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第二章:集落誕生?
ブレイレッジ
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「――ほほう! ここが勇者が作り上げたという村か!」
……到着早々、でかい声で叫ばないでもらえるかなぁ、グラインザ様よう!
「ええぇっ!?」
「ま、魔王様!?」
「ど、どうして魔王様がここに!!」
ほら、住民の魔族が騒ぎ出してしまったじゃないか。
「お主ら! 我は今日、ブレイレッジを見学に来ただけだから気にするでないぞ!」
「で、ですが……」
「構わないのだ!」
「いや、それはさすがに……」
「構わんのだよ! いいか、我に構うなよ! いいな!!」
……魔族に魔王を構うなとか、無理にもほどがあるだろう。その存在感を無視とか、あり得ないからな?
「と、とにかく、さっさと村を見てから隠れ里に帰ってくださいよ?」
「むっ! 貴様、我を住まわせるつもりがないのか!」
「住むつもりかよ!」
「当然であろう! 愛しの娘が暮らしているのだから当然だろうが!」
「親バカかよ!」
「もちろん! 親バ――ぐふあっ!?」
「黙ってちょうだい、お父様!」
俺たちが言い合いを繰り広げていると、リリルがグラインザ様のみぞおちに拳を叩き込んでしまった。
くの字に体を曲げてしまったグラインザ様を見て、魔族たちは困惑顔を浮かべている。
……まあ、そこは親子のやり取りという事で俺はノータッチで行きましょうかね。
「それじゃあ、さっさと行きましょうか」
「……ちょ、ちょっと待て、勇者よ。我は、非常に、苦しんでいるのだが?」
「行きますよ、お父様」
「む、娘まで……ぐぬぬ、み、見るな! 見るんじゃなああああい!」
ブレイレッジの入口では、そんなグラインザ様の悲鳴がこだましたのだった。
というわけで、俺は村の中を案内していった。
人族と魔族の教会に、遊具を作った村の中央にある公園、花壇もあるのでそちらにも案内していく。
元魔王に花壇を案内するのが良い事なのか不安に思ったが、グラインザ様は何度も頷きながら色とりどりの花を見つめていた。
「……魔界にも花ってあるんですか?」
「当然であろう! 我は花を愛する魔王であるぞ!」
……そうでしたか、失礼しました。
「しかし、ここは不思議な場所であるなぁ」
「そうですか?」
「うむ。魔族と人族が共存しているなど、我でもできなかった事であるからな」
「……ん? って事は、グラインザ様もこの光景を望んでいたんですか?」
「ちょっと、スウェイン。私が最初に言ったではないですか」
いやまあ、聞いた事はあったけどさすがに全部を信じるなんて難しいだろう。……まあ、グラインザ様の性格を知ってからはあり得るかもとは思ってたけど。
「この世界で生きる我らが何故にわざわざ争わねばならんのだ? それも不毛な争いをだ。全く意味が分からん、理解できん!」
……そう言われてみると、確かにそうだと思ってしまう。
そもそも、どうして人族と魔族は争っているのだろうか。その原因はいったい何だったのか。そこを考えた勇者や魔王というのは、今までにいたのだろうか。
「魔族も人族も平等にできれば、それこそ本当の平和が訪れるであろう」
「人族は内部でボロボロですけどね」
「我も裏切られて、作り上げていたものが壊されてしまった。……本当に、難しい世の中であるよ」
ここまで本気で世界の平和を考えていた魔王はいないだろうなぁ。そして、勇者も。
「……まあ、俺は自分の手が届く範囲でしか守ろうとは思わないけどな」
「それは、酷い勇者であるなぁ」
そっか。グラインザ様には俺の境遇をまだ説明していなかったか。
俺たちは花壇の前のベンチに腰掛けると、そのまま勇者にさせられた経緯の説明を始めた。
信じてもらえるかは半信半疑だったが、鑑定で俺が勇者だと知っているからか意外にもグラインザ様はあっさり信じてくれた。
「女神か……ふん! 面倒な存在に目を付けられたものだのう」
「知っているんですか?」
スーレインさんも女神の存在には苛立っていたし、世界の主要な人物には嫌われているんじゃなかろうか、駄女神よ。
「魔族と人族の争いになんの手も貸さずにいるのも女神であろう?」
「むしろ、俺が勇者として人族の象徴になるよう言ってきましたよ?」
「ほら見ろ! わざわざ争わせようとしているではないか!」
「……確かに」
「どうせ我に声を掛けても意味がないと分かったから、お主に声を掛けたのだろう。もしかすると、我を裏切った魔族にも接触していたかもしれんぞ!」
言いながら苛立ったのか、グラインザ様の声が大きくなっていく。……うん、うるさい。
「お、落ち着いてくださいよ?」
「……ん、すまん」
一息ついたグラインザ様は改めてベンチから周囲に視線を向ける。
「……本当に、良い村であるなぁ」
「でしょう?」
「…………よし! 我もここで暮らすぞ!」
「……え?」
「安心せい! 家なら自分で建てるからな!」
「いや、ちょっと――」
「勇者の家に案内せい! その近くに建てるからのう! がははははっ!」
…………やってしまった。
……到着早々、でかい声で叫ばないでもらえるかなぁ、グラインザ様よう!
