陽性変異 Vol.2

白雛

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第一変 『陽性変異 Vol.2』

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 脚がなかった。
 よく見れば、今の私と同じくらいに肌は青白く、その身体は薄ぼんやりとしている。
 腰から先が、なにやら煙のようにひょろひょろとしていた。それでいて皐月ときたら、律儀にも両手をくの字に折り曲げて、その額には丁寧に白い三角巾までつけているのだ。
 脳裏に浮かぶイメージはただ一つ。
 まさしくそれを目にして恐れおののく怪談の主人公にでもなったように、私は、彼女を見上げて、
「こ、これって……皐月、」
「うん。みよちん、私ね——」
 二人、呆れた声が重なった。

 ——その数時間前。

 フェンスが阻む空の上。
 ひらひらと舞い落ちてくるそれを、私はぱっと手に取り、眺めた。
 綿毛だった。
 白い、綿毛だった。
「みよちーん、どこー?」
 後ろから声がして、振り返るとペントハウスの中から皐月が出てくる。
「いた、みよちん」
 まるで私がお母さんでもあるかのような安心した顔で皐月は言って、
「かえろ」
「うん」
 私は機械のような愛想のなさで答えて、皐月の後から日陰に入る。
 終業式、前日のことだった。
 世間は今、春先から増え続ける超常現象のことで忙しいらしい。

 ◇

 十三年前に産まれた私にとって、例の震災はすでに産まれる前のこと。
 名前を言えない例の感染症にも結局かからなかった。
 こういうと不謹慎厨が湧くかもしれないけれど、
 けれど、正直惜しいことをしたと思う。
 自然に死ねるチャンスだったのに。
 自殺は角が立つ。殺されるには相手がいる。
 だから、自然災害による不幸な事故。
 それが一番どうしようもなくてありがたい。
 こう見えて希死念慮とは違う。
 積極的に死にたいわけじゃないのだ。
 けれど、積極的に生きていたいわけでもない。
 違う。
 私のようなものは生きていてはいけないのだ。
 それに、なんか知らんけど気がついたら産まれ、流されるままに生きる私たちなら、なんか知らんけど気がつかないうちに死んでるのが自然な気がする——それも嘘だ。ごめんなさい。わかってます、方便です。こんなのは。
 私はこんな風に自分でも嘘ばかりよくつくけれど、それでも嘘は嫌いだった。はっきりとした真実が好きだった。真っ直ぐで、純粋な気持ちの底から染み出した、それだけに耳を塞ぎたくなるくらいのグロテスクな真実が。その追求が。底にある、あまり人の手には触れられていない、最も純粋なるものを理解したいという欲求こそが私だと言えた。
 結局、痛いのが嫌なのだ。苦しいのが嫌なのだ。死に至る数秒から数分間の苦痛をただ嫌がってるだけなんだ。
 人と付き合っていかなければならないこと。受験。面接。就職。営業。結婚。生活。その他、愛のないコミュニケーションと形骸化した愛想を続けることの全て。一方、生きるにはこれだけのことが嫌なのだ——そこまで考えて、私は思考を止めた。
 いや、まだ矛盾するな?
 私が真実を好むのは、より深く傷付きたいからに他ならない。痛みだけがそうして私の心に充足をくれる。そのたび私は、私たちの最も純粋なところを一つわかった気になれた。それを愛おしいとすら思うのに。
 矛盾している。
 矛盾ではない?  つまり——逆なのか?
