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第197話:トーヤ、探られる
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「――すみません、兄貴。何も分かりませんでした」
そう口にしたのは、なんでも屋や商業ギルドに足を運んでいた、フードの男性だった。
男性の前には頬に傷のある男性が壁にもたれながら立っており、苛立ちを露わにする。
「くそっ! このままじゃあ旦那に報告できねぇぞ!」
場所は商業ギルドから一〇〇メートルほど離れた路地裏。
傷の男性は壁に拳を叩きつけながら、そう吐き捨てた。
「最初に確認された店にいるガキが何か握っていると思ったが、そんな素振りも一切ねぇ」
「店に置かれているポーションも普通のやつでしたし、どうなってるんでしょうか」
「俺が知るか!」
困惑気味のフードの男性の言葉にも苛立ちを露わにした傷の男性。
「……こうなったら、ギルドの奴をとっ捕まえて、白状させるか?」
「いや、それはさすがに……俺たちの仕業だってバレたら、あのギルマスが黙っていませんよ?」
トーヤは知らなかったが、ジェンナが元大魔導師であることは、ラクセーナでは周知の事実だ。
多くの住民が尊敬の念を持っており、どこから自分たちに仕業だと知られるか分かったものではない。
「分かってる! だが、そうでもしなきゃ、旦那に俺たちが消されちまうぞ」
「そ、それはそうですが……」
どうしたらいいのか分からない、そんな雰囲気で話をする二人の男性。
その会話に聞き耳を立てている者がいた。
「……ったく、面倒くせぇ」
地獄耳であり、ダインからトーヤの状況を聞いたヴァッシュだ。
ダインはジェンナからの個人的な依頼を受けたあと、その情報を瞬光の面々へすぐに共有していた。
それからすぐに動き出していたダインたちは、フードの男性がなんでも屋を訪れた時も外から様子を窺っており、商業ギルドにミリカが顔を出したのも偶然ではなかった。
「まあ、ガキが目を付けられているわけじゃなさそうだな」
二人の男性の会話を聞くに、彼らはポーションの作成者を探っているのは間違いない。
しかしそれがトーヤだということには気づいておらず、今はまだ情報を集めている段階だと判断した。
「だが、放っておくわけにもいかねぇか」
あくまでも今はまだ、という段階だ。
このまま情報を集め続けられれば、いずれはトーヤに行きつくかもしれない。
そう考えたヴァッシュは、一つの策を講じることにした。
「ったく、マジで面倒くせぇ」
そう呟きながら、ヴァッシュは足音を立てずに男性たちへ近づいていく。
だが、彼らと接触するわけではない。忠告をしに行くだけだ。
――カッ!
「だ、誰だ!?」
男性たちがいる路地裏の建物、その屋上からナイフを投げたヴァッシュ。
ナイフは男性たちの足元の地面に突き刺さり、その柄には手紙が巻き付けられている。
「兄貴、見てください」
フードの男性が手紙を取り、先に内容に目を通した。
それを傷の男性に手渡すと、彼は怒りのあまり手紙をぐしゃりと握りしめる。
「……ふ、ふざけやがって!」
手紙の内容はこうだ。
『これ以上、調合師を調べるな。このまま調べ続けるのであれば、地獄を味わうことになる』
傷の男性が怒るのも無理はない。完全に彼らを舐めている内容だからだ。
「絶対に調合師を見つけるぞ!」
「で、でも兄貴! これを投げてきた奴、俺らに気配すら掴ませなかったんですよ? ヤバい奴ですって!」
怒りのあまり冷静さを失っていた傷の男性だが、フードの男性は違った。
ナイフが地面に突き刺さるまで、二人は誰かが近づいてきていることに気づかなかった。
その後も気配を見つけることができず、結局は今も見られているのか、見られていないのか、分からない状況だ。
この状況で調合師を探ることを続ければ、本当に地獄を味わうことになるのではないかと恐怖を覚えていた。
「うるせえ! そうでもしなきゃ、俺たちが旦那に消されるって言ってんだろうが!」
「それは……そうですね」
結局、フードの男性も調合師について探ることを継続すると決めた。
「……これなら、いったんボコしても問題ねぇな」
遠くから男性たちの決定を聞いていたヴァッシュが、獰猛な笑みを浮かべながら呟いた。
その後、男性たちを目にした者がいたかどうかは定かではない。
少なくとも、トーヤが目にすることはなかった。
※※※※
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12/16(月)に本作3巻の出荷が始まりました! 既に店頭に並んでいる書店様もあるようです! 嬉しい!
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皆様、何卒よろしくお願いいたします!
※※※※
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傷の男性は壁に拳を叩きつけながら、そう吐き捨てた。
「最初に確認された店にいるガキが何か握っていると思ったが、そんな素振りも一切ねぇ」
「店に置かれているポーションも普通のやつでしたし、どうなってるんでしょうか」
「俺が知るか!」
困惑気味のフードの男性の言葉にも苛立ちを露わにした傷の男性。
「……こうなったら、ギルドの奴をとっ捕まえて、白状させるか?」
「いや、それはさすがに……俺たちの仕業だってバレたら、あのギルマスが黙っていませんよ?」
トーヤは知らなかったが、ジェンナが元大魔導師であることは、ラクセーナでは周知の事実だ。
多くの住民が尊敬の念を持っており、どこから自分たちに仕業だと知られるか分かったものではない。
「分かってる! だが、そうでもしなきゃ、旦那に俺たちが消されちまうぞ」
「そ、それはそうですが……」
どうしたらいいのか分からない、そんな雰囲気で話をする二人の男性。
その会話に聞き耳を立てている者がいた。
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ナイフは男性たちの足元の地面に突き刺さり、その柄には手紙が巻き付けられている。
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フードの男性が手紙を取り、先に内容に目を通した。
それを傷の男性に手渡すと、彼は怒りのあまり手紙をぐしゃりと握りしめる。
「……ふ、ふざけやがって!」
手紙の内容はこうだ。
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怒りのあまり冷静さを失っていた傷の男性だが、フードの男性は違った。
ナイフが地面に突き刺さるまで、二人は誰かが近づいてきていることに気づかなかった。
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