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第二章:新たなる力、メガネ付き
第39話:それぞれの日常へ 3
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「……」
「……」
「……ねえ、ジジさん。これ、大丈夫なんですかねぇ?」
「……ほほほ。まあ、時間が解決するでしょう」
「「勝手に感想を言うんじゃない!!」」
道具屋の外でお互いに恥ずかしがりながら黙り込んでいた明日香とイーライを見て、夏希とジジは呆れ声を漏らしていた。
それに抗議の声をあげた二人だったが、結局はだんまりの状態が続いたのでこれ以上は何も言えなくなってしまった。
「……あの、明日香さん? もしよろしければ、私たちも一緒に――」
「ううん! 大丈夫! 二人だけで問題ないから! ……って、え? 私たち?」
夏希だけがついていこうかと提案されると思った明日香だが、夏希からは複数形の言葉が口にされている。
夏希ともう一人。ジジは道具屋の店番があることを考えると、その相手は――
「……ガ、ガゼルさん! もしや、ダブルデートというやつですか!」
「はい! 私、憧れだったんです! どうでしょうか、明日香さん!」
正直なところ、二人きりで何を話せばいいのか、どう接すればいいのか、いざデートだと意気込むと考えがまとまらなかった明日香にとって、夏希の提案は非常にありがたいものだった。
先ほどまでは困った様子の明日香だったが、すぐに夏希の下へ歩いていくと、その手をガシッと力強く握っていた。
「よろしくお願いします、夏希ちゃん!」
「こちらこそです、明日香さん!」
何やら二人の間で話がまとまっているが、デートに誘ったイーライの気持ちはどうなるのか。
「ほほほ。イーライよ、ひとまずはアスカさんを安心させてあげることですね」
「……はい。そうします」
ジジだけがイーライに寄り添い、そっと背中を叩くのだった。
ジジと別れた明日香たちは、その足で冒険者ギルドに足を運んでいた。
夏希がガゼルと待ち合わせをしていたからだが、当のガゼルは明日香とイーライが一緒にやってきたことに首を傾げていた。
「なんだ? アスカのお嬢さんとイーライも一緒に行くのか?」
「違います! 四人で街を散策しましょう!」
「……あん? ど、どういうことだ?」
当然の疑問に対しての夏希の答えを受けて、ガゼルの疑問はさらに深まっていく。
「あれ? もしかして夏希ちゃん、ガゼルさんにちゃんと伝えていないの?」
「実は、そうなんです。……だって、歳の差があり過ぎて、タイミングを間違えたらもう会ってもらえないんじゃないかって思うんですよ!」
明日香に対しては強気な発言をしていた夏希も、自分のこととなると消極的になってしまうらしい。
その姿に明日香は少しだけ安堵し、そして彼女に協力したいと思うようになっていた。
「ガゼルさん!」
「なんだい、アスカのお嬢さん?」
「ダブルデートですよ、ダブルデート?」
「……ダブル、デート? ……俺、いらないんじゃねぇか?」
「いります! 大事です! むしろ、中心人物です!」
ガゼルはSランク冒険者になった時から、女性と深い仲になることを拒んできた。
それは冒険者稼業の足枷になることが多いのと、自分が死んでしまった時に悲しい想いをさせるからという、二つの理由が存在していた。
そのせいもあり、長い間で女性との関係を断ち、今の年齢になってずっと独り身だろうと思っていたガゼルからすると、自分が誰かに好いてもらっているという考えに至ることがなかったのだ。
「ほら、夏希ちゃん!」
「わわわわっ!」
「本当にどうしたんだ、ナツキのお嬢さん?」
明日香に背中を押されてガゼルの前に出た夏希。
困惑気味になっていくガゼルを見て、ここで言わなければ嫌われるかもしれないという思いが強くなっていった。そして――
「その、えっと……わ、私と――付き合ってください!」
「「「「……ええええぇぇええぇぇっ!?」」」」
夏希の告白は思いのほか声が大きくなり、周りで聞き耳を立てていた冒険者たちから驚きの声があがった。
「……」
「……ねえ、ジジさん。これ、大丈夫なんですかねぇ?」
「……ほほほ。まあ、時間が解決するでしょう」
「「勝手に感想を言うんじゃない!!」」
道具屋の外でお互いに恥ずかしがりながら黙り込んでいた明日香とイーライを見て、夏希とジジは呆れ声を漏らしていた。
それに抗議の声をあげた二人だったが、結局はだんまりの状態が続いたのでこれ以上は何も言えなくなってしまった。
「……あの、明日香さん? もしよろしければ、私たちも一緒に――」
「ううん! 大丈夫! 二人だけで問題ないから! ……って、え? 私たち?」
夏希だけがついていこうかと提案されると思った明日香だが、夏希からは複数形の言葉が口にされている。
夏希ともう一人。ジジは道具屋の店番があることを考えると、その相手は――
「……ガ、ガゼルさん! もしや、ダブルデートというやつですか!」
「はい! 私、憧れだったんです! どうでしょうか、明日香さん!」
正直なところ、二人きりで何を話せばいいのか、どう接すればいいのか、いざデートだと意気込むと考えがまとまらなかった明日香にとって、夏希の提案は非常にありがたいものだった。
先ほどまでは困った様子の明日香だったが、すぐに夏希の下へ歩いていくと、その手をガシッと力強く握っていた。
「よろしくお願いします、夏希ちゃん!」
「こちらこそです、明日香さん!」
何やら二人の間で話がまとまっているが、デートに誘ったイーライの気持ちはどうなるのか。
「ほほほ。イーライよ、ひとまずはアスカさんを安心させてあげることですね」
「……はい。そうします」
ジジだけがイーライに寄り添い、そっと背中を叩くのだった。
ジジと別れた明日香たちは、その足で冒険者ギルドに足を運んでいた。
夏希がガゼルと待ち合わせをしていたからだが、当のガゼルは明日香とイーライが一緒にやってきたことに首を傾げていた。
「なんだ? アスカのお嬢さんとイーライも一緒に行くのか?」
「違います! 四人で街を散策しましょう!」
「……あん? ど、どういうことだ?」
当然の疑問に対しての夏希の答えを受けて、ガゼルの疑問はさらに深まっていく。
「あれ? もしかして夏希ちゃん、ガゼルさんにちゃんと伝えていないの?」
「実は、そうなんです。……だって、歳の差があり過ぎて、タイミングを間違えたらもう会ってもらえないんじゃないかって思うんですよ!」
明日香に対しては強気な発言をしていた夏希も、自分のこととなると消極的になってしまうらしい。
その姿に明日香は少しだけ安堵し、そして彼女に協力したいと思うようになっていた。
「ガゼルさん!」
「なんだい、アスカのお嬢さん?」
「ダブルデートですよ、ダブルデート?」
「……ダブル、デート? ……俺、いらないんじゃねぇか?」
「いります! 大事です! むしろ、中心人物です!」
ガゼルはSランク冒険者になった時から、女性と深い仲になることを拒んできた。
それは冒険者稼業の足枷になることが多いのと、自分が死んでしまった時に悲しい想いをさせるからという、二つの理由が存在していた。
そのせいもあり、長い間で女性との関係を断ち、今の年齢になってずっと独り身だろうと思っていたガゼルからすると、自分が誰かに好いてもらっているという考えに至ることがなかったのだ。
「ほら、夏希ちゃん!」
「わわわわっ!」
「本当にどうしたんだ、ナツキのお嬢さん?」
明日香に背中を押されてガゼルの前に出た夏希。
困惑気味になっていくガゼルを見て、ここで言わなければ嫌われるかもしれないという思いが強くなっていった。そして――
「その、えっと……わ、私と――付き合ってください!」
「「「「……ええええぇぇええぇぇっ!?」」」」
夏希の告白は思いのほか声が大きくなり、周りで聞き耳を立てていた冒険者たちから驚きの声があがった。
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