ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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第184話:トーヤ、常識を教えられる

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「調合の師匠はブロンなのだから、あなたがきちんと説明してあげてちょうだいね」

 説明するのが面倒になったのか、ジェンナはため息交じりにブロンへそう伝えた。

「ほほ。かしこまりました、ジェンナ様」

 するとブロンは楽しそうに笑いながら答えると、視線をトーヤへ向ける。

「なんどかトーヤの調合を見させてもらったが、こうして何度も最高品質が出来上がること自体があり得ないのだよ」
「え? でも、私が作るポーションは毎回、最高品質で出来ておりましたよ?」
「それが規格外ということさ、トーヤ」

 柔和な声でブロンがそう答えると、トーヤは瞬きを繰り返しながら困惑してしまう。
 何せ過去の調合でも、最初からずっと最高品質で出来てしまっていたからだ。

「ですが私の場合は鑑定スキルのおかげなのですよ?」
「何を使用しているかは問題ではないのさ。一番大事なのは、完成品、ただそれだけさね」

 ブロンはそう伝えると、その視線をトーヤから完成したポーションへ向ける。

「完成してしまえば、それを使う者が購入していく。そして、購入者からすれば調合過程なんてどうでもいいんだよ」
「……確かに、その通りですね」

 ブロンの説明を聞き、トーヤは納得しながら大きく頷く。

「トーヤの鑑定スキルはとても貴重さ。だからわしらも秘匿し、守り抜くつもりなんだよ」
「……はい。ありがとうございます、皆さん」

 最後にブロンがそう伝えると、トーヤはお礼を口にしながら頭を下げた。

「気にしないでちょうだい、トーヤ」
「そうだよ、トーヤ君。それに、君のおかげで僕たちが得られるものが大きくなるんだからね」

 ジェンナは微笑みながら、ラディスは本音と冗談を半々といった感じで口にした。

「しかし……これ、本当にすごいね、姉さん」

 そして、改めてといった感じでラディスがそう呟く。

「そうね。トーヤにはいろいろと驚かされてきたけど、今回の調合もトップテンに入るわね」
「……これが一番、二番じゃないのかい?」
「トーヤと働いていたら、これくらいなら免疫ができてしまっているわね」
「……十分驚いていたようだけど?」
「免疫ができているとはいえ、驚かないわけではないからね」

 ラディスがニヤニヤ笑いながらそう口にすると、ジェンナがキッと睨みつける。

「さて、話を戻しましょうか。ジェンナ様、ラディス様」

 ここまでのやり取りを見ていたブロンがそう口にすると、二人はごほんと咳払いを挟む。

「それもそうね」
「その方がよさそうだ」

 そうして全員の視線は、大鍋いっぱいに作られた最高品質のポーションに目を向けた。

「……これだけで、どれだけの利益が出るだろうか」
「……王都にはこれくらいのポーション、いたるところで販売しているでしょう? そっちに卸すのは二割でいいわよね?」
「えぇっ!? ちょっと、それはないよ、姉さん! せめて三割……いいや、四割は卸してよ!」
「四割ですって? そんなには無理よ。三割がギリギリかしら?」
「それなら三割で頼むよ!」

 本音で言えば半々で分けてほしいと思うラディスだが、突然大量に最高品質のポーションが卸されたとなれば、今度は王都の商業ギルドで作成者の捜索が始まってしまう。
 トーヤのためにも、大鍋を見つめながら三割が限界だなと自らを納得させる。

「…………分かった。三割で、頼むよ!」
「苦しそうに言われても、三割は変わらないからね?」
「分かってるよ!」

 ジェンナとラディスの商談が終わると、二人は視線をトーヤに向ける。

「トーヤからは何か要望はあるかしら?」
「わ、私からですか?」
「そうだよ、トーヤ君。こういうものは、作成者に最も利益が出るように考えるべきなんだけど、君が一番望んでいることがあればと思ってね」

 自分が望むものと言われてしまい、トーヤは思案顔を浮かべる。
 しかし、トーヤとしては単に調合を楽しんでいただけで、これが大きく利益を出す商品になるとは思ってもいなかった。
 故に、急に望むものはと問われても、すぐに答えが出てこない。

「トーヤのことが秘匿されるなら、それ以上も以下もないのではないかな? どうだろう、トーヤ?」

 そんなトーヤに助け舟を出してくれたのはブロンだ。

「ブロンさんの言う通りです。私から望むのは、私のことを秘匿していただくこと、それい尽きます」
「全く。トーヤは本当に、欲がないのね」
「ねえ、トーヤ君。本気で僕のところに来ないかい? 今の倍以上は報酬を準備する――」
「その発言はわたくしにケンカを売っていると捉えていいのよね、ラディス?」

 どさくさに紛れてトーヤを勧誘しようとしたラディスだが、言葉を遮るようにしてジェンナがそう言い放つと、頬を引きつらせながら口を閉ざす。

「……じょ、冗談です」
「言って良い冗談と、悪い冗談があるのよ? 知っていたかしら?」
「……すみませんでした」
「あは、あはは……」

 こうしてトーヤは、ポーション作成でジェンナとラディスを驚かせながら、最高品質のポーションを完成させたのだった。
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