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第二章:集落誕生?
シェリカへ事実を告げます
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騒動が一段落したのを見届けると、すぐにシェリカさんが俺たちに声を掛けてきた。
「ヴィリエル様! スレイ様! 本当にありがとうございました!」
「いいのよ、シェリカ。気にしないで」
「それにしても、あいつは最悪な奴だな。ヴィリエルの言っていることが正しければ、獣魔を自ら殺したってことだろ?」
「あら、信じてないのかしら?」
「俺は獣魔契約について詳しくないからな。……まあ、人の腕に剣を向けたお前が言うんだから、本当なんだろうけどな」
マジでビビったからな、あれは。
「ヴィリエル様の言っていることは正しいです。ですが、本来なら私がそのことを告げなければなりませんでした。……担当者、失格です」
そう口にすると、シェリカさんは下を向いてしまった。
だが、俺はしっかりと仕事をしていたと思う。
あれだけ高圧的な態度を取ってきた相手に対して、自分に落ち度はなかったとはっきりと主張し、中途半端に謝らなかったのも素晴らしかった。
それは、この場にいる者なら全員がそう思ったことだろう。
「落ち着きなさい、シェリカ。あなたは良くやったわ。だって、謝らなかったでしょう?」
「……ヴィリエル様」
そして、そのことを告げるのは俺ではなく、ヴィリエルの役目だ。
シェリカさんはヴィリエルの正体を知っている。ということは、それだけの信頼関係を気づけているということでもある。
言葉の重みは、俺が告げるよりもあるはずだ。
「……す、すみません、取り乱しました!」
「いいのよ。それでね、シェリカ。ちょっと話があるんだけど、少しだけ時間を貰えるかしら?」
「私にですか?」
首を傾げながらも、シェリカさんは窓口を他の職員にお願いして出てきてくれた。
「ありがとう。その話なんだけど……できれば、誰にも聞かれない個室でお願いしたいな」
「――! ……分かりました」
最後の部分は耳元で告げられ、その意図をすぐに理解したシェリカさんが案内してくれた場所は、ギルド内に併設されている個室の一室だ。
この個室、どうやら防音設備も施されているようで、主に貴族や領主からの特別な依頼の確認をする時に使われる部屋なのだとか。
そこを一冒険者の密談に使っていいのかと不安になったのだが、ヴィリエルの正体を知っているシェリカさんだからこそ、迷うことなく使用することを決めたのだろう。
……ここ、使用するのにお金が掛かるのだろうか。
「大丈夫よ。お金は私が支払うから」
「あっ、やっぱり掛かるんだな」
「30分で100Dよ」
「なら、俺が払うよ。用事があるのは、俺の方だからね」
「えっ? ヴィリエル様ではなく、スレイ様なのですか?」
「まあ、一蓮托生みたいな感じだけどね」
「……? はぁ」
そりゃそうだよね。今の状況だと、俺がヴィリエルの正体を知っていることも知らないし、ブレイレッジのことなんて知るはずもないからな。
「先に言っておくけど、俺はヴィリエルがルリエだってことを知っているよ」
「えっ! ……あの、その、えっ?」
「それと、スレイは実はスウェインと言って、新しい勇者でもある」
「…………ふえっ?」
うんうん、この驚き方が普通だよな。
シルクさんは何やら受け入れ方が尋常じゃなかったから、言葉にはすれどこの段階では態度には全く現れなかったもんな。
「……とりあえず、座ろうか?」
「…………はっ! そ、そうですね、失礼しました!」
固まっていたシェリカさんに声を掛け、俺たちはソファに腰掛ける。……おぉ、めっちゃ座り心地の良いソファだな、これは。
「さすがはお偉いさんが使うような部屋だな」
「ま、まあ、そうですね。ですが、剣聖様と、その、勇者様? が使うには物足りないかもしれませんけど」
「私にはそんな態度しなくてもいいわよ!」
「俺にも必要ないぞ。なんて言えばいいのか、人族だけのために動いているわけじゃないからな」
「……というか、勇者様ということすら、疑っているんですけど?」
……そりゃそうだ。
というわけで、俺はシルクさんにも行ったような説明をシェリカさんにも行っていく。
ここではまだブレイレッジのことは伏せており、リリルのことも同様だ。
だが、この時点で口を開けたまま固まってしまっているので、二つのこと、特にリリルのことを伝えたらどういう反応が返ってくるのか、とても楽しみである。
