役立たずだと見捨てられたら、敵国で英雄扱いされました! ~謎スキル緑魔法で成り上がります~

渡琉兎

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第一章:役立たずから英雄へ

4.緑魔法の可能性

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 驚いたのは僕だけではなく、この場にいた全員がニーナ様に視線を向けている。
 この状況に気がついたのか、身を乗り出していたニーナ様は少し頬を赤く染めながら椅子に座り直していた。

「す、すみませんでした!」
「いえ、その……やはり、ダメですよね。【緑魔法】なんて、よくわからない三級スキルは」
「そんな! 私は、このスキルを探していたんですよ!」
「……【緑魔法】を、探していたんですか?」
「はい!」

 いったいどういう事なんだろう。
 もしかして、ニーナ様は【緑魔法】について何かを知っているのだろうか。

「ニーナよ、説明してもらってもいいか?」
「は、はい、お父様。……その前に、リッツ様」
「はい」
「リッツ様は【緑魔法】について役に立たないと仰っていましたが、それはアルスラーダ帝国も同様にお考えですか?」
「そうだと思います。人員を割いてまで【緑魔法】について調べましたが何もわからず、僕自身でも研究していましたが、わかった事は植物に影響を与えることができるという事だけでした。故に、三級スキルの烙印を押されて、僕は役立たずと言われ続けていました」

 僕の返答を聞いて、ニーナ様は何か考え始めてします。
 どうしたらいいのかわからず、僕は視線をアルヌス王やエミリア王妃、アーク様に向けたが、全員が首を横に振る。
 しばらく考え込んでいたニーナ様だったが、考えがまとまったのか僕を見ながらこう告げてきた。

「リッツ様になら任せられるかもしれません」
「な、何をですか? 農業で不作でも続いていたんですか?」
「違います! お父様、私が管理しているあの事について、お伝えしてもよろしいでしょうか!」

 僕の質問をはっきりと否定し、すぐにアルヌス王に確認を取る。
 第一王女が管理しているもので、王様の許可が必要なもの……って、絶対に機密的な何かだよね! そんなもの、捕虜とはいえ絶対に敵国の皇子に伝えたらダメなものでしょう!?

「構わん」
「えっ!? あの、アルヌス王!!」
「実は、王城の中庭に神木が植えられているのです」

 言っちゃったよ、ニーナ様! ……って、神木?

「あの、神木とは何なのですか?」
「神木ユーグリッシュ。ライブラッド王国を支えている神から賜った大木であり、天にも迫る高さを誇る神木だよ」
「天にも迫る高さ……えっ? でも、そのような神木を、僕は目にしていませんが?」

 比喩なのかもしれないが、もしそうだとしても大げさすぎる。
 本当にそれだけの高さがあるならば、ライザーナに近づくにつれて見えてきていてもおかしくはない。

「隠蔽の魔法が施されているんだよ。だから、中庭に足を踏み入れた者にしか見えないようになっているんだ」
「そ、そうなんですね。でも、そんな大事な神木の事をどうして僕に……いえ、私に?」

 驚き過ぎて普段の言葉使いに戻ってしまった。

「構いませんよ、普段通りで。……話を戻しますが、その神木が数年前から、枯れ始めているんです」
「ニーナはね、神木の管理を任されているんだ。とは言っても、ニーナが枯れさせたわけじゃない。神木を復活させるための責任者になっているんだ」

 そう教えてくれたアーク様だが、その表情は少し暗いように見える。

「……もしかして、復活の糸口が見つかっていないんですか?」
「いえ、糸口は見つかっています。ですが、一番大事なものがずっと見つからなかったのです。ですが……」

 そこで言葉を切ったのだが、その視線は僕を見ている。
 ……もしかして、その大事なものって?

「お察しの通り、スキル【緑魔法】なのです」

 ……僕のスキルが、大事なもの? 神木のために?

「……嘘だ」
「リッツ様?」
「嘘だ! 僕のスキルは、役立たずだって、何にも使えないって、ずっと言われ続けてきた! 部屋に閉じ込められて、呼び出されたかと思ったら、処分のための戦争に連れて行かれて!」

 こんな子供みたいな独白をして、無事ではいられないだろう。
 だが、こうでもしなければ自分の15年間を肯定する事ができないのだ。

「……そんな……そんな、僕のスキルが……本当に、必要、なんですか?」

 自然と涙が溢れ出していた。
 止めようとしても、止まらない。
 そんな涙を拭う事も忘れて、僕はニーナ様へ問い掛け、その答えを待っている。

「もちろんです。私には……いいえ、ライブラッド王国には、リッツ様が必要です」

 ニーナ様は、そうはっきりと口にしてくれた。
 嘘かもしれない、偽っているかもしれない。だが、僕には不思議とそうは思えなかった。
 自暴自棄になっている? いいや、そんなんじゃない。
 ニーナ様の真摯な気持ちが、僕にそう思わせてくれたんだ。

「……拝見させてください、神木ユーグリッシュを!」
「もちろんです!」

 そう口にしたニーナ様は立ち上がると、僕の手を取って走り出した。
 本来ならばアルヌス王たちへ退出の挨拶が必要だったかもしれないが、あの時の僕はそんな事を考えている余裕などなかった。
 ニーナ様に引っ張られながら、僕は部屋を飛び出して中庭へ向かうのだった。
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