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過去の精算
ゼウスブレイドのダンジョン攻略⑨
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その挙動には予備動作が存在せず、まるで宙に浮いているかのように滑らかな加速を見せると、右腕の一薙ぎでヴィルとクックをまとめて吹き飛ばしてしまう。
壁に激突して砂煙が舞う中、リッカはあまりの予想外な出来事に固まってしまった。
『キイイイイヤアアアアッ!』
「はっ!」
獲物を見つけたかのようにアークルが奇声を発したことで我に返ったリッカは大剣を構えて対峙する。
直後、砂煙の中からヴィルとクックが飛び出して来てアークルへと襲い掛かった。
ナイフが首を、蹴りが足首を狙っての攻撃だったのだが、翼を羽ばたかせると浮き上がり回避されてしまう。
「ちいっ! 飛ばれちまったら手出しできねえじゃねえかよ!」
「足場を作る。ヴィル、行けるか?」
「任せとけ!」
クックが土壁を段違いで作り上げると、その上に乗って上空のアークルへと迫るヴィル。
一方のリッカは確実にスキルを当てるために動きを観察し、狙いを定めていた。
「リッカのスキルなしでも倒してやるぜ!」
『キイイイイヤアアアアッ!』
「くっ! また、この奇声かよ!」
「ヴィル! 避けろ!」
アークルの奇声に動きがヴィルの動きが鈍ると、直後には右拳が顔面を捉えようとしていた。
クックの声を聞いて間一髪の回避を見せたヴィルだったが、風圧だけで頬の皮膚がキレて血が滴っている。
直撃は即死だと理解すると、土壁の上でアークルを睨み付けながらどうするべきかを思案し始めた。
(こんな奴にリッカのスキルを当てることができるか? いや、難しすぎるだろ。俺でもまだ掠りもしてないんだぞ?)
『キイイイイヤアアアアッ!』
「ぐあっ! この、奇声が、厄介だな!」
アークルの奇声は聞いた者の動きを鈍らせる効果を持っている。
これが近ければ近い程に効果を発揮してしまうので、むやみやたらに近づいてしまうと奇声の餌食となり、気づけば拳がめり込んでいる。
天使族は動きが速く特殊な能力を有している反面、耐久力に難があるので強烈な一撃を当てることができれば勝機を見いだせるのだが、それも難しいとヴィルは考えていた。
(この奇声の中じゃあ、さらにリッカのスキルを当てるのが難しくなるじゃねえかよ!)
「一度戻れ、ヴィル!」
「ちいっ! それしかねえか!」
クックは指示と同時に巨大な土壁をアークルとヴィルの間に作り出した。
視界を遮り、一瞬の隙を突いて自らが回り込む作戦だ。
レア度が高くなると人語を理解するモンスターも出てくることがある。
アークルは間違いなく人語を理解するモンスターだと判断したクックは、あえて聞こえるように指示を出していた。
長い付き合いであるヴィルはそのことに気づいたからこそ、クックの指示に従って引いたのだ。
しかし、ここでクックもヴィルも予想していなかった事態が目の前で起きてしまった。
──ドゴオオオオンッ!
「こいつ、土壁を!」
「拳で破壊しただと!」
一撃だった。
巨大な土壁は高く作るためにその幅も太く強固に作り上げたはずだったのだが、アークルはたったの一撃でそんな土壁を破壊してしまったのだ。
時間を稼ぐつもりがそれも叶わず、視界を奪い意表を突くつもりが逆に意表を突かれてしまった。
動きが停滞してしまったクックへとアークルが滑らかな動きで迫っていく。
「ぬおっ!」
『キイイヤアアアアッ!』
「やらせねえ──があっ!」
「ヴィル!」
クックに迫るアークルを見て気を逸らそうと近づいたヴィルだったが、アークルの狙いは最初からヴィルだった。
まるでアークルの手の平で泳がされているかのように策に嵌ってしまったヴィルは何とかナイフで拳を防いだものの、そのナイフが二刀とも砕けてしまい左腕の骨が折れるほどのダメージを受けてしまう。
ヴィルを助けるために土壁をアークルの四方に作り出したクックは駆け寄ろうとしたのだが、またしても土壁は砕かれてしまった。
それでも走りながら土壁を作り少しでも進行を遅らせようと試みたのだが、アークルは左手で握っていた純白の剣を始めて振り抜いた。
──キンッ!
大量に作られた土壁の全てが上下に分かたれて吹き飛ばされてしまう。
邪魔な土壁がなくなったことでアークルは真っすぐにクックへと迫っていく。
逃げられない、そう判断したクックは決死の覚悟で相対することを決めた。
「スキル──金剛!」
クックの肉体が鋼色に変化する。
頭上で両腕を交差させて受け止める構えのクックめがけて再び振り抜かれた純白の剣が振り下ろされた。
──ドゴオオオオンッ!
あまりの衝撃に地面が陥没し、砂煙が舞い上がりクックとアークルの姿を覆い隠してしまった。
壁に激突して砂煙が舞う中、リッカはあまりの予想外な出来事に固まってしまった。
『キイイイイヤアアアアッ!』
「はっ!」
獲物を見つけたかのようにアークルが奇声を発したことで我に返ったリッカは大剣を構えて対峙する。
直後、砂煙の中からヴィルとクックが飛び出して来てアークルへと襲い掛かった。
ナイフが首を、蹴りが足首を狙っての攻撃だったのだが、翼を羽ばたかせると浮き上がり回避されてしまう。
「ちいっ! 飛ばれちまったら手出しできねえじゃねえかよ!」
「足場を作る。ヴィル、行けるか?」
「任せとけ!」
クックが土壁を段違いで作り上げると、その上に乗って上空のアークルへと迫るヴィル。
一方のリッカは確実にスキルを当てるために動きを観察し、狙いを定めていた。
「リッカのスキルなしでも倒してやるぜ!」
『キイイイイヤアアアアッ!』
「くっ! また、この奇声かよ!」
「ヴィル! 避けろ!」
アークルの奇声に動きがヴィルの動きが鈍ると、直後には右拳が顔面を捉えようとしていた。
クックの声を聞いて間一髪の回避を見せたヴィルだったが、風圧だけで頬の皮膚がキレて血が滴っている。
直撃は即死だと理解すると、土壁の上でアークルを睨み付けながらどうするべきかを思案し始めた。
(こんな奴にリッカのスキルを当てることができるか? いや、難しすぎるだろ。俺でもまだ掠りもしてないんだぞ?)
『キイイイイヤアアアアッ!』
「ぐあっ! この、奇声が、厄介だな!」
アークルの奇声は聞いた者の動きを鈍らせる効果を持っている。
これが近ければ近い程に効果を発揮してしまうので、むやみやたらに近づいてしまうと奇声の餌食となり、気づけば拳がめり込んでいる。
天使族は動きが速く特殊な能力を有している反面、耐久力に難があるので強烈な一撃を当てることができれば勝機を見いだせるのだが、それも難しいとヴィルは考えていた。
(この奇声の中じゃあ、さらにリッカのスキルを当てるのが難しくなるじゃねえかよ!)
「一度戻れ、ヴィル!」
「ちいっ! それしかねえか!」
クックは指示と同時に巨大な土壁をアークルとヴィルの間に作り出した。
視界を遮り、一瞬の隙を突いて自らが回り込む作戦だ。
レア度が高くなると人語を理解するモンスターも出てくることがある。
アークルは間違いなく人語を理解するモンスターだと判断したクックは、あえて聞こえるように指示を出していた。
長い付き合いであるヴィルはそのことに気づいたからこそ、クックの指示に従って引いたのだ。
しかし、ここでクックもヴィルも予想していなかった事態が目の前で起きてしまった。
──ドゴオオオオンッ!
「こいつ、土壁を!」
「拳で破壊しただと!」
一撃だった。
巨大な土壁は高く作るためにその幅も太く強固に作り上げたはずだったのだが、アークルはたったの一撃でそんな土壁を破壊してしまったのだ。
時間を稼ぐつもりがそれも叶わず、視界を奪い意表を突くつもりが逆に意表を突かれてしまった。
動きが停滞してしまったクックへとアークルが滑らかな動きで迫っていく。
「ぬおっ!」
『キイイヤアアアアッ!』
「やらせねえ──があっ!」
「ヴィル!」
クックに迫るアークルを見て気を逸らそうと近づいたヴィルだったが、アークルの狙いは最初からヴィルだった。
まるでアークルの手の平で泳がされているかのように策に嵌ってしまったヴィルは何とかナイフで拳を防いだものの、そのナイフが二刀とも砕けてしまい左腕の骨が折れるほどのダメージを受けてしまう。
ヴィルを助けるために土壁をアークルの四方に作り出したクックは駆け寄ろうとしたのだが、またしても土壁は砕かれてしまった。
それでも走りながら土壁を作り少しでも進行を遅らせようと試みたのだが、アークルは左手で握っていた純白の剣を始めて振り抜いた。
──キンッ!
大量に作られた土壁の全てが上下に分かたれて吹き飛ばされてしまう。
邪魔な土壁がなくなったことでアークルは真っすぐにクックへと迫っていく。
逃げられない、そう判断したクックは決死の覚悟で相対することを決めた。
「スキル──金剛!」
クックの肉体が鋼色に変化する。
頭上で両腕を交差させて受け止める構えのクックめがけて再び振り抜かれた純白の剣が振り下ろされた。
──ドゴオオオオンッ!
あまりの衝撃に地面が陥没し、砂煙が舞い上がりクックとアークルの姿を覆い隠してしまった。
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