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ダンジョン攻略・オレノオキニイリ
一二階層
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一二階層のボスモンスターであるレッドホーネットは、目的のモンスターの一匹である。
四枚翅を震わせて空を飛び、毒針を飛ばして攻撃してくる。
キラービーが派生進化したモンスターということもあり戦い方は似ているのだが、属性攻撃として炎攻撃を持っている。
毒針だけではなく針の先端から飛び出す炎攻撃にも注意が必要なモンスターだ。
「僕が先行しますが、相手は空を飛ぶモンスターなので気を抜かないでくださいね」
「はい!」
一二階層に来るまでの間にロンドとエルーカの関係性には変化が起きていた。
常に怖がっていたエルーカも積極的にモンスターを倒すようになっており、ロンドの言葉をしっかりと聞くようになっている。
一方のロンドもエルーカへの声掛けを続けており、自身の知識をフル活用してモンスターの特徴を教えていた。
「キュルルルルッ!」
「毒針来ます!」
「はい!」
ロンドの合図で左右に分かれた二人が立っていた地面に毒針が突き刺さる。
キラービーは自らが突っ込んできたのだが、レッドホーネットは毒針を射出することができる。
そして、体内で即座に毒針が生成されて連続射出も可能になっていた。
「はあっ!」
横移動から進行方向を一気に変えて直進していくロンド。
レッドホーネットは迎え撃つ構えで毒針を向けて炎を放出する。
上方から斜め下に放出された炎に対して、ロンドはさらに加速すると地面すれすれまで態勢を落として駆け抜ける。
髪の毛を焦がしながらも炎を回避したロンドはライズブレイドを振り下ろす。
「キュララ!」
接近を許したレッドホーネットは制空権を持っている。即座に上昇してライズブレイドを回避する。
「せいやああああっ!」
「ギュララ!」
そこに飛び込んできたのはエルーカだった。
短槍を限界まで突き出すと、穂先がレッドホーネットの外装を捉えてわずかながら傷を付けた。
「ギラアアアアッ!」
怒りの咆哮を上げたレッドホーネットは天井近くまで上昇すると、毒針の雨を降らせ始めた。
魔法が無ければレッドホーネットの独壇場となる攻撃手段に、ロンドはとあるアイテムを取り出した。
「これでどうだ!」
青い液体が入ったガラス瓶をレッドホーネットめがけて投げつける。
しかし、空を自由に飛び回ることができるレッドホーネットに命中させるのは困難で、簡単に回避されてしまう。
勢いよく天井にぶつかったガラス瓶が割れると中の液体が外気に触れた。
「凍てつけ──氷柱瓶!」
ロンドが投げつけたガラス瓶は、ポポイお手製の氷柱瓶だった。
外気に触れた液体が即座に冷気を発して白い靄を作ったかと思えば、一気に氷へと変化していく。
白い靄に包まれていたレッドホーネットは異変を察知してなりふり構わず靄から抜け出そうと加速したのだが、無傷で脱出することはできなかった。
四枚あるうちの一枚の翅が凍結し、空中でバランスを崩してしまう。
徐々に下降してきたレッドホーネットを見逃す理由はどこにもなく、ロンドは別のアイテムを取り出して地面めがけて投擲。
「影縫い」
「ギャララッ!」
地面に落ちてきたレッドホーネットの影めがけて投擲されたのは、こちらもポポイお手製のアイテムである影縫い。
影を縫い付けて相手の動きを阻害するポポイが開発したジーエフ大人気のアイテムは、レッドホーネットを空中で縫い留めてしまう。
そこにロンドとエルーカが同時に飛び込んできた。
「「はああああっ!」」
刃と穂先が同時にレッドホーネットを斬り裂き、貫き、悲鳴を上げる暇もなく白い灰へ変えてしまった。
「……か、勝てた?」
「エルーカさんのおかげです」
笑みを浮かべてロンドがそう口にすると、エルーカは口を開けたまま呆けてしまった。
「……私の、おかげですか?」
