英雄はその後、教師になる ~魔王よりも子供たちの方が強敵でした~

渡琉兎

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第27話:巨大な魔獣

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 ――未開地の奥にある荒廃した大地。
 そこにはアクシア周辺に生息する魔獣とはけた違いに強く、大きく、厄介な魔獣が縄張りを持っている。
 その中でも特に獰猛で、巨大で、狡猾な魔獣が、大きく口を開けた洞窟の最奥に眠っていた。

『…………この気配は?』

 長い年月で眠り続けていたその魔獣だが、とある気配を感じ取ったことをきっかけに目を覚ましてしまった。

『……ここは俺様の縄張りだ。まさか、奪いに来たのか?』

 魔獣が感じた気配はまだ遠く、すぐに脅威となるものではない。
 しかし、魔獣の速度でなら一日も掛からずにその場所に到着することができるだろう。
 それくらいの距離に突如として現れた気配は、魔獣の眠りを妨げるのには十分だった。

『……もしも何かやるようであれば、俺様が叩き潰してやるか』

 そう独り言を呟きながら、魔獣は再び重い瞼を閉じる。
 魔獣が感じ取ったのは魔力の欠片であり、超級魔法によって空気中に漂ったものである。
 それがエミリーの放った魔法であることを魔獣は知らないし、魔獣が魔力を感じ取っていることをエミリーも知らない。
 当事者ではないマギスもまた、巨大な魔獣の未開地で眠りについていたという事実を知るはずもない。

『……俺様の眠りを妨げる奴は……誰であっても……許さ……ない…………』

 こうして魔獣は再び眠りについた。

 巨大魔獣――ベヒモスとマギスたちの邂逅は、もう少しだけ先のこととなる。
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