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第一章:勇者誕生?

閑話:リリルとルリエ

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 スウェインが深い眠りに落ちた時、リリルとルリエはまだ起きていた。
 お互いに魔族と人族を想う気持ちがあり、すぐには寝付けなかったのだ。

「こういう時、スウェインの性格が羨ましくなりますね」
「本当にそうね。でも、それだけNだった頃に受けた仕打ちが辛かったのよ」

 村人から、友人から、そして家族からも見放されたスウェインにとって、故郷の村だけではなく人族全体を信じられなくなっているのかもしれないと二人は思っていた。

「でも、私はスウェインを見放したりはしないわ。勇者だからここにいるんじゃない、スウェインだからここにいるんだもの」
「私はじゃないわよ、リリルさん。私たち、でしょう?」
「ルリエさん……そうですね」

 つい先ほど、ルリエもここで一緒に暮らすことが決定した。
 スウェインの周りが賑やかになるのは、リリルにとっても嬉しいことであり、種族は違えど同じ女性が増えることも嬉しかった。

「……ねえ、リリルさん。ちょっと考えたことがあるんだけど」
「……もしかして、私も同じことを考えていたかもしれないわ」
「えっ! そうなの?」

 このやり取り、スウェインを間に挟んで行われている。
 スウェインの耳に入っていれば、まず間違いなく却下されていただろう。
 しかし、深い眠りに落ちているスウェインが起きることはなく、二人だけでとある陰謀が図られようとしていた。

「うふふ、やっぱり同じことを考えていたみたいね」
「でも、スウェインが許してくれるかしら」
「大丈夫よ。だって、スウェインは言っていたもの」
「何か言っていたの?」
「えぇ。俺の手の届く範囲になら手を伸ばす、ってね」

 不敵な笑みを浮かべたリリルをスウェイン越しに見て、ルリエも同様の笑みを浮かべる。
 この陰謀が達成されれば、過去類を見ない偉業となるだろう。

「私は明日、ボートピアズに戻って依頼の報告をしないといけないの」
「だったら、私もついていこうかしら」
「女の二人旅かぁ……面白そうね!」
「本当にね!」

 こうして、二人は夜の遅い時間まで話し込んでいた。
 二人の企てている陰謀が達成されるのかどうかは、スウェイン次第だ。
 しかし、そこへ導くのは二人の仕事であり、まずは外堀を埋めてしまおうと画策する。

「……に……にくぅぅぅぅ……ぐぅー」

 そんなこととは露知らず、スウェインは寝言を言いながらツヴァイル同様に爆睡しているのだった。
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