55 / 56
第1章:異世界転生
ギャレミナの錬金術
しおりを挟む
ギャレミナさんから詰め寄られると俺でも怖いからレイチェルが後退るのも分かる。
「ギャレミナさん、できればその場で話をしてもらってもいいですか?」
「なんじゃい、面白くないねえ」
面白くないって……この人、わざとやってたな?
「まあいいよ。それよりも小娘、お主はドラゴンじゃな?」
「えっ!」
そしてあっさりとレイチェルの秘密を言い当てちゃったよ。
「どうしてそう思うんですか?」
「ひひひっ! 儂の鼻をごまかせるものかい。小娘からはドラゴンの臭いがプンプンするよ!」
ドラゴンの臭い? ……うーん、別に臭いなんてしないけどなぁ。
「……ちょっとアマカワ、女の子の匂いを嗅ぐなんて変態のすることよ?」
「……アマカワさん、酷い」
「いや、ちょっと待て! 謝るから、変態はやめてくれ!」
「ひひひっ! 本当に面白い小僧じゃのう!」
「ま、まあ、ギャレミナさんには分かるってことで納得しますよ!」
これ以上は俺が墓穴を掘りそうなのでごまかすのは諦めよう。
だが、レイチェルがドラゴンだからどうだというのか。
「ドラゴンの鱗、一枚くれんかのう?」
「ギャレミナさんもお金目当てですか?」
「何を言うか! 儂は純粋にドラゴンの鱗を使って錬金術が使えないかを試したいだけじゃわい!」
め、めっちゃ怒られてしまった。
だが、ギャレミナさんは珍しい素材が好きだと前回でリリアーナからは聞いていたので、確かに失言だったかも。
「それは失礼しました」
「分かればよろしい。それで、小娘の鱗を儂にくれんか?」
「ちょっとギャレミナさん! 無償で大事な鱗をあげられるわけないでしょう!」
「そ、そうです。私の鱗はそう簡単にあげられるものではありません!」
ギルドでは何枚でも渡して構わないと言っていたのに、ここでは無理なようだ。
まあ、ギャレミナさんにあげるとなると何に使われるか分かったもんじゃないしな。
……しかし、これはちょっとしたチャンスかもしれない。
「では、こういうのはどうでしょう」
「……なんじゃ、言うてみい」
「これは俺たちの依頼ではなく、ギャレミナさんの興味を満たすための、いわばお願いになるわけですよね。であるなら、その鱗を使って作られた道具を俺たちに無償でくれるというのはどうでしょうか?」
「何い! む、無償じゃと!?」
俺の提案にはギャレミナさんだけでなく、リリアーナとレイチェルも驚いている。
「ギャレミナさんはドラゴンの鱗で錬金術を試してみたい。その鱗を俺たちは提供できるが錬金をしてほしいとは求めていない。だったら俺たちは断ることだってできるわけです」
「……確かにそうじゃ」
「なら、ギャレミナさんから俺たちに提供できるものは何かと考えた時、それは錬金術の技術ですよね」
「……」
「単にドラゴンの鱗で錬金をしてみたいという欲求を満たすだけなら、その道具を俺たちに無償で譲ってくれても構わないのではないですか?」
これは俺たちにとって全く懐が痛まない提案であり、むしろ潤う可能性だって秘めている。
提供できるレイチェルの鱗は実際のところ何枚でも渡していいと言っていた代物だからギャレミナさんが了承してくれれば渡しても構わないし、実は俺も持っている。戦闘時に落っこちていた鱗を拾って空間収納に入れているのだ。
だからレイチェルが断ったとしても俺から提供できれば問題はない。
そしてギャレミナさんが断ればそれまでで、俺たちはここを離れるだけだ。
「……小僧、お主は商人か?」
「れっきとした冒険者です」
「ふん! 儂に対してこのような条件を付きつけてきた奴は初めてじゃよ!」
「そうですか。それで、どうしますか? 断るか、ギャレミナさんの技術をドラゴンの鱗につぎ込んでみますか?」
ギャレミナさんは腕を組み、何度も唸りながら考え込んでいる。
レイチェルが少し不安そうに俺を見ていたので、優しく頭を撫でてあげると安心したようで笑みを浮かべてくれた。
「……いいじゃろう。その条件を飲んでやるわい」
「分かりました、ありがとうございます。では、少しだけ失礼しますね」
俺はレイチェルを連れて壁際に移動する。
鱗の件で俺も持っていることを伝えたのだが、レイチェルは首を横に振りこの場で鱗を手渡すと言ってきた。
「ギャレミナさんは誠意を示してくれた。なら、私も誠意を示すべきだわ」
「誠意っていうか、自分の欲求に正直なだけだと思うんだけどな」
「それでもよ。安心して、私は大丈夫だから」