 正位置がすでに、逆なのか。
 苦しみは苦しみで、痛みは痛みで、それらを本能的に嫌がり遠ざけようとする力の一方、まるでワインのテイスティングでもするかのように引き寄せ、尊ぶ。
 睡眠にも近しいものを覚えて、私は核心に触れかけた。
 そう、逆なのね。
 生きることと死ぬことは、きっと。
 私は、また一つ、脳に皺を刻んだ。
 そんな私は、単純化された社会性動物とそれが信仰してやまない共同体からすれば、病気であり、異常であり、そして——そうであるということはつまり——比類なき公共の敵ヴィランだった。
 私が真実を振りかざして生きることは、彼らの欺瞞だけれど穏やかで変化のない生活をぶちこわすこと。
 嘘が嫌いで吐くのも億劫な私は——。
 欺瞞の平和に泥玉をぶつけてやりたい私は——。
 子供たちの希望を残酷に踏みにじりたい私は——。
 私は、私は、私は。
 とどのつまり、産まれてきてはいけなかったのだ。
 産まれてこないほうがみんなのためになったのだ。
 結論はそこに至る。
 なぜって。そうでしょう。
 私という悪徳は、産まれさえしなければ、咲くこともなかったのだから。
 だからこれ以上、余計で不道徳な私のために誰かを傷つけ、悩ます前にいなくなりたい。
 それがせめてもの、人間への、偽らざる私にできることの愛だった。
 明快な真実の前に他はすべて誤魔化しだ。
 動脈は肉体の奥にあるのがネックだ。大抵の人が指す表面の血管はみな『静脈』だ。とう骨静脈、頸静脈……。それらはどれだけ切られようが失われようが大したことにはならないパフォーマンス。本気の傷痕スティグマは横にはつかないで、縦につく。
 さておき、手首にしろ、首にしろ、麻酔もなしに動脈に達するほどそんな奥まで切開するだなんて、転んで擦りむくだけで泣いたことのある私には痛みの想像をはるかに超えている。
 となると、なぜだか、心臓を貫くのが一番痛みがないように思われるけど、間違いはあって余計な臓器を傷つけたり、肋骨にでも食い込んだらそれこそ目も当てられない。抜いて、また刺し直さなければならない。もがき苦しむことになるだろう。
 縊頸もまた同様のことが言える。こちらはうまく動脈洞に食い込めばよい。わずか数秒で意識は途絶えて、途絶えているうちに肉体は活動を停止する。しかし、縄がずれて気道を絞めたら最悪だ。その場合は単なる窒息。逆に長い時間苦しんでから意識をなくすことになる。水の中でほんの数分も息を止めていられない私が、窒息なんて想像するだに恐ろしい。
 電車なんて以ての外。賠償金の問題じゃない。四肢や胴体の重みはおよそ自覚できないが、電車の慣性を利用して吹き飛ばせば容易く人体を破壊する砲丸になる。そうして周りの無関係な人たちを物理的に傷つける確率も高いし、そのショッキングなフラッシュバックで何年も苦しませることも十分に想定できる。確かに自分は一瞬かもしれないが、素っ裸になって見苦しい様を見せつけることにもなりかねない、まったくもってナンセンス。論外だ。
 遺された死体のことも考えていけば……腐敗は死亡直後から始まり、半日も経たないうちに肉体は雑菌だらけになる。第一発見者には、筋肉が緩むために染み出した汚物まみれの惨くあまりに汚い絵面を見せることになろう。もしかしたら一生拭えないかもしれないほどの、臭くて、凄惨な光景を。
 ……結局、どんなに配慮しようが、楽に死ねる方法なんて、そんな都合のいいことなんてないのだ。ピストルですら撃ちどころを考え、冷静に引き金が引けなければ、失敗する。
 だから、永遠に続くかに思われたこの焼けた肌にひりつくようなぬるま湯の終わりは、誰の負い目にもならず、私の恥ずかしい部分(精神・物理、そのどちらも)を殊更に周囲に晒すようなこともなく、半ば強制的に訪れ、誰にでも起こり得る、仕方がなかった、しょうがなかった、それが彼女の寿命だった。そんな風に思えるような、事故死や病死が最もありがたいのだ。
 しかし、それすらも真実には足りない。
 それにはもう一歩奥に、あるいは先に、踏みだす必要があった。

 空は、いつも何かに切り取られて、灰色に見えた。
 それが唯一青く見えるのが、夏だった。
 まっさらだ。誰の上にも無遠慮なまでに広がる、澄み切った青空を見ていると、すこしだけ、こんな私でも気分が晴れる。
 田舎のおばあちゃん家が恋しくなる。お盆には行けるだろうけど、最後に行ったのはお正月だから、もう半年も行っていない。あそこは空を切り取るものがまだ少なくて、私のような不完全な人間の空虚な心にも潤いをもたらしてくれる。温みを注いでくれる。憩いといえば、まさにそんな感じ。
