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第二章:集落誕生?

神父様と年長さん

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 教会の中は埃一つなく、掃除が行き届いている。
 だが、並べられているベンチだったり、机などはボロボロであることに変わりはない。
 これだと、R以上の人たちはどこで結婚式を挙げたりするのだろうか。

「結婚式や葬儀なども、ボートピアズではこちらで?」
「いえいえ。ここは捨てられた子供たちのための施設ですよ。とはいっても、古い教会に勝手に住み着いているだけですけどね」
「R以上の人たちは、別で教会があるんですよ」
「そういうことか。ってことは、神父様もNなんですか?」
「いいえ、私はRの神官でございます」

 Rの人間がNや捨てられた子供たちの面倒を見ているということか。
 シェリカさんが教会に通うわけだな。
 同じR同士、というわけではないだろうけど、子供たちが好きで、職業ランクなど関係なく接しているということで、好感を持っているのだろう。
 ……俺のいた村にも、こういう人たちがいてくれたら、何か変わっていただろうか。

「……どうかしましたか、スウェインさん?」
「いえ、なんでもありません」

 追い出された村のことを考えても仕方がない。それに、以前見た人界と魔界の分布では、すでに無くなっている可能性の方が高いわけだしな。

「こちらにどうぞ。……おや、レオンかい?」
「ラクサス神父、お客様ですか?」
「久しぶりね、レオン君」

 ほほう、この子が年長さんということか。

「こちらは冒険者のスウェインさんです。お二人が私に話があるということなので、お茶をお願いしてもいいかな?」
「分かりました」

 案内された場所は応接室のようで、レオン君は掃除の手を止めて会釈すると、駆け足で部屋を出て行った。

「レオン君のおかげで、ここの教会も綺麗に保てているのですよ」
「ラクサス神父様だけだと、手が行き届きませんからね」
「本当に、助かっております。もちろん、シェリカさんにもね」

 どうやら、シェリカさんも色々と世話を焼いているらしい。
 ……これなら、大丈夫な気もするな。

「ラクサス神父、お茶を持ってきました」
「ありがとう。込み入った話になるだろうから、レオンは外で子供たちと遊んでいなさい。今は、ヴィリエルさんがいますからね」
「分かりました!」

 おや? 突然表情が明るくなったような。
 レオン君は、ヴィリエルを気に入っているようだな。

「……それで、本日はどういったお話ですかな? ――勇者殿」
「――!? ……気づいていたんですか?」
「ほほほ。これでも、神に仕える身ですからな」

 これは驚いた。
 ということは、俺はあまり教会に類する場所には近づかない方がいいかもしれない。

「しかし、奇妙なことが起きたものですな。勇者殿がヴィリエルさんに殺されたのは、ここ最近の話だったはずですが?」
「……そこは、俺も驚いています。というか、ヴィリエル……ルリエの正体も知っているんですね」
「神に仕える身ですからな」

 それで全ての説明ができているとは思えないが、知っているなら好都合である。
 俺はシェリカさんの時とは違い、全ての情報を隠すことなく、最初から伝えることにした。

「――……ほほう、それで、人族と魔族が共存する村を造ったと」
「はい。それで、ヴィリエルからシェリカさんやこちらの話を聞いて、もし希望するなら移住してみないかと提案させていただきました」
「とても、興味深い話ではありますね」
「でしたら――」
「ですが、決めるのは私ではありません」

 俺の言葉を遮り、神父様はすぐに答えを出してはくれなかった。

「決めるのは私ではなく、子供たちです」
「……ですが、ここを運営しているのは神父様では?」
「えぇ、その通りです。運営はしています。ですが、子供たちの未来を勝手に決めていい権利など、持ち合わせておりません」

 ……確かに、その通りだ。
 判断が難しい子供だからと、大人の勝手にしていいわけではない。
 きちんと説明をして、その上で子供たちが納得してくれるなら、改めて移住を提案するべきだ。
 小さな子供には難しいかもしれないが、レオン君や、他にも考えることのできる年齢の子供はいた。
 ならば、神父様の言う通り、時間を掛けてでも説明をして、納得させるべきだろう。

「……スレイ様。子供たちへの説明は、私に任せてくれませんか?」
「それは構わないけど、いいんですか?」
「元々、こちらに話を持ってきたのは私ですからね。責任は取らないと」
「私も手伝いますよ、シェリカさん」
「ありがとうございます、ラクサス神父」
「いえいえ、私個人はとても良い提案だと思っております。子供たち全員が移住を希望したなら、私も行きたいと思っていますからね」

 ボートピアズへの滞在は、少しばかり長くなるかもしれない。
 だが、移住という大きな決断、それも子供が関わることである。
 急いではいけない。慎重に、事を進めるべきだと俺は反省した。
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