レイチェルとの話し合いも終わり、その場で右腕をドラゴンに変化させると鱗を一枚だけギャレミナさんへ手渡した。
「おぉ……おおっ! ま、まさか、暗黒竜だとは思わなんだ! ひーひひひっ! 小僧よ、楽しみに待っておれよ! これで儂の最高傑作を作り上げてやるわい!」
「助かる。それと、俺たちは明日からゼルジュラーダをしばらく離れるんですが、どれくらいでできそうですか?」
「……分からん」
「……えっ?」
「ドラゴンの鱗に錬金術を施すなど、夢のまた夢だったんじゃ。儂の技術全てをつぎ込むが、いつになるかは約束できん」
へぇ、意外と殊勝なことを言うんだな。
俺は少しだけギャレミナさんのことを勘違いしていたみたいだ。
「分かりました。では、出来上がり次第で構わないのでそのことを冒険者ギルドに伝言していただければ助かります」
「分かったよ。ひーひひひ、楽しみだねえ! しばらくは店を閉めないといけないねえ!」
興奮するギャレミナさんに頭を下げて、俺たちはお店を後にした。
「ギャレミナさん、できればその場で話をしてもらってもいいですか?」
「なんじゃい、面白くないねえ」
面白くないって……この人、わざとやってたな?
「まあいいよ。それよりも小娘、お主はドラゴンじゃな?」
「えっ!」
そしてあっさりとレイチェルの秘密を言い当てちゃったよ。
「どうしてそう思うんですか?」
「ひひひっ! 儂の鼻をごまかせるものかい。小娘からはドラゴンの臭いがプンプンするよ!」
ドラゴンの臭い? ……うーん、別に臭いなんてしないけどなぁ。
「……ちょっとアマカワ、女の子の匂いを嗅ぐなんて変態のすることよ?」
「……アマカワさん、酷い」
「いや、ちょっと待て! 謝るから、変態はやめてくれ!」
「ひひひっ! 本当に面白い小僧じゃのう!」
「ま、まあ、ギャレミナさんには分かるってことで納得しますよ!」
これ以上は俺が墓穴を掘りそうなのでごまかすのは諦めよう。
だが、レイチェルがドラゴンだからどうだというのか。
「ドラゴンの鱗、一枚くれんかのう?」
「ギャレミナさんもお金目当てですか?」
「何を言うか! 儂は純粋にドラゴンの鱗を使って錬金術が使えないかを試したいだけじゃわい!」
め、めっちゃ怒られてしまった。
だが、ギャレミナさんは珍しい素材が好きだと前回でリリアーナからは聞いていたので、確かに失言だったかも。
「それは失礼しました」
「分かればよろしい。それで、小娘の鱗を儂にくれんか?」
「ちょっとギャレミナさん! 無償で大事な鱗をあげられるわけないでしょう!」
「そ、そうです。私の鱗はそう簡単にあげられるものではありません!」
ギルドでは何枚でも渡して構わないと言っていたのに、ここでは無理なようだ。
まあ、ギャレミナさんにあげるとなると何に使われるか分かったもんじゃないしな。
……しかし、これはちょっとしたチャンスかもしれない。
「では、こういうのはどうでしょう」
「……なんじゃ、言うてみい」
「これは俺たちの依頼ではなく、ギャレミナさんの興味を満たすための、いわばお願いになるわけですよね。であるなら、その鱗を使って作られた道具を俺たちに無償でくれるというのはどうでしょうか?」
「何い! む、無償じゃと!?」
俺の提案にはギャレミナさんだけでなく、リリアーナとレイチェルも驚いている。
「ギャレミナさんはドラゴンの鱗で錬金術を試してみたい。その鱗を俺たちは提供できるが錬金をしてほしいとは求めていない。だったら俺たちは断ることだってできるわけです」
「……確かにそうじゃ」
「なら、ギャレミナさんから俺たちに提供できるものは何かと考えた時、それは錬金術の技術ですよね」
「……」
「単にドラゴンの鱗で錬金をしてみたいという欲求を満たすだけなら、その道具を俺たちに無償で譲ってくれても構わないのではないですか?」
これは俺たちにとって全く懐が痛まない提案であり、むしろ潤う可能性だって秘めている。
提供できるレイチェルの鱗は実際のところ何枚でも渡していいと言っていた代物だからギャレミナさんが了承してくれれば渡しても構わないし、実は俺も持っている。戦闘時に落っこちていた鱗を拾って空間収納に入れているのだ。
だからレイチェルが断ったとしても俺から提供できれば問題はない。
そしてギャレミナさんが断ればそれまでで、俺たちはここを離れるだけだ。
「……小僧、お主は商人か?」
「れっきとした冒険者です」
「ふん! 儂に対してこのような条件を付きつけてきた奴は初めてじゃよ!」