 おばあちゃんもおじいちゃんもその動作の一つから古びたブリキ細工のようにゆったりとしていて、いつもエプロンが多少しめぼったくとも、私はその匂いが好きで。何にも急かされることがなくて、私は普段の日常の中で今にも張り裂けそうな内圧極大の風船みたいに張り詰めた気持ちを、そこにいる間だけはぷひゅーと力無く吐き出せるように感じるのだ。
 きっと哀しむと思う。
 この二人は。
 泣くと思う。
 例え惨たらしい現場など目にしなくとも。
 きっと惨い傷にしてしまうと思う。
 それからずっと、夏が来るたびに寂しい想いをさせて、こっそり泣かせてしまうに違いない。
 それを想像するのは、身を斬られるように辛い。この痛みはメメントモリ。おそらく心臓を自分で貫く以上に鋭く、哀しい痛みが胸のうちに先走るのだった。
 こんな想いはない。
 六十だか、七十だか、そんな歳まで生きて、孫の自死に遭わなければならないなんて、なんて可哀想なことを考えるのだろう、私は。なんてひどい。
 だから。二人のことを想えば。
 できれば生きたい。
 生きて、何かしらの二人を喜ばせる成果を得て、二人の生きているうちに報告やそんな話はしたかった。二人の安心して喜んでくれる笑顔が見たかった。そしてその歳月の刻まれた脆い身体を優しく抱きしめてあげたい。
 生きててよかったね。まだまだ長生きしてね。そう言ってあげたいのだ。夢なんて大それたものは何一つ持っていない私でも、ぼんやりとそれくらいの願いは思う。
 私は、生きる、ということから……それがあまりに辛そうで……いやもうすでにあんまり辛いものだから、逃げ出したい。
 なんてことはない。
 真実はただ、それだけのことなのだった。
 けれど、東京に帰ってくると、うんざりするような空気の重みが足枷のように肌から張り付いて心にまでじっとり染み込んでくるようで、一転して何もかもがねばっこく感じられて、やっぱりとたんに全部嫌になる。性格まで変わってる気がする。
 とりわけ、音が嫌だ。
 遠慮のない痰切りの咳払いや、常に喧嘩を売ってるみたいに低い男性の声調、女性の嘲るような甲高い笑い声、車やバイクの夜鳴きにテレビの音。特にバイクの潰れたマフラーの音は滅ぼしたいくらいに耳障りで、憎悪するほど嫌いだった。
 鈴虫の声にはどれだけの癒し効果があるかしれない。
 蝉の声にはどれだけの励ましの力があるかしれない。
 虫は嫌いじゃない。
 家にわくナメクジも、クモも、時折手に止まる羽虫の一匹から私は殺したことがない。むしろ、私たちよりずっと短い寿命を受け止めて(いるかは実際しれないけれど)、小さな身体で懸命に這いずるその姿に愛着が湧く。
 何なら吠えて偉そうに唸る甘やかされた犬などより(田舎のロマ。コーギーの雄はそれほどでもないけれど)鳴くにも控えめで、楽器のように清々しい分、虫のほうが好きかもしれない。猫は当然うるさくないし、犬のようにべたべたと甘ったれてもこない。動きも淑やかで物を倒さない配慮さえできて、小動物の中ではダントツに完成していると思っている。
 もちろん、田舎には田舎の退屈さや不便さや村単位のコミュニティのやかましさが、それはあるのだろうけれど、都会の乾燥した、それなのにじめじめとねばっこいような、言うなれば圧のうっとうしさに比べたら、きっとなんてことはないだろう。
 いや、わかってる。
 暮らしたことがないから。隣の芝生が青く見えてるだけだって、浅はかなのはわかっている。
 それでも、こんな都会に住んでるよりはずっとマシなんじゃないか。都会に住んだことのない人もまた私と同じくらい浅はかに、この雑音に日々苛まれる苦しみや砂糖を溶かした水のように乾きながらもべたべたとした人間関係の過重を考えているだけではないのか。
 と、ずいぶん長い間羨ましがっていると、私のそんな様子を見兼ねて、母は田舎のおばあちゃん家に住むことも検討してくれた。
 けれど、父はその度苦言を呈し、嫌々と首を振る。そのうち不機嫌になって物や母に当たり散らし、母方の親戚やその土地柄、私の好きなものに対しての雑言を惜しげもなく吐いたり、大きな音や声を出して脅かすようになるので、今はもう私からお願いして、話題に出さないようにしてもらっていた。
 語弊のないように加えておくと、父か母かという問題ではない。夫婦の力関係が悪いと、子供は顔色を窺うようになるだけのこと。
 そんなバランスでなぜ結婚した?
