ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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第206話:トーヤ、移動手段を提案する

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 アリアナから問われたため答えたが、現状ではそれほど大掛かりな魔導具を作るのは困難だという判断になり、エレベーターやエスカレーターの開発は先送りにされた。
 ならばとトーヤは、移動手段の魔導具を提案してみる。

「それでしたら、人が一人で移動するのに役立つ魔導具はどうでしょうか?」
「それはどのようなものなんだい、トーヤ少年!」

 アリアナのハイテンションはいつまで続くのかと、内心で気になり始めたトーヤ。
 ここはなんとか彼女の気を引きたいと、バイクの説明を始める。

「乗り物ということであれば馬車があると思うのですが、一人乗りで小型化し、車輪を二つ、もしくは三つにして自走するものになります」
「うーん……なかなかに想像ができない乗り物だね」
「馬車なのに車輪が二つや三つですよね? ……それも一人乗りですか?」
「それでは、紙とペンをお借りできますでしょうか?」

 バイクを知らない人に言葉で説明するのは難しいと考え、イラストで表すことにした。
 まずは二輪のバイクをイラストにしていき、次に三輪のバイクを描いていく。
 どうしてこの形状なのか、という質問には答えられないなと思っていたトーヤだが、幸いなことにそのような質問はなかった。

「これは、どのようにして車輪を動かすんだい?」
「私が見たものだと、自動で回転していました。スピードに乗ると安定して走らせることができるようです」
「そうなんですか? ……アリアナさん。車輪部分に風の魔導式を組み込んでみたらどうでしょうか?」

 そこからはどのように車輪を自動で回転させるか、そこにアリアナとレミの思考は移行した。

「風だけではそこまで速度は出せないだろうね。小さな爆発を起こすのはどうだろうか?」
「それだと一瞬の加速はできると思いますけど、長距離は走れないんじゃないですか?」
「トーヤ少年! これは長距離も走れるものなのかい?」
「え? あ、はい。動力がしっかりしていれば、長距離も走れるかと」

 突然の質問に答えながら、トーヤは二人のやり取りを眺めている。

(あのイラストと簡単な説明だけで、色々と思いつくものなのですね。さすがはアリアナさんとレミさんですね)

 もしかすると、いずれは車も作れるのではないかと思い始め、トーヤはなんだか楽しくなってきていた。

「ん? どうしたんですか、トーヤさん?」
「まさか、まだ隠していることがあるんじゃないだろうね!」
「えっと……まあ、今はいいじゃないですか! 一つずつ、解決していきましょう!」

 ここで車の話までしてしまうと、アリアナが眠らなくなってしまうと思ったトーヤは、笑顔で誤魔化すことにした。
 アリアナからはジーっと見つめられてしまったが、トーヤが口を割らないと思ったのだろう、すぐに思考を切り替えて視線をイラストに戻していた。

「安定性は車輪が三つの方がいいと思うんだが、二つの方を作る意味はあるのかい?」
「そちらの方が負荷が少ない……のかも? 回す車輪も二つで済みますし」
「ふむ、そのあたりは検証が必要なようだね」
「でも、面白そうですよ、アリアナさん!」
「その通りだとも、レミちゃん!」

 冷蔵庫と冷凍庫を提案した時は失敗したかと思ったが、バイクでは二人の魔導具師魂に火を点けることができたようで、トーヤは内心でホッとする。

 ――コンコン。

 するとここで、魔導具開発部の扉がノックされた。

「はーい!」

 レミが返事をしながら扉を開くと、そこにはフェリが立っていた。

「ごめんね、レミさん」
「どうかしましたか、フェリ先輩?」
「ちょっと私では鑑定できない品があってね。トーヤ君、お願いできるかな?」
「かしこまりました」

 トーヤがすぐに返事をすると、アリアナとレミへ向き直る。

「というわけなので、今日はこの辺りで失礼いたします」
「本日はありがとうございました、トーヤさん!」
「とても楽しかったよ! また時間があれば、いつでも訪ねてくれたまえ!」

 こうして魔導具開発部を出たトーヤは、鑑定カウンターでいつもの仕事をこなしたのだった。
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