61 / 64
第61話:状況確認②
しおりを挟む
アクシア周辺の森は奥の方へ行くにつれて酷い有様になっていた。
木々が折れ、地面が捲れ上がり、土肌がボコボコになっている。
周囲に魔獣の気配はないが、遠くの方からこちらの様子を伺っているようだ。
「魔獣がアクシアを狙わなければ問題はないかな。でも、狙うようなら一気になだれ込んできそうだなぁ」
今の魔獣たちは、縄張りを荒らされ、奪われたも同然の状況になっている。
ここから自分たちの縄張りを確保し、さらには奪い合うことも出てくる可能性もある。
そこにアクシアが巻き込まれないとも限らないので、マギスは今後どのように対処するべきかを考え始める。
(周囲の魔獣を間引くことは簡単だけど、そうすると今度はアクシアが食糧難に陥る可能性が出てくる。お互いにきちんと縄張りの線引きができればいいんだけどなぁ)
間引き過ぎるのも、アクシアに来ないよう威圧し過ぎるのもよくない。周囲に魔獣がいなくなれば、それはどちらも同じことなのだ。
「ここはアボズさんやリンカーと要相談かな」
優先すべきは安全か、食糧か、それとも共存を目指すのか。
マギスでは判断できないので、情報共有を密にしようとさらに確認を進めていく。
とはいえ、荒れた森と遠くにいる魔獣以外には目新しいものがなく、ある程度森を散策したマギスはすぐにアクシアへ戻っていった。
「自警団本部に報告に行くかな」
リンカーとの約束通りに自警団本部へ向かっていると、途中でニアと顔を合わせた。
「あっ! マギスさん、おはようございます!」
「おはよう、ニア。どうしたんだい?」
向かう先はマギスと同じ方向だったので、挨拶を交わした後も一緒に歩いていく。
「自警団本部に差し入れを作ってきたんです」
「そうなんだね。僕は森の方を見回ってきたから、その報告だね」
「……お一人でですか?」
「そうだね」
「その、大丈夫でしたか?」
心配そうな声音で問い掛けてきたので、マギスはニコリと笑い答えた。
「大丈夫そうだったよ。ただ、魔獣が遠くから見ていて、縄張り争いが始まりそうだったから、そこはアボズさんやリンカーと相談が必要で――」
「そ、そこじゃありません! 私はマギスさんの心配をしているんですよ!」
「……僕の?」
マギスはてっきり森の状況について心配しているのだと思っていた。
だが、ニアは純粋に目の前にいるマギスを心配していた。
「そうですよ! マギスさん、一人で森に入って、何もありませんでしたか? 今の森は何が起きるか分からないんですよ?」
「……あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとう、ニア」
ここまでまっすぐに心配されたことが少なかったマギスは驚いたものの、すぐに柔和な笑みをニアに向ける。
その笑みは普段のものとは少し異なり、作られたものではなく、マギスのうちから自然と出てきたようにニアには見えた。
「……」
「……ニア? どうしたんだい?」
「……えっ? あっ、いや、なんでもありません! 大丈夫ならよかったです!」
マギスの顔を凝視していたニアはハッとして視線を逸らせると、やや頬を赤くして前へ歩いて行ってしまう。
その様子にクスリと笑いながら、マギスはニアの背中を追い掛けて歩いていくのだった。
木々が折れ、地面が捲れ上がり、土肌がボコボコになっている。
周囲に魔獣の気配はないが、遠くの方からこちらの様子を伺っているようだ。
「魔獣がアクシアを狙わなければ問題はないかな。でも、狙うようなら一気になだれ込んできそうだなぁ」
今の魔獣たちは、縄張りを荒らされ、奪われたも同然の状況になっている。
ここから自分たちの縄張りを確保し、さらには奪い合うことも出てくる可能性もある。
そこにアクシアが巻き込まれないとも限らないので、マギスは今後どのように対処するべきかを考え始める。
(周囲の魔獣を間引くことは簡単だけど、そうすると今度はアクシアが食糧難に陥る可能性が出てくる。お互いにきちんと縄張りの線引きができればいいんだけどなぁ)
間引き過ぎるのも、アクシアに来ないよう威圧し過ぎるのもよくない。周囲に魔獣がいなくなれば、それはどちらも同じことなのだ。
「ここはアボズさんやリンカーと要相談かな」
優先すべきは安全か、食糧か、それとも共存を目指すのか。
マギスでは判断できないので、情報共有を密にしようとさらに確認を進めていく。
とはいえ、荒れた森と遠くにいる魔獣以外には目新しいものがなく、ある程度森を散策したマギスはすぐにアクシアへ戻っていった。
「自警団本部に報告に行くかな」
リンカーとの約束通りに自警団本部へ向かっていると、途中でニアと顔を合わせた。
「あっ! マギスさん、おはようございます!」
「おはよう、ニア。どうしたんだい?」
向かう先はマギスと同じ方向だったので、挨拶を交わした後も一緒に歩いていく。
「自警団本部に差し入れを作ってきたんです」
「そうなんだね。僕は森の方を見回ってきたから、その報告だね」
「……お一人でですか?」
「そうだね」
「その、大丈夫でしたか?」
心配そうな声音で問い掛けてきたので、マギスはニコリと笑い答えた。
「大丈夫そうだったよ。ただ、魔獣が遠くから見ていて、縄張り争いが始まりそうだったから、そこはアボズさんやリンカーと相談が必要で――」
「そ、そこじゃありません! 私はマギスさんの心配をしているんですよ!」
「……僕の?」
マギスはてっきり森の状況について心配しているのだと思っていた。
だが、ニアは純粋に目の前にいるマギスを心配していた。
「そうですよ! マギスさん、一人で森に入って、何もありませんでしたか? 今の森は何が起きるか分からないんですよ?」
「……あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとう、ニア」
ここまでまっすぐに心配されたことが少なかったマギスは驚いたものの、すぐに柔和な笑みをニアに向ける。
その笑みは普段のものとは少し異なり、作られたものではなく、マギスのうちから自然と出てきたようにニアには見えた。
「……」
「……ニア? どうしたんだい?」
「……えっ? あっ、いや、なんでもありません! 大丈夫ならよかったです!」
マギスの顔を凝視していたニアはハッとして視線を逸らせると、やや頬を赤くして前へ歩いて行ってしまう。
その様子にクスリと笑いながら、マギスはニアの背中を追い掛けて歩いていくのだった。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
僕の従魔は恐ろしく強いようです。
緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。
僕は治ることなく亡くなってしまった。
心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。
そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。
そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子
処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【毎日更新】元魔王様の2度目の人生
ゆーとちん
ファンタジー
人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。
しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。
膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。
なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。
暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。
神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。
それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。
神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。
魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。
そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。
魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです!
元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる