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第153話:トーヤ、調合に挑戦する
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手伝いを終えたトーヤは、夕食後が楽しみで仕方なかった。
それはブロンと一緒にポーション作りに挑戦することになっているからだ。
食事の席でも時折手が止まっており、その時の表情は笑みを浮かべていた。
「どうやら早く食事を終わらせた方がよさそうだね」
「はっ! し、失礼いたしました!」
ブロンの言葉にハッとしたトーヤが謝罪を口にするが、彼はすぐに首を横に振る。
「構わんよ。わしもトーヤに楽しみを提供できて嬉しいよ」
「……ありがとうございます」
申し訳なさそうにお礼を口にしたトーヤは、夕食を早々に切り上げると、ブロンの教えで調合を行うことにした。
「調合はどこで行うのですか?」
「台所だよ」
「そうなのですか?」
調合と聞いてからというもの、トーヤは勝手に専用の部屋があるのではないかと考えていた。
というのも、ポーションを薬と似たものと勘違いしていたトーヤは、調合室のような専用の部屋が必要なのだと思い込んでいたからだ。
「新しい調合レシピに挑戦する場合などは、安全を期して別の部屋で行うこともあるが、安全が確認されている調合であればここでも問題はないのさ」
「なるほど、そういうことでしたか」
ブロンはポーションを販売できるほどの腕前を持っている。
だからこそ、作り慣れたものであれば台所でも問題はないのだ。
「もちろん、慎重に作りはするがね。売り物だから」
「確かにその通りですね。私も精進いたします!」
「では、まずは材料から教えていこうか」
「はい!」
そこでブロンから教えられた材料は三種類。
コンナの実、朝焼けの葉っぱ、きれいな水。
「……きれいな水?」
「要は、飲み水だね。飲めない水で調合を行うわけにはいかないだろう?」
「ふむ、確かにその通りですね」
ブロンの言葉を受けて、以前に魔力欠乏症の治療薬を作ったことを思い出した。
調合はジェンナが行ったが、そのレシピを鑑定して伝えたのはトーヤだ。
その時の材料に精製水があった。
ポーションではなく薬だったこともあり、精製水と指定があったのだと思い至ったのだ。
「まずはコンナの実を砕く。できるだけ粉状になるまで砕いた方が、品質も良くなるよ」
「はい」
材料が伝えられると、次は下準備をしながらの説明が始まった。
トーヤはすり鉢を渡されると、そこにブロンがコンナの実を入れる。
すりこぎ棒を握る手に力を込め、トーヤはコンナの実をまずは砕き始めた。
「……! これ、結構、力が、いりますね!」
「コンナの実は硬いからね。砕くのはわしがやろうか?」
「いえ! 私に、やらせてください!」
ブロンが手伝おうかと声を掛けたが、トーヤはそれを断った。
自分からやりたいと口にしたのだから、自分でやらなければ意味がないと考えてのことだ。
真剣な面持ちですりこぎ棒を動かしているトーヤを見て、ブロンはこれ以上は何も言わず、作業が終わるのを待つことにした。
「…………こ、これで、どうでしょうか?」
「どれどれ? ……うん、問題なさそうだね」
「ありがとうございます!」
ブロンにすり鉢を渡したトーヤは、笑顔で額の汗を拭った。
「次は朝焼けの葉っぱを細かく刻む作業だ。これは力もいらないし、包丁を二つ使えばすぐにできるよ」
とはいえ、初めてコンナの実をすりつぶしたトーヤの手には力がもう入らない。
そのことに気づいていたブロンは、二コリを笑いながら自分で朝焼けの葉っぱを刻むことにした。
「あの、ブロンさん。それも私が」
「いいや、トーヤは休んでおきなさい。包丁を扱うから、万が一があってはいけないからね」
そう口にしたブロンは、まな板に朝焼けの葉っぱを置くと、手際よく刻み始めた。
両手に包丁を持ち、リズムよく交互に腕を動かしている。
トントントントンという音が心地よく、トーヤは刻まれていく朝焼けの葉っぱに耳を傾けながら、その視線も釘付けになっていた。
「……さて、こんなものかな」
刻まれた朝焼けの葉っぱを見て、トーヤはどれくらい刻めばいいのかをしっかりと覚える。
「結構細かく刻むのですね」
「その方が煮詰める時に溶けやすいからね」
「煮詰めるということは、きれいな水で煮詰めるのですね」
「その通り。それじゃあ朝焼けの葉っぱをすり鉢に移して……さあ、移動しようか」
「はい!」
コンナの実と朝焼けの葉っぱを混ぜたすり鉢を手に、ブロンはコンロの方へ移動する。
台所下の棚から寸胴鍋を取り出すと、そこにきれいな水を大量に注ぎ込む。
ブロンは井戸水を台所横に常備しており、それを全て注いでしまった。
「あとで私が汲んでおきますね」
「あぁ、助かるよ」
トーヤはそう口にすると、視線をすぐに寸胴鍋に戻した。
「まずは水を沸かす。そこへ二つの材料を混ぜ合わせたものを加えて、魔力を注ぎ込みながらかき混ぜ続ける」
「……ま、魔力ですか?」
そこでトーヤは困惑してしまう。
魔力というものがあることは、聖者の瞳を通して可視化できているので分かっている。
