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第169話:トーヤ、試し撃ちに感心する
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直後、指輪に刻まれた模様から赤い光が放たれ、火をイメージした赤い魔力が放出される。
「……なんて美しいのでしょうか」
魔力が見えるのはトーヤだけなので、彼が見ている光景は彼だけのものだが、その光はとても幻想的で、思わず口をついてこぼれ落ちた。
「おいおい、こいつはすげえ魔導具じゃねえか!」
「さすが私の魔導具! さあ、レミちゃん! ぶっ放すんだ!」
「は、はい!」
放出された魔力は巨大な炎を顕現させ、その光景にギグリオは驚き、アリアナは興奮し、レミは訓練場の一番奥にある丸い的を睨みつけながら声を上げた。
「えい!」
巨大な炎を放つには少々頼りない、可愛らしい声を響かせてレミが的めがけて撃ち出した。
熱波が周囲へ広がりながら巨大な炎が飛んでいき、丸い的に命中すると爆散、的は粉々となり炎が地面に点々と飛び散っていく。
「うおおおおっ! マジですげえじゃねえか!」
「あはははは! さすがわ私の魔導具だよ! あーはははは!」
「ア、アアアア、アリアナさん! 早く消化を! お願いします!」
「……ん? 消化?」
「「「……え?」」」
炎を放つ魔導具を試し撃つのだから、当然消化のための魔導具を用意しているとレミは思っており、毎回そのように試し撃ちを行ってきた。
だから今回も当然のように準備していると思っていたのだが、アリアナはコテンと首を横に倒した。
「……も、もしかして、持ってきていないんですか!?」
「あー……興奮し過ぎて、すっかり忘れていたよ! いやー、すまない!」
「すまないじゃありませんよ! えっと、炎を消すにはどうしたら……あれ? えっと……」
アリアナからのまさかの答えに、レミは慌て過ぎてどうするべきかすぐに判断できなくなってしまう。
「ちょっと待ってくれ! 代わりになる魔導具を探すから! あれでもない……これでもない……」
一方でアリアナはアイテムボックスの魔導具から消化ができそうな魔導具を探し始めたが、すぐには見つからない。
「……ったく、しょうがねぇなぁ」
「おや? 手を貸してくださるのですか、ギグリオさん?」
慌てている二人を見かねてか、ギグリオが頭をガシガシと掻きながら再び大剣を手に取ると、その姿を見てトーヤが声を掛けた。
「いずれは消えるんだろうが、このままじゃあ熱くてしょうがねぇ」
「申し訳ございません、お手間を取らせます」
「なんで坊主が謝るんだ? だがまあ、俺たちも魔導具の恩恵を受けられるなら、これくらいは手伝ってやらねぇとな」
最初こそ面倒くさそうにしていたが、最後の方はニヤリと笑いながら歩き出し、レミの横を抜けて前に出る。
「ちょっと下がってな、嬢ちゃん」
「で、ですが……」
「これくらいの炎なら――一振りで十分だ!」
申し訳なさそうなレミに豪快な笑みを返すと、ギグリオは腰を落とし、剣身を腰に沿わせて両腕に力を込める。
その姿を見たレミは慌てて駆け出し、トーヤとアリアナの間に立ってギグリオの背中を見つめる。
「いくぜ? どらああああああああっ!!」
ギグリオが放ったのは、渾身の横薙ぎだ。
だが、点々としているとはいえ炎は広範囲に広がっており、ギグリオが立っている場所は訓練場に中央に近い場所だ。
そこからどのようにして炎を消してしまうのかとトーヤは思っていたのだが――
――ゴウッ!
ギグリオが大剣を振り抜いた直後、突風がトーヤたちのところまで届いた。
渾身の横薙ぎにより放たれた突風は広範囲の炎にも当然届いており、一瞬にして吹き飛ばして消化してしまった。
「……す、すごいですね」
「……豪快だね、ギルドマスター様は」
「……カッコいい!」
「「え?」」
トーヤとアリアナが感嘆の声を上げる中、レミだけはギグリオの姿を見て感動を覚えていた。
「おいおい。え? ってのはどういうことだ?」
そんなレミの感想を聞いたトーヤとアリアナの言葉はギグリオの耳にも届いており、彼は呆れたようにそう問い掛けた。
「いえいえ、別に他意はないのですよ? ねえ、アリアナさん?」
「もちろんだとも! 手を煩わせてしまい、申し訳なかったです!」
「ったく。まあ、そういうことにしておくぜ。それで、どうだったんだ? 魔道具の試し撃ちは?」
ギグリオも最初から問い詰めようとは思っておらず、話を本題に戻していく。
「……今のは魔導具の最大火力だったんですが、確かにこちらにも熱波が届いていましたね。防御魔導具を使っても、熱を感じられるほどでした」
「ふむ。ということは、それがなければ軽微な火傷が心配される熱波ということだね」
「なんだ、まだ未完成だったのか?」
「完成へ導くための試し撃ちだったのです」
試し撃ちの感想をレミが口にすると、アリアナが見解を述べていく。
その様子を見たギグリオへ、トーヤが事情を説明した。
「ふむふむ……あの時の魔法式をあちらに変更して、相手部分に安全装置を付ければ……よし! 明日には完成だな!」
「私もそうだと思いました、アリアナさん!」
頭の中で検証を済ませたのだろう、アリアナとレミは嬉しそうに声を上げた。
「……おい、坊主。あの二人はいったい、何をしているんだ?」
「実は私にも分からないのですよね。研究者の頭の中は、分野の違う私たちには理解が追いつかないものです」
