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第二章:集落誕生?
子供たちが考えています
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まあ、俺の決めたことだし、楽しめているから別にいいか。
それに、老後になることは少ないだろう。この調子だと、人は増えていきそうだし、どんどんと楽に生活できるようになるだろう。
「……シェリカさん。本当に、そんな場所があるんですか?」
「……レオン君?」
だが、一番考える力を持っているレオン君だけは、険しい表情を浮かべている。
これは正直、意外である。
俺の予想だと、レオン君はNだと思っていた。ならば考えることはあっても、最終的には納得してくれると思っていたし、今のような表情をすることはないと思っていた。
「あるわよ」
「……ヴィリエルさん」
そして、レオン君の疑問に答えたのはヴィリエルだった。
「実際に、私は今、その場所で暮らしているわ。そこではNの人族が笑顔で生活を送っている」
「……Nが、笑顔で」
再び口を閉ざして考え始めたレオン君。
しかし、シェリカさん。伝えなければならないことはもう一つあるでしょう。それも、子供たちにとっては、特大の大問題が。
「……それとね、みんな。もう一つだけ、伝えておかないといけないことがあるわ」
「……聞きます。みんなもいいよね?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
ヴィリエルが肯定してくれたからだろうか、レオン君が主導で子供たちに話を聞くよう促している。
シェリカさんが一つ頷き、口を開いた。
「そこで生活を送っているのは、人族だけではないの」
「家畜とか、獣魔とかですか?」
「いいえ。違うわ、レオン君」
「……他に何がいるんですか?」
「……人族のNと同じように虐げられていた、魔族のRです」
魔族、という言葉を聞いて、子供たちから笑顔が消えてしまった。
中には泣き出しそうになっている者もいる。
……やはり、子供にとって魔族というのは恐怖の対象になっているのだろう。
だが、ロリィ君とミレットちゃんはすぐに受け入れていたけど、何か違いがあるのだろうか。
「ここからは、私がお話をいたしましょう」
「……神父様?」
……あぁ、なるほど。
ロリィ君やミレットちゃんは、まだ小さいということもあるだろうけど、ちゃんとした教育を受けられる環境になかったのだろう。
この子たちも同じだが、ここには神父様がいる。
神父様から、人族と魔族の関係についての話をされていたのかもしれない。
「私はこれまで、人族と魔族が行っている戦争についての話をしてきました。君たちにとって、魔族はどういった相手ですか?」
「……怖い、です」
「ぼくも」
「わたしもー」
レオン君だけではなく、全ての子供が怖いと口にしている。
その様子を神父様は微笑みながら見つめており、そしてゆっくりと口を開いた。
「そうだね。魔族は、私も怖いよ。だけどね、それは一部の魔族だと思うんだよ」
「……一部、ですか?」
「あぁ、そうだよ。人族だって、怖い者はいるだろう。皆が皆、優しい者ではないということさ」
人族の一部と、魔族の一部が戦争をしている。
怖い者同士が戦っており、優しい者も多いだろう。
シェリカさんが話す村には、そういった優しい者が集まっているのではないか。
神父様は子供たちにもそうだが、主にレオン君を説得する様な口調で説明していく。
「ここは人界です。ですが、同じ人族から罵られることも多い。それは、ここに優しい者が少ないということではないかな?」
「それは……」
「人族、魔族と区別するのではなく、怖い者、優しい者で区別してみてもいいのではないかな?」
最後の言葉に、子供たちが声を出して相談を始めた。
もちろん、深く考えての会話ではないが、自分の言葉を口にして、考えて、伝えることも大事なことだ。
この辺り、大事な話ではあるものの子供の成長を考えての行動に、さすが神父様だと思わずにはいられないな。
「……まあ、すぐに答えを出すことはないでしょう。そうですよね、シェリカさん」
「はい。そうですよね、ヴィリエル様」
「そうでしょう、スウェイン」
「ん? あぁ、そうだな。時間はたっぷりあるから、決まったらシェリカさんを通して教えてくれたら助かるよ」
今まで黙っていた俺に決定権があるのかと驚いたのか、子供たちの視線が一気にこちらを向いた。
「……あー……ご、護衛だよ! 俺がその村まで、護衛として連れて行くんだ!」
「護衛はヴィリエルさんでは?」
「私もいるけど、スウェインもなのよ」
「……あは、あははー」
俺の正体を子供に伝えるのは、リスクが高すぎる。
移住が決まり、ブレイレッジに到着してから伝えることにしよう。
それに、老後になることは少ないだろう。この調子だと、人は増えていきそうだし、どんどんと楽に生活できるようになるだろう。
「……シェリカさん。本当に、そんな場所があるんですか?」
「……レオン君?」
だが、一番考える力を持っているレオン君だけは、険しい表情を浮かべている。
これは正直、意外である。
俺の予想だと、レオン君はNだと思っていた。ならば考えることはあっても、最終的には納得してくれると思っていたし、今のような表情をすることはないと思っていた。
「あるわよ」
「……ヴィリエルさん」
そして、レオン君の疑問に答えたのはヴィリエルだった。
「実際に、私は今、その場所で暮らしているわ。そこではNの人族が笑顔で生活を送っている」
「……Nが、笑顔で」
再び口を閉ざして考え始めたレオン君。
しかし、シェリカさん。伝えなければならないことはもう一つあるでしょう。それも、子供たちにとっては、特大の大問題が。
「……それとね、みんな。もう一つだけ、伝えておかないといけないことがあるわ」
「……聞きます。みんなもいいよね?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
ヴィリエルが肯定してくれたからだろうか、レオン君が主導で子供たちに話を聞くよう促している。
シェリカさんが一つ頷き、口を開いた。
「そこで生活を送っているのは、人族だけではないの」
「家畜とか、獣魔とかですか?」
「いいえ。違うわ、レオン君」
「……他に何がいるんですか?」
「……人族のNと同じように虐げられていた、魔族のRです」
魔族、という言葉を聞いて、子供たちから笑顔が消えてしまった。
中には泣き出しそうになっている者もいる。
……やはり、子供にとって魔族というのは恐怖の対象になっているのだろう。
だが、ロリィ君とミレットちゃんはすぐに受け入れていたけど、何か違いがあるのだろうか。
「ここからは、私がお話をいたしましょう」
「……神父様?」
……あぁ、なるほど。
ロリィ君やミレットちゃんは、まだ小さいということもあるだろうけど、ちゃんとした教育を受けられる環境になかったのだろう。
この子たちも同じだが、ここには神父様がいる。
神父様から、人族と魔族の関係についての話をされていたのかもしれない。
「私はこれまで、人族と魔族が行っている戦争についての話をしてきました。君たちにとって、魔族はどういった相手ですか?」
「……怖い、です」
「ぼくも」
「わたしもー」
レオン君だけではなく、全ての子供が怖いと口にしている。
その様子を神父様は微笑みながら見つめており、そしてゆっくりと口を開いた。
「そうだね。魔族は、私も怖いよ。だけどね、それは一部の魔族だと思うんだよ」
「……一部、ですか?」
「あぁ、そうだよ。人族だって、怖い者はいるだろう。皆が皆、優しい者ではないということさ」
人族の一部と、魔族の一部が戦争をしている。
怖い者同士が戦っており、優しい者も多いだろう。
シェリカさんが話す村には、そういった優しい者が集まっているのではないか。
神父様は子供たちにもそうだが、主にレオン君を説得する様な口調で説明していく。
「ここは人界です。ですが、同じ人族から罵られることも多い。それは、ここに優しい者が少ないということではないかな?」
「それは……」
「人族、魔族と区別するのではなく、怖い者、優しい者で区別してみてもいいのではないかな?」
最後の言葉に、子供たちが声を出して相談を始めた。
もちろん、深く考えての会話ではないが、自分の言葉を口にして、考えて、伝えることも大事なことだ。
この辺り、大事な話ではあるものの子供の成長を考えての行動に、さすが神父様だと思わずにはいられないな。
「……まあ、すぐに答えを出すことはないでしょう。そうですよね、シェリカさん」
「はい。そうですよね、ヴィリエル様」
「そうでしょう、スウェイン」
「ん? あぁ、そうだな。時間はたっぷりあるから、決まったらシェリカさんを通して教えてくれたら助かるよ」
今まで黙っていた俺に決定権があるのかと驚いたのか、子供たちの視線が一気にこちらを向いた。
「……あー……ご、護衛だよ! 俺がその村まで、護衛として連れて行くんだ!」
「護衛はヴィリエルさんでは?」
「私もいるけど、スウェインもなのよ」
「……あは、あははー」
俺の正体を子供に伝えるのは、リスクが高すぎる。
移住が決まり、ブレイレッジに到着してから伝えることにしよう。
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