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第8話:未開地の村アクシア
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ニアの案内で訪れた未開地の村――アクシア。
彼女が村の外から人を連れてきたということはすぐに知れ渡り、遠目からマギスとエミリーに視線が集まっている。
「お二人とも、すみません。みんな、村の外の人が気になって仕方がないんです」
「外の人がアクシアを訪れたことはなかったのかな?」
ニアの言葉にマギスが問い掛けると、彼女はすぐに頷いた。
「少なくとも、私は見たことがありません」
「まあ、ここは未開地だからのう。外の人間が足を踏み入れられる場所ではないわ」
「あの、先ほども仰っていましたが、ここは未開地なんでしょうか? その、私たちはずっとこの地で生活をしていますので、未開地と言われても実感が湧かなくて……」
この地で暮らしてきたニアからすれば、当然の疑問だろう。
そもそも、未開地と名付けたのは未開地の外にいる者たちであり、そこで暮らしている者からすれば理解できないのも当然だ。
「この辺りの害獣はとても強い個体が多くて、外の人間ではほとんど太刀打ちができないんだ。だから未開地と名付けて、いつの日か開拓できるのを願っているんだよ」
「でも、マギスさんは来てくれましたよね?」
「我を忘れるでないぞ?」
「うん、エミリーちゃんもね」
言葉遣いだけを聞けばおばあちゃんと言われても納得なのだが、見た目が幼女であることが大きくニアはエミリーをちゃん付けで呼んでいる。
本当は魔王であるエミリーはちゃん付けに憤るかもしれないとマギスは思っていたのだが、思いのほか気に入ったのか彼女は素直に受け入れていた。
「うむうむ、エミリーちゃんも忘れるでない」
「うふふ。でも、今の話を聞くと、マギスさんとエミリーちゃんはとっても強い方々なんですか?」
害獣が強いから外の人間は足を踏み入れないということで、そこに入ってきた二人が強いと思うのは当然の結果だろう。
実際に人族最強の男と魔王である。
両種族の最強が共にいるのだから強いのは当然だが、マギスは柔和な笑みを浮かべて首を横に振った。
「いいや、僕はそこまで強くないよ」
「何を言っておるの――ばふぁ!?」
彼の言葉を否定しようとしたエミリーだったが、その口をマギス本人がふさいでしまう。
「あの、どうしたんですか?」
「ん? いや、なんでもないよ。僕はそこそこ強い程度なんだよね」
「でも、先ほどは害獣を圧倒していましたよね?」
「あれは特別弱い個体だったんじゃないかな。僕でも倒せたくらいだからね」
「そうなんですか? ……うーん、そうだったのかなぁ?」
実際はマギスでなければニアを助けることはできなかったはずだが、彼としては自分が特別強いと思われるのは避けたかった。
「……ぷはっ! ……おい、マギス! 貴様、どうして嘘をつくのじゃ!」
マギスの言葉に思案を始めたニアを見て、エミリーが小声で話し掛けてきた。
「……強いと思われると面倒ごとになりそうだろう?」
「……ならば助けなければよかったであろう」
「……いや、さすがにあそこで見て見ぬふりはできないよ」
こそこそ話をしていると、思案を終えたニアが顔を上げたのが見えたのもあり、二人は会話を中断した。
「そういえば、マギスさんたちはどうして旅をなさっているんですか?」
「僕はエミリーと一緒に一年間旅をしていて、そろそろどこかに腰を落ち着けられないかなって思っているんだ」
「それじゃあ、今はその場所を探しているんですね?」
「そうだね」
エミリーと辺境の地を一年間見て回ったマギスだったが、この一年で地図に載っている場所は全て回ってしまい、その過程から未開地へ足を延ばしている。
とはいえ、王城で語っていた田舎に引っ込みたいという思いも心の片隅にはずっと残っており、エミリーを助けることができた以上、その選択肢を選んでもいいのかなと思うようになっていた。
「……我は聞いておらんかったぞ?」
「まあまあ、いいじゃないか。……エミリーもゆっくりと力を取り戻せた方がいいだろう?」
「……まあ、そうじゃがのう」
「どうしたんですか?」
「いいや、なんでもないよ」
後半は小声になったのでニアが声を掛けてきたが、マギスは誤魔化すように笑う。
軽く首を傾げた彼女だったが、目的の場所に到着したからか話題はそちらへ変わっていった。
「お待たせいたしました。こちらがアクシアの村長のお屋敷になります」
「「……村長?」」
「はい! 外からの来客なんて初めてですから、まずは村長にご紹介できればと思いまして!」
