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第1章:異世界転生
ゼルジュラーダ
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──そして三日後。
「おおおおぉぉっ! すげぇ、でかいなぁ!」
「あれがこの辺りでは最大の都市、ゼルジュラーダよ!」
遠目からでも見えたから相当でかいってのは分かっていたけど、近くで見るとより一層でかいな!
「……俺の冒険者としての人生は、ここから始まるのか!」
「大袈裟ね。それじゃあ、早速行きましょうか?」
「お願いします!」
俺は周りの建物が気になりすぎてキョロキョロしてしまっている。
それを見た人たちがクスクス笑っているのも視界には入っているが気にならない。
だって、俺は今、異世界の都市に来ているんだからな!
「アマカワー! 早く来ないと置いていくわよー!」
「あっ! ご、ごめーん!」
しかし、リリアーナとはぐれてしまったら迷子も同然なのでそこにだけは従わなくては。
ゼルジュラーダに慣れてきたら、一人で散策もしてみたいものだな。
はぐれないようにと隣に並んで歩いていると、リリアーナが正面に見えてきた一際大きな建物を指差した。
「あれが冒険者ギルドよ」
「おおおおぉぉっ! あれが冒険者ギルドかぁ!」
「ちょっと、アマカワ! そんなことで大声出さないでよ!」
「ご、ごめん」
再び周囲から笑い声が聞こえてきた。
うーん、俺一人の時なら構わないけど、さすがにリリアーナには迷惑を掛けられないよな。
「まあ、初めてなわけだし興奮するのも分かるけどね。それじゃあ、中に入ってちゃっちゃと試験まで終わらせちゃいましょう」
「そんな簡単に終わるかなぁ」
「大丈夫よ。私が保証してあげるから」
上級冒険者が言うんだから、信じてみるか。
そんな感じで入った冒険者ギルドには、数え切れないほどの冒険者でごった返していた。
「ぶうおっ!」
「ちょっと、アマカワ! こっち、手を離さないでね!」
な、なんだよこれ! 冒険者ギルドって、こんなに込み合うのか!
握られた手をしっかりと握り返し、筋骨粒々の冒険者の間をなんとかすり抜けて、俺は人が少ない唯一の場所にようやく到着した。
「ぶふあっ! ……はぁ、はぁ。た、助かったよ、リリアーナ」
「私の方こそごめんね。ピークの時間帯だったのを忘れて……たわ…………はわわわわっ!」
「ん? どうしたんだ?」
「ふえっ! ててて、てええええぇぇっ!」
「手? ……あぁ、これもありがとな。おかげではぐれなくて済んだよ」
俺は握ったままの手を胸の辺りまで上げて笑ってみせた。
自然と出た笑みだったのだが、何故だかリリアーナは顔を真っ赤にしながらあわててその手を離してしまう。
……俺、何か不味いことでもしただろうか。
「と、とととと、とりあえずだ! ここが新人冒険者の受付だからな! さっさと終わらせてしまおう!」
「……あ、あぁ、そうするかな」
頭を掻きながらカウンターまで移動すると、そこでは一人の女性が頬杖をついて暇を持て余しているようだった。
「あのー、すみませーん」
「ふぁーい? 新人さんですかー?」
「そうなんですが、手続きできますか?」
「それふああああ……この書類に必要事項を書いてくださいねー」
「ちゃんと働かないとギルマスに報告するわよ、マリン」
「ふぇー? …………って、リリアーナさんじゃないですか!」
この受付嬢、マリンさんと言うのか。
というか、俺に対しての態度とリリアーナに対する態度が全く違うのだが。一応、客だよなぁ。
「こ、こんなところにどうしたんですか?」
「この子、アマカワの付き添いよ」
「付き添いって、リリアーナさんがですか? あの上級冒険者の?」
「やっぱりリリアーナは有名人なんだな」
「この辺りでは、だけどな。世界にはもっとすごい奴が山程いるわよ」
そうなのか。すごいな、グランザリウス。
さて、それじゃあ俺はこの書類に……って。
「……うぅん、文字が読めない」
「えっ、アマカワさんって、バカなんですか?」
「初対面の人にバカとはなんですか、バカとは!」
「アマカワ、本当に読めないの?」
「そ、そうみたい。普通に話せてたから気にならなかったんだけど」
これは困ったぞ。まさか言葉を話せるのに文字が読めないなんて、完全に予想外だ。
だって、ステータス画面の文字は問題なく読めたんだぞ!
「ステータスは自動的にその人物に合わせた文字に翻訳されるのか? でも、リリアーナも俺のステータス画面を見てたよなぁ」
……って、今はそんなこと考えている場合じゃないか!
えっと、なんか役立つスキルないかなぁ。
「うーん……」
「あの、何をしてるんですか? もし読めなければ、代わりに書きますけどー?」
「いえ、ちょっとだけ待っててくれますか? ……あっ! これだこれだ」
スキルポイントも1で習得できるこれ──言語スキル!
「これでどうだ? ……おぉっ! うん、大丈夫です、お騒がせしました!」
「……はあ。まあ、読めるならそのまま記入をお願いしますねー」
「はーい!」
「……アマカワ、あんたねぇ」
リリアーナは呆れ顔だが、言語スキルはどのみち必要になるのだから気にしない。
というか、スキルポイントを残しててよかったよー!
