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第二章:集落誕生?
酔った女性は怖かったです
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ヴィリエルはそのまま店員に何かしら注文をしており、店員はお辞儀をして個室のドアを閉めた。
……さて、この状況、何を話せばいいのだろうか。
「ねえ、スレイ」
俺が話題に困っていると、ありがたいことにヴィリエルの方から声を掛けてくれた。
「ん、なんだ?」
「ずっと思ってたんだけどさ……年下なのに、態度でかいよね」
……個室に入っての第一声がそれかい!
「し、仕方ないだろう。俺がこういう性格なんだから」
「でも、さっきの店員には丁寧な言葉使いをしてたわよね?」
「……まあ、時と場合を選ぶことはできるからな」
「なんで私には敬語を使わないのよ!」
えっと、それはここで話すべき内容なのだろうか?
「別に、ヴィリエルにはこれでも問題ないかなって思って」
「なんで?」
「なんでって……冒険者ギルドで出会ったし、冒険者だと思って接してたから、気安い方がいいかなって。それに、今さら変えるのも変じゃないか?」
冒険者というのは多くが気安い言葉使いでやり取りをしていることが多い。
敬語を上手く使えないと言えばそれまでなのだが、気安い言葉の方が突発的な指示を出すには簡単だからという理由もある……と聞いたことがある。
最初から剣聖だと知っていれば態度を改めていた可能性もあるけど……いや、ヴィリエルだったら、それでもため口で話しているかもしれないな。
「……ううん、それは止めてちょうだい」
「なんで?」
「……私が、やり難くなるから」
ほら、思った通りじゃないか。
ヴィリエルの性格を考えると、ため口で気安く話し掛けられる方が楽でやりやすいと思っていたんだよ。
そんなやり取りをしていると、ドアがノックされて開かれる。
先ほどの店員が現れて、テーブルを覆い尽くすかのような数の料理が並べられていく。
「……ちょっと、ヴィリエル? こんなに頼んだの?」
「ヴィリエル様にはお世話になっておりますから。全て半額でお出ししております」
「ちゃんと払うって毎回言ってるんだけど?」
「いえいえ、これは店主の指示ですから」
「というわけで、頼んでないものまで並んでるから、残してもいいからね?」
「の、残すなんてもったいない!」
食糧は大事である。
それに、俺は一度餓死しそうになったわけだし、もしかしたらあの時に一度本当に死んでいたかもしれない。
何より、教会の子供たちを見た後だ。残すなんて、考えられないって。
「はい、スレイ」
「ありがとう。……これ、酒じゃないよな?」
「違うわよ。果実水よ、果実水」
手渡されたグラスを受け取ると、ヴィリエルが自分のグラスを持ち上げる。
「それじゃあ、初めての二人の食事会に」
「……そうだったのか?」
「まあ、何かに乾杯したい気分だったのよ。それじゃあ――かんぱーい!」
「か、乾杯」
――カンッ!
グラスとグラスが合わせられ、甲高くも心地よい音が個室に響く。
口に含んだ果実水はとても濃厚であり、果実をそのまま絞ったかのようで、とても美味しい。
……この果実水で薄められた酒だったら、何杯でもいけてしまいそうで怖くなるな。
「……ん……ん……ぷはーっ! あぁー、美味しいわ!」
「ブレイレッジには酒がないからな。余ってる俺のお金でいくつか買って帰ろうか?」
ヴィリエルには、リリルと並んで一番世話になっている。
これくらいで喜んでくれるなら買って帰るのもやぶさかではないのだが、ヴィリエルは一瞬だけ嬉しそうな表情を浮かべたものの、すぐにいつもの表情になって首を横に振った。
「……ううん、いいわ」
「そうか?」
「えぇ。……そんな少ないお酒じゃあ、満足できないもの」
……あ、そっちでしたか。
「それよりもよ!」
「は、はい!」
「お酒の原料になる作物を育てるってのはどうかしら! それで、ブレイレッジでお酒を造るのよ! そしたら、私も飲み放題になるわけだしね!」
「えっと、あの、ヴィリエル? お前、どうしたんだ?」
いきなりのハイテンションに、俺はついていけていない。
「食べ物を育ててるんでしょ? だったら、飲み物も育てるべきよ、きっとそうよ!」
「の、飲み物は育てるものじゃないぞ!」
「うりゅひゃいにゃー! のむじょ、のむじょー!」
……えっと、あれ、この感じは、あれか? グラス一杯で、こうなるのか?
「おや? もうこうなっていましたか」
「て、店員、さん?」
俺が困惑していると、先ほどの店員が再びやって来ていた。
「お代わりをお持ちしました」
「ありはほー!」
「ちょっと、これ以上飲ませたら――」
「あたひはのむよー!」
「……こうなったヴィリエル様は、止められません」
……えっと、このお店は、入店する者を選ぶんだよな?
「……どうしてヴィリエルは、入店を許可されているんですか?」
「……店主の言いつけなので」
……どうやら、ヴィリエルが認められているのは、何かしらのコネだそうです。
……さて、この状況、何を話せばいいのだろうか。
「ねえ、スレイ」
俺が話題に困っていると、ありがたいことにヴィリエルの方から声を掛けてくれた。
「ん、なんだ?」
「ずっと思ってたんだけどさ……年下なのに、態度でかいよね」
……個室に入っての第一声がそれかい!
「し、仕方ないだろう。俺がこういう性格なんだから」
「でも、さっきの店員には丁寧な言葉使いをしてたわよね?」
「……まあ、時と場合を選ぶことはできるからな」
「なんで私には敬語を使わないのよ!」
えっと、それはここで話すべき内容なのだろうか?
「別に、ヴィリエルにはこれでも問題ないかなって思って」
「なんで?」
「なんでって……冒険者ギルドで出会ったし、冒険者だと思って接してたから、気安い方がいいかなって。それに、今さら変えるのも変じゃないか?」
冒険者というのは多くが気安い言葉使いでやり取りをしていることが多い。
敬語を上手く使えないと言えばそれまでなのだが、気安い言葉の方が突発的な指示を出すには簡単だからという理由もある……と聞いたことがある。
最初から剣聖だと知っていれば態度を改めていた可能性もあるけど……いや、ヴィリエルだったら、それでもため口で話しているかもしれないな。
「……ううん、それは止めてちょうだい」
「なんで?」
「……私が、やり難くなるから」
ほら、思った通りじゃないか。
ヴィリエルの性格を考えると、ため口で気安く話し掛けられる方が楽でやりやすいと思っていたんだよ。
そんなやり取りをしていると、ドアがノックされて開かれる。
先ほどの店員が現れて、テーブルを覆い尽くすかのような数の料理が並べられていく。
「……ちょっと、ヴィリエル? こんなに頼んだの?」
「ヴィリエル様にはお世話になっておりますから。全て半額でお出ししております」
「ちゃんと払うって毎回言ってるんだけど?」
「いえいえ、これは店主の指示ですから」
「というわけで、頼んでないものまで並んでるから、残してもいいからね?」
「の、残すなんてもったいない!」
食糧は大事である。
それに、俺は一度餓死しそうになったわけだし、もしかしたらあの時に一度本当に死んでいたかもしれない。
何より、教会の子供たちを見た後だ。残すなんて、考えられないって。
「はい、スレイ」
「ありがとう。……これ、酒じゃないよな?」
「違うわよ。果実水よ、果実水」
手渡されたグラスを受け取ると、ヴィリエルが自分のグラスを持ち上げる。
「それじゃあ、初めての二人の食事会に」
「……そうだったのか?」
「まあ、何かに乾杯したい気分だったのよ。それじゃあ――かんぱーい!」
「か、乾杯」
――カンッ!
グラスとグラスが合わせられ、甲高くも心地よい音が個室に響く。
口に含んだ果実水はとても濃厚であり、果実をそのまま絞ったかのようで、とても美味しい。
……この果実水で薄められた酒だったら、何杯でもいけてしまいそうで怖くなるな。
「……ん……ん……ぷはーっ! あぁー、美味しいわ!」
「ブレイレッジには酒がないからな。余ってる俺のお金でいくつか買って帰ろうか?」
ヴィリエルには、リリルと並んで一番世話になっている。
これくらいで喜んでくれるなら買って帰るのもやぶさかではないのだが、ヴィリエルは一瞬だけ嬉しそうな表情を浮かべたものの、すぐにいつもの表情になって首を横に振った。
「……ううん、いいわ」
「そうか?」
「えぇ。……そんな少ないお酒じゃあ、満足できないもの」
……あ、そっちでしたか。
「それよりもよ!」
「は、はい!」
「お酒の原料になる作物を育てるってのはどうかしら! それで、ブレイレッジでお酒を造るのよ! そしたら、私も飲み放題になるわけだしね!」
「えっと、あの、ヴィリエル? お前、どうしたんだ?」
いきなりのハイテンションに、俺はついていけていない。
「食べ物を育ててるんでしょ? だったら、飲み物も育てるべきよ、きっとそうよ!」
「の、飲み物は育てるものじゃないぞ!」
「うりゅひゃいにゃー! のむじょ、のむじょー!」
……えっと、あれ、この感じは、あれか? グラス一杯で、こうなるのか?
「おや? もうこうなっていましたか」
「て、店員、さん?」
俺が困惑していると、先ほどの店員が再びやって来ていた。
「お代わりをお持ちしました」
「ありはほー!」
「ちょっと、これ以上飲ませたら――」
「あたひはのむよー!」
「……こうなったヴィリエル様は、止められません」
……えっと、このお店は、入店する者を選ぶんだよな?
「……どうしてヴィリエルは、入店を許可されているんですか?」
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