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第38話:帰還
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――地震が止んだ。
それはつまり、マギスの戦闘が終わったということを意味している。
「マギスさん、帰ってきますよね?」
「当然じゃ。何せマギスじゃからのう」
アクシアの空にはすでに星がきらめいており、多くの家で就寝を迎えている。
エミリーとニアは門の前でマギスの帰りを待っていた。
「そろそろ寝てもいいのだぞ、ニアよ?」
「ううん。エミリーちゃんが待っているんだもの、私だけ帰るなんてできないわ」
「そうか……うむ、それもまたいいだろう」
上から目線のエミリーにニアが苦笑を浮かべていると、すぐに待ち人が現れた。
「あれ? 二人とも、まだ起きていたのかい?」
「「マギス!」さん!」
普段通りの声音で声を掛けたマギスとは対照的に、エミリーとニアからは驚きと歓喜の声があがった。
「……う、うぅぅ~! マギズざ~ん! 無事で本当によがっだでず~!」
「なんだ、心配だったのか、ニアよ?」
「それはそうでずよ~! ぐすっ!」
マギスの姿を見たニアは泣き出し、それを見た彼は苦笑する。
「すまないね。まさかここまで遅くなるとは思わなかったんだ」
「して、マギスよ。……そこにいる奴はどうしたのだ?」
「……えっ?」
マギスのことしか見ていなかったエミリーは、涙を拭いながら彼の後ろに隠れていたもう一人の存在に気づいていなかった。
「あうっ!? えっと、俺は、その……」
「この子はヒース、魔獣と戦った場所で出会って、連れてきたんだ」
「そうなのね……怖かったよね、ヒース君」
ニアはマギスの説明を受け、ヒースと呼ばれた赤髪の少年に近づいていき、優しく抱きしめた。
「えっ? あの、俺、ヒース?」
「しーっ」
抱きしめられながらヒースがそう口にすると、マギスはニアに見えないよう人差し指を立てて自らの口に当てた。
「……おい、マギス。あ奴、もしや?」
「うん。僕が戦っていた相手だよ」
「やはりか。……全く、お主という奴は」
片手で顔を覆うエミリーだったが、ある意味では自分も同じ立場だと思い直すと、ヒースに声を掛けた。
「ヒースよ」
「は、はひっ!?」
「……何故我は怖がられているのだ?」
「それに関しては家で説明しようかな。というわけでニア、僕は無事だからそろそろ家に帰ろうか」
「はっ! そ、そうですね! お疲れのところを引き留めてしまい、すみませんでした!」
マギスの言葉に慌てて立ち上がったニアは、何度も頭を下げてから家へ帰っていった。
すぐにマギスたちも歩き出して家に戻ると、すぐにエミリーが口を開いた。
「それで? どうして巨大な気配を振りまいていたこ奴が一緒にいるのだ?」
「ひいっ!? ご、ごめんなさいっす! 俺、あなたの魔力にビビッていたんっす!」
「……んっ? マギスではなく、我の魔力にビビっていたのか?」
「はいっす!」
「あー、僕が説明しようかな」
このままベヒモスこと、ヒースに説明させても興奮して要領を得ない可能性があると思ったマギスは、自ら説明役を買って出た。
それからベヒモスとの戦闘、マギスの勝利から同行することになった経緯を彼が説明すると、エミリーは盛大にため息をついてしまった。
「はああぁぁぁぁ~。……うむ、我が原因だということは理解した」
「まあ、エミリーが悪いわけでもないんだけどね」
「その通りじゃ! それなのにどうしてお前はこんなヘタレ魔獣を連れてきたのじゃ!」
「ひいっ!?」
「まあまあ。悪い魔獣ではないみたいだし、こうして僕に従ってくれているからさ。なんなら、エミリーのいうことも聞いてくれるみたいだよ?」
「何? ……ヒースよ、それは本当か?」
マギスの言葉にエミリーがヒースにジト目を向けると、彼は怯えた表情で何度も頷いていた。
「……はぁ。分かった、同行を認めよう」
「あ、ありがとうございますっす!」
「ただし! 変な行動を取ったなら、我が一瞬にして消し炭にしてやるから、そのつもりでいるのだぞ?」
「もちろんっす――姉御!」
「…………あ、姉御、じゃと?」
「はいっす! 兄貴と姉御っす!」
満面の笑みでそう言い放ったヒースを見て、エミリーは再びため息をつく。