 なぜ私を作ったのか。クソが。
 だから、フリで生きている人は私にはすぐにわかる。その形を見るのも話を聞くのも嫌いだった。これほど無責任で罪をばら撒くものは他にないと思っている。
 真面目なフリ。頑張っているフリ。誰かを好きなフリ。愛しているフリ。中身のあるフリ。強いフリ。弱いフリ。
 しかし。私もそうだ。
 剣道。ピアノ。お料理。
 こんな風に、何をするにもケチがつくうち……気がつけば、私は、何よりもまず他人の顔色を伺うような、どこの誰にも角が立たないよう、何の色も出さずに返答するこの世で最もしょうもない特技が身について、
 負け癖がついて、
 勉強と学歴と肩書きだけの、中身のない他の誰でもいいような人並みの人生を送っているフリを、私は——純粋な気持ちの底から染み出した、それだけに耳を塞ぎたくなるくらいのグロテスクな真実——歯車のようにただただ、し続けていくのだ。
 悲鳴のようだった、
 いつしか、そんな諦観が心の底まで染み込んだ。
 慣れ親しんでさえいる。
 いや死んでいるではないか。
 自殺なんて行動に移すまでもなく、そんなのはすでにいきているとはいえない。とっくに死んでいる。
 物理的にやるか。
 精神的にすでにそうしているか。
 それを想うと哀しみの次には怒りが、湧いてくる。
 自殺はダメとか命を大事にとか口では綺麗事言いながら、なんだよこいつら。そんなうわっつらの言葉が私たちを生きながらすでに死体にする。私たちはそんな実効的な力もない口先だけの連中のために、生きるにも生きられず、死ぬにも死にきれず、いわば動く死体、ゾンビにならざるを得なくなるのだ。指令は誰か? 私は何の命令で動いている?
 そのうえ、境界知能とかADHDだとかLGBTだとか。話に出るだにうっとうしいだけの、そんな言葉遣いが溢れて、平和そうに見えるその実この世界は戦国時代のようだ。そんな連中ばかりが楽しそうにいつも誰かと喧嘩おしゃべりしている。嫌いならお互い区別をして近寄らなきゃいいだけのことなのに、余計なおせっかいで混ぜようとする人が出てきて、やっかむためだけに近づくものもいて、またべたべた、ぐちゃぐちゃとするから、社会的な人間ってものに、この世に一層うんざりとさせられる。
 正義の抗争なんか心底どうでもいいよ。
 ゾンビの世界で平和なんざ誰が尊んでいるんだ。
 一生外でやっててくれ。
 ただし、私たちを混ぜようとすんな。
 あんたたちの問題はあんたたちの問題で、それは不憫に思うこともあるけれど、私たちだってあんたたちに負けないくらい生きてりゃそりゃゾンビみたくもなって、せめて土に埋もれないようにするだけでいっぱいいっぱいなんだ。健常者は泣いてわめいたって通常、誰も聞いちゃくれない。あんたたちが聞いてくれてるかのように思えるのは、あんたたちがすでにこのお優しい平和の世界で目にもわかりやすい弱者というその特権を勝ち得ているからだ。
 ゾンビは泣かない。泣いたところで何も変わらないのが身に染みるうち、泣き方を忘れてしまったからだ。どんなに哀しくとも自分のことで、それも人前で、泣くことは絶対にしようにも、できなくなっている。
 ゾンビからすれば、そういったマイノリティだって、よほど強者だ。
 なのになんでみんな、それでいて逞しそうに生きていられるのだろう? 優しそうに振る舞えるんだろう。毎日毎日、朝から晩までくだらない顔の突き合わせ。自分の精神が解放される瞬間なんかないに等しいのに。それが白鳥のバタ足のようなものだとして、そうまで頑張れる意味がわからない。理解ができない。どうして? 私には無理だよ。できない。
 我慢の限界が肉体よりまず精神をぶちこわそうとしたところで、ムンクの叫びみたいに私はリタイヤすることにした。
 冷たい人間で構わない。サイコパスでいい。
 狂ってて結構。
 そんな誰のためにもならない嘘を普通にこなして蔓延させる連中のが、私の目からすればよっぽど普通じゃない。
 私が社会の敵だということは、ひるがえせば、そんな社会の普通に倣う連中こそ私たちの敵だ——。
 正気を失ってまで友達なんかいらない。友達百人なんて歌があるけれど、私からしたら怖気が立つ思いがする。二、三人もいればそれで私のコストは満杯だ。他を当たってください。

 ◇

