ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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第171話:トーヤ、やらかした……?

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 翌日となり、アリアナとレミは攻撃用の魔導具を完成させていた。
 トーヤが出勤して早々に試し撃ちをしたいと詰め寄ってきたのだが、そこにリリアーナが立ちふさがる。

「昨日で冒険者ギルドのギルマスと顔合わせは済んだんでしょう? だったら、あなたたち二人で行きなさい」
「「えぇっ!? あの強面ギルドマスターに、二人だけで!!」」
「その通り! ほら、さっさと行く! トーヤ君にはトーヤ君の仕事があるんだからね!」
「「は、はいいいいぃぃっ!!」」

 リリアーナが声音を低くしてそう言い放つと、アリアナとレミは震えた声で返事をし、駆け足で商業ギルドをあとにした。

「まったく。トーヤ君も連れて来たっていう引け目はあるかもしれないけど、甘やかしちゃダメよ?」
「そうですね。肝に銘じておきます」

 実のところ、トーヤも二人を突き放すつもりでいた。
 リリアーナが言った通り、トーヤにはトーヤの仕事があり、そこを抜けるとなれば他の職員にしわ寄せが向いてしまう。
 アリアナとレミに協力したい気持ちもあるが、きちんとした線引きは必要だと考えている。

「……それに、まだリストアップが終わっていないのですよね」
「ん? 何か終わっていない仕事があるの? 珍しいわね」
「い、いいえ! こちらの話ですので、お気になさらず」

 さらに言えばトーヤは昨晩、徹夜でアリアナに作ってもらいたい魔導具をリストアップしていたのだが、時間が足りずに今日も時間があれば考えるつもりでいた。
 もしも魔導具の試し撃ちに同行してしまえば、時間はあるだろうが目の前の光景に目を奪われて、考えることができなくなるかもしれない。
 それならば、普段の仕事の合間に考える方がいいだろうと思っていた。

(こんなことをリリアーナさんに知られたら、集中しなさいと怒られてしまいそうです)

 仕事に真面目なトーヤにしては珍しい考え方だが、興味を持ったことには真剣に取り組みたいというのも、またトーヤの性格だった。
 そんな中で朝礼が進み、商業ギルドの営業が開始される。
 すると、勢いよく商業ギルドの扉が開き、見覚えのある髪色をした男性が微笑みを浮かべながら入ってきた。

「えぇっ!? ど、どうしてラディス様がここに!!」

 驚きの声を上げたのはリリアーナだった。

「久しぶりだね、リリアーナちゃん。姉さんはいるかな?」
「しょ、少々お待ちください!」

 男性はにこやかにそう答えると、リリアーナは大慌てで二階へと上がっていく。

「……これは、一波乱ありそうね」

 すると今度はトーヤの隣に座っていたフェリが口を開いた。

「……あの、フェリ先輩? あのお方はどなたなのですか?」
「……そっか。トーヤ君は知らないよね。あの方は――」
「急にやってきてなんの用かしら、ラディス?」

 フェリから答えを聞き終わる前に、二階の踊り場からジェンナの声が響いてきた。

「久しぶりだね、ジェンナ姉さん」
「……ジェ、ジェンナ姉さん!? と、ということは、ジェンナ様の弟様ですか!!」

 トーヤが驚きの声を上げると、ラディスにも聞こえていたのだろう、彼は微笑みながらトーヤに手を振ってきた。

「あ……し、失礼いたしました」
「いいんだよ、トーヤ君」
「……え? ど、どうして私の名前を?」
「はいはい! みんなは仕事をしなさい! ラディスはこっちに来てちょうだい、今すぐに!」

 商業ギルド内がざわつく中、ジェンナが手を叩きながらそう告げると、ラディスにはやや声音を低くして言い放つ。
 これがギルド職員に対して放たれた言葉であれば、恐怖で身震いしていたことだろう。
 しかしラディスは軽く肩を竦めるだけで、飄々とした様子で二階へと上がり、そのまま奥の部屋へ向かっていった。

「いったい、何があったのでしょうか? ……フェリ先輩?」

 トーヤが困惑顔をしていると、その隣でフェリが顔を青ざめている。

「……ど、どうなさったのですか、フェリ先輩?」
「……ラディス様が、トーヤ君を知っていた?」
「そのようですね。私は初対面なのですが」
「……ラディス様は、王都の商業ギルドのギルドマスターなのよ」

 王都の商業ギルドのギルドマスターと聞いたトーヤは、そこでハッとした表情を浮かべる。

「……もしかして、アリアナさんとレミさんが王都を離れたから、そのことでジェンナ様に抗議をしに来たのでしょうか!」
「違うわ! ……いや、それもあるかもしれないけど、狙いはトーヤ君よ!」
「……え? わ、私ですか?」

 まさかの答えにトーヤは困惑を隠せない。

「きっとラディス様の耳に、トーヤ君の優秀さが伝わったんだわ! それで、王都の商業ギルドへ引き抜きに来たのよ!」
「……まさか、それはないと思いますよ。優秀かどうかはさておいて、私はあのお方と初対面なのですから」

 そう口にしたトーヤだったが、何故かフェリの表情は一向に晴れることがない。
 困ったトーヤは周りの職員にも視線を向けてみたのだが、その誰もが心配そうに彼を見つめている。

「……えっとー……え? まさか、本当に引き抜きの可能性が?」

 そのまさかの可能性を口にすると、全員が大きく頷いた。
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