ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

連載

第188話：トーヤ、食事会の準備をする

　ダインたちと約束をした日の夜、トーヤは家に帰るとすぐにブロンへ食事会の話を切り出した。

「お世話になった人たちを労いたいのだろう？　それならば、問題はないよ」
「本当ですか！　ありがとうございます、ブロンさん！」

　ブロンからも許可を得られたトーヤは、食事の最中だったが頭の中は何を出そうか、そのことで一杯になってしまう。
　その姿が目に見えて分かったブロンは柔和な笑みを浮かべ、自分の食事を進めていく。

（以前に野営で調理をしたローストビーフは出したいですね。生姜焼きはダインさんたちに出したことはなかったですし、こちらも作りたいですね。あとは色々と食材を吟味して――）
「これこれ、トーヤ。長い時間で考え過ぎじゃないかい？　料理が冷めてしまうよ」

　そろそろ自分の食事が終ろうとしたところで、ブロンが溜まらず声を掛けた。
　するとトーヤは集中し過ぎていたのか、ハッとした表情を浮かべると、申し訳なさそうに口を開く。

「も、申し訳ございませんでした！　そうですね、食事会の話をしていたのに、料理を冷めさせてしまうなんて！」

　料理は美味しいうちに食べるのが、作ってくれた相手への敬意だと思っているトーヤは、冷めてしまう前にと急いで口に運んでいく。

「慌てなくても大丈夫だよ」
「……ありがとうございます、ブロンさん」

　ブロンに宥められてしまい、今度は苦笑しながら食事を始めるトーヤ。
　思いのほか自分でも食事会を楽しみにしていると分かり、嬉しい反面恥ずかしくなってしまう。

「瞬光のみんなはわしも知っているからね。今度、トーヤがお世話になっていることにお礼を言いたいと思っていたんだよ」
「なんと！　ブロンさんは瞬光の皆さんのことも知っているのですね。……いえ、当然ですか。元々は商業ギルドの専属鑑定士でしたものね」

　長い間で商業ギルドの専属鑑定士をしていたのであれば、ラクセーナを拠点にしているダインたちと何度も顔を合わせていたことだろう。
　そう思い至ったトーヤは納得顔を浮かべながら、食事を進めていく。

「だから、一人で考えずに、わしも話に入れてくれないか？　一緒にみんなをもてなそうじゃないか」
「それはありがたいです！」

　そこまで話を進めると、トーヤはふと思いついたことを口に出していく。

「……そういうことでしたら、商業ギルドの方々もお呼びしたいところですね」
「ん？　それは、ジェンナ様やリリアーナのことを言っているのかい？」
「はい。それに、フェリ先輩やアグリ君もです！」

　商業ギルドの職員にはとてもお世話になっている。
　しかし、当然だが全員を呼ぶわけにもいかず、それぞれに仕事もあるだろう。
　ならばとトーヤは特にお世話になっている人や、仲良くしている人も呼んで食事会をできないかと思い至ったのだ。

「それは面白そうだ！」
「ですが、口に出しておいてなんですが、ご迷惑ではないですか？」
「食事は大勢で食べた方が楽しいからね。瞬光のみんなもそうだが、商業ギルドの人たちがいてくれるのも楽しいだろうね」

　ブロンからの後押しもあり、トーヤは瞬光だけではなく、ジェンナたちにも声を掛けることにした。

「皆さんの予定を合わせるのは大変かもしれませんね」
「それは仕方のないことだが、トーヤはやりたいのだろう？」
「はい！」
「それならば、頑張るしかないね」

　ここでもブロンから背中を押されたトーヤは、大変だからこそやりがいがあるという社畜魂に火を灯す。

「……そうですね！　お任せください！」

　明日にはジェンナやリリアーナ、フェリやアグリにも声を掛け、そのままダインたちとも話をしなければとやる気を出したトーヤ。
　そのやる気に押されて料理を一気にかき込むと、食器の片づけまで勢いよく終わらせると、ブロンと遅くまで料理の候補について話し込んだのだった。