 高学年から中学の間にそうして人並み(クラスLINEなんてバカみたいな重し・・が配られて、その脅迫がどうやら世間の普通であることに、私はゾッとしたけれど)のコミュニケーションを諦めるようになると、付き合う人が変わった。後ろ指差すものも当然いたけれど、もはや耳に入れるのもダルいし、付き合うということが相手の土俵に降りるということで、そういった連中と付き合わないということが、私のずるい誇りでもあった。
 皐月は、中学一年のとき、別の区域の小学校からやってきた。皐月からすれば私がそうだ。最初は単にアホだなと思っていたのが、ふわふわふわふわ楽そうに生きてんなコイツ……生きているというより漂っているに相応しいんじゃないか? と次第に一目置くようになって、気がつけば一緒にいるようになった。
 私が周囲に塩対応を始めてからも変わりなく接してくれる唯一の友人だった。
 何よりも楽だったし、裏を返せば羨ましかったのだと思う。
 天然記念物級の皐月の身軽さは、一緒にいると私の肩の荷まで下ろしてくれるようで、救われもした。
 だから、今は尊敬もしている。
 賢くなんかなれなくていい。人から好かれなくて構わない。私はもう先立ってその競争は降りた。
 代わりに今は皐月のようになりたい。
 なれたら、すこしは、生きることに前向きになれるんじゃないか。
 わからない。
 それでも、先のことはわからないから。
 だから、今もまだ時々ふと過ぎりもするのだ。
 皐月となら。
 皐月ならその気軽さで——飛ぶのにも付き合ってくれるんじゃないかって。
「ねぇ。皐月」
「うん」
「…………」
 こういうことは、いつ、と決めてかかるより、思い立ったその瞬間に多少強引にでも前へ進めてしまうのがいい。
 バンジーと同じで。
 でなければ一生、飛べない。
 帰り道。
 私は、口を開いて数秒、ちょっと間を空けて言った。
「今日、帰り、どこか、寄ってく?」
 とっさに用意していなかった言葉を出したので、外人のカタコトのようになった。
「…………」
 ここまで出かかって、なお言えなかった。それは皐月が乗るにせよ、反るにせよ、彼女を頼りきれなかったという私と皐月の仲に対する侮辱ですらあると思い、私は、自分の不甲斐なさに少し、ネガティヴになる。
 皐月は、小学生が体操着袋を蹴り上げるように俯きながら、私の少し前を歩いた。
「みよちん、私ね、本買いたい。あと駅前をぐるっと回りたい」
「……なんで?」
「あんまし、ないじゃん」
 振り向きながら続ける。
「午前中から歩き回れるのって」
「……確かに」
「本当はー、普段の日にやるのが一番楽しい。朝とか、知らない街みたいで見てるだけで面白いよ。近所でもさ、見たことないところ多いし。冒険になる。でもお店は閉まってるから、その辺は調節してね?」
「皐月、ときどき風邪で休んでるのって……てか、大丈夫? それ。補導とかされない?」
「おまわりさんってねー、なんか面倒見のいいお兄ちゃんみたいで話してみると面白いよね。交番にいるのはジュンサって言って下っ端なんだって。警察も大変なんだって」
「……皐月って」
 思ったより不良だ。面白いと聞けば例え違法だとしてもやってるんじゃないか? 末恐ろしいし、それにこの国の警察ときたら。
「私はまだされたことないなー。仲良くなれば話もちゃんと聞いてくれるし……反発するからいけないんだよ。なんかさ、みんな、下手だと思う。一億総コミュ障時代! せっかくの人間なのに」
「……確かに。でも、ほら、わかんないってこともない? 信用ができないっていうか……そういうの、ない?」
「わからんなー。私バカだからなー。その場が楽しければ何でもいいって思っちゃうから」
「あぶないよ、それは」
 どの口で言ってるんだ。自分でそう思った。
 けれどそんな私の自虐を被うように、すぐに皐月は言った。
「危ないことも楽しい。じゃーあ、先に本屋行って、ぐるっと回って……」
 皐月はときどき末恐ろしい。
「それから、みよちんの行きたいところ行こっか」
 言えなかった私の言葉を聴いていたかのように、皐月はそう言うのだった。

 皐月は本屋で、いつも読んでる漫画本の続きを買った。
 いつもの動作を繰り返すように、なぞるように、それを袋に包んでもらうと鞄の奥にしまい込んで、出口のところで待つ私のところに小走りに寄ってくる。
「うっし。いくかぁ」
「うん」
 私はいつものように機械的に答えながら。
 その本を読む機会はあるの?