軽く食事をごちそうしてもらえる程度に考えていた二人にとって、突然の村長との対面は予想外のイベントになってしまった。
彼女が村の外から人を連れてきたということはすぐに知れ渡り、遠目からマギスとエミリーに視線が集まっている。
「お二人とも、すみません。みんな、村の外の人が気になって仕方がないんです」
「外の人がアクシアを訪れたことはなかったのかな?」
ニアの言葉にマギスが問い掛けると、彼女はすぐに頷いた。
「少なくとも、私は見たことがありません」
「まあ、ここは未開地だからのう。外の人間が足を踏み入れられる場所ではないわ」
「あの、先ほども仰っていましたが、ここは未開地なんでしょうか? その、私たちはずっとこの地で生活をしていますので、未開地と言われても実感が湧かなくて……」
この地で暮らしてきたニアからすれば、当然の疑問だろう。
そもそも、未開地と名付けたのは未開地の外にいる者たちであり、そこで暮らしている者からすれば理解できないのも当然だ。
「この辺りの害獣はとても強い個体が多くて、外の人間ではほとんど太刀打ちができないんだ。だから未開地と名付けて、いつの日か開拓できるのを願っているんだよ」
「でも、マギスさんは来てくれましたよね?」
「我を忘れるでないぞ?」
「うん、エミリーちゃんもね」
言葉遣いだけを聞けばおばあちゃんと言われても納得なのだが、見た目が幼女であることが大きくニアはエミリーをちゃん付けで呼んでいる。
本当は魔王であるエミリーはちゃん付けに憤るかもしれないとマギスは思っていたのだが、思いのほか気に入ったのか彼女は素直に受け入れていた。
「うむうむ、エミリーちゃんも忘れるでない」
「うふふ。でも、今の話を聞くと、マギスさんとエミリーちゃんはとっても強い方々なんですか?」
害獣が強いから外の人間は足を踏み入れないということで、そこに入ってきた二人が強いと思うのは当然の結果だろう。
実際に人族最強の男と魔王である。
両種族の最強が共にいるのだから強いのは当然だが、マギスは柔和な笑みを浮かべて首を横に振った。
「いいや、僕はそこまで強くないよ」
「何を言っておるの――ばふぁ!?」
彼の言葉を否定しようとしたエミリーだったが、その口をマギス本人がふさいでしまう。
「あの、どうしたんですか?」
「ん? いや、なんでもないよ。僕はそこそこ強い程度なんだよね」
「でも、先ほどは害獣を圧倒していましたよね?」
「あれは特別弱い個体だったんじゃないかな。僕でも倒せたくらいだからね」
「そうなんですか? ……うーん、そうだったのかなぁ?」
実際はマギスでなければニアを助けることはできなかったはずだが、彼としては自分が特別強いと思われるのは避けたかった。
「……ぷはっ! ……おい、マギス! 貴様、どうして嘘をつくのじゃ!」
マギスの言葉に思案を始めたニアを見て、エミリーが小声で話し掛けてきた。
「……強いと思われると面倒ごとになりそうだろう?」
「……ならば助けなければよかったであろう」
「……いや、さすがにあそこで見て見ぬふりはできないよ」
こそこそ話をしていると、思案を終えたニアが顔を上げたのが見えたのもあり、二人は会話を中断した。
「そういえば、マギスさんたちはどうして旅をなさっているんですか?」
「僕はエミリーと一緒に一年間旅をしていて、そろそろどこかに腰を落ち着けられないかなって思っているんだ」
「それじゃあ、今はその場所を探しているんですね?」
「そうだね」
エミリーと辺境の地を一年間見て回ったマギスだったが、この一年で地図に載っている場所は全て回ってしまい、その過程から未開地へ足を延ばしている。
とはいえ、王城で語っていた田舎に引っ込みたいという思いも心の片隅にはずっと残っており、エミリーを助けることができた以上、その選択肢を選んでもいいのかなと思うようになっていた。
「……我は聞いておらんかったぞ?」
「まあまあ、いいじゃないか。……エミリーもゆっくりと力を取り戻せた方がいいだろう?」
「……まあ、そうじゃがのう」
「どうしたんですか?」
「いいや、なんでもないよ」
後半は小声になったのでニアが声を掛けてきたが、マギスは誤魔化すように笑う。
軽く首を傾げた彼女だったが、目的の場所に到着したからか話題はそちらへ変わっていった。
「お待たせいたしました。こちらがアクシアの村長のお屋敷になります」
「「……村長?」」
「はい! 外からの来客なんて初めてですから、まずは村長にご紹介できればと思いまして!」
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