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第37話:新たな同行者
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「……あー、すまない。縄張りもいらないし、君が同行する必要もないかな」
『なんでだよおおおおっ! それじゃあ俺はこれからどこに行けばいいんだよおおおおっ!!』
「いや、このままこの地に居続ければいいじゃないか」
『ダメなんだよおおおおっ! 縄張りを得て、その後に一度でも負けちまったら、他の魔獣はいうことを聞かなくなっちまうんだよおおおおっ!!』
マギスが同行を断ると、今度はベヒモスが頭を抱えてしまった。
何せ一度でも敗北を見せた魔獣にはその後、ほとんどの魔獣が従ってくれなくなってしまう。
ベヒモスの縄張りで暮らしていた魔獣も例外ではなく、マギスがこの地を放棄するのであれば、新たな主を決めるために激しい争いが巻き起こることだろう。
『ど、どどどど、どうしたらいいっすかああああっ!』
「いや、それを僕に言われてもなぁ……そうだ!」
ダラダラと汗をかき続けているベヒモスを見かねたマギスが一つの提案を口にした。
「僕がこの地の主になるなら、僕が君にこの地を一任しちゃえばいいんじゃないか? それなら主が命じた代理ということで――」
『それはダメっす』
「どうしてだい? いい案だと思ったんだけど?」
マギスの言葉を遮るようにしてベヒモスが答えると、その理由を問い掛けた。
『……俺が兄貴についていけないじゃないっすかああああっ!!』
「だからいらないんだって」
『嫌っすよおおおおっ! 俺は兄貴と一緒にいたいんすよおおおおっ!!』
泣き出しそうなほど声をあげているベヒモスを見て、どうしてそこまで一緒に行きたがるのか聞いてみることにした。
「全く。どうしてそこまで一緒に行きたいんだい?」
『うぅぅ。だって俺、生まれてから今日までずっと、この地で暮らしてきたんす。だから、外の世界も見て回りたいんすよぉ』
「それなら君はもう自由だ。一人で見て回ればいいじゃないか」
『一人は嫌っす! 怖いっす! 俺は図体はでかいけど、本当は臆病者なんすからね!』
「うん。君の言動を見ていたら、そんな気はしていたよ」
『だったらそんな提案はしないでほしいっすよおおおおっ!!』
これは困ったと腕組みをし始めたマギスは、別のところで主を決めればいいんじゃないかと考える。
「君以外の魔獣を僕が主に指名することは可能かい?」
『それは! ……できるかもしれないっすねぇ』
「なら、君の次に強い魔獣か、仲の良い魔獣はいないかな?」
『それならいるっす! ちょっと待っていてほしいっす! 兄貴が呼んでいるって言えば、すぐに来てくれるっすから!』
涙目から満面の笑みに変わったベヒモスは、ドスンドスンと足音を響かせて全力で走っていってしまった。
「……このままいなくなったら、ダメかなぁ?」
少しだけ逡巡してしまったが、ベヒモスが追い掛けてきてしまったら、それこそアクシアに影響を与えかねないとすぐに諦める。
しばらくして戻ってきたベヒモスの後ろには、三つ首の魔獣であるケルベロスが舌を出した状態でついてきていた。
『紹介するっす! 俺の友達のケルベロスっす!』
『『『どぅも~! ケルベロスでぇ~す!』』』
「……なんだか、君とは違って元気のいい友達なんだね」
『『『うっす! 俺、元気だけが取り柄なんでぇ~!』』』
キャラの濃い魔獣が現れたことで苦笑いを浮かべてしまったマギスだが、この地を託せるだろう相手だったこともありホッと胸を撫で下ろした。
「君も相当強いみたいだね」
『『『うっす! 俺っち、強さもちょっとだけ自信があるんでぇ~!』』』
「なら、僕の代わりにこの地を任せていいかな?」
『『『俺っちでよければオッケーでぇ~す!』』』
『それじゃあ俺は兄貴についていくっすね!』
「……ついてくるのは遠慮してもいいかな?」
『絶対にダメっすからね! ダメって言われてもついていくっすからねええええっ!!』
