2 / 41
第一章:役立たずから英雄へ
2.役立たず
しおりを挟む
――時を少しだけ遡る。
僕はアルスラーダ帝国の第四皇子として、この世に生を受けた。
だが、僕は生まれてからすぐに両親から、兄や姉から疎まれる存在となる。
『――このようなスキル、意味がないではないか!』
そう、原因は僕のスキルだった。
スキルとは、生まれた時に神から授けられる特殊能力の事で、その力によって等級が分けられる。
強力なスキルから特級、一級、二級、三級が最低だ。
父上でアルスラーダ帝国の皇帝、ライネル・アルスラーダは全ての武器を使いこなす【武王の加護】。
正室でアルスラーダ帝国の皇后、リリアナ・アルスラーダは守護の結界を張る事ができる【結界魔法】。
これらは特級スキルであり、その効果も絶大である。
事実、ライネルは前皇帝から見て第五皇子と立場的には帝位争いから最も遠かったのだが、その武勇を認められて皇帝の座を手にしていた。
そういった感じで兄や姉、そして妹も特級スキルや一級スキルを授かっている。
だが、僕のスキルはどうだっただろうか。
使い道のわからない【緑魔法】。
過去、このようなスキルは聞いた事がないと帝国の宰相が口にした事で、多くの人員が割かれて調べられた。
しかし、誰に聞いたところで、古い文献を読み解いたところで、使い道については全くわからなかった。
その結果、使えるスキルなのかどうかは僕に託される事になった。
必死になってスキルを使い、検証し、父上の役に立とうと思っていたのだが……結局、わかった事は一つだけ。
――植物の成長に影響を与える。
成長を促進させる事もできれば、衰退させて枯らせる事もできる。
見方によってはとても有益なスキルなのだが、武勇で成り上がった父上から見れば価値のないスキルだと判断され、僕の【緑魔法】は三級スキルの烙印を押されてしまった。
『――無能の、役立たずか』
事実、アルスラーダ帝国では農業も林業も盛んであり、僕が手を貸す必要性はどこにもなかった。
むしろ、未知のスキルを使った事による悪影響の可能性を恐れたのだ。
そのせいで僕はスキルの研究すらできなくなり、自室から出る事も禁止され、家族と顔を合わせる機会もどんどん少なくなっていった。
そんなある日である。
『――ライブラッド王国との戦争だ。勝てる、戦争だ』
珍しく食事の席の呼び出されたかと思えば、戦争が始まったと口にしたのだ。
さらに驚いた事に、その指揮を僕に任せると言ってくれたのだ。
ここで戦果を上げられれば父上に認めてもらえる。【緑魔法】の研究も続けられる。
……あの時の僕は、そう考えていた。
だが、勝てる戦争だと口にしたその言葉は、完全なる偽りだった。
集められた兵士は言う事を聞かない問題児ばかり。
さらに正規兵は数が少なく、兵士のほとんどが寄せ集めの荒くれ者だ。
何をもって勝てる戦争だと口にしたのか、その時の僕は何を考えていたのか、いまだに思い出せない。
そして、戦端が開かれると――僕は理解した。
――あぁ、処分されるんだ。
側室だった母上は二年前に行方不明になっているが、それも図られた事なのかもしれない。
数では勝っていたアルスラーダ帝国だが、最初の衝突からライブラッド王国に押し返される。
そして、勝てないとわかった者からあっさりと逃げ出したのだ。
最初に逃げ出したのは荒くれ者たち。自分の命大事な者たちだ、仕方がない。
次に逃げ出したのは民兵。こちらも仕方がないだろう。
だが、国の命を受けてやって来ている兵士たちが逃げだしたのを見た時に、僕は理解したんだ。
死んでいく寄せ集めの兵士たちを見つめながら、僕にできる事は何かを必死になって考えた。
すでに周りには誰もいない。副将としてついて来てくれた騎士も、すでに逃げ出してしまった。
――捕虜になろう。
大将である僕が投降すれば、これ以上の虐殺は起きないはずだ。
相手は捕虜すらも丁重に扱うと噂を耳にするライブラッド王国だ。
役立たずではあるが、これでも第四皇子の肩書がある。
この肩書きで皆が救われるなら、役に立ったとも言えるかもしれない。
そして、僕はライブラッド王国の捕虜となり、アルスラーダ帝国に多くの死傷者を出した戦争の幕が下りた。
第四皇子だと伝え、皇族しか持っていなアルスラーダ帝国のエンブレムが施された印章を見せる。
最初は疑われたものの、印章が決め手となり信じてもらう事ができた。
ライブラッド王国も皇族ならば利用できると考えたのか、丁重にもてなされた。
だが、僕に利用価値なんて、小指の先程度もないだろう。何せ、役立たずなのだから。
案の定というべきか、捕虜交換を持ち掛けたライブラッド王国だが、アルスラーダ帝国からは拒否の答えが返って来た。
この時点でライブラッド王国は僕の扱いに困ったことだろう。
曲がりなりにも皇族である。扱い方を間違えれば、アルスラーダ帝国側から悪い噂を流される事にもなりかねない。
だからだろう。
ここからは完全に予想外だったが、僕の扱い方について決めるため、移送されたのだ。
ライブラッド王国の王都――ライザーナへ。
僕はアルスラーダ帝国の第四皇子として、この世に生を受けた。
だが、僕は生まれてからすぐに両親から、兄や姉から疎まれる存在となる。
『――このようなスキル、意味がないではないか!』
そう、原因は僕のスキルだった。
スキルとは、生まれた時に神から授けられる特殊能力の事で、その力によって等級が分けられる。
強力なスキルから特級、一級、二級、三級が最低だ。
父上でアルスラーダ帝国の皇帝、ライネル・アルスラーダは全ての武器を使いこなす【武王の加護】。
正室でアルスラーダ帝国の皇后、リリアナ・アルスラーダは守護の結界を張る事ができる【結界魔法】。
これらは特級スキルであり、その効果も絶大である。
事実、ライネルは前皇帝から見て第五皇子と立場的には帝位争いから最も遠かったのだが、その武勇を認められて皇帝の座を手にしていた。
そういった感じで兄や姉、そして妹も特級スキルや一級スキルを授かっている。
だが、僕のスキルはどうだっただろうか。
使い道のわからない【緑魔法】。
過去、このようなスキルは聞いた事がないと帝国の宰相が口にした事で、多くの人員が割かれて調べられた。
しかし、誰に聞いたところで、古い文献を読み解いたところで、使い道については全くわからなかった。
その結果、使えるスキルなのかどうかは僕に託される事になった。
必死になってスキルを使い、検証し、父上の役に立とうと思っていたのだが……結局、わかった事は一つだけ。
――植物の成長に影響を与える。
成長を促進させる事もできれば、衰退させて枯らせる事もできる。
見方によってはとても有益なスキルなのだが、武勇で成り上がった父上から見れば価値のないスキルだと判断され、僕の【緑魔法】は三級スキルの烙印を押されてしまった。
『――無能の、役立たずか』
事実、アルスラーダ帝国では農業も林業も盛んであり、僕が手を貸す必要性はどこにもなかった。
むしろ、未知のスキルを使った事による悪影響の可能性を恐れたのだ。
そのせいで僕はスキルの研究すらできなくなり、自室から出る事も禁止され、家族と顔を合わせる機会もどんどん少なくなっていった。
そんなある日である。
『――ライブラッド王国との戦争だ。勝てる、戦争だ』
珍しく食事の席の呼び出されたかと思えば、戦争が始まったと口にしたのだ。
さらに驚いた事に、その指揮を僕に任せると言ってくれたのだ。
ここで戦果を上げられれば父上に認めてもらえる。【緑魔法】の研究も続けられる。
……あの時の僕は、そう考えていた。
だが、勝てる戦争だと口にしたその言葉は、完全なる偽りだった。
集められた兵士は言う事を聞かない問題児ばかり。
さらに正規兵は数が少なく、兵士のほとんどが寄せ集めの荒くれ者だ。
何をもって勝てる戦争だと口にしたのか、その時の僕は何を考えていたのか、いまだに思い出せない。
そして、戦端が開かれると――僕は理解した。
――あぁ、処分されるんだ。
側室だった母上は二年前に行方不明になっているが、それも図られた事なのかもしれない。
数では勝っていたアルスラーダ帝国だが、最初の衝突からライブラッド王国に押し返される。
そして、勝てないとわかった者からあっさりと逃げ出したのだ。
最初に逃げ出したのは荒くれ者たち。自分の命大事な者たちだ、仕方がない。
次に逃げ出したのは民兵。こちらも仕方がないだろう。
だが、国の命を受けてやって来ている兵士たちが逃げだしたのを見た時に、僕は理解したんだ。
死んでいく寄せ集めの兵士たちを見つめながら、僕にできる事は何かを必死になって考えた。
すでに周りには誰もいない。副将としてついて来てくれた騎士も、すでに逃げ出してしまった。
――捕虜になろう。
大将である僕が投降すれば、これ以上の虐殺は起きないはずだ。
相手は捕虜すらも丁重に扱うと噂を耳にするライブラッド王国だ。
役立たずではあるが、これでも第四皇子の肩書がある。
この肩書きで皆が救われるなら、役に立ったとも言えるかもしれない。
そして、僕はライブラッド王国の捕虜となり、アルスラーダ帝国に多くの死傷者を出した戦争の幕が下りた。
第四皇子だと伝え、皇族しか持っていなアルスラーダ帝国のエンブレムが施された印章を見せる。
最初は疑われたものの、印章が決め手となり信じてもらう事ができた。
ライブラッド王国も皇族ならば利用できると考えたのか、丁重にもてなされた。
だが、僕に利用価値なんて、小指の先程度もないだろう。何せ、役立たずなのだから。
案の定というべきか、捕虜交換を持ち掛けたライブラッド王国だが、アルスラーダ帝国からは拒否の答えが返って来た。
この時点でライブラッド王国は僕の扱いに困ったことだろう。
曲がりなりにも皇族である。扱い方を間違えれば、アルスラーダ帝国側から悪い噂を流される事にもなりかねない。
だからだろう。
ここからは完全に予想外だったが、僕の扱い方について決めるため、移送されたのだ。
ライブラッド王国の王都――ライザーナへ。
10
お気に入りに追加
1,375
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる