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第176話:トーヤ、改めて実感する
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トーヤとしてはラディスのこともそうだが、アリアナとレミの希望が通ったことが何より嬉しかった。
二人は商業ギルドの部屋を間借りしているせいか、どこか遠慮しているように見えていたからだ。
ちゃんと自分の意見を口にし、ジェンナもその意見を尊重してくれたことで、今後は二人も意見をしやすくなるだろう。
それに、王都の商業ギルドにも魔導具を卸すとなれば、二人はさらに魔導具開発に集中することができるはず。
その方が二人をラクセーナに連れてきたトーヤとしても嬉しいことであり、全てが良い方向へ進んでいると思っていた。
「それでは私はそろそろ失礼させていただきます。鑑定カウンターの方も気になりますので」
フェリに任せた鑑定カウンターのことが気になり、トーヤはそう口にした。
「そうね。あとはわたくしとラディス、アリアナとレミで話を進めるとしましょうか」
「そうだね。助かったよ、トーヤ君」
「私は何もしておりませんが?」
ラディスの言葉にトーヤが首を傾げると、その姿を見てアリアナとレミが苦笑する。
「トーヤ少年は本気でそう言っているのだから、不思議なものだね」
「本当ですね」
「ん~? ……とりあえず、失礼いたしました」
本当にお礼を言われる理由が分からなかったトーヤは、首を傾げながらジェンナの部屋をあとにした。
二階から一階を見ると、鑑定カウンターにも特に客が並んでいるということもなく、ホッと胸を撫で下ろす。
急いで一階へと向かい、すぐにフェリへ声を掛ける。
「ありがとうございました、フェリ先輩」
「大丈夫だよ、トーヤ君。そっちこそ大丈夫だったの?」
「はい。……まあ、皆さんが仰った通りに引き抜きだったのですが――」
「本当に大丈夫だったんだよね!」
トーヤが引き抜きの話題を出すと、フェリは彼の言葉を遮りながら確認をしてきた。
「もちろんです。私がラクセーナを離れる理由が、何一つとしてありませんから」
「「「「……よ、よかった~!」」」」
「えぇ? み、皆さん、どうしたのですか?」
安堵の声を上げたのはフェリだけではなく、周りにいた職員からも上がっていた。
「うふふ。みんな、トーヤ君がいなくなるんじゃないかって、心配していたのよ」
そこへリリアーナから声が掛けられた。
「向かう前に、大丈夫だと伝えたではないですか」
「それでも、みんなトーヤ君が心配だったのよ」
心配してくれる人がいるというのは嬉しいもので、トーヤは少しだけ恥ずかしくなる。
「……ありがとうございます、皆さん」
そこでトーヤがお礼を口にすると、みんなも笑顔で頷いてくれた。
「さあさあ! さっきまではすこーしだけ気がそぞろでも許してたけど、今からはそうじゃないからね! しっかりと仕事をすること、いいわね!」
「「「「「はい!」」」」」
トーヤだけではなく、職員からも返事を受けたリリアーナは満足気に頷く。
そして、自らも仕事に戻り、いつも通りのラクセーナ商業ギルドが戻ってきた。
(……本当に、皆さんお優しい方ばかりですね)
みんなの好意が嬉しく、トーヤは自然と笑みを浮かべてしまう。
「あ! 戻ってきてたんだね、トーヤ君!」
そこへ、二階に向かう前に鑑定を行っていたミラが安堵の表情で声を掛けてきた。
「ミラさん? どうなさったのですか?」
「トーヤ君もだけど、ギルドのみんなが不安そうだったから、気になっちゃって」
トーヤは商業ギルドの職員だけではなく、ミラにも心配してもらっていたのかと、ここでも嬉しくなってしまった。
「どうやらご心配をお掛けしてしまったようですね」
「いやいや! 私が勝手に心配しちゃっただけだから! ……でも、よかった。大丈夫そうね」
そう口にしたミラは、職員の雰囲気に目を向けていた。
何も変わることのない、いつもの風景が広がっている商業ギルド。
それが何よりも嬉しく、そして居心地が良い。
「……やはり、私はここが好きなようです」
「ブロンさんもだけど、ラクセーナの人たちはいい人が多いからね」
「はい」
「それじゃあ、私も行くわね!」
