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第189話:トーヤ、予定を確認する
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翌日となり、トーヤは誰よりも早く出勤すると、次にやってきたジェンナに挨拶と同時に食事会の話を切り出した。
「おはようございます、ジェンナ様! 次のお休みを伺ってもよろしいでしょうか!」
「……おはよう、トーヤ。それと、何かあったのかしら?」
勢いあまって食事会の話が抜けてしまい、慌てて休みを聞いた理由を説明していく。
「……なるほどね。それにしても、瞬光のみんなとの食事会から、どうしてそこに行きついたのかしら?」
「あはは。なんと言いますか、皆さんと楽しく食事をしながら話ができたら面白いかなと思いまして」
ジェンナも本気で理由を聞きたいわけではない。それはトーヤの性格を理解しているからだ。
そして、トーヤだけではなくブロンのこともジェンナは知っている。
この二人ならお世話になった人たちを労いたいと考えるのも頷けると理解していた。
「……そうねぇ。わたくしの場合は基本、シフトに余裕がある時に休みを入れているから、確認してみてからになるかしら」
「かしこまりました。ですが、そうなるとリリアーナさんと同じ日に休みというのは、難しそうですね」
ギルドマスターと副マスターが同時に休みを取るというのは難しいだろうと、トーヤは渋面になる。
「確かにその通りなのだけれど、食事会はお昼にやるのかしら?」
「いえ、特に時間はまだ決めておりませんでした。……そうか、夜なら仕事終わりで問題はありませんよね!」
休みが絶対に必要というわけではないと思い至り、トーヤは嬉しそうに声を上げた。
「その日の仕事量にもよるから、何名かは休みにしておくのがいいかもしれないわね」
「そうしていただけると大変ありがたいです」
「それなら……」
そこまで口にしたジェンナが思案顔を浮かべると、しばらくして口を開く。
「……明日がフェリとリリアーナの休みだから、急だけれど明日なんてどうかしら? もちろん、みんなに予定を聞いてからにはなるけれどね」
「明日でしたら瞬光の皆さんも休みだと言っておりましたし、確認してみます!」
いつもより弾んだ声のトーヤに笑みを浮かべながら、ジェンナは商業ギルドの掃除を始める。
そんなジェンナを見て慌ててトーヤも仕事の準備を始めていく。
しばらくして職員が出勤してくると、フェリとアグリが一緒にやってきた。
「おはようございます。フェリ先輩、アグリ君」
一通り準備を終えていたトーヤは、すぐに二人へ挨拶をした。
「おはよう、トーヤ君」
「おはよう!」
「準備をしながらで構いませんので、少しだけお話をよろしいでしょうか?」
トーヤから話を振ってくるのは珍しく、フェリは首を傾げつつも頷く。
「アグリ君にも確認したいことがあるので、あとでフェリ先輩から聞いておいてくれますか?」
「分かった! それじゃあ、俺はあっちで作業しておくわ!」
アグリの作業机はトーヤやフェリとは離れた場所にある。
そのため、仕事の邪魔をしないためにもとトーヤはフェリを介して伝えることにした。
「それで、どうしたの?」
「実は、お世話になった人をお呼びして食事会をしようと考えておりまして、それが明日の夜なのですが、参加が可能か伺いたかったのです」
アグリの予定もあるだろうと、トーヤはすぐに返事を貰うことは難しいと考えていた。
「行けるわ! もちろん、アグリも大丈夫だよ!」
だが、予想に反してフェリはアグリも問題はないと即答してくれた。
「……そ、そうなのですか? アグリ君も?」
「断る理由がないもの! 心配なら、すぐにでも確認してくるけど?」
「そ、それは大丈夫です! お仕事の邪魔はしたくありませんので!」
「そう? それじゃあ、休憩の時にでも聞いておくわね!」
フェリはとても嬉しそうにそう口にすると、その後は上機嫌に仕事の準備を始めていく。
まさかの即答にトーヤが驚いてしまったが、遅れてリリアーナが出勤してきたので、そちらへの確認を優先するべく声を掛ける。
「おはようございます、リリアーナさん」
「おはよ~、トーヤ君」
「今日は眠たそうですね」
欠伸をしながら挨拶を返してきたリリアーナに、トーヤは思わず問い掛けていた。
「昨日はちょっと遅くまで仕事をしていたからね。今日も残って、明日に備えて仕事を終わらせなきゃいけないのよ」
リリアーナの言葉を聞いて、トーヤは申し訳なさそうに用件を口にする。
「明日は用事がおありなのですね」
「そうだけど……何かあったの?」
首を傾げながらの問い掛けに、トーヤは食事会のことを伝えていく。
「行くわ!」
するとリリアーナからも即答で返ってきた。
「……で、でも、予定があるのでは?」
「予定はお昼だもの! それに、トーヤ君の料理が食べられるんでしょう? 行かないわけにはいかないわ!」
「あの、ご無理をされているわけでは――」
「安心してちょうだい! 私が行きたいだけだから!」
「……そ、それならよかったです」
先ほどの眠そうな顔はどこへやら、リリアーナは食事会の話を聞いた直後から上機嫌になり、朝から元気よく準備を始めだした。
(……これは私も、食事会の準備に気合いを入れなければなりませんね!)