「ええぇっ!?」
「ま、魔王様!?」
「ど、どうして魔王様がここに!!」
ほら、住民の魔族が騒ぎ出してしまったじゃないか。
「お主ら! 我は今日、ブレイレッジを見学に来ただけだから気にするでないぞ!」
「で、ですが……」
「構わないのだ!」
「いや、それはさすがに……」
「構わんのだよ! いいか、我に構うなよ! いいな!!」
……魔族に魔王を構うなとか、無理にもほどがあるだろう。その存在感を無視とか、あり得ないからな?
「と、とにかく、さっさと村を見てから隠れ里に帰ってくださいよ?」
「むっ! 貴様、我を住まわせるつもりがないのか!」
「住むつもりかよ!」
「当然であろう! 愛しの娘が暮らしているのだから当然だろうが!」
「親バカかよ!」
「もちろん! 親バ――ぐふあっ!?」
「黙ってちょうだい、お父様!」
俺たちが言い合いを繰り広げていると、リリルがグラインザ様のみぞおちに拳を叩き込んでしまった。
くの字に体を曲げてしまったグラインザ様を見て、魔族たちは困惑顔を浮かべている。
……まあ、そこは親子のやり取りという事で俺はノータッチで行きましょうかね。
「それじゃあ、さっさと行きましょうか」
「……ちょ、ちょっと待て、勇者よ。我は、非常に、苦しんでいるのだが?」
「行きますよ、お父様」
「む、娘まで……ぐぬぬ、み、見るな! 見るんじゃなああああい!」
ブレイレッジの入口では、そんなグラインザ様の悲鳴がこだましたのだった。
というわけで、俺は村の中を案内していった。
人族と魔族の教会に、遊具を作った村の中央にある公園、花壇もあるのでそちらにも案内していく。
元魔王に花壇を案内するのが良い事なのか不安に思ったが、グラインザ様は何度も頷きながら色とりどりの花を見つめていた。
「……魔界にも花ってあるんですか?」
「当然であろう! 我は花を愛する魔王であるぞ!」
……そうでしたか、失礼しました。
「しかし、ここは不思議な場所であるなぁ」
「そうですか?」
「うむ。魔族と人族が共存しているなど、我でもできなかった事であるからな」
「……ん? って事は、グラインザ様もこの光景を望んでいたんですか?」
「ちょっと、スウェイン。私が最初に言ったではないですか」
いやまあ、聞いた事はあったけどさすがに全部を信じるなんて難しいだろう。……まあ、グラインザ様の性格を知ってからはあり得るかもとは思ってたけど。
「この世界で生きる我らが何故にわざわざ争わねばならんのだ? それも不毛な争いをだ。全く意味が分からん、理解できん!」
……そう言われてみると、確かにそうだと思ってしまう。
そもそも、どうして人族と魔族は争っているのだろうか。その原因はいったい何だったのか。そこを考えた勇者や魔王というのは、今までにいたのだろうか。
「魔族も人族も平等にできれば、それこそ本当の平和が訪れるであろう」
「人族は内部でボロボロですけどね」
「我も裏切られて、作り上げていたものが壊されてしまった。……本当に、難しい世の中であるよ」
ここまで本気で世界の平和を考えていた魔王はいないだろうなぁ。そして、勇者も。
「……まあ、俺は自分の手が届く範囲でしか守ろうとは思わないけどな」
「それは、酷い勇者であるなぁ」
そっか。グラインザ様には俺の境遇をまだ説明していなかったか。
俺たちは花壇の前のベンチに腰掛けると、そのまま勇者にさせられた経緯の説明を始めた。
信じてもらえるかは半信半疑だったが、鑑定で俺が勇者だと知っているからか意外にもグラインザ様はあっさり信じてくれた。
「女神か……ふん! 面倒な存在に目を付けられたものだのう」
「知っているんですか?」
スーレインさんも女神の存在には苛立っていたし、世界の主要な人物には嫌われているんじゃなかろうか、駄女神よ。
「魔族と人族の争いになんの手も貸さずにいるのも女神であろう?」
「むしろ、俺が勇者として人族の象徴になるよう言ってきましたよ?」
「ほら見ろ! わざわざ争わせようとしているではないか!」
「……確かに」
「どうせ我に声を掛けても意味がないと分かったから、お主に声を掛けたのだろう。もしかすると、我を裏切った魔族にも接触していたかもしれんぞ!」
言いながら苛立ったのか、グラインザ様の声が大きくなっていく。……うん、うるさい。
「お、落ち着いてくださいよ?」
「……ん、すまん」
一息ついたグラインザ様は改めてベンチから周囲に視線を向ける。
「……本当に、良い村であるなぁ」
「でしょう?」
「…………よし! 我もここで暮らすぞ!」
「……え?」
「安心せい! 家なら自分で建てるからな!」
「いや、ちょっと――」
「勇者の家に案内せい! その近くに建てるからのう! がははははっ!」
…………やってしまった。
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