「…………ははは、なんだかもう、理解が追いつきません。というか、どうしてこのような重要な話を、私なんかに伝えてくれたのですか?」
当然の疑問に、俺とルリエは顔を見合わせて頷いた。
「ヴィリエル様! スレイ様! 本当にありがとうございました!」
「いいのよ、シェリカ。気にしないで」
「それにしても、あいつは最悪な奴だな。ヴィリエルの言っていることが正しければ、獣魔を自ら殺したってことだろ?」
「あら、信じてないのかしら?」
「俺は獣魔契約について詳しくないからな。……まあ、人の腕に剣を向けたお前が言うんだから、本当なんだろうけどな」
マジでビビったからな、あれは。
「ヴィリエル様の言っていることは正しいです。ですが、本来なら私がそのことを告げなければなりませんでした。……担当者、失格です」
そう口にすると、シェリカさんは下を向いてしまった。
だが、俺はしっかりと仕事をしていたと思う。
あれだけ高圧的な態度を取ってきた相手に対して、自分に落ち度はなかったとはっきりと主張し、中途半端に謝らなかったのも素晴らしかった。
それは、この場にいる者なら全員がそう思ったことだろう。
「落ち着きなさい、シェリカ。あなたは良くやったわ。だって、謝らなかったでしょう?」
「……ヴィリエル様」
そして、そのことを告げるのは俺ではなく、ヴィリエルの役目だ。
シェリカさんはヴィリエルの正体を知っている。ということは、それだけの信頼関係を気づけているということでもある。
言葉の重みは、俺が告げるよりもあるはずだ。
「……す、すみません、取り乱しました!」
「いいのよ。それでね、シェリカ。ちょっと話があるんだけど、少しだけ時間を貰えるかしら?」
「私にですか?」
首を傾げながらも、シェリカさんは窓口を他の職員にお願いして出てきてくれた。
「ありがとう。その話なんだけど……できれば、誰にも聞かれない個室でお願いしたいな」
「――! ……分かりました」
最後の部分は耳元で告げられ、その意図をすぐに理解したシェリカさんが案内してくれた場所は、ギルド内に併設されている個室の一室だ。
この個室、どうやら防音設備も施されているようで、主に貴族や領主からの特別な依頼の確認をする時に使われる部屋なのだとか。
そこを一冒険者の密談に使っていいのかと不安になったのだが、ヴィリエルの正体を知っているシェリカさんだからこそ、迷うことなく使用することを決めたのだろう。
……ここ、使用するのにお金が掛かるのだろうか。
「大丈夫よ。お金は私が支払うから」
「あっ、やっぱり掛かるんだな」
「30分で100Dよ」
「なら、俺が払うよ。用事があるのは、俺の方だからね」
「えっ? ヴィリエル様ではなく、スレイ様なのですか?」
「まあ、一蓮托生みたいな感じだけどね」
「……? はぁ」
そりゃそうだよね。今の状況だと、俺がヴィリエルの正体を知っていることも知らないし、ブレイレッジのことなんて知るはずもないからな。
「先に言っておくけど、俺はヴィリエルがルリエだってことを知っているよ」
「えっ! ……あの、その、えっ?」
「それと、スレイは実はスウェインと言って、新しい勇者でもある」
「…………ふえっ?」
うんうん、この驚き方が普通だよな。
シルクさんは何やら受け入れ方が尋常じゃなかったから、言葉にはすれどこの段階では態度には全く現れなかったもんな。
「……とりあえず、座ろうか?」
「…………はっ! そ、そうですね、失礼しました!」
固まっていたシェリカさんに声を掛け、俺たちはソファに腰掛ける。……おぉ、めっちゃ座り心地の良いソファだな、これは。
「さすがはお偉いさんが使うような部屋だな」
「ま、まあ、そうですね。ですが、剣聖様と、その、勇者様? が使うには物足りないかもしれませんけど」
「私にはそんな態度しなくてもいいわよ!」
「俺にも必要ないぞ。なんて言えばいいのか、人族だけのために動いているわけじゃないからな」
「……というか、勇者様ということすら、疑っているんですけど?」
……そりゃそうだ。
というわけで、俺はシルクさんにも行ったような説明をシェリカさんにも行っていく。
ここではまだブレイレッジのことは伏せており、リリルのことも同様だ。
だが、この時点で口を開けたまま固まってしまっているので、二つのこと、特にリリルのことを伝えたらどういう反応が返ってくるのか、とても楽しみである。
「…………ははは、なんだかもう、理解が追いつきません。というか、どうしてこのような重要な話を、私なんかに伝えてくれたのですか?」
当然の疑問に、俺とルリエは顔を見合わせて頷いた。
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