「もちろんです。僕一人ではこうは上手く倒せませんでした。エルーカさんが奇襲を仕掛けてレッドホーネットの警戒心を高めてくれたから、氷柱瓶を使うこともできたんです」
「……私、一二階層には数えるくらいしか来れていないんです。それも、ジーンさんや他の冒険者について行くだけで、自分から何かをしたことなんてありませんでした」
自分で握りしめる短槍を見つめながらぽつぽつと言葉を落としていく。
「ジーンさんに守られて、みんなに守られて、今度はロンドさんに守られるのかって思ってたんですけど……」
「一緒に協力して、もっと下層へ行きましょう」
「はい!」
自信をつけてきたエルーカは元気よく返事をすると、深紅の針を拾ってロンドへ手渡した。
「これで、目的のアイテムを一つ手に入れましたね」
「次は一五階層のバラクーダですね」
「……一五階層」
エルーカの進出階層は一四階層が最高であり、一五階層は当然ながら未踏の地である。
自信を得たとしても恐怖を無くすことができるはずはない。
「大丈夫ですよ」
「……ロンドさん」
「危なくなったらさっさと逃げる!」
「……へっ?」
突然の大声にエルーカは素っ頓狂な声を出してしまった。
「命より価値のあるものはない。これが、アルバス様の教えなんです」
「命、ですか?」
「はい。どんな約束をしていても、命を守るためなら破っても構わない。生きて帰ってくることが大事なんだって。だから、危なくなったらさっさと逃げてしまえばいいんですよ」
「でも、それだと素材が……」
「アークスさんも、僕たちが大けがをして手に入れた素材で好きな人にプレゼントを渡すだなんて、嫌だと思いますよ?」
苦笑しながらそう口にしたロンドに、エルーカも笑みを返す。
「……確かにそうですね。私なら嫌かもしれません」
「そうでしょ? だったら逃げるが勝ちです。その時には他の素材で代用してもらいましょう」
「……ありがとうございます、ロンドさん」
突然の俺にロンドは首を傾げてしまう。
だが、その真意をエルーカ語ることなく階段の方へ向かって行く。
「さあ! 早く行きましょう!」
「……そうだね、行こうか」
ロンドも追及することはなく歩を進めて階段を下りていく。
それは、今のエルーカを見て良い方向に進んでいるのだと理解することができたから。
※※※※
経営者の部屋ではジーンが感動のあまりに泣きそうになっていた。
エルーカの成長を目の当たりにして、ロンドと一緒に潜らせたのが間違いではなかったと安堵もしている。
それでも、エルーカの成長が一番の要因となっていることに変わりはなかった。
「ジ、ジーン、すごい顔になっているぞ?」
「な、泣いてません、よ?」
「いや、泣いているとは言っていないんだが?」
そしてジーンと同じように感動しているのが廻だった。
廻はロンドの成長とエルーカへの気遣いを見て、感動と共にロンドと契約することができて心底良かったと思っていた。
「ロンド君とエルーカちゃんなら、本当に二〇階層まで攻略しちゃいそうですね!」
「うーん、悔しいがこの結果を見せつけられたらなぁ」
「これは、フタスギ様のダンジョン経営を頑張らなければなりませんね」
腕組みをしながら唸っている二杉だったが、すぐに首を横に振って経営者としての言葉を口にした。
「……いや、もし二〇階層まで行けたとしても、ボスモンスターを倒せるかどうかは分からないだろうな」
「もしかして、レア度4とか?」
「それは到着してからのお楽しみだな」
「……そうですね。でも、ロンドくんとエルーカちゃんなら攻略しちゃうんですからね!」
どや顔で胸を張る廻だったが、二杉は呆れた表情で口を開く。
「言っておくが、エルーカはこっちの住民だからな? 三葉が威張る理由にはならないと思うんだがな」
「……ま、まあ、いいじゃないですか!」
あはは、と笑いながらその場をごまかそうとした廻。
「全く、まあいいさ。さすがに進むペースは遅くなったみたいだが、それでも順調に進んでいるな」
「もうそろそろボスフロアですね」