こうしてマギスは、新たな同行者であるベヒモスと共にアクシアへ戻ったのだった。
『なんでだよおおおおっ! それじゃあ俺はこれからどこに行けばいいんだよおおおおっ!!』
「いや、このままこの地に居続ければいいじゃないか」
『ダメなんだよおおおおっ! 縄張りを得て、その後に一度でも負けちまったら、他の魔獣はいうことを聞かなくなっちまうんだよおおおおっ!!』
マギスが同行を断ると、今度はベヒモスが頭を抱えてしまった。
何せ一度でも敗北を見せた魔獣にはその後、ほとんどの魔獣が従ってくれなくなってしまう。
ベヒモスの縄張りで暮らしていた魔獣も例外ではなく、マギスがこの地を放棄するのであれば、新たな主を決めるために激しい争いが巻き起こることだろう。
『ど、どどどど、どうしたらいいっすかああああっ!』
「いや、それを僕に言われてもなぁ……そうだ!」
ダラダラと汗をかき続けているベヒモスを見かねたマギスが一つの提案を口にした。
「僕がこの地の主になるなら、僕が君にこの地を一任しちゃえばいいんじゃないか? それなら主が命じた代理ということで――」
『それはダメっす』
「どうしてだい? いい案だと思ったんだけど?」
マギスの言葉を遮るようにしてベヒモスが答えると、その理由を問い掛けた。
『……俺が兄貴についていけないじゃないっすかああああっ!!』
「だからいらないんだって」
『嫌っすよおおおおっ! 俺は兄貴と一緒にいたいんすよおおおおっ!!』
泣き出しそうなほど声をあげているベヒモスを見て、どうしてそこまで一緒に行きたがるのか聞いてみることにした。
「全く。どうしてそこまで一緒に行きたいんだい?」
『うぅぅ。だって俺、生まれてから今日までずっと、この地で暮らしてきたんす。だから、外の世界も見て回りたいんすよぉ』
「それなら君はもう自由だ。一人で見て回ればいいじゃないか」
『一人は嫌っす! 怖いっす! 俺は図体はでかいけど、本当は臆病者なんすからね!』
「うん。君の言動を見ていたら、そんな気はしていたよ」
『だったらそんな提案はしないでほしいっすよおおおおっ!!』
これは困ったと腕組みをし始めたマギスは、別のところで主を決めればいいんじゃないかと考える。
「君以外の魔獣を僕が主に指名することは可能かい?」
『それは! ……できるかもしれないっすねぇ』
「なら、君の次に強い魔獣か、仲の良い魔獣はいないかな?」
『それならいるっす! ちょっと待っていてほしいっす! 兄貴が呼んでいるって言えば、すぐに来てくれるっすから!』
涙目から満面の笑みに変わったベヒモスは、ドスンドスンと足音を響かせて全力で走っていってしまった。
「……このままいなくなったら、ダメかなぁ?」
少しだけ逡巡してしまったが、ベヒモスが追い掛けてきてしまったら、それこそアクシアに影響を与えかねないとすぐに諦める。
しばらくして戻ってきたベヒモスの後ろには、三つ首の魔獣であるケルベロスが舌を出した状態でついてきていた。
『紹介するっす! 俺の友達のケルベロスっす!』
『『『どぅも~! ケルベロスでぇ~す!』』』
「……なんだか、君とは違って元気のいい友達なんだね」
『『『うっす! 俺、元気だけが取り柄なんでぇ~!』』』
キャラの濃い魔獣が現れたことで苦笑いを浮かべてしまったマギスだが、この地を託せるだろう相手だったこともありホッと胸を撫で下ろした。
「君も相当強いみたいだね」
『『『うっす! 俺っち、強さもちょっとだけ自信があるんでぇ~!』』』
「なら、僕の代わりにこの地を任せていいかな?」
『『『俺っちでよければオッケーでぇ~す!』』』
『それじゃあ俺は兄貴についていくっすね!』
「……ついてくるのは遠慮してもいいかな?」
『絶対にダメっすからね! ダメって言われてもついていくっすからねええええっ!!』
こうしてマギスは、新たな同行者であるベヒモスと共にアクシアへ戻ったのだった。
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