ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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第174話:トーヤ、魔導具の相談を始める

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「魔導具の、取り扱いですか?」

 しかしトーヤにとっては、この提案は驚きのものだった。

「ですが、王都には魔導具開発局という、大きな組織があるではないですか」

 王都の商業ギルドが魔導具を取り扱うならば、当然王都に存在する魔導具開発局を頼るのが筋だろう。
 これはトーヤだけではなく、世間一般的な考え方だと彼も思っている。
 そして、それは間違いではなく、ジェンナもうんうんと何度も頷いている。

「いや、そうなんだけどね。正直に言って、二人が抜けた穴がとても大きいんだよ」
「アリアナさんとレミさんですか?」
「あぁ。局長は貴族の権力を振るって、彼女の成果を自分のものにしていたようだからね」

 ラディスがそう口にすると、トーヤは少しだけムッとしてしまう。

「……それを知っていて、アリアナさんたちを助けることをしなかったわけですよね?」

 その事実を知っていたならば、そして商業ギルドのギルドマスターであれば、アリアナとレミに助け舟を出すこともできたのではないかと、トーヤは憤っていたのだ。

「もちろん、それも考えたさ。だけど、商業ギルドにいる一般人なギルドマスターと、魔導具開発局の貴族の局長。どちらに力があるかは明らかだろう?」
「だからといって手助けをしない理由にはならないのでは? それに、商業ギルド目線で見れば、アリアナさんたちを助けることが、ギルドの利益にもなると分かっていたわけですよね?」

 トーヤの言葉が止まらない。
 そのことにラディスだけではなく、平静を装っていたジェンナも内心で驚いていた。

「そ、それはそうなんだけどね」
「であるならば、その時に助けるべきだったのです。それを魔導具開発局から去ったからといって再び契約したいというのは、アリアナさんとレミさんを下に見ていると同義ではないですか? ギルドマスターだからと下の者は従うべきだとお思いなのではないですか?」
「……どうしたのかしら、トーヤ?」

 思わずジェンナが口を挟むと、トーヤはハッとした表情を浮かべた。
 そして、慌てた様子で頭を下げる。

「た、大変失礼いたしました! 私のようなものがこのような物言い、本当に申し訳ございません!」

 トーヤは思いの丈をぶちまけてしまったと顔を青ざめ、謝罪の言葉を口にした。
 しかし、ラディスは真剣な面持ちで首を横に振る。

「……いいんだよ、トーヤ君。むしろ、君の言う通りだからね」

 そう口にしたラディスは、頭を掻きながら小さく息を吐く。

「うーん。僕はいつの間にか、傲慢な人間になっていたみたいだ」
「あら? ようやく気づいたのかしら?」
「……言ってくれるね、姉さん」

 ラディスとしては慰めてほしくて口にした言葉だったが、ジェンナは呆れたように別の言葉を言い放った。

「あなたは昔から、調子に乗ってしまう悪い癖があるのよ。それがなければ本当に良い上司になれるんじゃなくて?」
「そういう姉さんはどうなんだい? 良い上司、やれているの?」
「わたくしは元から傲慢ですからね。多少、欲をかいたとしても問題にはならないわ」
「それ、開き直っているんじゃないのかな?」
「それを許してくれる優秀な部下を集めた、と言ってもらいたいわね」

 謝罪を口にしたトーヤはずっと申し訳なさそうな表情を浮かべていたのだが、ジェンナとラディスのやり取りを見ていると、徐々に気持ちが落ち着いてきた。

「……あの、今はどのような状況なのでしょうか?」

 思わず本音がポロリとこぼれると、ジェンナとラディスは笑いながら答える。

「誰もあなたを責めていない、という状況よ」
「むしろ、僕の悪いところを突かれて困っているところかな?」
「それはあなたの自業自得ではなくって?」
「はいはい、分かったから。それ以上は止めてくれないかな?」

 どこか和やかな雰囲気になってしまい、トーヤは瞬きを繰り返しながら顔を上げ、ソファに座り直す。

「しかし、そうなるとやはり、アリアナちゃんとレミちゃんの魔導具を仕入れるのは難しいかぁ」
「諦めるのね」
「……そこは同じ商業ギルド、さらには姉弟のよしみで、どうにかしてくれるんじゃないのかな?」
「わたくしに言われてもねぇ……そうでしょう、トーヤ?」

 どうしてここで自分に振られるのかと思ったトーヤだったが、すぐにジェンナの意図を汲み取り口を開く。

「……あの、ラディス様。アリアナさんとレミさんも、こちらにお呼びしてもよろしいでしょうか?」

 アリアナは魔導具が多くの人の手に届き、生活を良くしたいという思いで魔導具開発を行っている。
 ならば、ジェンナは自分が決めるよりも、本人たちに決めさせるべきではないかとトーヤは考えた。

「僕はいいけど……逆に聞くが、いいのかい?」
「おそらくですが、アリアナさんもレミさんも、自分たちで決めたいと思うはずです。ジェンナ様もよろしいでしょうか?」
「トーヤが決めたことなら、わたくしは問題ないわ」

 ラディスとジェンナからも許可を得たトーヤは一度理を入れると、急いで部屋を飛び出した。
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