「ロンド君、エルーカちゃん、頑張れ!」
それぞれが感想を口にしながらモニターに集中する。
そして――二人はとうとう一五階層に到着した。
四枚翅を震わせて空を飛び、毒針を飛ばして攻撃してくる。
キラービーが派生進化したモンスターということもあり戦い方は似ているのだが、属性攻撃として炎攻撃を持っている。
毒針だけではなく針の先端から飛び出す炎攻撃にも注意が必要なモンスターだ。
「僕が先行しますが、相手は空を飛ぶモンスターなので気を抜かないでくださいね」
「はい!」
一二階層に来るまでの間にロンドとエルーカの関係性には変化が起きていた。
常に怖がっていたエルーカも積極的にモンスターを倒すようになっており、ロンドの言葉をしっかりと聞くようになっている。
一方のロンドもエルーカへの声掛けを続けており、自身の知識をフル活用してモンスターの特徴を教えていた。
「キュルルルルッ!」
「毒針来ます!」
「はい!」
ロンドの合図で左右に分かれた二人が立っていた地面に毒針が突き刺さる。
キラービーは自らが突っ込んできたのだが、レッドホーネットは毒針を射出することができる。
そして、体内で即座に毒針が生成されて連続射出も可能になっていた。
「はあっ!」
横移動から進行方向を一気に変えて直進していくロンド。
レッドホーネットは迎え撃つ構えで毒針を向けて炎を放出する。
上方から斜め下に放出された炎に対して、ロンドはさらに加速すると地面すれすれまで態勢を落として駆け抜ける。
髪の毛を焦がしながらも炎を回避したロンドはライズブレイドを振り下ろす。
「キュララ!」
接近を許したレッドホーネットは制空権を持っている。即座に上昇してライズブレイドを回避する。
「せいやああああっ!」
「ギュララ!」
そこに飛び込んできたのはエルーカだった。
短槍を限界まで突き出すと、穂先がレッドホーネットの外装を捉えてわずかながら傷を付けた。
「ギラアアアアッ!」
怒りの咆哮を上げたレッドホーネットは天井近くまで上昇すると、毒針の雨を降らせ始めた。
魔法が無ければレッドホーネットの独壇場となる攻撃手段に、ロンドはとあるアイテムを取り出した。
「これでどうだ!」
青い液体が入ったガラス瓶をレッドホーネットめがけて投げつける。
しかし、空を自由に飛び回ることができるレッドホーネットに命中させるのは困難で、簡単に回避されてしまう。
勢いよく天井にぶつかったガラス瓶が割れると中の液体が外気に触れた。
「凍てつけ──氷柱瓶!」
ロンドが投げつけたガラス瓶は、ポポイお手製の氷柱瓶だった。
外気に触れた液体が即座に冷気を発して白い靄を作ったかと思えば、一気に氷へと変化していく。
白い靄に包まれていたレッドホーネットは異変を察知してなりふり構わず靄から抜け出そうと加速したのだが、無傷で脱出することはできなかった。
四枚あるうちの一枚の翅が凍結し、空中でバランスを崩してしまう。
徐々に下降してきたレッドホーネットを見逃す理由はどこにもなく、ロンドは別のアイテムを取り出して地面めがけて投擲。
「影縫い」
「ギャララッ!」
地面に落ちてきたレッドホーネットの影めがけて投擲されたのは、こちらもポポイお手製のアイテムである影縫い。
影を縫い付けて相手の動きを阻害するポポイが開発したジーエフ大人気のアイテムは、レッドホーネットを空中で縫い留めてしまう。
そこにロンドとエルーカが同時に飛び込んできた。
「「はああああっ!」」
刃と穂先が同時にレッドホーネットを斬り裂き、貫き、悲鳴を上げる暇もなく白い灰へ変えてしまった。
「……か、勝てた?」
「エルーカさんのおかげです」
笑みを浮かべてロンドがそう口にすると、エルーカは口を開けたまま呆けてしまった。
「……私の、おかげですか?」
「もちろんです。僕一人ではこうは上手く倒せませんでした。エルーカさんが奇襲を仕掛けてレッドホーネットの警戒心を高めてくれたから、氷柱瓶を使うこともできたんです」
「……私、一二階層には数えるくらいしか来れていないんです。それも、ジーンさんや他の冒険者について行くだけで、自分から何かをしたことなんてありませんでした」
自分で握りしめる短槍を見つめながらぽつぽつと言葉を落としていく。
「ジーンさんに守られて、みんなに守られて、今度はロンドさんに守られるのかって思ってたんですけど……」
「一緒に協力して、もっと下層へ行きましょう」
「はい!」
自信をつけてきたエルーカは元気よく返事をすると、深紅の針を拾ってロンドへ手渡した。
「これで、目的のアイテムを一つ手に入れましたね」
「次は一五階層のバラクーダですね」
「……一五階層」
エルーカの進出階層は一四階層が最高であり、一五階層は当然ながら未踏の地である。
自信を得たとしても恐怖を無くすことができるはずはない。
「大丈夫ですよ」
「……ロンドさん」
「危なくなったらさっさと逃げる!」
「……へっ?」
突然の大声にエルーカは素っ頓狂な声を出してしまった。
「命より価値のあるものはない。これが、アルバス様の教えなんです」
「命、ですか?」
「はい。どんな約束をしていても、命を守るためなら破っても構わない。生きて帰ってくることが大事なんだって。だから、危なくなったらさっさと逃げてしまえばいいんですよ」
「でも、それだと素材が……」
「アークスさんも、僕たちが大けがをして手に入れた素材で好きな人にプレゼントを渡すだなんて、嫌だと思いますよ?」
苦笑しながらそう口にしたロンドに、エルーカも笑みを返す。
「……確かにそうですね。私なら嫌かもしれません」
「そうでしょ? だったら逃げるが勝ちです。その時には他の素材で代用してもらいましょう」
「……ありがとうございます、ロンドさん」
突然の俺にロンドは首を傾げてしまう。
だが、その真意をエルーカ語ることなく階段の方へ向かって行く。
「さあ! 早く行きましょう!」
「……そうだね、行こうか」
ロンドも追及することはなく歩を進めて階段を下りていく。
それは、今のエルーカを見て良い方向に進んでいるのだと理解することができたから。
※※※※
経営者の部屋ではジーンが感動のあまりに泣きそうになっていた。
エルーカの成長を目の当たりにして、ロンドと一緒に潜らせたのが間違いではなかったと安堵もしている。
それでも、エルーカの成長が一番の要因となっていることに変わりはなかった。
「ジ、ジーン、すごい顔になっているぞ?」
「な、泣いてません、よ?」
「いや、泣いているとは言っていないんだが?」
そしてジーンと同じように感動しているのが廻だった。
廻はロンドの成長とエルーカへの気遣いを見て、感動と共にロンドと契約することができて心底良かったと思っていた。
「ロンド君とエルーカちゃんなら、本当に二〇階層まで攻略しちゃいそうですね!」
「うーん、悔しいがこの結果を見せつけられたらなぁ」
「これは、フタスギ様のダンジョン経営を頑張らなければなりませんね」
腕組みをしながら唸っている二杉だったが、すぐに首を横に振って経営者としての言葉を口にした。
「……いや、もし二〇階層まで行けたとしても、ボスモンスターを倒せるかどうかは分からないだろうな」
「もしかして、レア度4とか?」
「それは到着してからのお楽しみだな」
「……そうですね。でも、ロンドくんとエルーカちゃんなら攻略しちゃうんですからね!」
どや顔で胸を張る廻だったが、二杉は呆れた表情で口を開く。
「言っておくが、エルーカはこっちの住民だからな? 三葉が威張る理由にはならないと思うんだがな」
「……ま、まあ、いいじゃないですか!」
あはは、と笑いながらその場をごまかそうとした廻。
「全く、まあいいさ。さすがに進むペースは遅くなったみたいだが、それでも順調に進んでいるな」
「もうそろそろボスフロアですね」
「ロンド君、エルーカちゃん、頑張れ!」
それぞれが感想を口にしながらモニターに集中する。
そして――二人はとうとう一五階層に到着した。
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