24 / 64
第24話:やり過ぎのエミリー
しおりを挟む
何が起こったのか、ニアたちには全く理解できなかった。
マギスたちが一目を置いているティアナですら、飛び跳ねていた動きを止めて驚愕している。
「……魔法を、斬った?」
なんとかそう呟いたのは、マギスに反発していたカイトだった。
「斬ったんじゃない、消滅させたんだ」
「……そんな……あり得ない」
目の前の出来事が信じられず、カイトは目を見開いたままそう呟く。
「いいや、事実じゃぞ」
そこへ口を挟んできたのはエミリーだった。
本来であれば彼女が超級魔法を使えることに驚くべきなのだが、マギスが魔法を斬ったことがあまりにも衝撃的過ぎて誰もそこに言及する様子は見られない。
とはいえ、そこにもすぐに追及は入るだろうと、彼はどう対処するべきか考えながら彼女に声を掛けた。
「エミリー」
「なんじゃ、マギスよ。賞賛の言葉であればいつでも受け付けている――ぎゃんっ!?」
マギスの拳骨が、エミリーの脳天へと振り下ろされた。
「~~~~!? な、何をするのじゃ、マギス!!」
「あれはやり過ぎだよ、エミリー」
「何を言っておる! お主にはあれくらいでなければ意味がない――」
「エ~ミ~リ~~?」
「ぐぬっ!? …………す、すまんかった」
マギスは笑みを浮かべながらも、目の奥に憤怒の怒りを浮かべながらエミリーを見つめた。
殺気にも似た威圧感を感じたエミリーは言い訳をしようとしたものの、すぐに思い直して謝罪を口にする。
「……うん、分かればいいんだよ、分かればね」
そして、エミリーが本気で反省していると理解したマギスはすぐに表情を普段のものへと戻した。
「……だ、大丈夫でしたか、マギスさん!」
そこへ駆け寄ってきたのはニアであり、生徒たちだ。
「大丈夫だよ、ニア」
「でも、あの魔法……あれは本当に、エミリーちゃんが?」
早速ニアからの追及が来たかとマギスは身構えたのだが、疑問に思っていたのは彼女だけで、生徒たちは全く別のところに注目していた。
「マジですげえよ、マギス兄!」
「格好よかったよ、先生!」
「さいっこう! せんせー、最高だよー!」
「魔法って斬れるんですね! 初めて見ました!」
「……ピピの魔法も、斬ってほしい!」
リックやアリサやティアナだけではなく、オックスとピピも興奮したように言葉を続けてくる。
そして、やや後ろの方には口を開いてはいないもののカイトも歩み寄ってきてくれていた。
エミリーの魔法について聞きたかったニアだったが、生徒たちの興味を削いではいけないと思ったのか、すぐに身を引いてくれた。
「……まあ、今回はエミリーがやり過ぎてしまったから斬っちゃったけど、本来ならあそこで魔法の軌道を魔力の軌跡から予測し、その軌道から外れるようにして魔導師に近づいていくんだ」
ありがたいと思ったマギスはすぐに本来の目的である、魔法を潜り抜けて魔導師を倒す、という話へと持っていった。
「魔力の軌跡から、魔法の軌道を予測?」
そして、マギスの言葉に食いついたのはカイトだった。
「カイトは魔力の軌跡、見えたことがあるんじゃないかな?」
さらにマギスがそう口にすると、生徒とニアの視線がカイトに集まった。
「マジかよ、カイト!」
「ちょっと、そんなこと一言も言ってなかったじゃないのよ!」
「いや、待ってくれ! 僕は魔力の軌跡なんて見えたことはないよ!」
リックとアリサから詰め寄られそうになったカイトは慌てたようにそう言うと、マギスをキッと睨みつけた。
「あなたの冗談に巻き込まないでください!」
「いいや、カイト。僕は確信しているよ。君は魔力の軌跡を見たことがあるはずだ。もしかして、無自覚なのかな?」
「何を根拠にそのようなことを!」
「それなら聞くけど、カイトは何を根拠にしてみんなに指示を出していたんだい? 僕はその指示出しを見て、君が見えていると確信を得たんだけどな」
マギスの問い掛けにカイトは考え込んでいたものの、しばらくしてハッとした表情を浮かべた。
マギスたちが一目を置いているティアナですら、飛び跳ねていた動きを止めて驚愕している。
「……魔法を、斬った?」
なんとかそう呟いたのは、マギスに反発していたカイトだった。
「斬ったんじゃない、消滅させたんだ」
「……そんな……あり得ない」
目の前の出来事が信じられず、カイトは目を見開いたままそう呟く。
「いいや、事実じゃぞ」
そこへ口を挟んできたのはエミリーだった。
本来であれば彼女が超級魔法を使えることに驚くべきなのだが、マギスが魔法を斬ったことがあまりにも衝撃的過ぎて誰もそこに言及する様子は見られない。
とはいえ、そこにもすぐに追及は入るだろうと、彼はどう対処するべきか考えながら彼女に声を掛けた。
「エミリー」
「なんじゃ、マギスよ。賞賛の言葉であればいつでも受け付けている――ぎゃんっ!?」
マギスの拳骨が、エミリーの脳天へと振り下ろされた。
「~~~~!? な、何をするのじゃ、マギス!!」
「あれはやり過ぎだよ、エミリー」
「何を言っておる! お主にはあれくらいでなければ意味がない――」
「エ~ミ~リ~~?」
「ぐぬっ!? …………す、すまんかった」
マギスは笑みを浮かべながらも、目の奥に憤怒の怒りを浮かべながらエミリーを見つめた。
殺気にも似た威圧感を感じたエミリーは言い訳をしようとしたものの、すぐに思い直して謝罪を口にする。
「……うん、分かればいいんだよ、分かればね」
そして、エミリーが本気で反省していると理解したマギスはすぐに表情を普段のものへと戻した。
「……だ、大丈夫でしたか、マギスさん!」
そこへ駆け寄ってきたのはニアであり、生徒たちだ。
「大丈夫だよ、ニア」
「でも、あの魔法……あれは本当に、エミリーちゃんが?」
早速ニアからの追及が来たかとマギスは身構えたのだが、疑問に思っていたのは彼女だけで、生徒たちは全く別のところに注目していた。
「マジですげえよ、マギス兄!」
「格好よかったよ、先生!」
「さいっこう! せんせー、最高だよー!」
「魔法って斬れるんですね! 初めて見ました!」
「……ピピの魔法も、斬ってほしい!」
リックやアリサやティアナだけではなく、オックスとピピも興奮したように言葉を続けてくる。
そして、やや後ろの方には口を開いてはいないもののカイトも歩み寄ってきてくれていた。
エミリーの魔法について聞きたかったニアだったが、生徒たちの興味を削いではいけないと思ったのか、すぐに身を引いてくれた。
「……まあ、今回はエミリーがやり過ぎてしまったから斬っちゃったけど、本来ならあそこで魔法の軌道を魔力の軌跡から予測し、その軌道から外れるようにして魔導師に近づいていくんだ」
ありがたいと思ったマギスはすぐに本来の目的である、魔法を潜り抜けて魔導師を倒す、という話へと持っていった。
「魔力の軌跡から、魔法の軌道を予測?」
そして、マギスの言葉に食いついたのはカイトだった。
「カイトは魔力の軌跡、見えたことがあるんじゃないかな?」
さらにマギスがそう口にすると、生徒とニアの視線がカイトに集まった。
「マジかよ、カイト!」
「ちょっと、そんなこと一言も言ってなかったじゃないのよ!」
「いや、待ってくれ! 僕は魔力の軌跡なんて見えたことはないよ!」
リックとアリサから詰め寄られそうになったカイトは慌てたようにそう言うと、マギスをキッと睨みつけた。
「あなたの冗談に巻き込まないでください!」
「いいや、カイト。僕は確信しているよ。君は魔力の軌跡を見たことがあるはずだ。もしかして、無自覚なのかな?」
「何を根拠にそのようなことを!」
「それなら聞くけど、カイトは何を根拠にしてみんなに指示を出していたんだい? 僕はその指示出しを見て、君が見えていると確信を得たんだけどな」
マギスの問い掛けにカイトは考え込んでいたものの、しばらくしてハッとした表情を浮かべた。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる