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第一章:勇者誕生?
乱入者
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声のした方へ振り返ると、そこには見たこともない女性が下卑た笑みを浮かべながらものすごい勢いで近づいてきている。
魔族かと思ったが、その女性は人界の方からやって来ているのだ。
「エ、エレーナだと!?」
「知っているのか、ヴィリエル?」
どうやらヴィリエルの知り合いらしい。
だが、あの表情を見ると仲良しというわけではなさそうだ。
それに、ヴィリエルも歯噛みしながら女性を睨みつけている。
「何者なんですか、ヴィリエルさん」
「……エレーナ・フォンブラウスは、勇者に同行していた英雄の一人、URの賢者を与えられた英雄よ」
「賢者? ……あれ? そういえば、情報屋から買った羊皮紙に賢者が勇者を殺した剣聖を探しているって……剣聖?」
待て待て、ヴィリエルは剣聖だけど冒険者だ。勇者と同行していた者とは違うはず。
XRの職業だけは一度に複数現れることはないが、それ以外の職業は違う。
同じ剣聖でも、ヴィリエルと勇者を殺した剣聖は別人――
「あなたは私が殺してあげるわ――ルリエ・ヴィスコ!」
「「……ルリエ・ヴィスコ?」」
「ガウ?」
……あぁ、別人と思っていたのに、ヴィリエルがルリエ・ヴィスコであれば、同一人物ということになる。
「っていうか、お前も偽名だったのかよ。俺のことを言えないじゃないか」
「そうだけど、今はそんなことを言っている暇はないみたいよ?」
「いや、あいつが狙っているのはヴィリエルなわけで、俺たちではないだろう?」
「……ちょっと、スウェイン。そうでもないみたいよ?」
「えっ?」
リリルの言葉に俺は視線を賢者に向ける。
すると、いつの間にか火、水、土、風の四属性魔法が同時に顕現していたのだ。
「みんな! みーんな! 消滅させてあげるわああああっ!」
「マ、マジかよ!?」
あいつ、俺たちまで殺すつもりか!
「みんな、私の近くにきてちょうだい!」
「何をするつもりなの!」
「いいから、早く!」
リリルが声を張り上げる。
俺とツヴァイルはすぐに駆け寄ったが、ヴィリエルは大剣を抜いて魔法を迎撃する構えだ。
「あー、もう! いいからこっちに来い!」
「賢者の魔法相手に何を言って――きゃあ!」
なりふり構わず全力で動いた俺は、一秒の間にヴィリエルに近づき、お姫様抱っこをして、リリルの隣に戻ってきた。
「な、何をしているのよ! は、はははは、早く下ろしなさい!」
「今だけは大人しくしてろ! リリル、頼む!」
「な、なんて羨ま――いやいや、任せてよね!」
「ガウ?」
ど、どうしてツヴァイルは首を傾げてるんだ?
「ダークヴェール!」
リリルの魔法は俺たちを漆黒のヴェールで包み込んだ。
外の音も、光も、振動も、何も感じることはない。
俺が感じられるのは、抱き上げているヴィリエルの体温と、みんなの呼吸音だけ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ!」
「リリル、大丈夫か?」
「……大丈夫。みんなは、私が、守るから!」
人界に近い境だと、リリルは満足に力を発揮することはできない。
それでも俺たちを守る為に今できることに全力を尽くしている。
リリルの頑張りに応える為に、俺にできることといえば――
「……ヴィリエル」
「何よ」
「リリルが俺たちを守り抜いたら、賢者を斬るぞ」
「――! ……いいの? 人族を敵に回すことになるわよ?」
「元々、俺はそんな人族に見捨てられたんだ。今さら敵になっても、状況は変わらないからな」
俺が肩を竦めたのが分かったのか、ヴィリエルは小さく笑った。
「……分かったわ。それと、私の名前はヴィリエルじゃなくてルリエよ」
「あー、そうだったな。ルリエ・ヴィスコか……家名と合わせてヴィリエルって名乗ってたんだな」
単純だと思ったが、俺もスレイって数文字しか変えてなかったから人のことは言えないか。
「……ルリエ、共闘だ」
「……任せなさい」
「ガウガウッ!」
「なんだ、ツヴァイルも戦ってくれるのか?」
「ガウッ!」
頼りになる返事を聞いて、見えていないだろうが俺は大きく頷いた。
「頼むな」
「……作戦は、決まったかしら? そろそろ、魔法を解くわよ!」
「「大丈夫だ!」」
「ガウガウッ!」
俺たちの返事に合わせて、リリルのダークヴェールが解けた。
周囲では炎が消えることなく燻っており、巨大な水たまりが作られ、地面が抉れており、遠くには竜巻が見えている。
地形を変えるほどの魔法を四属性同時に放った賢者もすごいが、それに耐え切ったリリルの方がすごいに決まっている。
「……あとは、頼んだ、わよ」
「リリルは休んでいろ!」
「行くわよ、スウェイン! ツヴァイル!」
「グルオオオオンッ!」
俺たちは同時に駆け出すと、三方向から賢者に迫っていく。
「あははっ! いいわ、いいわああああっ! そうこなくっちゃねええええっ!」
こうなることが分かっていたのか、賢者は歓喜の声をあげながらさらなる魔法を顕現させた。
魔族かと思ったが、その女性は人界の方からやって来ているのだ。
「エ、エレーナだと!?」
「知っているのか、ヴィリエル?」
どうやらヴィリエルの知り合いらしい。
だが、あの表情を見ると仲良しというわけではなさそうだ。
それに、ヴィリエルも歯噛みしながら女性を睨みつけている。
「何者なんですか、ヴィリエルさん」
「……エレーナ・フォンブラウスは、勇者に同行していた英雄の一人、URの賢者を与えられた英雄よ」
「賢者? ……あれ? そういえば、情報屋から買った羊皮紙に賢者が勇者を殺した剣聖を探しているって……剣聖?」
待て待て、ヴィリエルは剣聖だけど冒険者だ。勇者と同行していた者とは違うはず。
XRの職業だけは一度に複数現れることはないが、それ以外の職業は違う。
同じ剣聖でも、ヴィリエルと勇者を殺した剣聖は別人――
「あなたは私が殺してあげるわ――ルリエ・ヴィスコ!」
「「……ルリエ・ヴィスコ?」」
「ガウ?」
……あぁ、別人と思っていたのに、ヴィリエルがルリエ・ヴィスコであれば、同一人物ということになる。
「っていうか、お前も偽名だったのかよ。俺のことを言えないじゃないか」
「そうだけど、今はそんなことを言っている暇はないみたいよ?」
「いや、あいつが狙っているのはヴィリエルなわけで、俺たちではないだろう?」
「……ちょっと、スウェイン。そうでもないみたいよ?」
「えっ?」
リリルの言葉に俺は視線を賢者に向ける。
すると、いつの間にか火、水、土、風の四属性魔法が同時に顕現していたのだ。
「みんな! みーんな! 消滅させてあげるわああああっ!」
「マ、マジかよ!?」
あいつ、俺たちまで殺すつもりか!
「みんな、私の近くにきてちょうだい!」
「何をするつもりなの!」
「いいから、早く!」
リリルが声を張り上げる。
俺とツヴァイルはすぐに駆け寄ったが、ヴィリエルは大剣を抜いて魔法を迎撃する構えだ。
「あー、もう! いいからこっちに来い!」
「賢者の魔法相手に何を言って――きゃあ!」
なりふり構わず全力で動いた俺は、一秒の間にヴィリエルに近づき、お姫様抱っこをして、リリルの隣に戻ってきた。
「な、何をしているのよ! は、はははは、早く下ろしなさい!」
「今だけは大人しくしてろ! リリル、頼む!」
「な、なんて羨ま――いやいや、任せてよね!」
「ガウ?」
ど、どうしてツヴァイルは首を傾げてるんだ?
「ダークヴェール!」
リリルの魔法は俺たちを漆黒のヴェールで包み込んだ。
外の音も、光も、振動も、何も感じることはない。
俺が感じられるのは、抱き上げているヴィリエルの体温と、みんなの呼吸音だけ。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ!」
「リリル、大丈夫か?」
「……大丈夫。みんなは、私が、守るから!」
人界に近い境だと、リリルは満足に力を発揮することはできない。
それでも俺たちを守る為に今できることに全力を尽くしている。
リリルの頑張りに応える為に、俺にできることといえば――
「……ヴィリエル」
「何よ」
「リリルが俺たちを守り抜いたら、賢者を斬るぞ」
「――! ……いいの? 人族を敵に回すことになるわよ?」
「元々、俺はそんな人族に見捨てられたんだ。今さら敵になっても、状況は変わらないからな」
俺が肩を竦めたのが分かったのか、ヴィリエルは小さく笑った。
「……分かったわ。それと、私の名前はヴィリエルじゃなくてルリエよ」
「あー、そうだったな。ルリエ・ヴィスコか……家名と合わせてヴィリエルって名乗ってたんだな」
単純だと思ったが、俺もスレイって数文字しか変えてなかったから人のことは言えないか。
「……ルリエ、共闘だ」
「……任せなさい」
「ガウガウッ!」
「なんだ、ツヴァイルも戦ってくれるのか?」
「ガウッ!」
頼りになる返事を聞いて、見えていないだろうが俺は大きく頷いた。
「頼むな」
「……作戦は、決まったかしら? そろそろ、魔法を解くわよ!」
「「大丈夫だ!」」
「ガウガウッ!」
俺たちの返事に合わせて、リリルのダークヴェールが解けた。
周囲では炎が消えることなく燻っており、巨大な水たまりが作られ、地面が抉れており、遠くには竜巻が見えている。
地形を変えるほどの魔法を四属性同時に放った賢者もすごいが、それに耐え切ったリリルの方がすごいに決まっている。
「……あとは、頼んだ、わよ」
「リリルは休んでいろ!」
「行くわよ、スウェイン! ツヴァイル!」
「グルオオオオンッ!」
俺たちは同時に駆け出すと、三方向から賢者に迫っていく。
「あははっ! いいわ、いいわああああっ! そうこなくっちゃねええええっ!」
こうなることが分かっていたのか、賢者は歓喜の声をあげながらさらなる魔法を顕現させた。
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