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第61話:状況確認②
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アクシア周辺の森は奥の方へ行くにつれて酷い有様になっていた。
木々が折れ、地面が捲れ上がり、土肌がボコボコになっている。
周囲に魔獣の気配はないが、遠くの方からこちらの様子を伺っているようだ。
「魔獣がアクシアを狙わなければ問題はないかな。でも、狙うようなら一気になだれ込んできそうだなぁ」
今の魔獣たちは、縄張りを荒らされ、奪われたも同然の状況になっている。
ここから自分たちの縄張りを確保し、さらには奪い合うことも出てくる可能性もある。
そこにアクシアが巻き込まれないとも限らないので、マギスは今後どのように対処するべきかを考え始める。
(周囲の魔獣を間引くことは簡単だけど、そうすると今度はアクシアが食糧難に陥る可能性が出てくる。お互いにきちんと縄張りの線引きができればいいんだけどなぁ)
間引き過ぎるのも、アクシアに来ないよう威圧し過ぎるのもよくない。周囲に魔獣がいなくなれば、それはどちらも同じことなのだ。
「ここはアボズさんやリンカーと要相談かな」
優先すべきは安全か、食糧か、それとも共存を目指すのか。
マギスでは判断できないので、情報共有を密にしようとさらに確認を進めていく。
とはいえ、荒れた森と遠くにいる魔獣以外には目新しいものがなく、ある程度森を散策したマギスはすぐにアクシアへ戻っていった。
「自警団本部に報告に行くかな」
リンカーとの約束通りに自警団本部へ向かっていると、途中でニアと顔を合わせた。
「あっ! マギスさん、おはようございます!」
「おはよう、ニア。どうしたんだい?」
向かう先はマギスと同じ方向だったので、挨拶を交わした後も一緒に歩いていく。
「自警団本部に差し入れを作ってきたんです」
「そうなんだね。僕は森の方を見回ってきたから、その報告だね」
「……お一人でですか?」
「そうだね」
「その、大丈夫でしたか?」
心配そうな声音で問い掛けてきたので、マギスはニコリと笑い答えた。
「大丈夫そうだったよ。ただ、魔獣が遠くから見ていて、縄張り争いが始まりそうだったから、そこはアボズさんやリンカーと相談が必要で――」
「そ、そこじゃありません! 私はマギスさんの心配をしているんですよ!」
「……僕の?」
マギスはてっきり森の状況について心配しているのだと思っていた。
だが、ニアは純粋に目の前にいるマギスを心配していた。
「そうですよ! マギスさん、一人で森に入って、何もありませんでしたか? 今の森は何が起きるか分からないんですよ?」
「……あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとう、ニア」
ここまでまっすぐに心配されたことが少なかったマギスは驚いたものの、すぐに柔和な笑みをニアに向ける。
その笑みは普段のものとは少し異なり、作られたものではなく、マギスのうちから自然と出てきたようにニアには見えた。
「……」
「……ニア? どうしたんだい?」
「……えっ? あっ、いや、なんでもありません! 大丈夫ならよかったです!」
マギスの顔を凝視していたニアはハッとして視線を逸らせると、やや頬を赤くして前へ歩いて行ってしまう。
その様子にクスリと笑いながら、マギスはニアの背中を追い掛けて歩いていくのだった。
木々が折れ、地面が捲れ上がり、土肌がボコボコになっている。
周囲に魔獣の気配はないが、遠くの方からこちらの様子を伺っているようだ。
「魔獣がアクシアを狙わなければ問題はないかな。でも、狙うようなら一気になだれ込んできそうだなぁ」
今の魔獣たちは、縄張りを荒らされ、奪われたも同然の状況になっている。
ここから自分たちの縄張りを確保し、さらには奪い合うことも出てくる可能性もある。
そこにアクシアが巻き込まれないとも限らないので、マギスは今後どのように対処するべきかを考え始める。
(周囲の魔獣を間引くことは簡単だけど、そうすると今度はアクシアが食糧難に陥る可能性が出てくる。お互いにきちんと縄張りの線引きができればいいんだけどなぁ)
間引き過ぎるのも、アクシアに来ないよう威圧し過ぎるのもよくない。周囲に魔獣がいなくなれば、それはどちらも同じことなのだ。
「ここはアボズさんやリンカーと要相談かな」
優先すべきは安全か、食糧か、それとも共存を目指すのか。
マギスでは判断できないので、情報共有を密にしようとさらに確認を進めていく。
とはいえ、荒れた森と遠くにいる魔獣以外には目新しいものがなく、ある程度森を散策したマギスはすぐにアクシアへ戻っていった。
「自警団本部に報告に行くかな」
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「あっ! マギスさん、おはようございます!」
「おはよう、ニア。どうしたんだい?」
向かう先はマギスと同じ方向だったので、挨拶を交わした後も一緒に歩いていく。
「自警団本部に差し入れを作ってきたんです」
「そうなんだね。僕は森の方を見回ってきたから、その報告だね」
「……お一人でですか?」
「そうだね」
「その、大丈夫でしたか?」
心配そうな声音で問い掛けてきたので、マギスはニコリと笑い答えた。
「大丈夫そうだったよ。ただ、魔獣が遠くから見ていて、縄張り争いが始まりそうだったから、そこはアボズさんやリンカーと相談が必要で――」
「そ、そこじゃありません! 私はマギスさんの心配をしているんですよ!」
「……僕の?」
マギスはてっきり森の状況について心配しているのだと思っていた。
だが、ニアは純粋に目の前にいるマギスを心配していた。
「そうですよ! マギスさん、一人で森に入って、何もありませんでしたか? 今の森は何が起きるか分からないんですよ?」
「……あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとう、ニア」
ここまでまっすぐに心配されたことが少なかったマギスは驚いたものの、すぐに柔和な笑みをニアに向ける。
その笑みは普段のものとは少し異なり、作られたものではなく、マギスのうちから自然と出てきたようにニアには見えた。
「……」
「……ニア? どうしたんだい?」
「……えっ? あっ、いや、なんでもありません! 大丈夫ならよかったです!」
マギスの顔を凝視していたニアはハッとして視線を逸らせると、やや頬を赤くして前へ歩いて行ってしまう。
その様子にクスリと笑いながら、マギスはニアの背中を追い掛けて歩いていくのだった。
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