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第1章:異世界転生
空間収納
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残り5ポイントあるものの、まずは空間収納の効果を確かめなければならない。使い方は習得と同時に頭の中に入ってきている。
「スキルって不思議なものですよね」
「そうかしら? こういうものなのよ」
……グランザリウスではこれが普通の要でした。
まあ、それはそれで良しとしよう。俺は頭の中で空間収納と唱えてスキルを発動してみる。
すると、目の前に小さな揺らぎのようなものが現れた。
「……これが、空間収納?」
「……ど、どうかしら。私も実際に見たことはないから」
うーん、とりあえず何かを突っ込んでみるか。
俺は目の前に転がっているでか蛇を無造作に掴むと、そのまま揺らぎへ突っ込んでみる。
すると、揺らぎに触れた途端でか蛇が吸い込まれていき姿を消してしまった。
「おぉっ! でか蛇が消えたぞ!」
「目の前であれだけの蛇が……本当に凄いのね」
「よし、それじゃあ今度は取り出してみるか――おぉっ! こっちも問題なく取り出せたぞ!」
取り出す時は頭の中で取り出したいものを念じるだけ。なんて楽で便利な収納なんだろうか!
「これなら、食料になるでか兎やでか豚も入れられるな!」
「でも、空間収納の中で腐るんじゃないの?」
「中は時間経過が止まるみたいなんだ。だから腐ることもないし、季節の食材なんかもいつでも食べられるようになるね」
「それがレベルアップするだけで習得できるなんて……さすがは賢者……じゃなくて、転生者ってことかな」
このスキルポイントは、リリアーナが言う通り俺が転生者だからだと思う。
賢者という職業を知っているということは、この世界の住民にも賢者という職業がいるはずなのだ。
その人物がスキルポイントという概念を持っていれば話は別だが、世間に広まっていないということは、おそらく持っていないのだと思う。
「何も知らずにこっちの世界に放り出されるんだ、これくらいの能力は貰わないとすぐに死んじゃうよ」
「……ものすごく自由に暮らしていた気配はあったけどね」
「あ、あれは、何とか死を乗り越えた結果だからな!」
湖にあったテーブルやらなにやらを思い出していたのだろう。
だが、自由な暮らしはゲビレットという魔族を倒して生き残った結果なのだから、言っていることは間違っていないはずだ。
「そういえば」
「なんだ、まだ何かあるの?」
「いや、リリアーナに出会う前、一匹の魔族を倒してたんだ。下位魔族だったんだけど、あの時はマジで死ぬかと思ったんだよね」
「……ま、魔族を一人で倒したの?」
「あぁ。鑑定したらゲビレットって出てたな」
「ゲ、ゲビレット!?」
……あれ、何だかものすごく驚かれてしまったんだけど。
「はい。ゲビレットって、そこまで強くない魔族ですよね? 下位魔族ですし」
「あ、あんた、そんなわけがないでしょう! ていうか、魔族に強いも弱いもないわよ! 全ての魔族が凶悪だから!」
「まあ、でか豚を食っていましたから凶悪ではあると思いますけど……それじゃあ、ゲビレットとオルトロスではどっちが強いんですか?」
「それは! ……まあ、オルトロスの方が強いけど……って、そういう問題じゃないのよ!」
「そ、そうですか」
そこまで怒鳴らなくてもいいと思うんだけど。
俺はとりあえず、この場に転がっている残りの動物たちも空間収納へと入れていき、通り道になっていたでか熊のところへと戻った。
しかし、でか熊はすでに他の動物に食い荒らされており素材にも食料にもなりそうもない。
せっかくなのでそのまま集まっていた動物を討伐し、そいつらも空間収納へと入れていく。
「アマカワ、その空間収納ってどれくらい入るの?」
「えっと……あぁ、縦横奥で一〇メートルくらいの大きさはあるみたいですね」
「……ん? ごめん、よく分からないんだけど」
「まあ、まだまだ入るってことですよ」
首を傾げているリリアーナには簡単に説明しておく。今は少しでも早くアースレイロッグを回収したいのだ。
そうして戻ってきた岩場には――よかった、アースレイロッグが残ってたよ。
「これも全部入っちゃうの?」
「入りますよ。いやー、本当によかった。リリアーナさんにもお礼を返せそうですし」
「……お礼?」
「だって、ゼルジュラーダに連れて行ってくれるし、レベル上げにだって付き合ってくれたじゃないか。これで足りるか分からないけど、貰ってくれると嬉しいかな」
「た、足りるに決まっているでしょう! というか、貰えないわよ!」
「えっ、なんで」
「だって、私たちはパーティになるんだから……パーティなんだから……アマカワと、パーティかぁ……」
……えっと、何があったんだ? 急に黙り込んでしまったんだが。
「……パーティだから、山分けでいいってことか?」
「はっ! そ、そそそそ、そうよ! そう言うことよ!」
「俺はそれでもいいんだけど……まあ、リリアーナが納得してくれるならいいのかな」
時折見せるリリアーナの反応は気になるものの、俺たちはアースレイロッグを全て空間収納に入れると湖へ戻っていった。
「スキルって不思議なものですよね」
「そうかしら? こういうものなのよ」
……グランザリウスではこれが普通の要でした。
まあ、それはそれで良しとしよう。俺は頭の中で空間収納と唱えてスキルを発動してみる。
すると、目の前に小さな揺らぎのようなものが現れた。
「……これが、空間収納?」
「……ど、どうかしら。私も実際に見たことはないから」
うーん、とりあえず何かを突っ込んでみるか。
俺は目の前に転がっているでか蛇を無造作に掴むと、そのまま揺らぎへ突っ込んでみる。
すると、揺らぎに触れた途端でか蛇が吸い込まれていき姿を消してしまった。
「おぉっ! でか蛇が消えたぞ!」
「目の前であれだけの蛇が……本当に凄いのね」
「よし、それじゃあ今度は取り出してみるか――おぉっ! こっちも問題なく取り出せたぞ!」
取り出す時は頭の中で取り出したいものを念じるだけ。なんて楽で便利な収納なんだろうか!
「これなら、食料になるでか兎やでか豚も入れられるな!」
「でも、空間収納の中で腐るんじゃないの?」
「中は時間経過が止まるみたいなんだ。だから腐ることもないし、季節の食材なんかもいつでも食べられるようになるね」
「それがレベルアップするだけで習得できるなんて……さすがは賢者……じゃなくて、転生者ってことかな」
このスキルポイントは、リリアーナが言う通り俺が転生者だからだと思う。
賢者という職業を知っているということは、この世界の住民にも賢者という職業がいるはずなのだ。
その人物がスキルポイントという概念を持っていれば話は別だが、世間に広まっていないということは、おそらく持っていないのだと思う。
「何も知らずにこっちの世界に放り出されるんだ、これくらいの能力は貰わないとすぐに死んじゃうよ」
「……ものすごく自由に暮らしていた気配はあったけどね」
「あ、あれは、何とか死を乗り越えた結果だからな!」
湖にあったテーブルやらなにやらを思い出していたのだろう。
だが、自由な暮らしはゲビレットという魔族を倒して生き残った結果なのだから、言っていることは間違っていないはずだ。
「そういえば」
「なんだ、まだ何かあるの?」
「いや、リリアーナに出会う前、一匹の魔族を倒してたんだ。下位魔族だったんだけど、あの時はマジで死ぬかと思ったんだよね」
「……ま、魔族を一人で倒したの?」
「あぁ。鑑定したらゲビレットって出てたな」
「ゲ、ゲビレット!?」
……あれ、何だかものすごく驚かれてしまったんだけど。
「はい。ゲビレットって、そこまで強くない魔族ですよね? 下位魔族ですし」
「あ、あんた、そんなわけがないでしょう! ていうか、魔族に強いも弱いもないわよ! 全ての魔族が凶悪だから!」
「まあ、でか豚を食っていましたから凶悪ではあると思いますけど……それじゃあ、ゲビレットとオルトロスではどっちが強いんですか?」
「それは! ……まあ、オルトロスの方が強いけど……って、そういう問題じゃないのよ!」
「そ、そうですか」
そこまで怒鳴らなくてもいいと思うんだけど。
俺はとりあえず、この場に転がっている残りの動物たちも空間収納へと入れていき、通り道になっていたでか熊のところへと戻った。
しかし、でか熊はすでに他の動物に食い荒らされており素材にも食料にもなりそうもない。
せっかくなのでそのまま集まっていた動物を討伐し、そいつらも空間収納へと入れていく。
「アマカワ、その空間収納ってどれくらい入るの?」
「えっと……あぁ、縦横奥で一〇メートルくらいの大きさはあるみたいですね」
「……ん? ごめん、よく分からないんだけど」
「まあ、まだまだ入るってことですよ」
首を傾げているリリアーナには簡単に説明しておく。今は少しでも早くアースレイロッグを回収したいのだ。
そうして戻ってきた岩場には――よかった、アースレイロッグが残ってたよ。
「これも全部入っちゃうの?」
「入りますよ。いやー、本当によかった。リリアーナさんにもお礼を返せそうですし」
「……お礼?」
「だって、ゼルジュラーダに連れて行ってくれるし、レベル上げにだって付き合ってくれたじゃないか。これで足りるか分からないけど、貰ってくれると嬉しいかな」
「た、足りるに決まっているでしょう! というか、貰えないわよ!」
「えっ、なんで」
「だって、私たちはパーティになるんだから……パーティなんだから……アマカワと、パーティかぁ……」
……えっと、何があったんだ? 急に黙り込んでしまったんだが。
「……パーティだから、山分けでいいってことか?」
「はっ! そ、そそそそ、そうよ! そう言うことよ!」
「俺はそれでもいいんだけど……まあ、リリアーナが納得してくれるならいいのかな」
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