 意地悪く尋ねてみたかった。
 読むかどうかは関係ない。
 その日にすら、私はそれまでの私でいたいのだと。
 きっと、皐月なら答えたろう。
 その数分後、私たちは都内にある雑居ビルの屋上に佇んでいた。ペントハウスから出る際、生ぬるい夜風が脚元から全身を舐めるようにさらった。夏の夜特有の湿気を伴った感触は、嫌いじゃない。この大嫌いな人混みの中心にいてさえ、自然の匂いはなお私の心を慰めるかのようだった。
 天使の息吹のようだ。
 ラッパこそ吹かなくても、なぜかしら、隣にいて、不健全な心と私にも寄り添っていてくれる。
 田舎のロマを思い出した。尻尾を切られたウェルシュ・コーギーの雄は、それでも時折、何も言わずとも頭をすりつけ、やかましいくらい強引に懐に入ってくることがあった。人間に尻尾を切られたことなんか忘れてしまったみたいに。
 惜しむといえば、それだ。
 この匂い。ロマの匂い。おばあちゃんのエプロンの匂い。
 匂いは、記憶に直結する。
 温もりも。感触も。匂いからすべて、思い出せた。
 何年か前、とあるオリジナルアニメーションの美麗な映像が好評を博したのは、それが、極めて写実的でいながらも現実では見たことのない美しい色合いの空を魅せたからだと思っている。
 本当は誰しも、都会の上にあんな空を見たいのだ。
 そして解放されたいと思っている。何からかは、特別言わないけれど。隕石の直撃を自分自身で受けたみたいで、後半のあのシーンが格別に好きだ。
 それだけにあれは現代を舞台にしながら、実にファンタジーだった。
 現実の空はいつも雨模様。
 思えば、私たちはもうきっと、代わり映えのないこの世の模様に飽きている。
 同じようなビルが並ぶ街の風景。同じような顔のアイドル。同じような歌に曲に、歌詞に、胸糞の悪い物語。
 あの、一世を風靡ふうびしたオリジナルアニメーション以降似たようなものは乱立したけれど、そうじゃないんだ。
 そんなつまらない人たちの作った、商業を至上目的とした薄汚い二番煎じは、それだけにあの映画がなぜ私たちの心に刺さったのか。一つも、その本質を理解していなかった。
 きっと、違う。
 私たちの真実の望みは、青春のような整然とした綺麗なものなんかじゃない。気持ちとして清々しいものとはいえども、形質はそう——逆なのだ。
 創造ではなく、破壊。
 機械ではなく、自然。
 便利ではなく、不便。
 涼しさではなく、やかましいくらいの暑さに。
 華やかなヒーローではなく、泥臭い主人公の生身を伴った悲鳴に。
 息の詰まるような秩序ではなく、目の醒めるような混沌。
 それがかえって新鮮なんだ。
 だから、初めからいつでもある、そうじゃないもの、人の手に左右されないものに憧れた。
 魔法ならいつでもそこにある。
 ただ人の手に成らないだけで。
 自然にある、誰にでも共有されていながら、誰にも縛られることのない元素、物理法則、それら原記憶の潮流を味わえなくなることは、惜しいといえば、そう、惜しい。
 そう感じられる私が私であることは、今のこの一世かぎりのことだから。
 心残りとは違う。
 残していくものはない。
 私たちのこの肉体も皐月の鞄の中の漫画本も、私たち自身が死んでしまえばそれら全てのものは私たちのものではなくなって、生まれ変わりがあるにせよ、ないにせよ、それら持ち物の一切が、もうその頃の私にはまるで関係がないものになっているはずだから。
 次は、何に生まれてくるのか。
 それとも、二度と目覚めないのか。
 きっと知ることもないだろう。
 醒めて観るような記憶もきっと残らない。
 しかしいずれにせよ、誰も生きている間には知る由もなく、生きているからには誰も到達することができない真実に、ほんの束の間、私たちは触れに行く。
 そう思うと、私は少し、わくわくすらしていたのだった。
 なぜか二人ともスマホを確認していた。誰かからの直接的なメッセージやSNSで懇意にしていたともがらの宛先不特定のメッセージ。ニュース。
 それらをルーティンで何とは無しに眺めて、ふと喫茶店での一服に区切りをつけるように、どちらからともなく切り出す。
「そろそろ、いこうか」
「うん」
 地上までビル五階分、およそ20~25メートル。大きいほうでも、落ちれば三秒かからない。その間に永遠のような長さを感じ、必ず後悔するとは実しやかに聞く話だった。
 時間は相対的だから、きっとそれはあるんだろう。
 けれど。
 私たちは飛んだ。
 ジェットコースターに乗ったときのような浮遊感が腹の底から押し寄せて、全身が恐怖に総毛立った。頭の重みに釣られて前のめりながら、私はぎゅっと皐月とつないだ手と瞼をつむり、すこし、感動した。
 やった。
 こ——。
 吐瀉物でもぶちまけるような醜い音とともに、一言の猶予もなく、私の思考は途絶えた……。
 ……はずだった。
 これで、私は終わりだ!
 やってやった! この世とおさらばできる! ざまあみろ!
 瞬間沸騰したアドレナリンがライブ中のバンドマンみたく私を興奮させて、そんな風に思った。普段の私からすれば本当によくやった、思い切った行動だったのが誇りにさえ思えて、踊り出したいくらいだった。
 けれど、それも束の間。
 すぐ異変に気付いた。
 おかしい。
 なら、どうして私の意識はこうして続いている?
