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第二章:集落誕生?

まさかの可能性

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 左側の魔獣を片っ端から片付けていったものの、結局ツヴァイルを見つける事はできなかった。
 そうなると右側に行ったリリルとリーレインさんに期待をして合流したのだが、そちらにもいなかったようだ。

「うーん、そうなると魔界の奥に向かったかもしれないねー」
「一匹で魔界の奥にとか、マズいんじゃないか?」
「確か、ツヴァイルが襲われているところをスウェインが助けたんでしたよね?」
「あぁ。あの時に比べたらツヴァイルも強くなっているだろうけど、数で襲われたらひとたまりもないだろうな」

 俺たちの決断は早かった。
 迷うことなく魔界の探索を決定し、以降は三人固まって行動することにした。

「私が言うのもなんだけど、魔界って複雑なんですよね。ここみたいな荒野ならまだいいんだけど、幻惑魔法が掛けられた森とか、ゴーレムが無限に生成される山脈とか、場所によっては魔人が転移魔法陣の罠を設置して侵入者を招いていたぶったり」
「ちょっと待てリリル!」
「ん? どうしたの、スウェイン?」
「……お前、自分で話していてまさかの可能性に気づかなかったのか?」
「まさかの可能性? ……何の事?」

 いや、まあ、俺の勘違いって可能性もある。単なる推測だからな。
 だが、可能性があるならそこを探るのもありではないだろうか。

「魔人が転移魔法陣を設置する事があるのか?」
「そうですね。自ら足を運ぶのを嫌う魔人は多いので、戦果を上げるためにわざわざ侵入者を自らの城に飛ばして殺したりもしますよ?」
「……その転移魔法陣にツヴァイルが引っ掛かった可能性は?」
「この辺りにですか? うーん、境にはなりますけど可能性は低いかと」
「何故だ? 境の方が人族が迷い込みやすいだろう?」

 たまたま迷い込んだ人族が魔界の奥に入り込む事はほぼ不可能だ。
 ならば、たまたま空虚地帯になっていた場所から迷い込んだ人族を転移させる方がリリルの言う戦果を上げるという事には向いている気がする。
 しかし、そこは魔人の性格というか、強者を求める魔族の性質があるのだとか。

「単に人族を殺すだけでは魔人は面白くないの。強い相手をいたぶり殺す。自分ででもいいし、拮抗した実力の魔族をわざわざぶつけて楽しむ奴もいるわ」
「……だから、たまたま迷い込んだような弱い人族を転移させるメリットが少ないと?」
「そうですね」

 果たして、本当にそうだろうか?
 俺がルリエと知り合ったきっかけは境の調査だった。ならば、魔族も人族と同じ調査をしていた可能性もあるはずだ。
 もしこの一帯を調査していたとしたら、ここに空虚地帯があり、それも長期間そのままとなっている事も知られているかもしれない。
 普通の空虚地帯は一定の期間を過ぎると再び見えない壁が現れて通れなくなるが、ここは違う。何故なら勇者である俺が家を建ててしまったからだ。

「現魔王が空虚地帯が長く続いている事実に気づいたとしたら、その周辺に転移魔法陣を設置する可能性もあるんじゃないか?」
「まさか、スウェインを殺すために罠を張っていた?」
「可能性としてはあるかもねー」

 最後のリーレインさんの言葉をきっかけとして、俺は三人以外の魔力探知を行う。
 すると、俺たち以外の魔力が微かに漂っている事に気づきそちらへと進んでいく。
 場所は荒野の少し奥まったところにある崖の裏側。

「……ここだ」
「……確かに、魔力の残滓が残っているみたいだねー。それも、転移系の魔法が使われた残滓だよ」
「まさか、本当にスウェインが狙われていた?」
「今は俺の事はいい。ツヴァイルを助け出す事を考えないと」

 どうにかして転移魔法陣を復活できないか、もしくは転移先を割り出せないか考えていると、俺の鑑定スキルが勝手に仕事を果たしてくれた。

【ツヴァイルの魔力を追って追跡可能です。また、スウェインの転移魔法で転移魔法陣の再構築が可能です】

 目の前に浮かんできた文字に驚きしばらくは言葉も出せず、思考も止まってしまう。
 ……そういえば俺、転移魔法ってスキル持ってたわ。

「どうしたの、スウェイン?」
「スー君?」
「……あー、えっと、追跡できるみたい」
「「……え?」」
「俺、転移魔法のスキル、持ってたわ」
「「…………ええええぇぇっ!?」」

 うん、俺だって一緒に叫びたい気分だよ。
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