ダインたちにも予定を聞く必要はあるが、休みだと聞いていることもあり、トーヤの頭の中は食事会のことで一杯になっていた。
「おはようございます、ジェンナ様! 次のお休みを伺ってもよろしいでしょうか!」
「……おはよう、トーヤ。それと、何かあったのかしら?」
勢いあまって食事会の話が抜けてしまい、慌てて休みを聞いた理由を説明していく。
「……なるほどね。それにしても、瞬光のみんなとの食事会から、どうしてそこに行きついたのかしら?」
「あはは。なんと言いますか、皆さんと楽しく食事をしながら話ができたら面白いかなと思いまして」
ジェンナも本気で理由を聞きたいわけではない。それはトーヤの性格を理解しているからだ。
そして、トーヤだけではなくブロンのこともジェンナは知っている。
この二人ならお世話になった人たちを労いたいと考えるのも頷けると理解していた。
「……そうねぇ。わたくしの場合は基本、シフトに余裕がある時に休みを入れているから、確認してみてからになるかしら」
「かしこまりました。ですが、そうなるとリリアーナさんと同じ日に休みというのは、難しそうですね」
ギルドマスターと副マスターが同時に休みを取るというのは難しいだろうと、トーヤは渋面になる。
「確かにその通りなのだけれど、食事会はお昼にやるのかしら?」
「いえ、特に時間はまだ決めておりませんでした。……そうか、夜なら仕事終わりで問題はありませんよね!」
休みが絶対に必要というわけではないと思い至り、トーヤは嬉しそうに声を上げた。
「その日の仕事量にもよるから、何名かは休みにしておくのがいいかもしれないわね」
「そうしていただけると大変ありがたいです」
「それなら……」
そこまで口にしたジェンナが思案顔を浮かべると、しばらくして口を開く。
「……明日がフェリとリリアーナの休みだから、急だけれど明日なんてどうかしら? もちろん、みんなに予定を聞いてからにはなるけれどね」
「明日でしたら瞬光の皆さんも休みだと言っておりましたし、確認してみます!」
いつもより弾んだ声のトーヤに笑みを浮かべながら、ジェンナは商業ギルドの掃除を始める。
そんなジェンナを見て慌ててトーヤも仕事の準備を始めていく。
しばらくして職員が出勤してくると、フェリとアグリが一緒にやってきた。
「おはようございます。フェリ先輩、アグリ君」
一通り準備を終えていたトーヤは、すぐに二人へ挨拶をした。
「おはよう、トーヤ君」
「おはよう!」
「準備をしながらで構いませんので、少しだけお話をよろしいでしょうか?」
トーヤから話を振ってくるのは珍しく、フェリは首を傾げつつも頷く。
「アグリ君にも確認したいことがあるので、あとでフェリ先輩から聞いておいてくれますか?」
「分かった! それじゃあ、俺はあっちで作業しておくわ!」
アグリの作業机はトーヤやフェリとは離れた場所にある。
そのため、仕事の邪魔をしないためにもとトーヤはフェリを介して伝えることにした。
「それで、どうしたの?」
「実は、お世話になった人をお呼びして食事会をしようと考えておりまして、それが明日の夜なのですが、参加が可能か伺いたかったのです」
アグリの予定もあるだろうと、トーヤはすぐに返事を貰うことは難しいと考えていた。
「行けるわ! もちろん、アグリも大丈夫だよ!」
だが、予想に反してフェリはアグリも問題はないと即答してくれた。
「……そ、そうなのですか? アグリ君も?」
「断る理由がないもの! 心配なら、すぐにでも確認してくるけど?」
「そ、それは大丈夫です! お仕事の邪魔はしたくありませんので!」
「そう? それじゃあ、休憩の時にでも聞いておくわね!」
フェリはとても嬉しそうにそう口にすると、その後は上機嫌に仕事の準備を始めていく。
まさかの即答にトーヤが驚いてしまったが、遅れてリリアーナが出勤してきたので、そちらへの確認を優先するべく声を掛ける。
「おはようございます、リリアーナさん」
「おはよ~、トーヤ君」
「今日は眠たそうですね」
欠伸をしながら挨拶を返してきたリリアーナに、トーヤは思わず問い掛けていた。
「昨日はちょっと遅くまで仕事をしていたからね。今日も残って、明日に備えて仕事を終わらせなきゃいけないのよ」
リリアーナの言葉を聞いて、トーヤは申し訳なさそうに用件を口にする。
「明日は用事がおありなのですね」
「そうだけど……何かあったの?」
首を傾げながらの問い掛けに、トーヤは食事会のことを伝えていく。
「行くわ!」
するとリリアーナからも即答で返ってきた。
「……で、でも、予定があるのでは?」
「予定はお昼だもの! それに、トーヤ君の料理が食べられるんでしょう? 行かないわけにはいかないわ!」
「あの、ご無理をされているわけでは――」
「安心してちょうだい! 私が行きたいだけだから!」
「……そ、それならよかったです」
先ほどの眠そうな顔はどこへやら、リリアーナは食事会の話を聞いた直後から上機嫌になり、朝から元気よく準備を始めだした。
(……これは私も、食事会の準備に気合いを入れなければなりませんね!)
ダインたちにも予定を聞く必要はあるが、休みだと聞いていることもあり、トーヤの頭の中は食事会のことで一杯になっていた。
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