 うっすらと目を開けた。
 冷たい裏路地の濡れたような地べたに倒れている。
 それは確実だ。
 頭を強く打っている。手足が妙な方向に折れ曲がって、爪がこちらを向いていた。腕の先が道の反対側まで吹き飛んで、私の方を向いている。奇妙な光景。
 地べたは本当に、私の血液で濡れていた。
 しかし痛みはない。
 エンドルフィンだとかの脳内麻薬が分泌されまくって、いろいろ感覚がおかしくなっているのかとも思ったけれど、それも違った。
「う……」
 呻いたのではない。声を出せるか試したのだった(そして出せた)。
 私はむくりと起き上がった。
 感覚的にまず額を押さえようとして、ないのが右だと・・・・・・・、そこで初めて気付いた。
 改めて、左で額を押さえると、赤いはずの手のひらにべっとりついたそれは、赤くなかった。
 腐ったような異臭を吐いて、青く、煌めいていた。
「……に、これ……」
 寒さ、より冷たさを背筋せすじに感じた。
 私は急いで頬を触る。
 感触にさしたる違いは、なかった。
 あるとしたら……あるとしたら、温もり。
 体温はなかった。
 まるで死体が動いているようだった。
 皐月を見た。
 傍らで横たわる皐月は、打ちどころが良かったのか、それでもまだ少女的だった。
 線の細い身体付きを地べたに雷を描くように折り曲げて、棒切れのような白い脚を惜しげもなく曝け出している。
 見た目にひどいのは私ばかりのようだ。
 再度振り向いて、視線の先にこっちを睨みつけるように落ちている私の腕を捉えた次の瞬間、私は今度こそしかと目を見開いた。
 位置が違う。
 すこし、近づいてきている。
 道の反対側に落ちている私の腕、すでに感覚のない腕の途切れた先が、私の意思とは無関係に動いていた。
 そして、こちらに向かってきている、ずるり、ずるりと、持ち主を探すように。
 恐怖した。
 自分の腕なのに。
 よくもこんな目に遭わせてくれたなとばかり、私はこれから叱られでもするのだろうか、私自身の腕に。と、そんなとぼけたことを考えた。
 けれど現実のほうが、そんな空想よりも遥かに奇怪に作用した。
 あまり名前を出したくない(虫は好きとはいえ、あればかりはどうしても生理的嫌悪が勝る)生き物かツチノコのようにするするすると地べたを這ううち、私の胴体に残され、幾分か短くなったほうもまた私の意思を離れて我知らず持ち上がったのだ。
 まるで磁石か、かっけ・・・のようだった。
 そんな風に私の預かり知らないところで二つの腕は勝手に互いの再会を尊ぶように引き合わさり、退いて胴体を逸らす私の目の前で、ぺたり——と、また元の通りにつなぎあわさったのだった。
 私は信じられない面持ちで、右腕を折り曲げ、途切れていたその先、手のひらまでをも見つめた。
 まず私の意思で動くことに。
 それから、指が動いていることに。
 驚くよりも夢でも見ているかのような錯覚を覚えた。
 途切れた左脚も気が付けばそのようにして、元通りにつながっていた。
 ふと額を触れてみると、頭の傷も塞がっているようだった。
 腐った血、バラバラになってもつながる手脚。
 あぁ、これはあれか? ゾンビってやつだ。
 私はゾンビになっていたのだ。
 哲学するゾンビ? 何の冗談だろう。
 その自覚が芽生えてハッとする。
 皐月は?
 間もなく私は振り向き、横の皐月を見た。
 私がゾンビになっているとしたら——なら、皐月は?!
 しかし、そこには先ほど見たままの光景があるのみだった。
 十三歳の女の子が糸の切れた人形のように倒れ伏している。頭から赤い血を流して。
「皐月」
 私は名前を呼びながら、その肩に触れてみた。
 同じように冷たい。
 けれど。
 その肩をゆすりながら、呼びかけた。
「皐月」
 けれど、私だってそうだ。
 それなら、皐月だって。
「皐月!」
 皐月だって目覚めるはずなのだ。
 目覚めていいはずなのだ。
 今にも私みたいに全身の傷が塞がって、起き上がるべきなのだ。
 なのに。
「……なんで! 皐月っ!」
 指はもはや触れるより掴む勢いで皐月の肩を揺らしていた。
 なのに。
 皐月は、
「ねぇっ! なんでっ……!」
 一向に、目を覚まさなかったのだ。
 哀しみより恐怖が、土砂崩れのように心に押し寄せて、身を引こうとする自分にぞっとする。
 私のせいだ……!
 私が……誘った……!
 私が、殺した……!
 そんな自責の念は確かにあった。
 いや、それが胸の内で膨れ上がるほどにだ。脚から力が失せて、じっとりと額に汗が滲むと、ふっ——と……そんな悔恨とは裏腹に、嫌になるくらい冷静に頭がささやいたのだ。
 今なら誰にも見られていない。
 幸い・・私はまだ生きている・・・・・・・・・
 何事もなかったように、しらんぷりをして、日常に戻るなら、今しかない……!
 逃げろ。
 逃げていい。
 なんで私は生きているのだ?
 そうじゃない。事故だったのだ。私だけが助かったのだ。幸運だった……!
 私は、皐月の死体を前に、その責任のすべてをほうりだして、逃げだそうとしていたのだ。
 明快な真実の前に他はすべて誤魔化しだ。
 ——しかし、感情がそれを拒絶した。
 私は皐月との間に見えなくとも確かにあって、つい今しがた散らばりかけた何か大切なものを拾い集めるように、彼女の額をなで、頬にキスし、その胸にしがみついて、逃げようとする脚を震えながら押し留めた。
 皐月の胸を枕にするように、目を閉じた。
 ごめん。皐月。
 ごめんね。もう大丈夫だから。
 どこにもいかないよ。
 だって、私たち、友達じゃん。
 そうだよね?
 私たち、友達だったよね?
 皐月の胸の上に私は横たわったまま、静かに真実を受け止めるのだった。
 新たに知る真実——。
「——ゾンビになっても、涙は流れるなんて……」
 どれくらい経ったろう。
 そもそも屋上から飛び降りてから地べたで目覚めるまでも、一瞬のように思えて、等間隔とは限らない。
 周りはまだ暗いままだが、時間はもはや定かじゃなかった。
「みよちん」
 皐月の声が聞こえた気がして、私は何度となく呼んだその名をまた口にする。
「皐月……ごめん……ごめんね……私が誘わなければ……なんで私だけ……」
「みよちん、こっち」
「最悪だ……こんなことになるなんて……皐月、私に関わらなければ……こんなことには……」
「みよちん、違う。そっちじゃない」
「そうだよ……皐月は優しいから。こんな情けない私にも付き合ってくれて……」
「違う、みよちん。こっちむけ」
「あぁぁぁぁ……私なんか産まれてこなければ!」
「人の話を聞けやボケぇぇええーーーーっ!」
 ふわっと、風が、頭を通り抜けて……私は気がついたように面をあげた。
 ガスのようだ。
 白い幕を張ったように視界が薄ぼんやりとしている。
 涙のせいではない。
 匂いもなく、目に煙たいものが含まれているわけでもない、白いモヤが私の視界を……いや、私の顔面を貫いて、きっと頭の後ろまでも覆っている。
 けれど、私は確かに見ていた。
 その白いモヤの伸びる先——肩があり、首があり、胴体があって、その先に——見慣れた友人の顔までもがきちんとついているのを。
「皐月!」
「みよちん!」
 私は両腕を広げて、皐月を受け止めようとして——腐った脳内にうっすら残るガールズ"オブザーバー"がストッピをかけた。
 ちょっと待って。
 私、臭わない?
 夏の上に、ゾンビだし。
 死んだばかりとはいえ、さっき見た通り血はもう青くなってて、手脚が一度ちぎれたこともあって全身は血でべたべた……え、てか、腐ると人間の血って青くなるん?
 奇妙だが、それ自体が、なんかズレている・・・・・・・・ような……。
 そもそも皐月の身体は今も眼下、地べたの上。
 そこで寝そべっている。
 一方、白く薄いモヤ状の皐月が、私の目の前にも浮かんでいる。……浮かんでいる?
「皐月! どうして! え、これ……」
 脚がなかった。
 よく見れば、今の私と同じくらいに肌は青白く、その身体は薄ぼんやりとしている。
 腰から先が、なにやら煙のようにひょろひょろとしていた。それでいて皐月ときたら、律儀にも両手をくの字に折り曲げて、その額には丁寧に白い三角巾までつけているのだ。
 脳裏に浮かぶイメージはただ一つ。
 まさしくそれを目にして恐れおののく怪談の主人公にでもなったように、私は、彼女を見上げて、
「こ、これって……皐月、」
「うん。みよちん、私ね、」
「オバケになっちゃった……?」
「オバケになっちった」
 ビルの隙間で、月の下——。
 二人、呆れた声が重なるのだった。





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