呆れた様子のギグリオだったが、トーヤは嬉しそうな二人の姿を見て、安堵の笑みを浮かべていた。
「……なんて美しいのでしょうか」
魔力が見えるのはトーヤだけなので、彼が見ている光景は彼だけのものだが、その光はとても幻想的で、思わず口をついてこぼれ落ちた。
「おいおい、こいつはすげえ魔導具じゃねえか!」
「さすが私の魔導具! さあ、レミちゃん! ぶっ放すんだ!」
「は、はい!」
放出された魔力は巨大な炎を顕現させ、その光景にギグリオは驚き、アリアナは興奮し、レミは訓練場の一番奥にある丸い的を睨みつけながら声を上げた。
「えい!」
巨大な炎を放つには少々頼りない、可愛らしい声を響かせてレミが的めがけて撃ち出した。
熱波が周囲へ広がりながら巨大な炎が飛んでいき、丸い的に命中すると爆散、的は粉々となり炎が地面に点々と飛び散っていく。
「うおおおおっ! マジですげえじゃねえか!」
「あはははは! さすがわ私の魔導具だよ! あーはははは!」
「ア、アアアア、アリアナさん! 早く消化を! お願いします!」
「……ん? 消化?」
「「「……え?」」」
炎を放つ魔導具を試し撃つのだから、当然消化のための魔導具を用意しているとレミは思っており、毎回そのように試し撃ちを行ってきた。
だから今回も当然のように準備していると思っていたのだが、アリアナはコテンと首を横に倒した。
「……も、もしかして、持ってきていないんですか!?」
「あー……興奮し過ぎて、すっかり忘れていたよ! いやー、すまない!」
「すまないじゃありませんよ! えっと、炎を消すにはどうしたら……あれ? えっと……」
アリアナからのまさかの答えに、レミは慌て過ぎてどうするべきかすぐに判断できなくなってしまう。
「ちょっと待ってくれ! 代わりになる魔導具を探すから! あれでもない……これでもない……」
一方でアリアナはアイテムボックスの魔導具から消化ができそうな魔導具を探し始めたが、すぐには見つからない。
「……ったく、しょうがねぇなぁ」
「おや? 手を貸してくださるのですか、ギグリオさん?」
慌てている二人を見かねてか、ギグリオが頭をガシガシと掻きながら再び大剣を手に取ると、その姿を見てトーヤが声を掛けた。
「いずれは消えるんだろうが、このままじゃあ熱くてしょうがねぇ」
「申し訳ございません、お手間を取らせます」
「なんで坊主が謝るんだ? だがまあ、俺たちも魔導具の恩恵を受けられるなら、これくらいは手伝ってやらねぇとな」
最初こそ面倒くさそうにしていたが、最後の方はニヤリと笑いながら歩き出し、レミの横を抜けて前に出る。
「ちょっと下がってな、嬢ちゃん」
「で、ですが……」
「これくらいの炎なら――一振りで十分だ!」
申し訳なさそうなレミに豪快な笑みを返すと、ギグリオは腰を落とし、剣身を腰に沿わせて両腕に力を込める。
その姿を見たレミは慌てて駆け出し、トーヤとアリアナの間に立ってギグリオの背中を見つめる。
「いくぜ? どらああああああああっ!!」
ギグリオが放ったのは、渾身の横薙ぎだ。
だが、点々としているとはいえ炎は広範囲に広がっており、ギグリオが立っている場所は訓練場に中央に近い場所だ。
そこからどのようにして炎を消してしまうのかとトーヤは思っていたのだが――
――ゴウッ!
ギグリオが大剣を振り抜いた直後、突風がトーヤたちのところまで届いた。
渾身の横薙ぎにより放たれた突風は広範囲の炎にも当然届いており、一瞬にして吹き飛ばして消化してしまった。
「……す、すごいですね」
「……豪快だね、ギルドマスター様は」
「……カッコいい!」
「「え?」」
トーヤとアリアナが感嘆の声を上げる中、レミだけはギグリオの姿を見て感動を覚えていた。
「おいおい。え? ってのはどういうことだ?」
そんなレミの感想を聞いたトーヤとアリアナの言葉はギグリオの耳にも届いており、彼は呆れたようにそう問い掛けた。
「いえいえ、別に他意はないのですよ? ねえ、アリアナさん?」
「もちろんだとも! 手を煩わせてしまい、申し訳なかったです!」
「ったく。まあ、そういうことにしておくぜ。それで、どうだったんだ? 魔道具の試し撃ちは?」
ギグリオも最初から問い詰めようとは思っておらず、話を本題に戻していく。
「……今のは魔導具の最大火力だったんですが、確かにこちらにも熱波が届いていましたね。防御魔導具を使っても、熱を感じられるほどでした」
「ふむ。ということは、それがなければ軽微な火傷が心配される熱波ということだね」
「なんだ、まだ未完成だったのか?」
「完成へ導くための試し撃ちだったのです」
試し撃ちの感想をレミが口にすると、アリアナが見解を述べていく。
その様子を見たギグリオへ、トーヤが事情を説明した。
「ふむふむ……あの時の魔法式をあちらに変更して、相手部分に安全装置を付ければ……よし! 明日には完成だな!」
「私もそうだと思いました、アリアナさん!」
頭の中で検証を済ませたのだろう、アリアナとレミは嬉しそうに声を上げた。
「……おい、坊主。あの二人はいったい、何をしているんだ?」
「実は私にも分からないのですよね。研究者の頭の中は、分野の違う私たちには理解が追いつかないものです」
呆れた様子のギグリオだったが、トーヤは嬉しそうな二人の姿を見て、安堵の笑みを浮かべていた。
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