ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

文字の大きさ
上 下
64 / 118
連載

第164話:トーヤ、魔導具に指摘する

しおりを挟む
「では……こちらの指輪タイプの魔導具ですが、炎を放つことができる、攻撃系の魔導具、ということでよろしいですか?」

 トーヤは鑑定結果に視線を落として読み上げながら、アリアナへ確認を取っていく。

「その通りだ」
「魔導具に注ぐ魔力量によって威力が変わり、過度な魔力消費を防ぐ安全対策も取られている、ですよね?」
「その通りだとも! 安全に扱える魔導具でなければ、意味がないからね!」

 自信満々な態度のアリアナを見て、なるほどとトーヤは納得顔で頷く。

「ほうほう、だからこの魔導具の完成度は九〇パーセントなのですね」
「それはどういうことだい! トーヤ少年!」
「はいはい、落ち着いてくださいね、アリアナさーん」
「……レミちゃん、ここに来てから本当に私への態度が冷たくなっていないかい?」
「それでですね、レミさん」
「トーヤ少年までレミちゃんに声を掛けるのかい!?」

 二人とのやり取りの場合、主にレミとやり取りをした方が話が上手く進むと判断したトーヤも、最終的には彼女に声を掛けることにした。

「……この魔導具、今お伝えした内容に関しては全く問題ないようなのです」
「それなのに九〇パーセントなのですよね?」
「はい。その理由は、炎を放つ時の熱波が使用者にも届いてしまうこと、らしいのですよ」

 トーヤがあえて『らしい』と口にしたのは、自分では魔導具が発動する時のイメージができないからだ。
 イメージできないから、鑑定結果として出てきている内容だとしても、はっきり口にできなかった。
 しかし、アリアナとレミには『熱波が使用者にも届いてしまう』というイメージが明確にできており、ハッとした表情でお互いを見合っていた。

「……確かに、そこに関しては見落としていました」
「ぐぬぬ! やはり研究所が変われば、確認作業の方法も変わると言うことだね!」
「確認作業の方法も変わる、ですか?」

 納得している二人とは異なり、トーヤはアリアナの発言が気になり問い掛けた。

「魔導具開発局には、実際に魔導具を発動させ、動作確認をする専用の部屋があるんです。そこは今回のような戦闘用魔導具の発動も許可されているんですが、ここではさすがにできないので」
「その通り! 商業ギルドの外とはいっても都市の中だ、戦闘用魔導具を発動させるわけにはいかないだろう? だからと言って、私たちだけで都市の外に出るのは危険なのさ」
「なるほど。だから、理論では完成していると思われていたものが、実際に使ってみると不安な部分もあった、というわけですか」

 そう口にしたトーヤは、納得顔で最初の二つの魔導具に目を向ける。
 こちらも指輪タイプの魔導具なのだが、その使用用途は戦闘用ではなく、防御用の魔導具と言えるものだ。
 一つは以前にトーヤが雑貨屋で見つけた、風の盾を顕現させる防御用の魔導具を、アリアナなりに改良した魔導具。
 使い捨てではなく、さらに発動速度が風の盾よりも早くなっている。
 瞬時の判断が必要とされる場面での活躍が期待できる魔導具と言えるだろう。
 そして二つ目の魔導具は、自動発動タイプの魔導具だ。
 ただし、発動するのは攻撃魔法に対してのみで、物理攻撃には発動しない。
 用途分けされていると言えばいいのだろう、アリアナは物理攻撃に対応した自動発動魔導具の開発にも着手しようと考えている。
 とはいえ、今は戦闘用魔導具についての話だ。
 最初の二つに関しては防御用魔導具だったということもあり、部屋の中でも使用した時の状況を確認することができていたため、完成度は一〇〇パーセントになっていた。

「自動発動タイプの防御用魔導具は、どのようにして使用確認をしたのですか?」
「とっっっっても小さな魔法で実際に攻撃してみたわ!」
「それ、危険じゃないですか?」
「当たったとしても、小石が当たったかな程度の魔法だったので、そこは大丈夫ですよ」

 トーヤが心配そうに問い掛けると、レミが笑顔で答えてくれた。

「とはいえ、やはり威力を上げての確認も必要になる戦闘用魔導具の確認はできなかった、というわけさ」
「都市の中で確かめることができればいいんですが、さすがに無理ですよね」

 そして、最終的に無理だと行きついてしまったアリアナとレミは、同時に腕組みをして考え込んでしまう。

「……そうだ! 冒険者ギルドに声を掛けてみてはどうでしょうか!」
「「……冒険者ギルド?」」

 そこでトーヤが一つの提案を口にすると、アリアナとレミはコテンと首を傾げてしまう。

「都市から遠く離れるのでなければ、誰かしら護衛依頼を受けてくれる人がいるのではないですか?」
「だが、そこに費用を割くくらいなら、魔導具の研究費に充てたいのだよ、私は」
「使用確認も大事な魔導具の研究ではないですか、アリアナさん?」
「うぐっ!? ……それはまあ、そうなのだが」
「それでは早速、冒険者ギルドに行ってみましょう、アリアナさん!」
「い、行く気満々だね、レミちゃんは」

 トーヤに続いてレミまでが行く気満々な態度を見せたことで、アリアナも諦めた。

「……だがまあ、トーヤ少年の言う通りか。それでは、私たちは冒険者ギルドに行ってみるよ」
「トーヤさんはいつもの業務に戻ってくださって大丈夫ですよ」
「え? 私も行かなくていいのですか?」
「「……え?」」

 まさか二人だけで行くとは思わず、トーヤは念のため確認を取ってみる。

「冒険者ギルドの場所はご存じでしょうか? あと、私から冒険者ギルドのギルドマスターであるギグリオさんに紹介もできますけど、必要ありませんか?」

 トーヤがそこまで説明すると、アリアナとレミは一度顔を見合わせたあと、勢いよく振り返り口を開く。

「「い、一緒に行ってくれると助かります!!」」
「……ふふ、かしこまりました」

 二人の反応が可愛く見えたトーヤは少しだけ笑みを浮かべ、そして一緒に冒険者ギルドへ向かうことを約束した。
しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◇2025年02月18日に1巻発売! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。