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第24話:やり過ぎのエミリー

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 何が起こったのか、ニアたちには全く理解できなかった。
 マギスたちが一目を置いているティアナですら、飛び跳ねていた動きを止めて驚愕している。

「……魔法を、斬った?」

 なんとかそう呟いたのは、マギスに反発していたカイトだった。

「斬ったんじゃない、消滅させたんだ」
「……そんな……あり得ない」

 目の前の出来事が信じられず、カイトは目を見開いたままそう呟く。

「いいや、事実じゃぞ」

 そこへ口を挟んできたのはエミリーだった。
 本来であれば彼女が超級・・魔法を使えることに驚くべきなのだが、マギスが魔法を斬ったことがあまりにも衝撃的過ぎて誰もそこに言及する様子は見られない。
 とはいえ、そこにもすぐに追及は入るだろうと、彼はどう対処するべきか考えながら彼女に声を掛けた。

「エミリー」
「なんじゃ、マギスよ。賞賛の言葉であればいつでも受け付けている――ぎゃんっ!?」

 マギスの拳骨が、エミリーの脳天へと振り下ろされた。

「~~~~!? な、何をするのじゃ、マギス!!」
「あれはやり過ぎだよ、エミリー」
「何を言っておる! お主にはあれくらいでなければ意味がない――」
「エ~ミ~リ~~?」
「ぐぬっ!? …………す、すまんかった」

 マギスは笑みを浮かべながらも、目の奥に憤怒の怒りを浮かべながらエミリーを見つめた。
 殺気にも似た威圧感を感じたエミリーは言い訳をしようとしたものの、すぐに思い直して謝罪を口にする。

「……うん、分かればいいんだよ、分かればね」

 そして、エミリーが本気で反省していると理解したマギスはすぐに表情を普段のものへと戻した。

「……だ、大丈夫でしたか、マギスさん!」

 そこへ駆け寄ってきたのはニアであり、生徒たちだ。

「大丈夫だよ、ニア」
「でも、あの魔法……あれは本当に、エミリーちゃんが?」

 早速ニアからの追及が来たかとマギスは身構えたのだが、疑問に思っていたのは彼女だけで、生徒たちは全く別のところに注目していた。

「マジですげえよ、マギス兄!」
「格好よかったよ、先生!」
「さいっこう! せんせー、最高だよー!」
「魔法って斬れるんですね! 初めて見ました!」
「……ピピの魔法も、斬ってほしい!」

 リックやアリサやティアナだけではなく、オックスとピピも興奮したように言葉を続けてくる。
 そして、やや後ろの方には口を開いてはいないもののカイトも歩み寄ってきてくれていた。
 エミリーの魔法について聞きたかったニアだったが、生徒たちの興味を削いではいけないと思ったのか、すぐに身を引いてくれた。

「……まあ、今回はエミリーがやり過ぎてしまったから斬っちゃったけど、本来ならあそこで魔法の軌道を魔力の軌跡から予測し、その軌道から外れるようにして魔導師に近づいていくんだ」

 ありがたいと思ったマギスはすぐに本来の目的である、魔法を潜り抜けて魔導師を倒す、という話へと持っていった。

「魔力の軌跡から、魔法の軌道を予測?」

 そして、マギスの言葉に食いついたのはカイトだった。

「カイトは魔力の軌跡、見えたことがあるんじゃないかな?」

 さらにマギスがそう口にすると、生徒とニアの視線がカイトに集まった。

「マジかよ、カイト!」
「ちょっと、そんなこと一言も言ってなかったじゃないのよ!」
「いや、待ってくれ! 僕は魔力の軌跡なんて見えたことはないよ!」

 リックとアリサから詰め寄られそうになったカイトは慌てたようにそう言うと、マギスをキッと睨みつけた。

「あなたの冗談に巻き込まないでください!」
「いいや、カイト。僕は確信しているよ。君は魔力の軌跡を見たことがあるはずだ。もしかして、無自覚なのかな?」
「何を根拠にそのようなことを!」
「それなら聞くけど、カイトは何を根拠にしてみんなに指示を出していたんだい? 僕はその指示出しを見て、君が見えていると確信を得たんだけどな」

 マギスの問い掛けにカイトは考え込んでいたものの、しばらくしてハッとした表情を浮かべた。
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