「ありがとうございました、ミラさん」
笑顔で手を振ってくれたミラさんを見送り、トーヤもいつもの仕事へと戻っていった。
二人は商業ギルドの部屋を間借りしているせいか、どこか遠慮しているように見えていたからだ。
ちゃんと自分の意見を口にし、ジェンナもその意見を尊重してくれたことで、今後は二人も意見をしやすくなるだろう。
それに、王都の商業ギルドにも魔導具を卸すとなれば、二人はさらに魔導具開発に集中することができるはず。
その方が二人をラクセーナに連れてきたトーヤとしても嬉しいことであり、全てが良い方向へ進んでいると思っていた。
「それでは私はそろそろ失礼させていただきます。鑑定カウンターの方も気になりますので」
フェリに任せた鑑定カウンターのことが気になり、トーヤはそう口にした。
「そうね。あとはわたくしとラディス、アリアナとレミで話を進めるとしましょうか」
「そうだね。助かったよ、トーヤ君」
「私は何もしておりませんが?」
ラディスの言葉にトーヤが首を傾げると、その姿を見てアリアナとレミが苦笑する。
「トーヤ少年は本気でそう言っているのだから、不思議なものだね」
「本当ですね」
「ん~? ……とりあえず、失礼いたしました」
本当にお礼を言われる理由が分からなかったトーヤは、首を傾げながらジェンナの部屋をあとにした。
二階から一階を見ると、鑑定カウンターにも特に客が並んでいるということもなく、ホッと胸を撫で下ろす。
急いで一階へと向かい、すぐにフェリへ声を掛ける。
「ありがとうございました、フェリ先輩」
「大丈夫だよ、トーヤ君。そっちこそ大丈夫だったの?」
「はい。……まあ、皆さんが仰った通りに引き抜きだったのですが――」
「本当に大丈夫だったんだよね!」
トーヤが引き抜きの話題を出すと、フェリは彼の言葉を遮りながら確認をしてきた。
「もちろんです。私がラクセーナを離れる理由が、何一つとしてありませんから」
「「「「……よ、よかった~!」」」」
「えぇ? み、皆さん、どうしたのですか?」
安堵の声を上げたのはフェリだけではなく、周りにいた職員からも上がっていた。
「うふふ。みんな、トーヤ君がいなくなるんじゃないかって、心配していたのよ」
そこへリリアーナから声が掛けられた。
「向かう前に、大丈夫だと伝えたではないですか」
「それでも、みんなトーヤ君が心配だったのよ」
心配してくれる人がいるというのは嬉しいもので、トーヤは少しだけ恥ずかしくなる。
「……ありがとうございます、皆さん」
そこでトーヤがお礼を口にすると、みんなも笑顔で頷いてくれた。
「さあさあ! さっきまではすこーしだけ気がそぞろでも許してたけど、今からはそうじゃないからね! しっかりと仕事をすること、いいわね!」
「「「「「はい!」」」」」
トーヤだけではなく、職員からも返事を受けたリリアーナは満足気に頷く。
そして、自らも仕事に戻り、いつも通りのラクセーナ商業ギルドが戻ってきた。
(……本当に、皆さんお優しい方ばかりですね)
みんなの好意が嬉しく、トーヤは自然と笑みを浮かべてしまう。
「あ! 戻ってきてたんだね、トーヤ君!」
そこへ、二階に向かう前に鑑定を行っていたミラが安堵の表情で声を掛けてきた。
「ミラさん? どうなさったのですか?」
「トーヤ君もだけど、ギルドのみんなが不安そうだったから、気になっちゃって」
トーヤは商業ギルドの職員だけではなく、ミラにも心配してもらっていたのかと、ここでも嬉しくなってしまった。
「どうやらご心配をお掛けしてしまったようですね」
「いやいや! 私が勝手に心配しちゃっただけだから! ……でも、よかった。大丈夫そうね」
そう口にしたミラは、職員の雰囲気に目を向けていた。
何も変わることのない、いつもの風景が広がっている商業ギルド。
それが何よりも嬉しく、そして居心地が良い。
「……やはり、私はここが好きなようです」
「ブロンさんもだけど、ラクセーナの人たちはいい人が多いからね」
「はい」
「それじゃあ、私も行くわね!」
「ありがとうございました、ミラさん」
笑顔で手を振ってくれたミラさんを見送り、トーヤもいつもの仕事へと戻っていった。
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