ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです　神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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連載

第207話：トーヤ、バイクについて考える

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　その後の鑑定カウンターは込み合う時間に突入したこともあり、営業終了まで忙しなく働いた。
　アリアナとレミがどのように作業をしているのかも気になったが、本業を疎かにするわけにはいかないと、頭の中も鑑定に集中させた。
　最後に書類をまとめたトーヤは、商業ギルドを出る前に魔導具開発部に立ち寄る。

　――コンコン。

「……返事がありませんね？」

　扉を開いてもいいかと考えたが、女性しかいない部屋に男性が勝手に入るのもどうかと思い、僅かに思案したあと、そのまま踵を返す。
　魔導具開発に集中している可能性もあるが、それならばリリアーナやジェンナが声を掛けるだろうと考えた。
　バイクについて何かしら助言ができればとも考えたが、急ぎではない。
　明日でもいいかと思い直し、そのまま商業ギルドをあとにした。

「……バイク、完成したらいいですねぇ」

　帰り道、トーヤはそんなことを呟いた。
　実のところ、日本人の佐鳥冬夜だった頃、彼はバイクに乗っていた。
　バイクに詳しいわけではなかったが、気持ちが沈んだりした時、時折夜中にバイクを走らせて夜風に当たったりもしていたのだ。

「こちらの世界でも、同じようなことができたら最高ですね」

　そう考えたトーヤだったが、すぐに首を横に振る。

「……いいえ、いけません。こちらには魔獣がいるのでしたね」

　日本でなら夜道をバイクで走っても比較的安全だったが、スフィアイズでは違う。
　外壁の外には魔獣がいて、トーヤのように自衛ができない人間ならあっさりと殺されてしまうかもしれない。
　魔獣の恐怖をその身で知っているトーヤは、日本にいた時の感覚で安易な考えをするのは危険だと思い直す。

「バイクのことを考えていたら、思わず思考が日本にいた頃に戻ってしまいましたね。いけません、いけません」

　ぶつぶつと呟きながら歩いていたからか、トーヤはあっという間にブロンの家に到着した。

「ただいま戻りました」

　裏口から中に入り、声を掛ける。

「あぁ、おかえり。今日はどうだったかな？」
「午前中はお客様も少なくて、魔導具開発部に顔を出していました」

　今日一日の振り返りをブロンとするようになり、トーヤはいつも通りの返しをする。

「何か面白い魔導具でも思いついたのかい？」

　なんでも屋を経営しているブロンは、便利な道具に興味を持っている。
　トーヤが魔導具開発部に顔を出したと聞いて、詳しい話を聞きたくなった。

「最初は冷蔵庫や冷凍庫を一般に普及できないか、ということを話してきました」
「あれは高い魔導具だからね。まあ、魔導具はどれも高いけれどね」
「ですが、冷蔵庫や冷凍庫があれば、お料理の幅が広がると思いませんか？」

　冷蔵庫や冷凍庫についてはブロンも知っており、値段的に手が出ないと思ったのか苦笑する。

「そうだが、なかなか一般への普及は難しいんじゃないかね」
「そうかもしれませんが、アリアナさんとレミさんはやってみると言ってくれました」
「なんと、そうなのかい？」
「はい！　もしそうなれば、私からブロンさんへプレゼントさせてくださいね！」

　ブロンにはお世話になりっぱなしだ。そして、トーヤはここだと決めた時以外はほとんど散財をしていない。
　商業ギルドからの給料は貯まる一方で、どうせ使うならお世話になっている人のために使いたいと考えていた。

「いくら一般に普及できるようになったとしても、高いものは高いはずだ。そんな高価なもの、いただけないよ」
「何を仰いますか！　それならば、私が欲しいから買います！　それならば問題ないでしょう！」
「全く。トーヤは頑固だね」

　ブロンなら断るだろうことも想定していたのか、トーヤは断られた直後に言い返す。
　そんな彼を見たブロンは苦笑しながらも、どこか嬉しそうに笑っている。

「まあ、そう言うことならわしがとやかく言う必要はないかな」
「そうでしょうとも」
「その代わり、そうなったならわしからも何かプレゼントしなければならないね」
「何を仰いますか！　私のは感謝の気持ちですし、私の勝手で買う予定なのですから、必要ありません！」

　ブロンの言葉にトーヤが否定を口にした。

「ならば……わしも勝手に買ってしまえば、問題はないということだね」
「それは！　……うーん、そうなってしまいますかぁ」

　いたずらっぽく笑いながらブロンがそう口にすると、トーヤは腕組みをしながら考え込んでしまう。
　こんなことまで真剣に考えているトーヤを見て、ブロンは思わず微笑んでしまう。

「さて、続きは夕食を食べながらにしようか。せっかくの料理が冷めてしまうからね」
「はっ！　確かにその通りですね！」

　ブロンの言葉を受けたトーヤは我に返り、すぐに手を洗ってから席に着く。
　テーブルには既に料理が並べられており、ブロンも席に着くと、二人は料理を堪能した。

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