その姿にマギスは苦笑を浮かべ、二人の交流を見守ったあと、三人で並んで横になり眠りについたのだった。
それはつまり、マギスの戦闘が終わったということを意味している。
「マギスさん、帰ってきますよね?」
「当然じゃ。何せマギスじゃからのう」
アクシアの空にはすでに星がきらめいており、多くの家で就寝を迎えている。
エミリーとニアは門の前でマギスの帰りを待っていた。
「そろそろ寝てもいいのだぞ、ニアよ?」
「ううん。エミリーちゃんが待っているんだもの、私だけ帰るなんてできないわ」
「そうか……うむ、それもまたいいだろう」
上から目線のエミリーにニアが苦笑を浮かべていると、すぐに待ち人が現れた。
「あれ? 二人とも、まだ起きていたのかい?」
「「マギス!」さん!」
普段通りの声音で声を掛けたマギスとは対照的に、エミリーとニアからは驚きと歓喜の声があがった。
「……う、うぅぅ~! マギズざ~ん! 無事で本当によがっだでず~!」
「なんだ、心配だったのか、ニアよ?」
「それはそうでずよ~! ぐすっ!」
マギスの姿を見たニアは泣き出し、それを見た彼は苦笑する。
「すまないね。まさかここまで遅くなるとは思わなかったんだ」
「して、マギスよ。……そこにいる奴はどうしたのだ?」
「……えっ?」
マギスのことしか見ていなかったエミリーは、涙を拭いながら彼の後ろに隠れていたもう一人の存在に気づいていなかった。
「あうっ!? えっと、俺は、その……」
「この子はヒース、魔獣と戦った場所で出会って、連れてきたんだ」
「そうなのね……怖かったよね、ヒース君」
ニアはマギスの説明を受け、ヒースと呼ばれた赤髪の少年に近づいていき、優しく抱きしめた。
「えっ? あの、俺、ヒース?」
「しーっ」
抱きしめられながらヒースがそう口にすると、マギスはニアに見えないよう人差し指を立てて自らの口に当てた。
「……おい、マギス。あ奴、もしや?」
「うん。僕が戦っていた相手だよ」
「やはりか。……全く、お主という奴は」
片手で顔を覆うエミリーだったが、ある意味では自分も同じ立場だと思い直すと、ヒースに声を掛けた。
「ヒースよ」
「は、はひっ!?」
「……何故我は怖がられているのだ?」
「それに関しては家で説明しようかな。というわけでニア、僕は無事だからそろそろ家に帰ろうか」
「はっ! そ、そうですね! お疲れのところを引き留めてしまい、すみませんでした!」
マギスの言葉に慌てて立ち上がったニアは、何度も頭を下げてから家へ帰っていった。
すぐにマギスたちも歩き出して家に戻ると、すぐにエミリーが口を開いた。
「それで? どうして巨大な気配を振りまいていたこ奴が一緒にいるのだ?」
「ひいっ!? ご、ごめんなさいっす! 俺、あなたの魔力にビビッていたんっす!」
「……んっ? マギスではなく、我の魔力にビビっていたのか?」
「はいっす!」
「あー、僕が説明しようかな」
このままベヒモスこと、ヒースに説明させても興奮して要領を得ない可能性があると思ったマギスは、自ら説明役を買って出た。
それからベヒモスとの戦闘、マギスの勝利から同行することになった経緯を彼が説明すると、エミリーは盛大にため息をついてしまった。
「はああぁぁぁぁ~。……うむ、我が原因だということは理解した」
「まあ、エミリーが悪いわけでもないんだけどね」
「その通りじゃ! それなのにどうしてお前はこんなヘタレ魔獣を連れてきたのじゃ!」
「ひいっ!?」
「まあまあ。悪い魔獣ではないみたいだし、こうして僕に従ってくれているからさ。なんなら、エミリーのいうことも聞いてくれるみたいだよ?」
「何? ……ヒースよ、それは本当か?」
マギスの言葉にエミリーがヒースにジト目を向けると、彼は怯えた表情で何度も頷いていた。
「……はぁ。分かった、同行を認めよう」
「あ、ありがとうございますっす!」
「ただし! 変な行動を取ったなら、我が一瞬にして消し炭にしてやるから、そのつもりでいるのだぞ?」
「もちろんっす――姉御!」
「…………あ、姉御、じゃと?」
「はいっす! 兄貴と姉御っす!」
満面の笑みでそう言い放ったヒースを見て、エミリーは再びため息をつく。
その姿にマギスは苦笑を浮かべ、二人の交流を見守ったあと、三人で並んで横になり眠りについたのだった。
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