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第32話:動き出す巨大魔獣
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「……んっ?」
最初に気づいたのはマギスだった。
それは彼が間引きを始めた時から気になっていた、遠くにある大きな気配だったからだ。
「どうしたのだ、マギスよ?」
僅かに動きを止めたマギスに気づいたエミリーが声を掛けると、彼は僅かな逡巡の後に口を開いた。
「……なんでもないよ」
「嘘じゃな。そなたが思案顔を浮かべたあとは、何かと面倒が舞い込んでくると理解しておるぞ?」
「いったいどこでそんな間違った情報を仕入れたのかな?」
「経験則じゃよ」
その経験則は間違っていると言ってやりたいマギスだったが、それ以上に大きな気配がどちらに向かってくるのか、それに意識を集中させていた。
「……なるほど、こっちに来るかぁ」
「こっちに来る? ……な、なんじゃ? この巨大な気配は?」
エミリーも気づいたようで、驚きの声をあげた。
大きな気配はゆっくりとだが、しかし確実にこちらへと近づいてきている。
気づいているのはマギスとエミリーだけであり、ニアたちは全く気づいていない。
「ど、どうするのだ、マギス? この気配は、あまりにも巨大だぞ?」
「そうだなぁ……」
最初こそ生徒たちの脅しに使えたらなと考えていたものの、彼らは最初の狩りで生き物の命を奪うことも重みをすでに理解している。
ならば、無理に脅しを掛ける必要はどこにもない。むしろ、脅威から遠ざけてあげるのが教師としての役目かもしれない。
「……仕方がない、僕が行こうかな」
「我も行ってやろうか」
「いいや、エミリーにはみんなを守ってもらいたい」
「しかし……この魔獣、なかなかに危険な存在かもしれんぞ?」
エミリーをもってしてもそう言わしめるのには訳があった。
「あれだけ大きな気配だからね。僕が今まで戦ってきた中でも、トップクラスのサイズじゃないかな」
エミリーが魔王をしていた時の配下にも、近づいてくる気配の主ほどに大きな存在はいなかった。
だからこそマギスのことを心配しているのだが、彼は普段と変わらない笑みを浮かべながら口を開いた。
「でもまあ……うん、大丈夫だと思うよ」
「楽観的ではないか?」
「そうかな? 僕の中ではエミリーが一番強い相手だったし、君よりも強い相手なんてそうはいないだろう?」
マギスの言葉を受けて、エミリーは驚いたものの、徐々に恥ずかしさが込み上げてきて視線を逸らせた。
「……ふ、ふん! おだてても何も出んからな!」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
僅かに頬を染めるエミリーの頭を撫でたあと、マギスはニアへ声を掛けた。
「ニア、ちょっといいかな?」
「どうしましたか、マギスさん?」
「遠くの方から大きな気配がこちらへ近づいてきています!」
「えぇっ! そうなんですか!」
ニアにだけは事実を告げておくべきだろうと思い、彼は大きな気配がこちらへ近づいてきていることを説明した。
「はい。ですが、僕が対処するので皆さんはこちらで実戦授業を続けておいてください」
「マギスさんおひとりで、ですか? でも、危険なんじゃ?」
「僕なら大丈夫ですよ。こちらにはエミリーを残しておくので、何かあれば彼女を頼ってください」
「じゃんじゃん頼るがいいぞ!」
小さなエミリーが胸を張る仕草に、最初こそ不安の表情を浮かべていたニアも、徐々に普段の顔に戻っていった。
「……分かりました。でも、無茶だけはしないでくださいね、マギスさん」
「もちろんです。それじゃあ、いってきますね」
普段と変わらない柔和な声音でそう口にすると、マギスはニアとエミリーの目の前から一瞬にして姿を消した。
最初に気づいたのはマギスだった。
それは彼が間引きを始めた時から気になっていた、遠くにある大きな気配だったからだ。
「どうしたのだ、マギスよ?」
僅かに動きを止めたマギスに気づいたエミリーが声を掛けると、彼は僅かな逡巡の後に口を開いた。
「……なんでもないよ」
「嘘じゃな。そなたが思案顔を浮かべたあとは、何かと面倒が舞い込んでくると理解しておるぞ?」
「いったいどこでそんな間違った情報を仕入れたのかな?」
「経験則じゃよ」
その経験則は間違っていると言ってやりたいマギスだったが、それ以上に大きな気配がどちらに向かってくるのか、それに意識を集中させていた。
「……なるほど、こっちに来るかぁ」
「こっちに来る? ……な、なんじゃ? この巨大な気配は?」
エミリーも気づいたようで、驚きの声をあげた。
大きな気配はゆっくりとだが、しかし確実にこちらへと近づいてきている。
気づいているのはマギスとエミリーだけであり、ニアたちは全く気づいていない。
「ど、どうするのだ、マギス? この気配は、あまりにも巨大だぞ?」
「そうだなぁ……」
最初こそ生徒たちの脅しに使えたらなと考えていたものの、彼らは最初の狩りで生き物の命を奪うことも重みをすでに理解している。
ならば、無理に脅しを掛ける必要はどこにもない。むしろ、脅威から遠ざけてあげるのが教師としての役目かもしれない。
「……仕方がない、僕が行こうかな」
「我も行ってやろうか」
「いいや、エミリーにはみんなを守ってもらいたい」
「しかし……この魔獣、なかなかに危険な存在かもしれんぞ?」
エミリーをもってしてもそう言わしめるのには訳があった。
「あれだけ大きな気配だからね。僕が今まで戦ってきた中でも、トップクラスのサイズじゃないかな」
エミリーが魔王をしていた時の配下にも、近づいてくる気配の主ほどに大きな存在はいなかった。
だからこそマギスのことを心配しているのだが、彼は普段と変わらない笑みを浮かべながら口を開いた。
「でもまあ……うん、大丈夫だと思うよ」
「楽観的ではないか?」
「そうかな? 僕の中ではエミリーが一番強い相手だったし、君よりも強い相手なんてそうはいないだろう?」
マギスの言葉を受けて、エミリーは驚いたものの、徐々に恥ずかしさが込み上げてきて視線を逸らせた。
「……ふ、ふん! おだてても何も出んからな!」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
僅かに頬を染めるエミリーの頭を撫でたあと、マギスはニアへ声を掛けた。
「ニア、ちょっといいかな?」
「どうしましたか、マギスさん?」
「遠くの方から大きな気配がこちらへ近づいてきています!」
「えぇっ! そうなんですか!」
ニアにだけは事実を告げておくべきだろうと思い、彼は大きな気配がこちらへ近づいてきていることを説明した。
「はい。ですが、僕が対処するので皆さんはこちらで実戦授業を続けておいてください」
「マギスさんおひとりで、ですか? でも、危険なんじゃ?」
「僕なら大丈夫ですよ。こちらにはエミリーを残しておくので、何かあれば彼女を頼ってください」
「じゃんじゃん頼るがいいぞ!」
小さなエミリーが胸を張る仕草に、最初こそ不安の表情を浮かべていたニアも、徐々に普段の顔に戻っていった。
「……分かりました。でも、無茶だけはしないでくださいね、マギスさん」
「もちろんです。それじゃあ、いってきますね」
普段と変わらない柔和な声音でそう口にすると、マギスはニアとエミリーの目の前から一瞬にして姿を消した。
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