しかし、魔力を実際に自分が使ったことがないため、どのようにして魔力を注げばいいのか分からなかったのだ。
それはブロンと一緒にポーション作りに挑戦することになっているからだ。
食事の席でも時折手が止まっており、その時の表情は笑みを浮かべていた。
「どうやら早く食事を終わらせた方がよさそうだね」
「はっ! し、失礼いたしました!」
ブロンの言葉にハッとしたトーヤが謝罪を口にするが、彼はすぐに首を横に振る。
「構わんよ。わしもトーヤに楽しみを提供できて嬉しいよ」
「……ありがとうございます」
申し訳なさそうにお礼を口にしたトーヤは、夕食を早々に切り上げると、ブロンの教えで調合を行うことにした。
「調合はどこで行うのですか?」
「台所だよ」
「そうなのですか?」
調合と聞いてからというもの、トーヤは勝手に専用の部屋があるのではないかと考えていた。
というのも、ポーションを薬と似たものと勘違いしていたトーヤは、調合室のような専用の部屋が必要なのだと思い込んでいたからだ。
「新しい調合レシピに挑戦する場合などは、安全を期して別の部屋で行うこともあるが、安全が確認されている調合であればここでも問題はないのさ」
「なるほど、そういうことでしたか」
ブロンはポーションを販売できるほどの腕前を持っている。
だからこそ、作り慣れたものであれば台所でも問題はないのだ。
「もちろん、慎重に作りはするがね。売り物だから」
「確かにその通りですね。私も精進いたします!」
「では、まずは材料から教えていこうか」
「はい!」
そこでブロンから教えられた材料は三種類。
コンナの実、朝焼けの葉っぱ、きれいな水。
「……きれいな水?」
「要は、飲み水だね。飲めない水で調合を行うわけにはいかないだろう?」
「ふむ、確かにその通りですね」
ブロンの言葉を受けて、以前に魔力欠乏症の治療薬を作ったことを思い出した。
調合はジェンナが行ったが、そのレシピを鑑定して伝えたのはトーヤだ。
その時の材料に精製水があった。
ポーションではなく薬だったこともあり、精製水と指定があったのだと思い至ったのだ。
「まずはコンナの実を砕く。できるだけ粉状になるまで砕いた方が、品質も良くなるよ」
「はい」
材料が伝えられると、次は下準備をしながらの説明が始まった。
トーヤはすり鉢を渡されると、そこにブロンがコンナの実を入れる。
すりこぎ棒を握る手に力を込め、トーヤはコンナの実をまずは砕き始めた。
「……! これ、結構、力が、いりますね!」
「コンナの実は硬いからね。砕くのはわしがやろうか?」
「いえ! 私に、やらせてください!」
ブロンが手伝おうかと声を掛けたが、トーヤはそれを断った。
自分からやりたいと口にしたのだから、自分でやらなければ意味がないと考えてのことだ。
真剣な面持ちですりこぎ棒を動かしているトーヤを見て、ブロンはこれ以上は何も言わず、作業が終わるのを待つことにした。
「…………こ、これで、どうでしょうか?」
「どれどれ? ……うん、問題なさそうだね」
「ありがとうございます!」
ブロンにすり鉢を渡したトーヤは、笑顔で額の汗を拭った。
「次は朝焼けの葉っぱを細かく刻む作業だ。これは力もいらないし、包丁を二つ使えばすぐにできるよ」
とはいえ、初めてコンナの実をすりつぶしたトーヤの手には力がもう入らない。
そのことに気づいていたブロンは、二コリを笑いながら自分で朝焼けの葉っぱを刻むことにした。
「あの、ブロンさん。それも私が」
「いいや、トーヤは休んでおきなさい。包丁を扱うから、万が一があってはいけないからね」
そう口にしたブロンは、まな板に朝焼けの葉っぱを置くと、手際よく刻み始めた。
両手に包丁を持ち、リズムよく交互に腕を動かしている。
トントントントンという音が心地よく、トーヤは刻まれていく朝焼けの葉っぱに耳を傾けながら、その視線も釘付けになっていた。
「……さて、こんなものかな」
刻まれた朝焼けの葉っぱを見て、トーヤはどれくらい刻めばいいのかをしっかりと覚える。
「結構細かく刻むのですね」
「その方が煮詰める時に溶けやすいからね」
「煮詰めるということは、きれいな水で煮詰めるのですね」
「その通り。それじゃあ朝焼けの葉っぱをすり鉢に移して……さあ、移動しようか」
「はい!」
コンナの実と朝焼けの葉っぱを混ぜたすり鉢を手に、ブロンはコンロの方へ移動する。
台所下の棚から寸胴鍋を取り出すと、そこにきれいな水を大量に注ぎ込む。
ブロンは井戸水を台所横に常備しており、それを全て注いでしまった。
「あとで私が汲んでおきますね」
「あぁ、助かるよ」
トーヤはそう口にすると、視線をすぐに寸胴鍋に戻した。
「まずは水を沸かす。そこへ二つの材料を混ぜ合わせたものを加えて、魔力を注ぎ込みながらかき混ぜ続ける」
「……ま、魔力ですか?」
そこでトーヤは困惑してしまう。
魔力というものがあることは、聖者の瞳を通して可視化できているので分かっている。
しかし、魔力を実際に自分が使ったことがないため、どのようにして魔力を注げばいいのか分からなかったのだ。
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