「そうですか。それで、どうしますか? 断るか、ギャレミナさんの技術をドラゴンの鱗につぎ込んでみますか?」
ギャレミナさんは腕を組み、何度も唸りながら考え込んでいる。
レイチェルが少し不安そうに俺を見ていたので、優しく頭を撫でてあげると安心したようで笑みを浮かべてくれた。
「……いいじゃろう。その条件を飲んでやるわい」
「分かりました、ありがとうございます。では、少しだけ失礼しますね」
俺はレイチェルを連れて壁際に移動する。
鱗の件で俺も持っていることを伝えたのだが、レイチェルは首を横に振りこの場で鱗を手渡すと言ってきた。
「ギャレミナさんは誠意を示してくれた。なら、私も誠意を示すべきだわ」
「誠意っていうか、自分の欲求に正直なだけだと思うんだけどな」
「それでもよ。安心して、私は大丈夫だから」
レイチェルとの話し合いも終わり、その場で右腕をドラゴンに変化させると鱗を一枚だけギャレミナさんへ手渡した。
「おぉ……おおっ! ま、まさか、暗黒竜だとは思わなんだ! ひーひひひっ! 小僧よ、楽しみに待っておれよ! これで儂の最高傑作を作り上げてやるわい!」
「助かる。それと、俺たちは明日からゼルジュラーダをしばらく離れるんですが、どれくらいでできそうですか?」
「……分からん」
「……えっ?」
「ドラゴンの鱗に錬金術を施すなど、夢のまた夢だったんじゃ。儂の技術全てをつぎ込むが、いつになるかは約束できん」
へぇ、意外と殊勝なことを言うんだな。
俺は少しだけギャレミナさんのことを勘違いしていたみたいだ。
「分かりました。では、出来上がり次第で構わないのでそのことを冒険者ギルドに伝言していただければ助かります」
「分かったよ。ひーひひひ、楽しみだねえ! しばらくは店を閉めないといけないねえ!」
興奮するギャレミナさんに頭を下げて、俺たちはお店を後にした。
2
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説


転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!
織侍紗(@'ω'@)ん?
ファンタジー
ルーチェ村に住む少年アインス。幼い頃両親を亡くしたアインスは幼馴染の少女プラムやその家族たちと仲良く過ごしていた。そして今年で十二歳になるアインスはプラムと共に近くの町にある学園へと通うことになる。
そこではまず初めにこの世界に生きる全ての存在が持つ職位というものを調べるのだが、そこでアインスはこの世界に存在するはずのない無職であるということがわかる。またプラムは賢者だということがわかったため、王都の学園へと離れ離れになってしまう。
その夜、アインスは自身に前世があることを思い出す。アインスは前世で嫌な上司に手柄を奪われ、リストラされたあげく無職となって死んだところを、女神のノリと嫌がらせで無職にさせられた転生者だった。
そして妖精と呼ばれる存在より、自身のことを聞かされる。それは、無職と言うのはこの世界に存在しない職位の為、この世界がアインスに気づくことが出来ない。だから、転生者に対しての調整機構が働かない、という状況だった。
アインスは聞き流す程度でしか話を聞いていなかったが、その力は軽く天災級の魔法を繰り出し、時の流れが遅くなってしまうくらいの亜光速で動き回り、貴重な魔導具を呼吸をするように簡単に創り出すことが出来るほどであった。ただ、争いやその力の希少性が公になることを極端に嫌ったアインスは、そのチート過ぎる能力を全力にバレない方向に使うのである。
これはそんな彼が前世の知識と無職の圧倒的な力を使いながら、仲間たちとスローライフを楽しむ物語である。
以前、掲載していた作品をリメイクしての再掲載です。ちょっと書きたくなったのでちまちま書いていきます。

【完結】四ばあちゃん、二度目の人生
大江山 悠真
ファンタジー
63歳、高校時代の仲間4人のおばあちゃんが異世界転生。せっかくの二度目悔いなく生きたいとシズ・セリ・ヤエ・マリ奮戦中。現在はセリを中心に展開中。シズ・セリ・ヤエと登場し、最後のマリのお話です。シズ・セリ・ヤエの子供たちも登場するかもしれません。初めての作品でなかなか思うように登場人物が動いてくれませんが完結まで進めていこうと思っています。


神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる