいいる。いじめとかモロそうだよね」
「そうそう。いじめられっ子にも原因があるー、って、んなこたない。いじめ=暴行とすれば、法治国家ではそもそもどんな理由があってもしちゃいけないことっしょ? した時点で犯罪じゃん。なんか勝手に条件つけて、正当化しようとする人いるけどさ。不登校や鬱になったのはその人が弱いからだ、ってのもこれ」
「あー。なんかわかってきたかも」
「うん。どっちにしろね、そう言うことで自分の……なに、生き方? 人生? 立ち位置? 考え? みたいなのを、正当化したいんだよ。そういう人たちの方にこそ負い目があるんじゃない?」
 私は改めてペントハウスの壁にもたれながら言った。
「……じゃなきゃ正当化とかどうでもいいしね、そんなの。しようがしまいが、私は私でしかない。理屈頼りの人が陥りそうだね」
「そういうことよ。コンプが解消できていないのだ」
「皐月は……ないか」
「私はー、楽しいこと以外に興味がないからなー」
「うん。皐月らしい」
 笑って言ったけど、私は思い当たるところがあって、ちょっと刺さった。
「私は……私も、そんなとこあったかもな。現実って。自分がそんな風にしか見ようとしてないだけだったかも」
「まぁ、そんなもんだよ。中二っていうか、人間は。だから、反省するんでしょ」
 その人の言う現実の境界条件と、今の私の考える現実の境界条件はズレている。それだけじゃない。少しずつズレた、ひとりひとりに、各々の現実の境界条件がある。
 すなわち現実とは、その字面イメージとは裏腹に、妄想のことだった。
 頭の中にあるもので、他の人がまったく同じものを見ることはできない。それが、考える頭脳の数だけあることになる。
 現実というものをあえて規定しようというとき(まさに今のような)、その人の頭の中にしか存在しないもの……とは何で読んだか。
 とにかく、それを基に発信したとき、それはすでに私見であり、それが一般論のように語られることはもう烏滸がましい。
 その人は対象を否定的に見たいのだろう。そして他人もそうであってほしい。そんなときに現実という言葉を用いるということは、その人の現実が、つまりそういうことなのだ。
 なら私は。
 私は、どうするのか。
 どうしたいのか。
 それが、問題なのだった。
 私たちは、一見何事もなかったように見えて、昨日、確かに自殺を図り、それは一旦成功したかに見えて、私は生ける屍に、そして皐月は彷徨える亡霊になった。
 私たちの選択肢に、もはや死んで逃げるというものはない。どんな苦しみを抱えたところで、それはもう選べない。生きざるを得ない。
 ならばこれも現実で、少なくとも私たちは、なくなった処女膜のように初体験の死を経て、二度と取り戻せない何かを超え、とりあえずの今日を続けていく以外にないのだった。自分の空は自分で染めていくしかないのだ。
 それに、死ぬことは……とりあえず、いい。
 そのせいで見たくないものを見てしまったし、感じたくない思いを感じてしまった。その体験が、少なからず功を奏したように、私からその道筋を遠ざけた。
「うん。そうだね……」
 私はなんだか気持ちの整理がついたみたいだった。
「腐っても私は私だしってことを、地でやっていけってことなのかな。そう、解釈する」
「おう。その意気だ、みよちん。……ところで」
「皐月、今日はどこ行こっか? 夏休み初日だよ? せっかく——」
 そんな風に話を切り替えた矢先、ふいに屋上のアスファルトが新雪のように日光を強く反射して、目に鋭く刺さる思いがした。その一瞬のちらつきに、私は思い出していた。
 あの綿毛。
 昨日、拾った……。
「ケサランパサラン!」
 私が口を開くより先に言ったのは、皐月だった。





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