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様々な動き
悪い知らせ?
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──カナタ達が出発し、リリーナが換金所の窓口に立ち初めて数日が経った。
ジーエフは比較的順調に冒険者を集めており、モンスターのレベルも少しずつだが上がっている。
そんなある日、ちょっとした問題が発生した。
「アルバース!」
「……何をしに来たんだ──ジギル」
ジーエフを訪れたのは、冒険者ランキング1位に君臨している最強の冒険者であるジギルだった。
「うわー! お久しぶりです、ジギルさん!」
「メグルちゃんも久しぶりだねー! うふすー、相変わらず可愛いわねー!」
廻のことを抱きしめているジギルはとても幸せそうな表情を浮かべているのだが、換金所で経営者を抱きしめるランキング1位という構図は、変な噂を立てかねないとアルバスが口を挟む。
「おい! 何か用事があってわざわざ来たんだろう!」
「ぶー。ちょっとくらいメグルちゃんを堪能させてよー」
「そうですよ、アルバスさん。私もジギルさんを堪能したいんですー!」
廻の頭がちょうどジギルの胸に位置しており、谷間に顔を埋めているところだった。
「……それじゃあ、どこか別のところでいちゃこらしてくれませんかねー」
「うふふ、私はそれもありだけどー……メグルちゃん、どうかしら?」
「えっとー、そっち方面はやってないかなー、なんてー」
ジギルが本気だと思ったのか、廻は顔を離すと少しずつ後退りを始める。
その姿を見たアルバスは盛大な溜息をつき、ジギルは大笑いしている。
二人の反応を見て冗談だと気づいた廻は顔を真っ赤にしてアルバスに文句を言っていた。
「アルバスさんの意地悪!」
「いや、今のはジギルが悪いだろう」
「話を振ってきたのはアルバスだもんねー」
「そうですよ! アルバスさんが基本的に悪いんです!」
「はいはい。話を戻していいですかねー。ジギル、マジで何をしに来たんだ? 冷やかしなら帰ってくれ」
そろそろ本気で怒られそうだと思ったのか、ジギルも謝りながら本題に入ってくれた。
「ごめん、ごめん。ちゃんと用事があってきたのよ」
「んで、その用事ってのは何なんだ? 換金所に来たってことは、俺に用があったんだろう?」
「そうよ……アルバス、気をつけてね」
先ほどまでの笑顔が消え、ジギルの表情には緊張感が漂っている。
いったい何事だろうと廻も口を閉じて話を伺う。
「あなたの元パーティが、ジーエフに向かっているわ」
「えっ!」
「あいつらがか? なんでこんなところに」
「まあ、目的は十中八九サウザンドドラゴンでしょうね」
「希少種とはいえ、レア度4だぞ? わざわざ来る必要はないだろう」
「それともう一つ理由があるのよ」
「まだ何かあるのか?」
面倒臭そうに頭を掻くアルバスだが、ジギルは表情を変えることなく口を開いた。
「あいつらは、アルバスに復讐をしようとしているのよ」
「……復讐?」
「ちょっと待ってください! アルバスさんを見捨てたのは元パーティの人達ですよね? なんでアルバスさんが復讐されないといけないんですか? 普通なら逆の立場ですよね!」
廻の言う通り、アルバスが自分を捨てた元パーティに復讐するなら筋が通るが、捨てた側が復讐というのは理解しがたい。
アルバスも何を言われているのか理解できない状況だった。
「あいつらは、アルバスが抜けた途端にランキングから転がり落ちていったのよ。最初の頃はよかったわ。ランキング1位がいたパーティに加入するべく有力な冒険者が入ったもの。だけどね、アルバスの代わりがそいつに務まるわけもなく、加入してはすぐに捨てていったのよ」
「そんな、酷すぎますよ!」
「そうしていくうちに加入を希望する冒険者も減っていき、補強ができないまま今に至っているってこと」
「それで、その原因が俺にあるって言ってるのか? くだらんな」
そう、くだらない言い分である。
しかし、廻からすれば全く面白くもない話であり、そんなことでアルバスが危険に晒されるなどということは断じてあってはならないことだと考えた。
「そ、そんな人達、私から来訪をお断りしま──」
「お前はアホか」
廻が怒りに任せて言おうとした言葉を、アルバスが途中でぶった切ってしまった。
「な、何でですか、アルバスさん! そんな理不尽な主張に付き合う理由なんてありませんよ!」
「当たり前だろう。だから、利用させてもらうんだよ」
「……利用、ですか?」
「アルバスならそう言うと思ったわよ」
ジギルも何やら理解しているようだが、廻にはさっぱりである。
「ど、どういうことですか?」
「今の実力がどうかは知らないが、有名人がわざわざ足を運んでくれているんだ。だったら、そいつらを利用してジーエフの宣伝をしてもらおうじゃないか!」
「宣伝……具体的には何か考えているんですか?」
ここまではっきりと口にするのだから、何か考えがあるのだろうも話を促していく。
すると、アルバスはニヤリと笑いこう口にした。
「あいつらには、サウザンドドラゴンと戦ってもらう。そして、華々しく負けてもらうんだよ!」
アルバスの考えを聞いたジギルは、楽しそうな笑みを浮かべている。
廻はというと、少しばかり心配そうな表情を浮かべていた。
ジーエフは比較的順調に冒険者を集めており、モンスターのレベルも少しずつだが上がっている。
そんなある日、ちょっとした問題が発生した。
「アルバース!」
「……何をしに来たんだ──ジギル」
ジーエフを訪れたのは、冒険者ランキング1位に君臨している最強の冒険者であるジギルだった。
「うわー! お久しぶりです、ジギルさん!」
「メグルちゃんも久しぶりだねー! うふすー、相変わらず可愛いわねー!」
廻のことを抱きしめているジギルはとても幸せそうな表情を浮かべているのだが、換金所で経営者を抱きしめるランキング1位という構図は、変な噂を立てかねないとアルバスが口を挟む。
「おい! 何か用事があってわざわざ来たんだろう!」
「ぶー。ちょっとくらいメグルちゃんを堪能させてよー」
「そうですよ、アルバスさん。私もジギルさんを堪能したいんですー!」
廻の頭がちょうどジギルの胸に位置しており、谷間に顔を埋めているところだった。
「……それじゃあ、どこか別のところでいちゃこらしてくれませんかねー」
「うふふ、私はそれもありだけどー……メグルちゃん、どうかしら?」
「えっとー、そっち方面はやってないかなー、なんてー」
ジギルが本気だと思ったのか、廻は顔を離すと少しずつ後退りを始める。
その姿を見たアルバスは盛大な溜息をつき、ジギルは大笑いしている。
二人の反応を見て冗談だと気づいた廻は顔を真っ赤にしてアルバスに文句を言っていた。
「アルバスさんの意地悪!」
「いや、今のはジギルが悪いだろう」
「話を振ってきたのはアルバスだもんねー」
「そうですよ! アルバスさんが基本的に悪いんです!」
「はいはい。話を戻していいですかねー。ジギル、マジで何をしに来たんだ? 冷やかしなら帰ってくれ」
そろそろ本気で怒られそうだと思ったのか、ジギルも謝りながら本題に入ってくれた。
「ごめん、ごめん。ちゃんと用事があってきたのよ」
「んで、その用事ってのは何なんだ? 換金所に来たってことは、俺に用があったんだろう?」
「そうよ……アルバス、気をつけてね」
先ほどまでの笑顔が消え、ジギルの表情には緊張感が漂っている。
いったい何事だろうと廻も口を閉じて話を伺う。
「あなたの元パーティが、ジーエフに向かっているわ」
「えっ!」
「あいつらがか? なんでこんなところに」
「まあ、目的は十中八九サウザンドドラゴンでしょうね」
「希少種とはいえ、レア度4だぞ? わざわざ来る必要はないだろう」
「それともう一つ理由があるのよ」
「まだ何かあるのか?」
面倒臭そうに頭を掻くアルバスだが、ジギルは表情を変えることなく口を開いた。
「あいつらは、アルバスに復讐をしようとしているのよ」
「……復讐?」
「ちょっと待ってください! アルバスさんを見捨てたのは元パーティの人達ですよね? なんでアルバスさんが復讐されないといけないんですか? 普通なら逆の立場ですよね!」
廻の言う通り、アルバスが自分を捨てた元パーティに復讐するなら筋が通るが、捨てた側が復讐というのは理解しがたい。
アルバスも何を言われているのか理解できない状況だった。
「あいつらは、アルバスが抜けた途端にランキングから転がり落ちていったのよ。最初の頃はよかったわ。ランキング1位がいたパーティに加入するべく有力な冒険者が入ったもの。だけどね、アルバスの代わりがそいつに務まるわけもなく、加入してはすぐに捨てていったのよ」
「そんな、酷すぎますよ!」
「そうしていくうちに加入を希望する冒険者も減っていき、補強ができないまま今に至っているってこと」
「それで、その原因が俺にあるって言ってるのか? くだらんな」
そう、くだらない言い分である。
しかし、廻からすれば全く面白くもない話であり、そんなことでアルバスが危険に晒されるなどということは断じてあってはならないことだと考えた。
「そ、そんな人達、私から来訪をお断りしま──」
「お前はアホか」
廻が怒りに任せて言おうとした言葉を、アルバスが途中でぶった切ってしまった。
「な、何でですか、アルバスさん! そんな理不尽な主張に付き合う理由なんてありませんよ!」
「当たり前だろう。だから、利用させてもらうんだよ」
「……利用、ですか?」
「アルバスならそう言うと思ったわよ」
ジギルも何やら理解しているようだが、廻にはさっぱりである。
「ど、どういうことですか?」
「今の実力がどうかは知らないが、有名人がわざわざ足を運んでくれているんだ。だったら、そいつらを利用してジーエフの宣伝をしてもらおうじゃないか!」
「宣伝……具体的には何か考えているんですか?」
ここまではっきりと口にするのだから、何か考えがあるのだろうも話を促していく。
すると、アルバスはニヤリと笑いこう口にした。
「あいつらには、サウザンドドラゴンと戦ってもらう。そして、華々しく負けてもらうんだよ!」
アルバスの考えを聞いたジギルは、楽しそうな笑みを浮かべている。
廻はというと、少しばかり心配そうな表情を浮かべていた。
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