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第157話:トーヤ、ブロンと話し合う
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「それじゃあブロンさん、トーヤ君、ありがとう! それと、押しかけてすみませんでした」
なんでも屋を出たミラは、お礼と共に申し訳なさそうに頭を下げた。
「構わんよ。だが、まだ数を満足に提供できないから、誰かに教えるということはしないでほしい」
「そうなんですか? ……うん、分かりました!」
ブロンのお願いを聞いたミラは、少しだけ考え込んだ後、納得したように返事をした。
「これからもご贔屓にしてくださいね」
「もちろん! それじゃあ、また!」
ブロンとトーヤが笑顔で見送ってくれたこともあり、ミラも笑顔になって去っていった。
その後、閉店してから店内の片づけをしつつ、トーヤはブロンに声を掛ける。
「お疲れさまでした、ブロンさん」
「お疲れさま。トーヤも帰ってきて早々にすまなかったね」
「私は構いませんよ。それよりも、ポーションです。……どうしましょうか?」
トーヤの「どうしましょうか?」というのは、今後も最高品質の下級ポーションを売りに出すか、どうかについてだ。
これからトーヤがポーション作りを手伝うことはできるが、それが看板商品になってしまうと、それを買い求めて多くの冒険者が殺到するかもしれない。
しかし、そうなると誰が最高品質の下級ポーションを作ったのかと探りを入れる人が出てくるかもしれない。
そうなるといずれ、ブロンではなくトーヤが作っているとバレてしまい、そこから叡智の瞳について知られる可能性だって出てくるのだ。
「うーん、悩みどころだね」
「販売するのは控えましょうか?」
「それが一番なんだが、すでにミラのお気に入りになってしまっているからね。販売していないとなると、彼女が悲しみそうなんだ」
「そうですよねぇ」
トーヤのことを考えれば販売しないという一択になるのだが、ミラのことを考えるとそうはいかない。
ミラがブロンとの約束を破って言いふらすということはしないと信じたいが、今はまだ信頼関係を築けているとは言い難い。
だからこそトーヤが作ったことも黙っていた。
「……どちらにしても、トーヤにはポーション作りを練習しておいてもらおうかな」
「え? でも、売り物として出せないのなら、ブロンさんが作った方がいいんじゃないですか?」
まさか自分が作っていいと言われるとは思わず、トーヤは聞き返してしまった。
「トーヤの場合はアイテムボックスがあるからね。大量に作っても保存しておくにも問題はないさ」
「それはそうですが、お店の在庫は大丈夫なのですか?」
「今のところは大丈夫さ。それに、足りなくなればその時に作ればいい話さ」
柔和な笑みを浮かべながらブロンがそう口にすると、トーヤはしばらく思案する。
「……不安かい?」
「……はい」
「気にする必要はないさ。トーヤのことだ、いずれはスキルのことも気づかれてしまうだろうし、その時に少しでも有利な立場を得られる状況を作っておきたいからね」
「あー……そうですね。私もなんというか、ずっと隠し通せる気はしないです」
苦笑いしながらトーヤが答えると、ブロンは軽く首を横に振った。
「ふふ、そういう意味じゃないさ。トーヤの意思とは関係なく、周りが気づいてしまうという話さ」
「私の意思とは関係なく……それは、結構マズい状況なのでは?」
思わずトーヤが問い掛けると、ブロンは片づけの手を止め、真剣な面持ちで頷く。
「その通りだ。だから、トーヤの立場をより有利にするため、今のうちにいろいろなことができるようにしておくのさ」
これからのことも考えてと言われ、トーヤはしばらく考えてから、一つ頷いた。
「……分かりました」
「それに、大手を振って販売できるとなれば、トーヤのポーションに在庫があった方がいいさ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
そこまで話をすると、ブロンはいつもの柔和な表情に変わり、そのままトーヤの頭を撫でた。
「そうと決まれば、次の休みにはポーション作りをもう一度やってみようか」
「はい! ……あ、でも、アグリ君が仲間外れにするなと言ってくるかも? 今日も、なんでも屋に遊びに行ったらトーヤがいるんだ! と喜んでいましたから」
苦笑しながらトーヤが口にすると、ブロンは笑みを浮かべる。
「ほほ、そうか。アグリの前でポーションを作るのはマズいから、その時はいつも通りに過ごそうか」
「それもそうですね」
アグリを自分の都合に巻き込むわけにはいかないと、トーヤも納得して頷いた。
それからは片づけを再開し、それが終わると夕食を取り、体を洗ってからベッドへ向かう。
今日は考えることも多かったからか、ベッドへ横になったトーヤはすぐに深い眠りについた。
なんでも屋を出たミラは、お礼と共に申し訳なさそうに頭を下げた。
「構わんよ。だが、まだ数を満足に提供できないから、誰かに教えるということはしないでほしい」
「そうなんですか? ……うん、分かりました!」
ブロンのお願いを聞いたミラは、少しだけ考え込んだ後、納得したように返事をした。
「これからもご贔屓にしてくださいね」
「もちろん! それじゃあ、また!」
ブロンとトーヤが笑顔で見送ってくれたこともあり、ミラも笑顔になって去っていった。
その後、閉店してから店内の片づけをしつつ、トーヤはブロンに声を掛ける。
「お疲れさまでした、ブロンさん」
「お疲れさま。トーヤも帰ってきて早々にすまなかったね」
「私は構いませんよ。それよりも、ポーションです。……どうしましょうか?」
トーヤの「どうしましょうか?」というのは、今後も最高品質の下級ポーションを売りに出すか、どうかについてだ。
これからトーヤがポーション作りを手伝うことはできるが、それが看板商品になってしまうと、それを買い求めて多くの冒険者が殺到するかもしれない。
しかし、そうなると誰が最高品質の下級ポーションを作ったのかと探りを入れる人が出てくるかもしれない。
そうなるといずれ、ブロンではなくトーヤが作っているとバレてしまい、そこから叡智の瞳について知られる可能性だって出てくるのだ。
「うーん、悩みどころだね」
「販売するのは控えましょうか?」
「それが一番なんだが、すでにミラのお気に入りになってしまっているからね。販売していないとなると、彼女が悲しみそうなんだ」
「そうですよねぇ」
トーヤのことを考えれば販売しないという一択になるのだが、ミラのことを考えるとそうはいかない。
ミラがブロンとの約束を破って言いふらすということはしないと信じたいが、今はまだ信頼関係を築けているとは言い難い。
だからこそトーヤが作ったことも黙っていた。
「……どちらにしても、トーヤにはポーション作りを練習しておいてもらおうかな」
「え? でも、売り物として出せないのなら、ブロンさんが作った方がいいんじゃないですか?」
まさか自分が作っていいと言われるとは思わず、トーヤは聞き返してしまった。
「トーヤの場合はアイテムボックスがあるからね。大量に作っても保存しておくにも問題はないさ」
「それはそうですが、お店の在庫は大丈夫なのですか?」
「今のところは大丈夫さ。それに、足りなくなればその時に作ればいい話さ」
柔和な笑みを浮かべながらブロンがそう口にすると、トーヤはしばらく思案する。
「……不安かい?」
「……はい」
「気にする必要はないさ。トーヤのことだ、いずれはスキルのことも気づかれてしまうだろうし、その時に少しでも有利な立場を得られる状況を作っておきたいからね」
「あー……そうですね。私もなんというか、ずっと隠し通せる気はしないです」
苦笑いしながらトーヤが答えると、ブロンは軽く首を横に振った。
「ふふ、そういう意味じゃないさ。トーヤの意思とは関係なく、周りが気づいてしまうという話さ」
「私の意思とは関係なく……それは、結構マズい状況なのでは?」
思わずトーヤが問い掛けると、ブロンは片づけの手を止め、真剣な面持ちで頷く。
「その通りだ。だから、トーヤの立場をより有利にするため、今のうちにいろいろなことができるようにしておくのさ」
これからのことも考えてと言われ、トーヤはしばらく考えてから、一つ頷いた。
「……分かりました」
「それに、大手を振って販売できるとなれば、トーヤのポーションに在庫があった方がいいさ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
そこまで話をすると、ブロンはいつもの柔和な表情に変わり、そのままトーヤの頭を撫でた。
「そうと決まれば、次の休みにはポーション作りをもう一度やってみようか」
「はい! ……あ、でも、アグリ君が仲間外れにするなと言ってくるかも? 今日も、なんでも屋に遊びに行ったらトーヤがいるんだ! と喜んでいましたから」
苦笑しながらトーヤが口にすると、ブロンは笑みを浮かべる。
「ほほ、そうか。アグリの前でポーションを作るのはマズいから、その時はいつも通りに過ごそうか」
「それもそうですね」
アグリを自分の都合に巻き込むわけにはいかないと、トーヤも納得して頷いた。
それからは片づけを再開し、それが終わると夕食を取り、体を洗ってからベッドへ向かう。
今日は考えることも多かったからか、ベッドへ横になったトーヤはすぐに深い眠りについた。
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