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第二章:集落誕生?

商売をする為に

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 さて、この集落ではお金を稼ぐ方法がない。
 あるとすれば、冒険者である俺たちが都市に出向いて依頼をこなすくらいだろう。
 しかし、人族の女性陣が与えられた職業は針子、細工師、商人と、商売を考えたらとても役に立つものばかりだ。
 というわけで、商売をする為にはどうしたらいいかを考えることにした。

「ブレイレッジを目立たせるわけにはいかないから、行商人として出向く方がいいよなぁ」

 だが、それをするにもNの人族にさせるわけにはいかないし、魔族を向かわせるのは以ての外だ。
 となれば、俺かルリエ、偽装スキルが使えるリリルということになる。
 生活するだけなら絶対に必要なものではないのだが、急遽何か必要な物が出てきた場合、お金はあって困るものではないからな。

「なあ、リリル、ルリエ」

 そこで、俺は行商人として都市へ出向くという案を二人に相談することにした。

「確かに、お金はあった方がいいわね」
「私も賛成だけど……行商人に変装してってなると、スウェインとリリルさんでやった方がいいと思うわ」
「ん? なんで?」

 申し訳なさそうに口にしたルリエは、その理由を教えてくれた。

「私は偽装スキルを持ってないんだもん。ボートピアズでも、シェリカの助けを借りてなんとか冒険者に変装してたくらいなんだからね?」
「その言い方だと、シェリカさんはルリエが元勇者を殺した剣聖だってことを知ってたのか?」
「えぇ、そうよ。彼女は私の協力者だもの」
「ふむ、そうか……」

 今の話を聞いて、俺は少しだけ考えを巡らせることにした。
 現状、この集落で自由に動き回れるのは俺とリリルとルリエの三人だけで、他は人界でも魔界でも虐げられてしまう職業ランクである。
 本音を言えば、もっと動ける人間が必要だと俺は思っている。
 それに、動ける者イコール戦える者になっているのもいただけない。
 信用できて、なおかつ動ける者、もしくは戦える者があと二人か三人は囲い込みたいところだ。

「……なあ、ルリエ。お前に協力していたってことは、今の人界に不満を持っているってことか?」
「そうよ。でも、シェリカの職業はRの話術士だから戦闘力は皆無だし、声高に非難したら暴行される可能性もあったから、大人しくしてもらっているの」
「……ということは、場合によってはここに移住してくれる可能性もあるってことか?」

 そして、俺が本題を伝えるとルリエも頭を捻り考え始めた。
 戦えはしなくとも、護衛を一人付ければ動ける人材になってくれる。
 さらに、今の話からも必要な人材だと本気で思ってしまった。
 話術士というのは、その巧みな話術で相手の信用を掴むのが上手い職業であり、行商人をさせるには打ってつけじゃないのかと思ったのだ。

「……どうかしら。提案することはできるけど、シェリカが頷いてくれるかは分からないわね」
「ご家族とか?」
「いえ、シェリカは独り身よ。両親は別の都市で暮らしているみたいだしね」
「それじゃあ、どうして?」
「理由は二つあるわ。一つ目は、今の仕事を気に入っている。獣魔を扱う専用窓口の仕事がね」

 話を聞くと、シェリカさんは以前に冒険者と別の職員がトラブルを起こした時に、間に立ってその場を収めようとしていたらしい。
 だが、冒険者の方がSRだったこともあり、Rのシェリカに暴言を吐きつけ、殴り飛ばしたのだとか。
 その時は冒険者ギルドという職場を離れようと考えたのだが、獣魔契約の担当に移り、その獣魔に癒しを感じて以来、今の担当を気に入っているという。

「獣魔契約をしに来る人の多くは人の良い者が多いからね」
「そうなのか?」
「そうじゃないと、魔獣も従わないってことよ」
「……なるほどね。魔獣も相手を選んでいるってことか」
「当然じゃないのよ。魔族の中でも魔獣は下に見る者はいるけど、彼らにも意思はあるもの」

 そう補足してくれたリリルにも頷きを返すと、俺はそれなら勝機はあると考えた。

「ここにはツヴァイルもいるし、癒しにはもってこいじゃないか?」
「ガウ?」
「まあ、ツヴァイルなら毛並みも素晴らしいし、モフモフするにはもってこいね」
「私もたまに顔を埋めていますね」
「だろ? 断られてもいいから、一度ルリエから声を掛けてくれないか?」

 また考え始めたルリエだったが、今回はそこまで長くは掛からなかった。

「……分かったわ。シェリカなら、断ったとしても情報を漏らすことはしないだろうし、一度聞いてみるわ」
「それじゃあ、一度ボートピアズに行ってもらって――」
「スウェインもよ?」
「……はい?」

 いや、なんで俺が行かないといけないんだ? 俺から依頼しているんだし、来てくれるならルリエの判断で連れて来てくれて構わないんだけど?

「二つ目の理由が関わってくるのよ」
「どういうこと?」

 俺の質問に、ルリエはニヤリと笑って二つ目の理由を教えてくれた。
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