「おおおおぉぉっ! すげぇ、でかいなぁ!」
「あれがこの辺りでは最大の都市、ゼルジュラーダよ!」
遠目からでも見えたから相当でかいってのは分かっていたけど、近くで見るとより一層でかいな!
「……俺の冒険者としての人生は、ここから始まるのか!」
「大袈裟ね。それじゃあ、早速行きましょうか?」
「お願いします!」
俺は周りの建物が気になりすぎてキョロキョロしてしまっている。
それを見た人たちがクスクス笑っているのも視界には入っているが気にならない。
だって、俺は今、異世界の都市に来ているんだからな!
「アマカワー! 早く来ないと置いていくわよー!」
「あっ! ご、ごめーん!」
しかし、リリアーナとはぐれてしまったら迷子も同然なのでそこにだけは従わなくては。
ゼルジュラーダに慣れてきたら、一人で散策もしてみたいものだな。
はぐれないようにと隣に並んで歩いていると、リリアーナが正面に見えてきた一際大きな建物を指差した。
「あれが冒険者ギルドよ」
「おおおおぉぉっ! あれが冒険者ギルドかぁ!」
「ちょっと、アマカワ! そんなことで大声出さないでよ!」
「ご、ごめん」
再び周囲から笑い声が聞こえてきた。
うーん、俺一人の時なら構わないけど、さすがにリリアーナには迷惑を掛けられないよな。
「まあ、初めてなわけだし興奮するのも分かるけどね。それじゃあ、中に入ってちゃっちゃと試験まで終わらせちゃいましょう」
「そんな簡単に終わるかなぁ」
「大丈夫よ。私が保証してあげるから」
上級冒険者が言うんだから、信じてみるか。
そんな感じで入った冒険者ギルドには、数え切れないほどの冒険者でごった返していた。
「ぶうおっ!」
「ちょっと、アマカワ! こっち、手を離さないでね!」
な、なんだよこれ! 冒険者ギルドって、こんなに込み合うのか!
握られた手をしっかりと握り返し、筋骨粒々の冒険者の間をなんとかすり抜けて、俺は人が少ない唯一の場所にようやく到着した。
「ぶふあっ! ……はぁ、はぁ。た、助かったよ、リリアーナ」
「私の方こそごめんね。ピークの時間帯だったのを忘れて……たわ…………はわわわわっ!」
「ん? どうしたんだ?」
「ふえっ! ててて、てええええぇぇっ!」
「手? ……あぁ、これもありがとな。おかげではぐれなくて済んだよ」
俺は握ったままの手を胸の辺りまで上げて笑ってみせた。
自然と出た笑みだったのだが、何故だかリリアーナは顔を真っ赤にしながらあわててその手を離してしまう。
……俺、何か不味いことでもしただろうか。
「と、とととと、とりあえずだ! ここが新人冒険者の受付だからな! さっさと終わらせてしまおう!」
「……あ、あぁ、そうするかな」
頭を掻きながらカウンターまで移動すると、そこでは一人の女性が頬杖をついて暇を持て余しているようだった。
「あのー、すみませーん」
「ふぁーい? 新人さんですかー?」
「そうなんですが、手続きできますか?」
「それふああああ……この書類に必要事項を書いてくださいねー」
「ちゃんと働かないとギルマスに報告するわよ、マリン」
「ふぇー? …………って、リリアーナさんじゃないですか!」
この受付嬢、マリンさんと言うのか。
というか、俺に対しての態度とリリアーナに対する態度が全く違うのだが。一応、客だよなぁ。
「こ、こんなところにどうしたんですか?」
「この子、アマカワの付き添いよ」
「付き添いって、リリアーナさんがですか? あの上級冒険者の?」
「やっぱりリリアーナは有名人なんだな」
「この辺りでは、だけどな。世界にはもっとすごい奴が山程いるわよ」
そうなのか。すごいな、グランザリウス。
さて、それじゃあ俺はこの書類に……って。
「……うぅん、文字が読めない」
「えっ、アマカワさんって、バカなんですか?」
「初対面の人にバカとはなんですか、バカとは!」
「アマカワ、本当に読めないの?」
「そ、そうみたい。普通に話せてたから気にならなかったんだけど」
これは困ったぞ。まさか言葉を話せるのに文字が読めないなんて、完全に予想外だ。
だって、ステータス画面の文字は問題なく読めたんだぞ!
「ステータスは自動的にその人物に合わせた文字に翻訳されるのか? でも、リリアーナも俺のステータス画面を見てたよなぁ」
……って、今はそんなこと考えている場合じゃないか!
えっと、なんか役立つスキルないかなぁ。
「うーん……」
「あの、何をしてるんですか? もし読めなければ、代わりに書きますけどー?」
「いえ、ちょっとだけ待っててくれますか? ……あっ! これだこれだ」
スキルポイントも1で習得できるこれ──言語スキル!
「これでどうだ? ……おぉっ! うん、大丈夫です、お騒がせしました!」
「……はあ。まあ、読めるならそのまま記入をお願いしますねー」
「はーい!」
「……アマカワ、あんたねぇ」
リリアーナは呆れ顔だが、言語スキルはどのみち必要になるのだから気にしない。
というか、スキルポイントを残しててよかったよー!
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